若葉

若葉(150501-)

立夏6(150506)
「限あれば衣ばかりをぬぎかへて 心は花をしたふなりけり」(西行法師 題しらず 山家集夏)
「草しげる道かりあけて 山里に花みし人の心をぞみる」(西行法師 夏の歌よみけるに 山家集夏)

「山々に闇充満し夏に入る」(飯田龍太 山の木 昭和47年)
「星空もはや夏に入る遥(とほ)の宮」(飯田龍太 山の影 昭和59年)

若葉7(150501)
「楢(なら)の木の若葉柔(やは)らかみ 午(ひる)すぎの日を透(すか)しつつしなえたるかも」(木下利玄 糺の森 一路)
「温(ぬく)み風揺(ゆ)れざわめける高き枝(え)に 榎(え)の木の花の咲きにてあらずや」(木下利玄 糺の森 一路)
「雲行きを見上ぐる森の木(こ)ぬれには 花つけし枝(えだ)のざわめきてをり」(木下利玄 糺の森 一路)
「ざぶざぶと白壁洗ふわか葉かな」(一茶)
「鳥飛んで山門深き若葉哉」(子規)
「若葉して家ありとしも見えぬ哉」(子規 明治28年)「山越えて城下見おろす若葉哉」(子規 明治28年)
若葉6(140501)
「葎(むぐら)さへ若葉はやさし破れ家」(芭蕉)
「物の名を先ず問ふ芦の若葉かな」(芭蕉)
「空晴れて沼のみかさをおとさずば あやめもふかぬ五月なるべし」(西行法師 題しらず 山家集夏)
「時鳥きく折にこそ 夏山の青葉は花におとらざりけり」(西行法師 時鳥を 山家集夏)
「わが路遠く山に入る山のみどりかな」(山頭火 出家以前 大正6年)
「影もはっきりと若葉」(山頭火 山行水行)
「若葉若葉かがやけば物みなよろし」(山頭火 出家以前 大正6年)
若葉5(130419)
「駿河(するが)なる沼津より見れば 富士の嶺の前に垣をなせる愛鷹(あしたか)の山」(若山牧水 雑詠 くろ土)「富士が嶺に雲かかりたり わが門(かど)のまへの稲田に雀とびさわぎ」(若山牧水 雑詠 くろ土)「不二(ふじ)ひとつうづみのこして若葉哉」(蕪村)
若葉4(090429)
「青葉さへ見れば心のとまるかな 散りにし花の名残と思へば」(西行法師 山家集春)
「若葉して御目の雫拭わばや」(芭蕉)
若葉3(080615)
「草や木や生きて戻って茂ってゐる」(病みほほけて信濃より帰庵 山頭火 「山行水行」)「病みて一人の朝がゆふべとなりゆく青葉」(山頭火)「柿の若葉のかがやく空を死なずにゐる」(山頭火)
若葉2(070507)
「不二ひとつうづみ残して若葉かな」(蕪村)
若葉3(070424)
「あらたふと青葉若葉の日の光」(芭蕉)

母子草10(150503)
「大井川岩波はやく春くれて 筏のとこに夏ぞ来にける」(皇太后宮大夫俊成女 名所の歌の中に、大井川 玉葉集夏)「卯の花の露にひかりをさし添へて つきにみがける玉川の里」(前右兵衛督為教 題しらず 玉葉集夏)「母子草利根の船路はすたれける」(水原秋櫻子 旅愁 昭和34年)「母子草人の見やらぬ春闌(た)けて」(水原秋櫻子 緑雲 昭和46年)
母子草9(140505)
「母子草門辺に踏まじ旧庄屋」(水原秋櫻子 緑雲 昭和46年)
「母子草曼荼羅堂は壊(く)えむとす」(水原秋櫻子 玄魚 昭和46年)
母子草8(130414)
「桜花あかぬ匂ひにさそはれて 春は山路に行かぬ日ぞなき」(前大納言師忠 逐日看花といふことを 玉葉集春下)「明日もこん今日も日暮らしみつれども あかぬは花の匂ひなりけり」(大宮前太政大臣 白河院の花見の御幸の時よみ侍りける 玉葉集春下)「母子草人の見やらぬ春闌(た)けて」(水原秋櫻子 緑雲)
母子草7(120426)
「花の里心も知らず いろいろ摘める母子もちひぞ」(和泉式部 石蔵(いはくろ)より野老(ところ)おこせたる手箱(てばこ)に、草餅(くさもちひ)いれてたてまつるとて 526)「三日(みか)の夜の餅(もちひ)は食はじ煩(わず)らはし きけば淀野にははこつむなり」(後拾遺集 俳諧歌)
「すりこぎや父はおそろし母子草」(路通)
母子草6(110505)
「せりなずな御行といひて声の止む」(川崎展宏)
母子草5(100521)
「草の戸の軒端草なる母子草」(富安風生)
母子草4(100424)
「菩提寺へ母の手を引き母子草」(富安風生)
母子草3(080423)
「鶏の目には鶏の世あらむ母子草」(加藤楸邨)
母子草2(070407)
「母子草やさしき名なり莟(つぼみ)もち」(山口青邨)
母子草1(060409)
「老いて尚なつかしき名の母子草」(虚子)

茶摘5(140503)
「障子(しゃうじ)あけて庭の若葉の明るきに 夕餉(ゆふげ)よろしき夏さりにけり」(古泉千樫 新緑 大正13年)
「青空を雲ゆくなべに身のまはり 暗く明るくゆらぐ若葉よ」(古泉千樫 新緑 大正13年)
「ぶつぶつと口念仏で茶摘哉」(一茶)
茶摘4(100426)
「朝の日の地上を照らすすこやかさ 木々の若芽に手を触り見む」(古泉千樫 吾家のまはり 大正13年)「たかだかに芽吹き光れる欅の木 われはたしかに癒えたるらしき」(古泉千樫 吾家のまはり 大正13年)「菅笠を着て鏡見る茶摘かな」(支考)
茶摘3(090426)
「一とせの茶も摘みにけり父と母」(蕪村)
茶摘2(080501)
「茶畑に入日しづもる在所かな」(芥川龍之介)
茶摘1(070425)
「わが庭に歌なき妹の茶摘かな」(子規)

八十八夜6(150502)
「若葉樹(わかばぎ)の繁り張る枝(え)のやはらかに 風ふくみもち揺(ゆ)れの豊(ゆた)けさ」(木下利玄 新緑 一路)「若葉枝(わかばえ)のしみみの奥にかもされゐる この明るみよ濃(こま)やかと云はむ」(木下利玄 新緑 一路)「八十八夜をかしきものに鯉のひげ」(鍵和田秞子)
「望郷の目覚む八十八夜かな」(村越化石)
八十八夜5(140502)
「路のべゆ木深(こぶか)く飛びし山の鳥 しばらくきけど音もせねこそ」(木下利玄 葉桜雨 一路)
「葉ざくらよ雨間(あまま)の雫(しづく)地をうてり 花どき過ぎてかくはしづけき」(木下利玄 葉桜雨 一路)
「紺絣八十八夜来りけり」(森澄雄 游方)
「田一枚鏡や八十八夜待つ」(阿波野青畝)
八十八夜4(130502)
「浄(きよ)らかにみささぎどころうちしめれり 葉桜雨(はざくらあめ)のやみ間(ま)冷えつつ」(木下利玄 葉桜雨 一路)「葉ざくらよ雨間(あまま)の雫(しづく)地をうてり 花どき過ぎてかくはしづけき」(木下利玄 葉桜雨 一路)「着重ねて八十八夜の忘れ霜」(森澄雄 蒼茫)
八十八夜3(120502)
「きらきらと八十八夜の雨墓に」(石田波郷 惜命)
八十八夜2(110502)
「八十八夜都にこころやすからず」(鈴木六林男)八十八夜1(100503)
「馬に寝て残夢月遠し茶のけぶり」(芭蕉)

新緑5(140513)
「庭木ども若芽を葉となして 光うつくしくわが家をかこむ」(窪田空穂 木草とともに 昭和35年)
「雲しろくこむるにいよよ色まさり 庭の若葉の咽(むせ)ばんとす」(窪田空穂 木草とともに 昭和35年)
「青葉わけゆく良寛さまも行かしたろ」(山頭火 柿の葉)
「山のふかさはみな芽吹く」(山頭火 柿の葉)
「浅間をまともにおべんたうは草の上にて」(山頭火 柿の葉)
新緑4(130429)
「庭木どももてる若芽を葉となして 光うつくしくわが家(や)をかこむ」(窪田空穂 木草とともに 昭和35年)「雲しろくこむるにいよよ色まさり 庭の若葉の咽(むせ)ばんとす」(窪田空穂 木草とともに 昭和35年)「ひとりとなれば仰がるる空の青さかな」(山頭火 出家以前 大正6年)「若葉若葉かがやけば物みなよろし」(山頭火 出家以前 大正6年)「草や木や生きて戻って茂ってゐる」(山頭火 山行水行)「柿の若葉のかがやく空を死なずにゐる」(山頭火 山行水行)
新緑3(120516)
「庭木どももてる若芽を葉となして 光うつくしくわが家(や)をかこむ」(窪田空穂 木草と共に 昭和35年)「真紅(しんく)なる色をたのしとするならん 真紅の花びら重ぬるばらよ」(窪田空穂 木草と共に 昭和35年)
「新緑に濯(すす)ぎて何を忘るるか」(森澄雄 雪檪)
新緑2(110517)
「新緑やうつくしかりしひとの老い」(日野草城)

小判草7(140515)
「五月雨は晴れんとやする 山の端にかかれる雲のうすくなり行く」(今上御製 玉葉集夏)
「五月雨は晴れぬとみゆる 雲間より山の色こき夕ぐれの空」(中務卿宗尊親王 )
「湖の辺を猫歩きをり小判草」(森澄雄 天白)
小判草6(130512)
「寂しとは誰かいひけん 山里をみせばや 田子の早苗とる頃」(従二位家隆 玉葉集夏)「小山田に見ゆる緑の一むらや まだとりわけぬ早苗なるらん」(前右近大将家教 玉葉集夏)「小判草碩へ径の消えてなし」(上村占魚)
小判草5(120513)
「わが涙ゆふべの山の雨となり 鶯に降るちる花に降る」(山川登美子 明治40年6月)「あやめ草ひと夜に咲ける花ぬれて 早も皐月のしづくするかな」(山川登美子 明治40年6月)
「日々惜しみけふの没日や小判草」(森澄雄 白小)
小判草4(110513)
「小判草ゆっくりと揺れ迅く揺れ」(清崎敏郎)
小判草3(100514)
「月光にふるれば鳴らん小判草」(津島俳車)
小判草2(090514)
「小判草触れて音なき不況の世」(両角直子)
小判草1(080513)
「小判草振ってみてそれだけのこと」(正木ゆう子)
小満(130521)
「都人まつらん物をほととぎす なきふるしつるみやまべのさと」(四月ばかり、 したしき人具して、 山里にありしころ、 ほととぎすのつねに鳴きしに、 建礼門院右京大夫集)「たちばなの花こそいとどかほるなれ 風まぜにふる雨のゆふぐれ」(はなたちばなの、 雨はるる風ににほひしかば、 建礼門院右京大夫集)「小満や箭竹(やだけ)篠竹(しのだけ)生えしめて」(星野麥丘人)

檸檬の花8(140516)
「忘れずよ右のつかさの袖ふれし 花橘や今かをるらん」(亀山院御製 玉葉集夏)
「とほちより吹きくる風のにほひこそ 花橘のしるべなりけれ」(郁芳門院安芸 玉葉集夏)
「たちばなのかはたれ時や古館(ふるやかた)」(蕪村)
檸檬の花7(130517)
「ほととぎす花橘の枝にゐて 鳴き響(とよ)もせば花は散りつつ」(万葉集巻十1950)「ほととぎす来ゐも鳴かぬか わが屋前(には)の花橘の地(つち)に落ちむ見む」(万葉集巻十1954)「橘(たちばな)やいつの野中(のなか)の郭公(ほととぎす)」(芭蕉 土佐みやげ)
檸檬の花6(120522)
「うつくしき咲き散る花よ 大方はその実を結ぶためにはあらず」(窪田空穂 庭の木草 木草と共に)「命めざめ慌しくも咲きて散る 木草それぞれ音を立てゐむ」(窪田空穂 庭の木草 木草と共に)「橘(たちばな)のかごとがましきあはせかな」(蕪村)
檸檬の花5(110520)
「風に散る花橘を袖に受けて 君が御跡(みあと)と思(しの)ひつるかも」(万葉集巻十1968)「橘の花散る里に通ひなば 山ほととぎす響(とよ)もさむかも」(万葉集巻十1968)「橘やむかしやかたの弓矢取り」(蕪村)
檸檬の花4(110520)
「人ごゑの清潔な朝蜜柑咲く」(藤田湘子)
檸檬の花3(100528)
「山窪は蜜柑の花の匂ひ壷」(山口誓子)
檸檬の花2(080604)
「虻(あぶ)飛んで蜜柑の花のこぼれけり」(子規)
檸檬の花1(070514)
「我が宿の花橘はいたづらに散りか過ぐらむ見る人なしに」(万葉集巻十五3779)「我こそは憎くもあらめ我が宿の花橘を見には来じとも」(万葉集巻十1990)「ほととぎす花橘の枝に居(い)て鳴(な)き響(とよ)もせば花は散りつつ」(万葉集巻十1950)「駿河路や花橘も茶の匂ひ」(芭蕉)

十薬の花9(140523)
「ありし日の若かりしわが心にも しばしはかへれほととぎす啼く」(若山牧水 比叡山にて くろ土)「おほらかに何の鳥かも 谷あひの大き杉の間(あひ)をまひうつる見ゆ」(若山牧水 比叡山にて くろ土)「今日何を為しや十薬と墓見しのみ」(石田波郷 松濤)
十薬の花8(130516)
「をちこちに啼き移りゆく 筒鳥(つつどり)のさびしき声は谷にまよへり」(若山牧水 五月中旬、京都より比叡山に登り山上の古寺に七日がほど宿りて詠める中より。 比叡山にて くろ土)「啼く声のやがてはわれの声かともおもはるる声に筒鳥は啼く」(若山牧水 比叡山にて くろ土)「崖も峡の十薬の又夏くるか」(石田波郷 風切以後)
十薬の花7(120525)
「十薬に人訪ふ心怯れをり」(石田波郷 )
十薬の花6(110522)
「どくだみやこの世のユダの数ほどに」(鷹羽狩行)
十薬の花5(100516)
「十薬の香の夕ぐれを跼みゐる」(阿部みどり女)
十薬の花4(080514)
「どくだみの花いきいきと風雨かな」(大野林火)
十薬の花3(080521)
「十薬(どくだみ)の香の墓に子とあそびけり」(石田波郷)
十薬の花2(070524)
「疲れて親し夜のどくだみ旅の酒」(金子兜太)
十薬の花1(060521)
「どくだみや真昼の闇や白十字」(川端茅舎)

あやめ10(140522)
「桜ちるやどにかさなるあやめをば 花あやめとやいふべかるらむ」(西行法師 山家集夏)
「五月雨の軒の雫に玉かけて 宿をかざれるあやめくさかな」(西行法師 山家集夏)
「空晴れて沼のみかさをおとさずば あやめも吹かぬ五月なるべし」(西行法師 )
「宵宵(よひよひ)の雨に音なし杜若(かきつばた)」(蕪村)
あやめ9(130519)
「なべて世のうきになかるる菖蒲草 今日までかかるねはいかが見る」(上東門院少将 局ならびに住みはべりける頃、 五月六日、もろともにながめあかして、朝に長き根をつつみて紫式部に遣はしける 新古今集夏)「何事もあやめはわかで 今日もなほ袂に余るねこそ絶えせね」(紫式部 返し 新古今集夏)「有難き姿拝まん杜若」(芭蕉)「代々の貧乏(びんぼ)屋敷や杜若(かきつばた)」(蕪村)
あやめ8(120526)
「かがまりてわが息づかひしたしもよ 菖蒲(あやめ)の花のかさなりて見ゆ」(木下利玄 菖蒲 紅玉)「花菖蒲(はなしゃうぶ)かたき莟は粉しろし はつはつ見ゆる濃むらさきはも」(木下利玄 菖蒲 紅玉)
「きのふ見し妹が垣根の花あやめ」(暁台)
あやめ7(110530)
「西にのみ心ぞかかるあやめ草 この世はかりの宿と思へば」(西行法師 山家集夏)「みな人の心のうきはあやめ草 西に思ひのひかぬなりけり」(西行法師 山家集夏)「ほととぎす啼くや五尺の菖(あやめ)草」(芭蕉)
あやめ6(100529)
「西にのみ心ぞかかる あやめ草 この世は仮の宿と思へば」(西行法師 山家集夏)「みな人の心のうきは あやめ草 西に思ひのひかぬなりけり」(西行法師 山家集夏)
「有難き姿拝まん杜若」(芭蕉)
あやめ5(100523)
「ほとぎす厭(いと)ふときなし あやめ草かづらにきむ日 此(こ)ゆ鳴き渡れ」(田邊史福麻呂 万葉集巻十八4035)「白玉を包みてやらば あやめ草花たちばなに 合へも貫(ぬ)くがね」(万葉集巻十八4102)
「旅人に雨の黄あやめ毛越寺」(高野素十)
あやめ4(090520)
「あやめ生ひけり軒の鰯のされかうべ」(芭蕉)
あやめ3(080519)
「針仕舞ふ女のうしろあやめ咲く」(福田甲子雄)
あやめ2(070517)
「霍公鳥(ほととぎす)いとふ時なし菖蒲(あやめ)草かづらにせむ日こゆ鳴き渡れ」(万葉集巻十八4035)「菖蒲(あやめ)草根永き取れば沢水の深き心も知りぬべらなり 貫之」(古今六帖)「桜散る宿を飾れる菖蒲(あやめ)をば花そうぶとやいふべかるらん 西行」(夫木和歌抄)
「あやめ草生ひけり軒の鰯(いわし)のされこうべ」(芭蕉)
あやめ1(060517)
「壁一重雨をへだてつ花あやめ」(鬼貫)

瓜の花11(140528)
「蝶を追ふ虻の力や瓜の花」(子規 明治26年)
瓜の花10(130522)
「朝な朝な胡瓜(きうり)畑を楽しみに見にくる われの髯(ひげ)のびて白し」(斎藤茂吉 白き山 昭和21年)「やみがたきものの如しとおもほゆる 自浄作用(じじゃうさよう)は大河(たいが)にも見ゆ」(斎藤茂吉 白き山 昭和21年)「留守に似て閉せるひとや瓜の花」(石田波郷 酒中花)
瓜の花9(120520)
「ながらへてあれば涙のいづるまで 最上(もがみ)の川(かは)の春ををしまむ」(斎藤茂吉 白き山 昭和21年)「ひがしよりながれて大き最上川 見おろしをれば時は逝(ゆ)くはや」(斎藤茂吉 白き山 昭和21年)「家々によき年寄や瓜の花」(森澄雄 空艪)
瓜の花7(100607)
「雨土をしたたか揚げぬ瓜の花」(西山泊雲)
瓜の花6(090625)
「さざなみの志賀に見ており瓜の花」(森澄雄)
瓜の花5(080611)
「瓜の花雫いかなる忘れ草」(芭蕉)
瓜の花4(070523)
「雷に小屋は焼かれて瓜の花」(蕪村)
瓜の花3(060627)
「夕にも朝にもつかず瓜の花」(芭蕉)
瓜の花2(060718)
「思ひきり泣く少年や瓜の花」(星野麥丘人)
瓜の花1(060627)
「美濃を出て知る人まれや瓜の花」(支考)

柚子の花9(140526)
「さつき待つ花たちばなの香をかげば 昔の人の袖の香ぞする」(よみ人しらず 古今集夏)「けさ来(き)鳴きいまだ旅なる郭公(ほととぎす) 花たちばなに宿や借らなん」(古今集夏)「橘(たちばな)や昔屋形(やかた)の弓矢取り」(蕪村)
柚子の花8(130520)
「さつき待つ花たちばなの香をかげば 昔の人の袖の香ぞする」(よみ人しらず 古今集夏139)「けさ来(き)鳴きいまだ旅なる郭公(ほととぎす) 花たちばなに宿は借らなん」(古今集夏141)
「橘(たちばな)のかごとがましき袷(あはせ)哉」(蕪村)
柚子の花7(120523)
「知る花は親しくてよし 知らざるが咲きいづる待つは勝りてよし」(窪田空穂 花壇 郷愁 昭和9年)「目を寄せて見るに 漸く見ゆる芽の 細かく青く計り知られぬ」(窪田空穂 花壇 郷愁 昭和9年)「柚の花やむかし逢瀬を重ねたる」(森澄雄 白小)
柚子の花5(110530)
「ほととぎす来(き)鳴きとよもす 橘(たちばな)の花散る庭を見む人や誰(たれ)」(万葉集巻十1968)「雨間(あまま)開けて国見もせむを 故郷の花橘は散りにけむかも」(万葉集巻十1971)「涼しくて墓辺の柚子の花にほふ」(飯田龍太 春の道 昭和44年)
柚子の花4(100521)
「わが宿の花たちばなは いたづらに散りか過ぐらむ 見る人なしに」(中臣宅守 万葉集巻十五3779)「たちばなのにほへる香かも ほととぎす鳴く夜の雨に うつろひならむ」(大伴家持 万葉集巻十七3916)「駿河路や花橘も茶の匂ひ」(芭蕉)
柚子の花3(090509)
「柚の花につきてぞ上る烏蝶」(飯田蛇笏)
柚子の花2(080523)
「柚の花はいづれの世の香ともわかず」(飯田龍太)
柚子の花2(070521)
「柚の花や昔偲ばん料理の間」(芭蕉)「吸物にいささか匂ふ花柚かな」(子規)
柚子の花1(060515)
「箒目に莟(つぼみ)をこぼす柚の樹かな」(杉田久女)

万緑2(130512)
「日をひと日 富士をまともに仰ぎ来て こよひを泊る野の中の村」(若山牧水 大野原の初夏 くろ土)「草の穂にとまりて啼くよ 富士が嶺の裾野の原の夏の雲雀は」(若山牧水 大野原の初夏 くろ土)「万緑の万物の中大仏」(虚子 昭和24年)

豌豆6(140516)
「ゆふ潮と海は満つらし 遠きへの鳴門もいまは潮飛ばず見ゆ」(中村憲吉 海中の岩 大正14年)
「かへりみる鳴門のおくは広やかに 夕日照りたる海の庭みゆ」(中村憲吉 海中の岩 大正14年)
「莢(さや)より出すグリーンピースの聖家族」(小松絹子)
「莢豆(さやまめ)のみどりとび出す時は今」(森武子)
豌豆5(130514)
「鳴門より戻り手わたる撫養()むや」のうみ 潮のながれは北へかはりぬ(中村憲吉 海中の岩 大正14年)「かへり見る鳴門のおくは 広やかに夕日照りたる海の庭みゆ」(中村憲吉 海中の岩 大正14年)「ゆふ潮と海は満つらし 遠きへの鳴門もいまは潮(しほ)飛ばず見ゆ」(中村憲吉 海中の岩 大正14年)「ゑんどうむき人妻の悲喜いまはなし」(桂信子)
豌豆4(120514)
「生きの身の吾が身いとしく もぎたての青豌豆の飯(いひ)たかせけり」(北原白秋 三崎新居 雲母雲)「まがると風が海ちかい豌豆畑」(山頭火 渥美半島 鴉)
豌豆3(110510)
「酒よろしきやゑんどうの味も好し」(上村占魚)
豌豆2(100511)
「豌豆の煮えつつ真玉なしにけり」(日野草城)
豌豆1(080506)
「ゆくりなくちぎりてみつるそら豆の 青臭くして懐かしきかな」(長塚節 明治45年)「豌豆の実のゆふぐれに主婦かがむ」(山口誓子)

茄子の花7(140514)
「茄子苗の紺を束ねて山路ゆく」(広瀬直人)
「茄子の苗一天の紺うばひ立つ」(有馬朗人)
茄子の花6(130512)
「思はずも あふぎたたみて 見いれけり 一(ひと)ゆすりする 風のむらたけ」(橘曙覧 扇罷風生竹 松籟艸)「すくすくと 生ひたつ麦に 腹すりて 燕(つばめ)飛びくる 春の山はた」(橘曙覧 松籟艸)「雨のあと土息づくや茄子の花」(松本一枝)
茄子の花5(120512)
「もの言はぬ木草と居(を)ればこころ足り 老い痴(し)れし身を忘れし如き」(窪田空穂 庭の木草 木草と共に 明治36年)「全(また)くして足らざるはなき木草らよ うつくしき移り見つつ生きなん」(窪田空穂 春の庭 木草と共に 明治37年)「吾子訪ふに妻やや化粧ふ茄子の花」(落合敏)
茄子の花4(110612)
「茄子の花こぼれて蜘蛛をおどろかす」(飴山實)
茄子の花3(100527)
「葉の紺に染りて薄し茄子の花」(虚子)
茄子の花2(080522)
「葉の下に茄子の花の鋭さよ」(虚子)
茄子の花1(070512)
「また落ちてぬれ葉にとまる茄子の花」(飯田蛇笏)

紫蘭7(130507)
「若葉(わかば)さす ころはいづこの 山見ても 何の木見ても 麗(うるは)しきかな」(橘曙覧 首夏 春明艸)「天地(あめつち)も ひろさ加はる ここちして 先づあふがるる 青雲(あをぐも)のそら」(橘曙覧 松籟艸)
「荒寺といえど紫蘭の勅使門」(京極杞陽)
紫蘭6(120519)
「局塚(つぼねづか)その面影の紫蘭咲き」(下村ひろし)
紫蘭5(100512)
「紫蘭(しらん)咲き満つ毎年の今日のこと」(虚子)
紫蘭4(090506)
「雨を見て眉重くゐる紫蘭かな」(岡本眸)
紫蘭3(080509)
「君知るや薬草園に紫蘭あり」(虚子)
紫蘭2(070510)
「紫蘭咲いていささかは岩もあはれなり」(白秋)
紫蘭1(060511)
「山の日のくもりやすくて紫蘭かな」(星野麥丘人)

蛇苺8(140508)
「光ある花を讃へて薔薇(ばら)のさくころ 充ち足れる日々とおもはん」(佐藤佐太郎 昭和52年)「日の光まぶしき坂を歩めれど 真夏のごとき寂しさなし」(佐藤佐太郎 昭和54年)「流水に真紅うつらず蛇苺」(山口誓子)
蛇苺7(140511)
「蛇崩(じゃくづれ)の住反人の同じきに 季うつり家々の垣薔薇となる」(佐藤佐太郎 天眼 昭和53年)「憩(いこ)ひつつ膝上(しつじょう)に短詩成ることもあり 蛇崩の道をあゆめば」(佐藤佐太郎 天眼 昭和53年)「たましひのごときひとつや蛇いちご」(石寒太)
蛇苺6(130528)
「すいすいと風そよぎをり蛇苺」(阿部みどり女)
蛇苺5(120509)
「蛇いちご半弓提げて夫婦づれ」(嵐雪)蛇苺4(120430)
「花の芯すでに苺のかたちなす」(飴山實)蛇苺3(080509)
「老いし今くちなはいちご怖れむや」(相生垣瓜人)
蛇苺2(070508)
「田水満ち日出づる露に蛇苺」(飯田蛇笏)
蛇苺1(060516)
「草刈れば飛ぶ紅や蛇苺」(松尾静子)

マーガレット7(150504)
「春をしたふ心の友ぞあはれなる 弥生のくれの鶯の声」(章義門院 暮春鶯といふ心をよませ給うける 玉葉集春)「暮れてゆく春の残りをながむれば 霞のそこに有明の月」(式子内親王 暮春の歌とて 玉葉集春)「遅い月の出マーガレットは聖歌隊」(伊藤淳子)
マーガレット6(140511)
「マーガレット主(あるじ)の椅子を犬が占め」(中村汀女」
マーガレット5(130510)
「背負籠(せおいご)にマーガレットをのぞかせて」(清崎敏郎)
マーガレット4(120517)
「清澄(きよすみ)の山路をくれば 羊歯(しだ)交(まじ)り胡蝶花(しゃが)の花さく杉の茂生(しげふ)に」(長塚節 明治38年5月 清澄の八瀬尾の谷に炭焼を見に行く)「清澄(きよすみ)の胡蝶花(しゃが)の花さく草むらに 夕さりごとに鳴く声や何(なに)」(長塚節 明治38年5月)「遅い月の出マーガレットは聖歌隊」(伊藤淳子)
マーガレット3(120522)
「マーガレット何処にも咲いて蝦夷の奥」(高浜年尾)
マーガレット2(070518)
「マーガレット猫額(べうがく)の庭満たしけり」(中村汀女)
マーガレット1(060505)
「マーガレット東京の空よごれたり」(阿波野青畝)

姫女苑4(140510)
「さゆるばに交る夏草茂りあひて 知られぬよにぞ朽ちぬと思ひし」(藤原定家 夏十首 内大臣家百首 建保3年)
「さ月きぬ軒のあやめの影そへて 待ちしいつかと匂ふ池みづ」(藤原定家 夏十首 内大臣家百首 建保3年)
「姫女苑雪崩(なだ)れて山の風青し」(阿部みどり女)
「濁流の洲に残りたる姫女苑」(福田甲子雄)
「主(あるじ)病むと聞きゐるからにひめじょをん」(森澄雄 四遠)
姫女苑3(130503)
「なにとなく過ぎにし春ぞしたはるる ふぢつつじ咲く 山の細道」(藤原定家 夏十五首)「五月やみ空やはかをる 年を経て のきのあやめの風のまぎれに」(藤原定家 夏十五首)「常の日のつねのかなしみ姫女苑」(鍵和田秞子)
姫女苑2(140529)
「江戸人の見ざりし花よ姫女苑」(森澄雄 深泉)
姫女苑1(060502)
「ひめじょをん美しければ雨降りぬ」(星野麥丘人)

矢車草10(150508)
「障子あけて庭の若葉の明るきに 夕餉よろしき夏さりにけり」(古泉千樫 新緑 大正13年)
「青空を雲ゆくなべに身のめぐり暗く明るくゆらぐ若葉を」(古泉千樫 新緑 大正13年)
「網染むる渋が矢車草にとび」(清崎敏郎)
矢車草9(140508)
「朝ごとにひとつ二つと減(へ)り行(ゆ)くに なにが残らむ矢ぐるまの花」(長塚節 大正3年)
「風邪(かぜ)引きて厭(いと)ひし窓もあけたれば すなはちゆるる矢車の花」(長塚節 大正3年)
「矢車に南の風吹く海の波の群れ」(水原秋櫻子 昭和11年)
矢車草8(130426)
「ふつとして眼(め)につけるかも 黒塗の一閑張(いっかんばり)にうつれる青葉」(若山牧水 晴れし日の机の上 さびしき樹木)「置かれたる酒杯(コプ)のさけにもこまごまと 静けき青葉うつりたるかな」(若山牧水 晴れし日の机の上 さびしき樹木)「なよなよと丈さだまらぬ矢車草」(佐野ゆきゑ)
矢車草7(120504)
「虎杖(いたどり)のわかきをひと夜塩に漬けて あくる朝食ふ熱き飯にそへ」(若山牧水 くろ土 比叡山)「矢車草咲きつぎて白加はりぬ」(石田波郷)
矢車草5(100418)
「快(こころよ)き夏来にけりといふがごと まともに向ける矢車の花」(長塚節 大正3年)
「矢車草たまさか机上に塵なき日」(峯岸杜丘)
矢車草4(080424)
「うなだれてわびしき花の鋤w斗菜(をだまき)は萎(しぼ)みて あせぬ矢車の花」(いつのまにか立ふじは捨てられ、きんせんはぞろりとこぼれたるに、夏の草なればにや矢車のみひとりいつまでも心強げに見ゆれば 長塚節 大正3年)「さきがけの一花遊ばせ矢車草」(山本湖南)

立夏5(140507)
「咲きいでし花の単色夏に入る」(飯田龍太 百戸の谿 昭和24年)
「村夏に入る水光は樹むらにも」(飯田龍太 山の木 昭和48年)
立夏4(130505)
「おしなべて山も青葉になりにけり 花みし春は昨日と思ふに」(御製 新葉集夏)「大井川岩波はやく春くれて 筏のとこに夏は来にけり」(皇太后宮太夫俊成女 玉葉集夏)「遠山と柱時計に夏が来る」(飯田龍太 忘音)
立夏3(120505)
「おしなべて山も青葉になりにけり 花みし春は昨日と思ふに」(後村上院御製 新葉集巻第三夏)「花に見し昨日の春の面影を いつしかかはる夏木立かな」(前大僧正頼意 新葉集巻第三夏)「渓の樹の膚ながむれば夏きたる」(飯田蛇笏)
立夏2(110506)
「滝おもて雲おしうつる立夏かな」(飯田蛇笏)立夏1(100511)
「渓川の身を揺りて夏来るなり」(飯田龍太)

蕗6(130416)
「いつのまにすぎし桜ぞ蔭なして そよぐが如しこの窓の前」(土屋文明 四月十日紀伊湯崎一宿 ゆづる葉の下)「茂りつつのこるにほひを 薄墨(うすずみ)と名づけむもわびし山桜花」(土屋文明 四月十日紀伊湯崎一宿 ゆづる葉の下)「蕗の葉に煮〆(しめ)配りて山桜」(一茶 七番日記)

蝶々14(140416)
「いかにせん見にもやくると山桜 またるる花もちり果てぬべき」(選子内親王家中将 中務里に出で侍りけるが今日参るとのみ申すほどに、お前の桜散りはてぬべくなりにければ、言ひ遣はしける 玉葉集春)「待ちつけて散りはてぬとも山桜 しばしは庭をはらはざらなん」(同家中務 返し 玉葉集春)「寝るてふにかしておくぞよ膝がしら」(一茶 七番日記)
「風が海より土手草の蝶々おちつかず」(山頭火 出家以前)
「それは死の前のてふてふの舞」(山頭火 鴉)
「草は咲くがままのてふてふ」(山頭火 孤寒)
「草は咲くがままのてふてふ」(山頭火 柿の葉)
「人に逢はなくなりてより山のてふてふ」(山頭火 旅心)
「うらうら蝶は死んでゐる」(山頭火 旅心)
「てふてふひらひらひらかうとしてゐる春蘭」(山頭火 昭和15年)
「てふてふちらちら風に乗って来た」(山頭火 昭和15年)
蝶々13(120614)
「昼の雨はれんとすなり 雲にふくむ真日(まひ)の光に若葉の明るさ」(木下利玄 新緑 一路)「向山(むかやま)の濡るる若葉に 雨空(あまぞら)の明るみ映(うつ)り昼はふかしも」(木下利玄 新緑 一路)「草は咲くがままのてふてふ」(山頭火)「人に逢はなくなりててふてふ」(山頭火)
蝶々12(110414)
「蝶ひとつ飛べども飛べども石原なり」(山頭火)「てふてふひらひらひらかうとしてゐる春蘭」(山頭火 一草庵)

夏の蝶4(130515)
「ただ一つ ひらきそめたる姫百合の 花をめぐりて 蝶二つ飛ぶ」(落合直文)「一坪に足らざる うらの菜畑に 黄なる蝶とび 白き蝶とぶ」(落合直文)「麦に菜にてんてん舞(まひ)の小てふ哉」(一茶)
夏の蝶3(120711)
「ただひとつ開きそめたる姫百合の 花をめぐりて蝶二つ飛ぶ」(落合直文)「一坪に足らざる裏の菜畑に 黄なる蝶とび白き蝶とぶ」(落合直文)「乱心のごとき真夏の蝶を見よ」(阿波野青畝)
夏の蝶2(090518)
「夏の蝶抜け行く二階座敷かな」(野村喜舟)
夏の蝶1(070709)
「ひらひらと蝶々黄なり水の上」(子規)

蝶々2(070729)
「てふてふうらからおもてへひらひら」(山頭火)「蜂がてふちょが草がなんぼでも咲いて」(山頭火)「てふてふもつれつつかげひなた」(山頭火)「てふてふひらひらいらかをこえた」(山頭火)「草は咲くがままのてふてふ」(山頭火)「人に逢はなくなりてより山のてふてふ」(山頭火)「てふてふうらうら天へ昇るか」(山頭火)

胡蝶9(100413)
「散りぬれば後(のち)はあくたになる花を 思ひ知らずもまどふてふかな」(僧正遍照 古今集 物名)「伏勢(ふせぜい)の錣(しころ)にとまる胡蝶かな」(蕪村)
胡蝶8(090531)
「見初めたるあとは次の蝶来る」(山口誓子)
胡蝶4(090527)
「飛ぶ蝶に我が俳諧の重たさよ」(幸田露伴)
胡蝶3(080610)
「見初めたるあとはや次の蝶来る」(山口誓子)
胡蝶2(070615)
「てふてふや花盗人をつけてゆく」(也有)
胡蝶1(070423)
「久方のひかりのどけき春の日に しず心なく花の散るらむ 紀友則」(古今集84)「鶯の鳴く野べごとに来てみれば うつらふ花に風ぞ吹きたる よみ人しらず」(古今集106)「桜色に衣(ころも)はふかく染めてきん 花の散りなん後(のち)のかたみに 紀有朋」(古今集66)「うつつなきつまみごころの胡蝶かな」(蕪村)
胡蝶(060429)
「蝶も来て酢を吸う菊の酢あへ哉」(芭蕉)

新茶5(130427)
「わが庭の垣根に生ふる薔薇の芽の莟(つぼみ)ふくれて夏は来にけり」(子規 わが庭 明治31年)「立ち並ぶ榛(はん)も槻(けやき)若葉して 日の照る朝は四十雀(しじゅうから)鳴く」(子規 わが庭 明治31年)「蒟蒻屋(こんにゃくや)六兵衛和尚(おしょう)新茶かな」(久保田万太郎)

更衣7(140801)
「衣がへ野路の人わつかに白し」(蕪村)
「海暮れて鴨の声ほのかに白し」(芭蕉)
更衣6(130801)
「青水無月(あをみなつき)けふ朔日(ついたち)のあさ晴れて むら山のおくに雪の峰見ゆ」(若山牧水 山上湖へ くろ土)「みづうみの水のかがやきあまねくて 朝たけゆくに郭公(くわくこう)聞こゆ」(若山牧水 くろ土)「一渡(ひとわた)し越(こゆ)べき日也(なり)更衣(ころもがへ)」(蕪村)
更衣5(120801)
「ちひさきは小さきままに 伸びて張れる木の葉のすがた わが文にあれよ」(若山牧水 樹木とその葉 黒松)「山にあらず海にあらず ただ谷の石のあひをゆく水か わが文章は」(若山牧水 樹木とその葉 黒松)「ころもがへ布子(ぬのこ)の恩のおもさ哉」(蕪村)
更衣4(110803)
「ころもがへ印籠(いんろう)買ひに所化(しょげ)二人」(蕪村)
更衣3(100801)
「痩臑(やせずね)の毛に微風あり更衣(ころもがへ)」(蕪村)
更衣2(070803)
「御手打(おてうち)の夫婦(めをと)なりしを更衣(ころもがへ)」(蕪村)
更衣1(060803)
「一つ脱いで後ろに負ひぬ衣がえ」(芭蕉)

三味線草6(150427)
「二つ山三角標のもとに咲く すみれの花をまたたれか見む」(古泉千樫 嶺岡山 大正15年)
「ふるさとの最も高き山の上に 青き草踏めり素足になりて」(古泉千樫 嶺岡山 大正15年)
「花咲いて霍(つる)もすさめぬ薺(なづな)かな」(蕪村)(註)すさめぬ=賞玩しない。
三味線草5(130504)
「いつしかとけふぬぐ袖よ 花の色のうつればかはる 心なりけり」(藤原定家 夏十首)「あたらしや賎が垣根を かりそめに隔つばかりの やへの卯の花」(藤原定家 夏十首)「うらから来てくれて草の実だらけ」(山頭火 山行水行)「ともかくも生かされてはゐる雑草の中」(山頭火 山行水行)
三味線草4(120409)
「わが子らとかくて今日歩む垣根みち ぺんぺん草の花さきにけり」(古泉千樫 昭和2年3月31日 病牀春光録)「ひっそりかんとしてぺんぺん草も花ざかり」(山頭火 其中一人)
三味線草3(110403)
「もの思ひすべなきときはうち出でて 古野(ふるの)に生(お)ふる薺(なづな)をぞ摘む」(良寛)「鉢の子に菫(すみれ)たむぽぽこき混(ま)ぜて 三世(みよ)の仏に奉(たてまつ)りてな」(良寛)「妹(いも)が垣根さみせん草の花咲きぬ」(蕪村)
三味線草2(100322)
「庵を出でて道の細さよ花薺」(河東碧梧桐)
三味線草1(070201)
「庭の面になずなの花の散りぼへば、春まで消えぬ雪かとぞ見る」(曾丹集)「よく見れば薺(なずな)花咲く垣根かな」(芭蕉)

南天の花7(130528)
「山毛欅(ぶな)若葉橡(とち)の若葉のとりどりに そよぎ明るめりわが仰ぐうへに」(若山牧水 甲州七面山にて 黒松)「立ち掩う木々の若葉の下かげに そよぎて咲ける山あぢさゐの花」(若山牧水 甲州七面山にて 黒松)「花南天実るかたちをして重し」(長谷川かな女)
南天の花6(120627)
「雲雀なく声空にみちて 富士が嶺に消残(けのこ)る雪のあはれなるかな」(若山牧水 大野原の初夏 山桜の歌)「寄り来りうすれて消ゆる水無月(みなつき)の雲絶え間なし富士の山辺に」(若山牧水 大野原の初夏 山桜の歌)「南天の花ほろほろと月に散る」(井上論天)
南天の花5(110605)
「実となるもの殊にうれし花南天」(才川道子)
南天の花4(100603)
「南天や米こぼしたる花のはて」(横井也有)
南天の花3(090605)
「南天の花にとびこむ雨やどり」(飴山實)
南天の花2(080605)
「花南天実る形をして重し」(長谷川かな女)
南天の花1(070608)
「南天の実になる花と思はれず」(子規)

昼顔8(140530)
「初夏の真昼の野辺の青草に そのかげおとして立てる樫の木」(木下利玄 夏 銀)
「夏草のにほひの中にたたずみて 物思ひ居れば 日のかげろへる」(木下利玄 夏 銀)
「舟わりごひらきをればしづかなり 岸の萱生に昼顔は咲き」(木下利玄 雨靄 紅玉)
「昼顔のほとりによべの渚あり」(石田波郷)
「昼顔の咲きのぼる木や野は広し」(中村草田男)
昼顔7(120702)
「ひるがほの いまださびしきいろひかも。朝の間と思ふ日は 照るみてり」(釈迢空 海やまのあひだ 気多(ケタ)川)「真昼野に昼顔咲けり まじまじと待つものもなき昼顔の花」(木下利玄 蕊 銀)「子どもらよ昼顔咲きぬ瓜むかん」(芭蕉)
昼顔6(110531)
「うす曇り遠がみなりを聞く野辺の 小草がなかの昼顔の花」(木下利玄 銀 あかり)「舟とめてわりごひらきをれば しづかなり岸の萱生に昼顔は咲き」(木下利玄 紅玉 雨靄)「皷子花(ひるがほ)の短夜ねぶる昼間哉」(芭蕉)
昼顔5(100714)
「昼顔の露に踏み入る二歩三歩」(藤田湘子)
昼顔4(090809)
「昼顔や行く人絶えし野にいきれ」(几董)
昼顔3(080627)
「昼顔や煩(わずら)ふ牛のまくらもと」(蕪村)
昼顔2(070519)
「高円(たかまど)の野辺の容花(かほばな)面影に見えつつ妹は忘れかねつも」(万葉集巻八1630)「石橋の間々に生ひたる容花(かほばな)の花にしありけりありつつ見れば」(万葉集巻十2288)「うちひさつ宮能瀬(みやのせ)川の容花(かほばな)の恋てか寝らむ昨夜(きぞ)も今夜(こよひ)も」(万葉集巻十四3505)「昼顔の花に乾くや通り雨」(子規)
昼顔1(060730)
「昼顔やレールさびたる旧線路」(寺田寅彦)

蛍袋5(130531)
「見る見るも繁る槻の葉咲くつつじ 五月は老(をい)の居(ゐ)るところなき」(窪田空穂 若葉 卓上の灯)「六月の低き緑のうへわたり すずしさ含む風動きくる」(窪田空穂 若葉 卓上の灯)「山中の蛍袋に隠れんか」(小澤實)

石榴の花9(140519)
「頬被(ほほかむ)りして夕暮の野良かへる 我が姿思ふだけで心休まる」(土屋文明 故里をおもふ 青南集)
「ふらふらと出でて来りし一生(ひとよ)にて ふらふらと帰りたくなることあり」(土屋文明 故里をおもふ 青南集)
「顔よりもこゑがまぼろし花石榴」(森澄雄 天白)
石榴の花8(130529)
「帰り来(こ)しつばくら二つ 去年(こぞ)の巣を少しつくろひ住みつかむとす」(土屋文明 燕の子 自流泉)「燕の親かへり来(きた)るをたしかめて 我が二人(ふたり)住む雨戸を閉ざす」(土屋文明 燕の子 自流泉)「思案して思案なかりき花石榴」(森澄雄 空艪)
石榴の花7(120602)
「目的をもたぬ読書のたのしさを 老いてまた知る 若き日のごと」(窪田空穂 木草と共に 昭和36年)「知りたしと思ふ本能 老の身に残りて失せず こころたのしき」(窪田空穂 木草と共に 昭和36年)「花石榴の花の点鐘(てんしょう)恵山寺」(金子兜太)
石榴の花6(110601)
「妻織れどくるはしき眼や花石榴」(飯田蛇笏)
石榴の花5(100522)
「炭がまを焚きつけ居れば 赤き芽の石榴(ざくろ)のうれに没日(いりひ)さし来(く)も」(長塚節 明治38年)「石榴の花一つなりけり庭に下りても見る」(碧梧桐)
石榴の花4(090604)
「佇(た)ち眺む病みてゐし間の花ざくろ」(三橋鷹女)
石榴の花3(080528)
「五月雨にぬれてやあかき花石榴(ざくろ)」(野坡)
石榴の花2(070527)
「墨がまを炊きつけ居れば赤き芽の石榴のうれに没日(いりひ)さし来も」(長塚節 明治38年春の末より夏の初めにかけて炭窯のほとりにありてよめる歌のうち)「あしびきの山石榴咲く八峰越し 鹿まつ君が祝ひ妻かも」(古今六帖、木、ざくろ)
「花石榴(はなざくろ)雨きらきらと地を濡らさず」(大野林火)
石榴の花1(060530)
「花石榴久しう咲いて忘られし」(子規)

南天の花7(130528)
「山毛欅(ぶな)若葉橡(とち)の若葉のとりどりに そよぎ明るめりわが仰ぐうへに」(若山牧水 甲州七面山にて 黒松)「立ち掩う木々の若葉の下かげに そよぎて咲ける山あぢさゐの花」(若山牧水 甲州七面山にて 黒松)「花南天実るかたちをして重し」(長谷川かな女)

空豆3(140527)
「村みちは飼飯野(けひの)に入らし 松のなか砂地(すなぢ)のおくに大寺(おほでら)のあり」(中村憲吉 飼飯の松原 大正14年)「飼飯浜(けひはま)はひろき松原 寺もある村路(むらぢ)に立てど海はきこへず」(中村憲吉 飼飯の松原 大正14年)「空豆や胎児のように莢の中」(青木久代)

空豆2(130527)
「迫門山(せとやま)の小松にさやぐ風出でて 潮のながれのはやくなる音」(中村憲吉 潮瀾俯瞰 大正14年)「淡路の伊賀利山(いがりやま)にもひびけやも 鳴門の潮のおとの大きさ」(中村憲吉 潮瀾俯瞰 大正14年)「腹立ててゐるそら豆を剥(む)いてをり」(鈴木真砂女)

初茄子7(130526)
「桑の葉のもろ葉の露のしたたりの けはい静けきこのあしたかも」(赤彦 桑畑 大正10年)「桑の葉の茂りに向ふわれの目に 光をひきて日は射(さ)しにけり」(赤彦 桑畑 大正10年)「聖霊(せいれい)の茄子の形となりにけり」(川端茅舎)

夏衣(130524)
「もの言はぬ木草と居ればこころ足り 老い痴れし身を忘れし如き」(窪田空穂 庭の木草 木草とともに)「うつくしく咲き散る花よ 大方はその実を結ぶためにはあらず」(窪田空穂 庭の木草 木草とともに)「薫風や恨みなき身の夏ごろも」(蕪村)

青梅5(130523)
「おそらくはこの心境も空しからむ わが食む飯(いひ)も少なくなりて」(斎藤茂吉 つきかげ 昭和23年)「さげすまるとも恐れず 老いたれど貧しき時に長き息(いき)する」(斎藤茂吉 つきかげ 昭和23年)「青梅のしり美しくそろひけり」(室生犀星)

蛾7(140525)
「一枚の亜鉛(とたん)のいたのうす板の きらめき光るわがこころかな」(若山牧水 夏の日の苦悩 秋風の歌)
「大木の群れて大きをおもひいで 植物園に行かむとぞ思ふ」(若山牧水 夏の日の苦悩 秋風の歌)
「火取虫男の夢は瞑(めつぶ)るまで」(能村登四郎)
「甕(かめ)に落つ蛾の銀粉のひろがれり」(福田甲子雄)
蛾6(120615)
「つきつめてなにが悲しといふならず 身のめぐりみなわれにふるるな」(若山牧水 秋の歌 白梅集)「夜の窓ひるのつかれのやはらかう 身にはうかびてこほろぎ啼けり」(若山牧水 秋の歌 白梅集)「火取虫翅音重きは落ちやすし」(加藤楸邨 山脈 太白抄)
蛾5(110906)
「又来たぞ手の盃を火とり虫」(一茶)
蛾3(090513)
「蛾のまなこ赤光なれば海を恋う」(金子兜太)
蛾2(080712)
「山の蛾はランプに舞はず月に舞ふ」(水原秋桜子)
蛾1(070712)
「蛾のまなこ赤光なれば海を恋う」(金子兜太)

夏衣1(130522)
「もの言はぬ木草と居ればこころ足り 老い痴れし身を忘れし如き」(窪田空穂 庭の木草 木草とともに)「うつくしく咲き散る花よ 大方はその実を結ぶためにはあらず」(窪田空穂 庭の木草 木草とともに)「薫風や恨みなき身の夏ごろも」(蕪村)

薫風(140524)
「森ふかき一ところより夕されば よき音を立つる鳥ありて去らぬ」(窪田空穂 森の家日夜 木草と共に)
「森ふかくこもる一つ家聞くものは 稀にもの言ふ老妻(おいづま)が声」(窪田空穂 森の家日夜 木草と共に)
「一定の文字にはあれど 百人が百いろに画き一つすら似ぬ」(窪田空穂 森の家日夜 木草と共に)
「薫風やもよぎ匂ひの鎧(よろひ)ぬぐ」(蕪村)
「高紐(たかひも)にかくる兜(かぶと)や風薫る」(蕪村)

青梅10(130523)
「おそらくはこの心境も空しからむ わが食む飯(いひ)も少なくなりて」(斎藤茂吉 つきかげ 昭和23年)「さげすまるとも恐れず 老いたれど貧しき時に長き息(いき)する」(斎藤茂吉 つきかげ 昭和23年)「青梅のしり美しくそろひけり」(室生犀星)

葉桜4(130430)
「山峡は若葉しづまれ 今年またひとつところに 啼くほととぎす」(中村憲吉 この日ごろ 昭和6年)「たまさかに家ゐる今日は ゆく春の草茶をのみて 静に居らむ」(中村憲吉 この日ごろ 昭和6年)「葉ざくらに類(たぐ)ふ樹(き)も見ゆ山路哉」(蕪村)
葉桜3(120530)
「若葉樹(わかばぎ)の繁り張る枝(え)の やわらかに風ふくみもち揺れの豊けさ」(木下利玄 新緑 一路)「若葉枝(わかばえ)のしみみの奥にかもされゐる この明るみよ濃(こま)やかと云はむ」(木下利玄 新緑 一路)「葉ざくらや草鹿(くさじし)作る兵(つはもの)ら」(蕪村)
葉桜2(110526)
「葉ざくらや南良(なら)に二日の泊り客」(蕪村)
葉桜1(100510)
「葉桜や人に知られぬ昼遊び」(永井荷風)

遅桜3(130423)
「とどまらぬ別れのみかは 花鳥の名残につけて惜しき春かな」(平宗宣朝臣 玉葉集春下)「枝にちる花こそあらめ 鶯の音さへかれゆく春の暮かな」(二条院讃岐 玉葉集春下)「柏木(かしはぎ)のひろ葉見するを遅ざくら」(蕪村)

端午の節句2(150505)
「風さけて入り日涼しき菖蒲(あやめ)の日」(千代女)
端午の節句1(140505)
「忽ちに夜はふけわたる 亀原の青葉の上の十三日の月」(赤彦 亀原の家 大正6年)「公害の夜更けは早し 森をなす欅の上の十三日の月」(赤彦 亀原の家 大正6年)「端午開扉(かいひ)す怒りたまへる秘仏なり」(水原秋櫻子 旅愁)

小手鞠の花5(150506)
「向山(むかやま)の濡るる若葉に 雨空(あまぞら)の明るみ映(うつ)り昼はふかしも」(木下利玄 新緑 一路)「昼の雨はれんとすなり 雲にふくむ真日(まひ)の光に若葉の明るさ」(木下利玄 新緑 一路)「草はみなしめれる土に めいめいのかげをおとせり日の有ぐれに」(木下利玄 土のしめり 紅玉)
「充分に太陽にあたり草の萌え ふとくのびたりここの堤に」(木下利玄 土のしめり 紅玉)
「ロベリヤの紫いろがしっかりと その位置しめて咲けるくもり日」(木下利玄 土のしめり 紅玉)
「小でまりの一花づつを賀の膳に」(高野素十)「小でまりの一花づつを賀の膳に」(高野素十)
小手鞠の花4(140510)
「小でまりに寺の東司(とうす)の隠れたり」(村上美枝)
小手鞠の花3(140510)
「風絶えてくもる真昼をものうげに 虻(あぶ)なく畑(はた)のそら豆の花」(木下利玄 あかり 銀)「水ぐるま近きひびきに 少しゆれ少しゆれゐる小手鞠の花」(木下利玄 あかり 銀)「初夏の真昼の野辺の青草に そのかげおとし立てる樫の木」(木下利玄 夏 銀)
「小でまりや上手に咲いて垣の上」(嵐弓)
小手鞠の花2(130506)
「小でまりの花に風いで来(きた)りけり」(久保田万太郎 春燈)
小手鞠の花1(120508)
「こでまりやあるじ些(いささ)か仕事呆け」(石塚友二)

梅の花

梅の花(140226)

早春2(150218)
「梅の園いまだ咲かねば 枝がちて木(こ)の間(ま)はさむし枯芝のいろ」(中村憲吉 梅林の鶴 昭和3年)
「竹むらより老梅林(らうばいりん)に吹きこゆる 風はさむけれ花の遅(おく)るる」(中村憲吉 梅林の鶴 昭和3年)
「老梅林ほつ枝(え)はさむし 然れども日向(ひなた)に這(は)ひし枝は開きぬ」(中村憲吉 梅林の鶴 昭和3年)
「ともかくも生かされている雑草の中」(山頭火 山行水行)
「枝をさしのべてゐる冬の木」(山頭火 鉢の子)
「物乞ふ家もなくなり山には雲」(山頭火 鉢の子)
早春1(140211)
「梅の花にほふあたりはよきてこそ 急ぐ道をば行くべかりけれ」(良暹法師 金葉集第一)「梅が枝に風や吹くらん 春の夜は折らぬ袖さへにほひぬるかな」(前太宰大貳長房 金葉集第一)「梅が香(か)や乞食(こじき)の家ものぞかるる」(其角 続虚栗)

春の雪12(150408)
「霞たちこのめも春の雪ふれば 花なきさとも花ぞちりける」(きのつらゆき 雪のふりけるをよめる 古今集春)
「君がため春の野に出でてわかなつむ わが衣手に 雪はふりつつ」(仁和のみかど、親王(みこ)におましましける時に、人に若菜たまひける御うた 古今集春)
「其中雪ふる一人として火を焚く」(山頭火 其中一人)
「雪ふる一人一人ゆく」(山頭火 其中一人)
「雪をよろこぶ児らにふる雪うつくしき」(山頭火 出家以前)
「ぶらりとさがって雪ふる蓑虫」(山頭火 雑草風景)
「どぶ板や火(ほ)かげはらはら春の雪」(一茶)
春の雪11(140214)
「わが苑(その)に梅の花散る ひさかたの天(あめ)より雪の流れ来るかも」(主人 万葉集巻五822)「梅の花散らくはいづくしかすがに この城(き)の山に雪は降りつつ」(大監大伴氏百代 万葉集巻五823)「吾が兄子(せこ)に見せむと思ひし梅の花 それともみえず雪のふれれば」(万葉集巻八1427)「含(ふふ)めりと言ひし梅が枝 今朝ふりし沫雪(あわゆき)にあひて咲きぬらむかも」(大伴宿禰村上の梅の歌一首 万葉集巻八1436)「雪沓(ゆきぐつ)をはかんとすれば鼠(ねずみ)ゆく」(蕪村)「懇(ねんごろ)な飛脚(ひきゃく)過ぎゆく深雪(みゆき)哉」(蕪村)
春の雪10(130219)
「かすが野は雪ふりつむと見しかども おひたるものはわかななりけり」(和泉式部 春)「春雨の日をふるままに わが宿のかきねの草はあをみわたりぬ」(和泉式部 春)「春雨やぬけ出たままの夜着(よぎ)の穴」(丈草)
春の雪9(130206)
「太郎を眠らせ、、太郎の屋根に雪ふりつむ 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。」(三好達治 雪)「春の雪霏々(ひひ)として又降って来る」(子規)「この道しかない春の雪ふる」(山頭火)
春の雪8(120229)
「含(ふふ)めりと言ひし梅が枝(え) 今朝ふりし沫(あわ)雪にあひて咲きぬらむかも」(大伴宿禰村上 万葉集巻八1436)「風交(まじ)り雪は降るとも 実(み)にならぬ吾家(わぎへ)の梅を花に散らすな」(大伴坂上郎女 万葉集巻八1445)「雪の旦(あした)母屋(もや)のけぶりのめでたさよ」(蕪村)
春の雪7(110307)
「梅が枝に降りかかりてぞ 白雪の花のたよりに折らるべらなる」(貫之 拾遺集春)「降る雪にいろはまがひぬ 梅の花香にこそ似たる物なかりけれ」(躬恒 拾遺集春)「この道しかない春の雪ふる」(山頭火)
春の雪6(100417)
「ぬばたまの今夜(こよひ)の雪にいざぬれな 明けむ朝(あした)に消なば惜しけむ」(小治田朝臣東麻呂 万葉集巻八1646)「わが背子(せこ)と二人見ませばいくばくか このふる雪のうれしからまし」(藤皇后 万葉集巻八1658)「湯屋まではぬれて行きけり春の雪」(来山)
春の雪5(100310)
「わが苑(その)に梅の花散る ひさかたの天(あめ)より雪の流れ来るかも」(主人 万葉集巻五822)「梅の花散らくはいづくしかすがに この城(き)の山に雪は降りつつ」(大伴氏百代 万葉集巻五823)「春雪三日祭の如く過ぎにけり」(石田波郷)
春の雪4(100213)
「春日野の下萌えわたる草のうへに つれなく見ゆる春のあわ雪」(権中納言国信 新古今集春上)「明日からは若菜摘まむと しめし野に昨日も今日も雪は降りつつ」(山部赤人 新古今集春上)「春来ては花とも見よと 片岡の松のうは葉にあわ雪ぞ降る」(藤原仲実朝臣 新古今集春上)「痩せ梅になほ重荷なり春の雪」(杉風)
春の雪3(090308)
「春雪の繽粉として舞ふを見よ」(虚子)
春の雪2(080207)
「わが背子(せこ)に見せむと思ひし梅の花 それとも見えず雪の降れれば」(山部赤人 万葉集巻八1426)「明日よりは春菜(はるな)摘まむと 標(し)めし野に昨日も今日も雪は降りつつ」(山部赤人 万葉集巻八1427)「み山には松の雪だに消えなくに 宮こはのべの若菜つみけり」(古今集春上)「春日野の若菜つみにや しろたへの袖ふりはへて人のゆくらん」(紀貫之 古今集春上)「みむろ山谷にや春の立ちぬらん 雪のした水たたくなり」(中納言国信 千載集春)「雪ふかき岩のかけ道あとたゆる 吉野の里も春はきにけり」(待賢門院堀河 千載集春)「今一俵炭を買はうか春の雪」(支考)
春の雪1(070316)
「今さらに雪降らめやも かぎろひのもゆる春へとなりにしものを」」(万葉集巻十1835)「あすよりは若菜摘まんと標めし野に きのふもけふも雪は降りつつ 山部赤人」(万葉集巻八1427)「わが妹子(せこ)に見せむと思ひし梅の花 それともみえず雪の降れれば 山部赤人」(万葉集巻八1426)「春の雪降るにもあらず降らぬにも」(千代女)

春暖2(150317)
「大地(おほつち)に陽炎(かげろふ)粘(ねば)し春の日のわがみち行きのほとほと倦める」(木下利玄 春日 一路)
「どんよりと春日かすめり 桃畑の土の渇きに枝かげ淡く」(木下利玄 春日 一路)
「鍬の刃の土間(つちま)の石に或(ある)はふれ 畑のかわきに張る美あつしも」(木下利玄 春日 一路)
「あたたかになるべき朝の日和かな」(子規 明治28年)
「田楽や庵あたたかに笑い声」(子規 明治29年)
「浅草やややあたたかき撫仏」(子規 明治29年)
春暖1(140318)
「せせらぎのこぼこぼこもる落窪を たわみおほへる木いちごの花」(木下利玄 春暖 一路)「嫩芽(わかめ)ふく春山林(はるやまばやし)しづけさをば 立ちどまりきき立ちどまりきく」(木下利玄 春暖 一路)「恩に謝し怨みを忘れあたたかし」(富安風生)

春の風4(150318)
「春風のかすみ吹きとくたえまより みだれてなびく青柳のいと」(殷富門院大輔 百首歌よみ侍りける時、春の歌とてよめる 新古今集春)
「しら雲のたえまになびくあをやぎの 葛城山に春風ぞ吹く」(藤原雅経 千五百番歌合に、春歌 新古今集春)
「春風や赤きもの何やらひるがへる」(子規 明治28年)
「春風や草をくふ牛眠る牛」(子規 明治28年)
「春風に針の折れたる女かな」(子規 明治28年)
「春風が吹くとて遊ぶ女かな」(子規 明治28年)
「仰向に地蔵こけたり春の風」(子規 明治28年)
春の風3(100319)
「春風は花のあたりをよぎて吹け 心づからやうつろふと見ん」(藤原好風 古今集春下)「霞立つ春の山辺は遠けれど 吹きくる風は花の香ぞする」(在原元方 古今集春下)「春風や堤長うして家遠し」(蕪村)「古希といふ春風にをる齢かな」(富安風生)
春の風2(070227)
「青柳の糸の細(くわ)しさ 春風に乱れぬい間(ま)に見せむ子もがも」(万葉集巻八)「春風は花のあたりをよきて吹け 心づからやうつろふとみん 藤原好風」(古今集春下)
「春風や草木に動く日の光」(闌更)
春の風1(070215)
「春風の石を引き切るわかれかな」(嵐雪)

椿12(150315)
「三諸(みもろ)は人の守る山 本辺(もとへ)にはあしび花さき 末辺には椿花咲く うらぐはし山そ 泣く子守る山」(万葉集巻十三3222)
「大空にうかめる如き玉椿」(虚子 六百五十句 昭和25年)
「一点の黄色は目白赤椿」(虚子 六百五十句 昭和25年)
「ゆらぎ見ゆ百の椿が三百に」(虚子 六百五十句 昭和26年)
「落椿土に達するとき赤し」(虚子 六百五十句 昭和26年)
「年老いし椿大樹の花の数」(虚子 七百五十句 昭和29年)
「庭散歩椿向ひまた背き」(虚子 六百五十句 昭和23年)
椿11(140319)
「フランスの人がつくりしビードロの一輪ざしに 椿(つばき)ふさはず」(子規 明治33年)「砥部(とべ)焼の乳の色なす花瓶(はながめ)に 梅と椿と共に活(い)けたり」(子規 明治33年)「落したか落ちたか路の椿かな」(子規 明治23年)「鳥の声一樹に深き椿哉」(子規 明治30年)
椿10(120415)
「説法の今日ありといふ里寺の 椿の花は今盛りなり」(子規 明治32年)「法師等も住まずなりぬる山寺の 椿の花を折りて帰りつ」(子規 明治32年)「ひとつ落ちて二つ落たる椿かな」(子規)
椿9(120226)
「わが門(かど)の片山椿(つばき) まこと汝(なれ)わが手触(ふ)れなな 地に落ちもかも」(物部廣足 万葉集巻二十4418)「あしひきの八峯(やつを)の椿 つらつらに見とも飽かめや 植ゑてける君」(大伴家持 万葉集巻二十4481)「庭前(ていぜん)に白く咲いたる椿かな」(鬼貫)
椿8(110317)
「花の数おしくらしあふ椿かな」(水原秋櫻子)
椿7(100422)
「落椿夜めにもしろきあはれかな」(久保田万太郎)
椿6(100307)
「奥山の八峯(やつほ)の椿つばらかに 今日は暮らさねますらをのとも」(大伴家持 万葉集巻十九4152)「葉にそむく椿や花のよそ心」(芭蕉)
椿5(090326)
「一筵(むしろ)ちるや日かげの赤椿」(去来)
椿3(080327)
「はなびらの肉やはらかに落椿」(飯田蛇笏)
椿2(070317)
「巨勢(こせ)山のつらつら椿つらつらに見つつ思ふな こせの春野を」(坂門人足(さかとのひとたり)万葉集巻一54)「わが門の片山椿まこと汝 わが手触れなな土に落ちもかも」(万葉集巻二十4418)「椿折りてきのふの雨をこぼしけり」(蕪村)椿1(060327)
「赤い椿白い椿と落ちにけり」(河東碧梧桐)

寒椿8(130116)
「雑木山落葉しつくし この頃の冬日に光るは椿と青木」(木下利玄 冬山 紅玉)「底(そこ)温(ぬく)き落葉の中に 常葉樹の芽生そだてるここの杜かも」(木下利玄 冬山 紅玉)「わが庵(いお)の椿に鵯(ひよ)の来る日課」(虚子)
寒椿7(121127)
「ひともとの野なかの椿 枯草のすさまじきなかのひともと椿」(若山牧水 黒松)「枯草のおどろがなかに ひともとの椿かがやく葉は葉の色に」(若山牧水 黒松)「ひともとの椿の花に 寄りてゆくわらべたち見ゆ枯草がくれ」(若山牧水 黒松)「椿艶(つばきえん)これに対して老ひとり」(虚子)
寒椿6(101212)
「巨勢(こせ)山のつらつら椿 つらつらに見つつ思(しの)はな 巨勢の春野を」(万葉集巻一54)「川上のつらつら椿 つらつらに見れども飽かず 巨勢の春野は」(万葉集巻一58)「寒椿竹の枝打つ音すなり」(飯田龍太)
寒椿5(091202)
「あしひきの山椿咲く八つ峰越え 鹿待つ君が斎(いわ)ひ妻かも」(万葉集巻七1262)「奥山の八つ峰の椿 つはらかに今日は暮らさね大夫の伴」(大伴家持 万葉集巻十九4162)「火のけなき家つんとして冬椿」(一茶)
寒椿4(091112)
「あしひきの八峯(やつを)の椿 つらつらに見とも飽かめや植えてける君」(大伴家持 万葉集巻二十4481)「わが門(かど)の片山椿まこと汝(なれ) わが手触れなな土に落ちもかも」(物部廣足 万葉集巻二十4418)「花咲いておのれをてらす寒椿」(飯田龍太)
寒椿3(081202)
「冬椿咲き焦げ落つる春の如」(虚子)
寒椿2(071208)
「巨勢山(こせやま)のつらつら椿(つばき)つらつらに見つつ思はな巨勢の春野を」(万葉集巻一54 坂門人足(さかとのひとたり))「我妹子を早見浜風大和なる我を松椿吹かざるなゆめ」(万葉集巻一73 長皇子)「わが門(かど)の片山椿(かたやまつばき)まこと汝(なれ)わが手触れなな土に落ちもかも」(万葉集巻二十4418 防人の歌)「古井戸のくらきに落つる椿かな」(蕪村)
寒椿1(061225)
「冬つばき世をしのぶとにあらねども」(久保田万太郎)

赤い椿3(080217)
「我が門の片山椿まこと汝れ 我が手触れなな土に落ちもかも」(万葉集巻二十4418)「奥山のやつをの椿 君が代にいくたびかげを変へんとすらん」(藤原基俊 千載集賀歌)「とやかへるたかの尾山の玉椿 霜をば経とも色は変はらじ」(前中納言匡房 新古今集賀歌)「一筵(むしろ)ちるや日かげの赤椿」(去来)

日永6(150316)
「鞭打って牛動かざる日永かな」(漱石 明治32年)
「線香のこぼれて白し日永哉」(漱石 大正3年)
「春の野に心のべむと思ふどち 来(こ)し今日(けふ)の日は晩(くれ)ずもあらぬか」(万葉集巻十1882)
「霞たつ春の永日を恋ひ暮らし 夜のふけ行きて妹にあへるかも」(万葉集巻十1894)

「大鶴の身じろぎもせぬ日永哉」(一茶)
「永き日やくたびれもせぬ波の音」(子規 明治29年)
「永き日や本堂めぐる蟻の道」(子規 明治29年)
「永き日を麩に隠れたる金魚かな」(子規 明治29年)
「風船のふわりふわりと日永かな」(子規 明治29年)
「永き日をただ一すぢにつばくらめ 鎌倉までや行き返るらん」(子規 明治30年)
「永き日をさぶらふ人もなかりけり 忍(しのぶ)が岡の松の下蔭」(子規 明治31年)
「永き日を為す事もなし為す事もなくてぞ 長き日を永き日を」(子規 明治31年)
日永5(140325)
「うら門のひとりでに明く日永哉」(一茶)
「鶏の人の顔見る日永哉」(一茶)
「おほほしく君を相見て 菅(すが)の根の長き春日(はるひ)を恋ひわたるかも」(万葉集巻十1921)

日永4(130323)
「春の野に霞たなびき うらがなし この夕かげにうひすい鳴くも」(大伴家持 万葉集巻十九4290)「うらうらに照れる春日に 雲雀(ひばり)あがり 情(こころ)悲しも独りしおもへば」(大伴家持 万葉集巻十九4292)
「良寛にまりをつかせん日永哉」(漱石)
日永3(120325)
「恋ひつつも今日は暮らしつ 霞たつ明日の春日をいかにくらさむ」(万葉集巻十1914)「相おもはずあるらむ児ゆゑ 玉の緒の長き春日を思ひ暮らさむ」(万葉集巻十1936)
「世に遠き心ひまある日永かな」(漱石)
日永2(110509)
「おほほしく君を相見て 菅(すが)の根の長き春日(はるひ)を恋ひわたるかも」(万葉集巻十1921)「朝戸出の君が姿をよく見ずて 長き春日を恋ひや暮らさむ」(万葉集巻十1925)
「永き日を太鼓打つ手のゆるむ也」(漱石)
日永1(100503)
「霞たつ春の永日を恋ひ暮らし 夜のふけ行きて妹にあへるかも」(万葉集巻十1894)「相おもはぬ妹をやもとな 菅の根の長き春日をおもひ暮らさむ」(万葉集巻十1934)「永き日や欠伸うつして別れ行く」(漱石)

桃の花10(150314)
「うっとりと桃のくれなゐ水底に 映りて吾れは涙ながせり」(古泉千樫 桃の花 大正3年)
「桃の花曇りの底にさにづらひ われのこころのあせりてもとな」(古泉千樫 桃の花 大正3年)
「桃咲くや足なげ出して針仕事」(虚子 六百五十句 昭和21年)
「畦(あぜ)にある桃が目しるし径(みち曲る)」(虚子 六百五十句 昭和21年)
桃の花9(140326)
「との曇る春の曇りに桃のはな 遠くれなゐの沈みたる見ゆ」(古泉千樫 桃の花 大正3年)「桃の花くれなゐ曇りにほやかに 寂(さび)しめる子の肌のかなしき」(古泉千樫 桃の花 大正3年)「わが衣(きぬ)に伏見の桃の雫(しづく)せよ」(芭蕉 伏見西岸寺任口上人に逢て)「さくらより桃にしたしき小家哉」(蕪村)
桃の花8(090325)
「ひるめしはむすびひとつよ桃の花」(星野麥丘人)
桃の花7(090216)
「春の苑くれなひにほふ桃の花 した照る道に出で立つをとめ」(大伴家持 万葉集巻十九4139)「わづらへば餅をも喰はず桃の花」(芭蕉)
桃の花6(080313)
「わが園の李(すもも)の花か庭に散る はだれのいまだ残りたるかも」(大伴家持 万葉集巻十九4140)「山碧し花桃風を染むばかり」(飯田龍太)
桃の花5(080307)
「世ばなれてのどかにすめる山水に このごろ桃の花も浮かべり」(伴蒿蹊(ばんこうけい) 閑田詠草)「手料理や苣(ちさ)のさしみや桃の花」(許六)
桃の花4(070219)
「海女とても陸こそよけれ桃の花」(虚子)
桃の花3(070212)
「春の苑(その)紅(くれなゐ)匂ふ桃の花 下照る道に出で立つ少女(おとめ)」(万葉集巻十九4139)「野に出れば人みなやさし桃の花」(高野素十)

スノードロップ3(110313)
「スノードロップ春告ぐ花として白し」(山崎ひさを)
スノードロップ2(090306)
「スノーフレークマリア坐像をうち囲み」(上村占魚)

春の雲10(150313)
「春の苑(その)くれなゐにほふ桃の花 した照る道に出で立つをとめ」(天平勝宝二年三月一日の暮(ゆふべ)に、春の苑の桃李の花を眺めて作れる歌二首 万葉集巻十九4139)
「わが園の李(すもも)の花か庭にふりしはだれのいまだ残りたるかも」(春の苑の桃李の花を眺めて作れる歌二首 万葉集巻十九4140)
「曇りはてず又夕ばえぬ春の雲」(子規 明治29年)
「錦絵やお城の上に春の雲」(子規 明治31年)
春の雲9(140217)
「かすみ立つ春日の里の梅の花はなに問はむとわが思(も)はなくに」(大伴宿禰駿河麻呂の歌一首 万葉集巻八1438)「時は今は春になりぬと み雪降る遠山のべに霞たなびく」(中臣朝臣武良自の歌一首 万葉集巻八1439)「岡に上り南を見れば霞かな」(子規 明治29年)「かへり見れば西と南にかすめけり」(子規 明治29年)「山寺の昼飯遅き霞かな」(子規 明治29年)
春の雲8(130223)
「春きても川風さむし みかの原たつや霞の衣かせやま」(山霞といふ事を 右近大将長親 新葉集巻第一)「春くれば霞をかけて かつらぎや山の尾上(おのへ)ぞ遠ざかり行く」(日前宮(ひのくまのみや)によみてたてまつりける 冷泉入道前右大臣 新葉集巻第一)「高麗船(こまぶね)のよらで過ぎ行く霞かな」(蕪村)
春の雲7(120222)
「山たかみ都の春をみわたせば ただ一むらのかすみなりけり」(大江正言 後拾遺集春)「春はまづ霞にまがふ山里を たちよりてとふ人もなきかな」(選子内親王 後拾遺集春)「大空に春の雲地に春の草」(虚子)
春の雲6(110208)
「み吉野は春のけしきにかすめども むすぼほれたる雪の下草」(紫式部 後拾遺集春上)「春霞たつやおそきと 山川の岩間をくぐる音聞ゆなり」(和泉式部 後拾遺集春上)「鳥声を呑んで地にあり春の雲」(暁台)
春の雲5(100210)
「冬過ぎて春来(きた)るらし 朝日さす春日の山に霞たなびく」(万葉集巻十1844)「冬過ぎて春し来れば 年月は新たなれども人は旧(ふ)りゆく」(万葉集巻十1884)「春の雲人に行方を聴くごとし」(飯田龍太)
春の雲4(090422)
「宝石の大塊のごと春の雲」(虚子)春の雲3(090219)
「吉野山梢の花を見し日より 心は身にも添はずなりにき」(西行法師 山家集)「あくがるる心はさても山桜 散りなむ後や身にかへるべき」(同)「月のゆく山に心をおくり入れて やみなる後の身をいかにせむ」(同)「ほのぼのと近江の海を漕ぐ舟の 跡なき方にゆく心かな」(同)「土手の木の根元に遠き春の雲」(中村草田男)
春の雲2(090209)
「かすみ立つ春日の里の梅の花 山のあらしに散りこすなゆめ」(大伴宿禰村上の梅の歌 万葉集巻八1437)「かすみ立つ春日の里の梅の花 はなに問はむとわが思(も)はなくに」(大伴宿禰駿河麻呂の歌 万葉集巻八1438)「時は今は春になりぬとみ雪ふる 遠山のべに霞たなびく」(中臣朝臣武良自の歌 万葉集巻八1439)「曇りはてず又夕ばえぬ春の雲」(子規)
春の雲1(070213)
「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく、山ぎはすこしあかりて、むらさきだちたる雲のほそくたなびきたる。」(枕草子第1段)「鶯もまだ出でやらぬ春の雲ことしともいはず山風ぞ吹く」(藤原定家)「咲きやらぬ花をまつちの山の端に人だのめなる春の白雲」(新続古今集)「小諸なる古城のほとり 雲白く遊子(いうし)悲しむ緑なすはこべは萌えず 若草もしくによしなししろがねの衾(ふすま)の岡辺 日に溶けて淡雪流る「春の雲ながめてをればうごきけり」(日野草城)

杉の花8(150312)
「つかれはてて眠り沈めば いつしかに わが身につどふ夢のかずかず」(若山牧水 夜の歌 白梅集)
「泥のごと倦みつかれたる身のねむり おほかた夢の餌食となる」(若山牧水 夜の歌 白梅集)
「杉の花こぼれて獅子を現じけり」(水原秋櫻子 蓬壺)
「杉の花径に風のいでしかな」(石川桂郎)
杉の花7(140307)
「山畑の白梅の樹に花満てり 夕べ夕べの靄(もや)多くなりて」(木下利玄 早春の歌 みかんの木)「山畑に満開過ぎし梅の花 黄ばみ目に立つ夕靄ごもり」(木下利玄 早春の歌 みかんの木)「杉花粉噴き出す猪や山兎」(金子兜太)
杉の花6(130304)
「なにごとぞ今朝の霞といひすてて 庭にいづれば白梅咲けり」(若山牧水 春 白梅集)「白梅のはなが咲きたり咲きたりと 朝な夕なに過すこのごろ」(若山牧水 春 白梅集)「多摩川は底ひ透かしぬ杉の花」(石垣辰生)
杉の花5(120314)
「白梅(はくばい)にまじる紅梅(こうばい) 遠くにて さだかならざる色の楽しさ」(佐藤佐太郎 天眼 昭和52年)「あるときは日のまともにて 白梅の最勝の白しばし輝く」(佐藤佐太郎 天眼 昭和52年)「次の樹へ吹き移りゆく杉花粉」(右城暮石)
杉の花4(110227)
「花粉吐く杉や夕月まだ寒し」(古賀まり子)
杉の花3(100203)
「一すじの春の日さしぬ杉の花」(前田普羅)
杉の花2(090309)
「ただよへるものをふちどり杉の花」(富安風生)
杉の花1(080301)
「つくばひにこぼれ泛めり杉の花」(松本たかし)

春雨19(150307)
「つくづくと春のながめの寂しきは しのぶにつたふ軒の玉水」(大僧正行慶 閑中春雨といふことを 新古今集春)
「水の面にあや織りみだる春雨や 山の緑をなべて染むらむ」(伊勢 寛平御時、きさいの宮の歌合の歌 新古今集春)
「春雨の降りそめしより あをやぎの糸のみどりぞ色まさりける」(凡河内みつね 延喜御時、御屏風に 新古今集春)
「春雨(はるさめ)や身に古頭巾(ふるづきん)着たりけり」(蕪村 落日庵)
「春雨や丁稚(でっち)もつれず只(ただ)一人」(蕪村 落日庵)
春雨18(140302)
「梅がえのしぼめる花に露おちて 匂ひのこれる春雨の頃」(中務卿宗尊親王 三十首の歌の中に 玉葉集春)「梅の花くれなゐ匂ふ夕ぐれに 柳なびきて春雨ぞふる」(前大納言為兼 家に歌合し侍りし時、春雨を 玉葉集春)「春雨や暮(くれ)なんとしてけふもあり」(蕪村)「春雨に下駄買ふ泊瀬(はせ)の法師かな」(蕪村)
春雨17(130331)
「春雨に争ひかねて わが庭の桜の花は咲きそめにけり」(万葉集巻十1869)「春雨はいたくな降りそ 桜花いまだ見なくに散らまく惜しも」(万葉集巻十1870)「春雨や蜂の巣つたふ屋根の漏り」(芭蕉)
春雨16(120317)
「つづくと春のながめの寂しきは しのぶにつたふ軒の玉水」(大僧正行慶 新古今集春)「ときはなる山の岩根にむす苔の 染めぬみどりに春雨ぞ降る」(摂政太政大臣良経 新古今集春)「春雨のかくまで暗くなるものか」(虚子)
春雨15(110419)
「春雨や暮れなんとしてけふも有り」(蕪村)
春雨14(110321)
「春雨や人住みて煙(けぶり)壁を漏る」(蕪村)
春雨13(100324)
「春雨のやまずふるふる わが恋ふる人の目すらを相見せなくに」(万葉集巻十1932)「吾妹子に恋ひつつをれば 春雨のそを知るごとくやまずふりつつ」(万葉集巻十1933)「春雨や身にふる頭巾着たりけり」(蕪村)

春雨11(090425)
「八九間空で雨降る柳かな(芭蕉、続猿蓑集巻之上) 春のからすの畠ほる声(沾圃)初荷とる馬子も好みの羽織着て(馬除ッ) 内はどさつく晩のふるまひ(里圃)「きのふから日和かたまる月の色(沾) ぜんまい枯れて肌寒うなる(蕉)渋柿も今年は風に吹かれたり(里) 孫が跡とる祖父(じじ)の借銭(除ッ)
春雨10(090227)
「春雨の軒たれこむるつれづれに人に知られぬ人の棲み家か」(西行法師 山家集春)「春雨や喰はれ残りの鴨が鳴く」(一茶)

枝垂梅2(150304)
「こぬ人もさそふばかりに匂ひけり 軒端の梅の花の下風」(式部卿惟成親王 簷梅薫風といふことを 新葉集春)
「匂ひくる風をしるべに尋ねばや 梅さく宿の花のあるじを」(前大納言実為 五百番歌合に 新葉集春)
「吹きやめばよそに軒端の梅が香を しばし袂(たもと)にやどす春かぜ」(最恵法親王 春の歌の中に 新葉集春)
「こちの梅も隣のうめも咲きにけり」(蕪村 自筆句帖)
「梅咲いて帯買ふ室(むろ)の遊女かな」(蕪村 自筆句帖)
「無縁寺の日をなつかしみ梅の花」(蕪村 )
「壁画とも天井画とも梅仰ぐ」(鷹羽狩行)
枝垂梅1(140301)
「春されば梅の花咲く日にうとき 我が枕辺の梅も花咲く」(子規 紅梅の下に土筆など植ゑたる盆栽一つ、左千夫の贈り来しをながめて、朝な夕なに作れりし歌の中に 明治35年)「枕べに友なき時は 鉢植の梅に向ひてひとり伏し居り」(子規 明治35年)「散るも咲くも枝垂れ明りや薄紅梅」(渡辺水巴)

雛祭り9(150303)
「かしこしや賎(しづ)が伏家(ふせや)の内裏雛(だいりびな) 御酒(みき)奉る餅たてまつる」(子規 明治31年)
「七人(しちにん)の娘持ちたる賎(しづ)が家(や)の 雛(ひひな)すくなく桃の花も無し」(子規 明治31年)
「小夜ふけて雛の鼓の聞えけり」(子規 明治30年)
「昼過ぎや隣の雛を見に行かん」(子規 明治30年)
「雛あらば娘あらばと思ひけり」(子規 明治30年)
「雛の影桃の影壁に重なりぬ」(子規 明治29年)
「古雛のはづかしげなり市の月」(子規 明治29年)
雛祭り8(140303)
「京の雛(ひひな)江戸の雛と並べおきて いづれこひしき桃の下陰」(子規 雛祭 明治31年)「売れ残る雛(ひひな)やものを思ふらん 十軒店(じっけんだな)の春の夜の雨」(子規 明治31年)「たらちねのうなゐ遊びの古雛の紅(くれなゐ)あせて人老いにけり」(子規 明治33年)「雛二つ桃一枝や床の上」(子規 明治29年)「灯ともせば雛に影あり一つづつ」(子規 明治31年)「雛立てて花屋呼び込む戸口かな」(子規 明治31年)
雛祭り7(130303)
「遠近(をちこち)の桃咲きにけり 田舎家(ゐなかや)は草餅搗(つ)きて雛(ひひな)祭るらし」(子規 明治31年)「東京は春まだ寒き雛(ひな)祭り 梅のさかりに桃の花を売る」(子規 明治31年)「雛二つ桃一枝や床の上」(子規 明治29年)
雛祭り6(120303)
「かしこしや賎(しづ)が伏家(ふせや)の内裏雛(だいりびな) 神酒(みき)奉(たてまつ)る餅(もち)たてまつる」(子規 明治31年)「七人(しちにん)の娘持ちたる賎(しづ)が家(や)の 雛(ひひな)すくなく桃の花も無し」(子規 明治31年)「たらちねの抓(つま)まずありや雛の鼻」(蕪村)
雛祭り5(110303)
「遠近(をちこち)の桃咲きにけり 田舎家(ゐなかや)は草餅つきて雛(ひひな)祭るらし」(子規 明治31年)「東京は春まだ寒き雛祭(ひなまつり) 梅のさかりに桃の花を売る」(子規 明治31年)
「箱を出る顔わすれめや雛二対(につい)」(蕪村)
雛祭り4(100303)
「たらちねのうなゐ遊びの古雛(ふるびな)の 紅(くれなゐ)あせて人老いにけり」(子規 明治33年)
「草の戸も住み替はる代ぞ雛の家」(芭蕉)

山茱萸10(150302)
「梅の木の古枝(ふるえ)にとまる村雀(むらすずめ) 羽(は)がきも掻(か)かずふくだみて居り」(長塚節 春季雑詠 明治38年)
「蕷(いも)の蔓(つる)枯れてかかれる杉垣に 枝さし掩(おほ)ひ梅の花白し」(長塚節 春季雑詠 明治38年)
「山茱萸の花にたとへてわが盛り」(森澄雄 所生)
「山茱萸は漢名にして花はよき」(森澄雄 深泉)
山茱萸9(140310)
「寒あけの雨後おもきくもり空(ぞら) 大地の凍(い)てはあまねくとけつ」(木下利玄 春 雨後)「この頃にて長くなりたる夕日あたり あかくしめらひ見のしづけさや」(木下利玄 春 雨後)「山茱萸(さんしゅゆ)と知りてはなるる月の中」(加藤楸邨 火の記憶 昭和18年)「山茱萸(さんしゅゆ)やまばたくたびに花ふえて」(森澄雄 四遠)
山茱萸8(130311)
「山茱萸やそらいちめんに嵐かな」(古館曹人)
山茱萸7(120311)
「山茱萸(サンシュユ)の鬱金(ウコン) しとどに雪とけて にぎにぎはしく里に来にけり」(釈迢空 水の上 静けき空)「ふさはしき山茱萸の花涅槃にて」(森澄雄 花間)
山茱萸6(110306)
「朝さらずつぐみなくなる 我が藪(やぶ)の薯・iたら)の木みれば萌えにけるかも」(長塚節 明治36年)「たらの木のもゆらくしるく 我が藪の辛夷の花は散りすぎにけり」(長塚節 明治36年)「山茱萸の黄や町古く人親し」(大野林火)
山茱萸5(100227)
「山茱萸(さんしゅゆ)の花のこまかさ相ふれず」(長谷川素逝)
山茱萸4(090222)
「うちなびく春来たるらし山の際(ま)の 遠き木末(こぬれ)の咲きゆく見れば」(尾張連 万葉集巻八1422)(註)「山茱萸やまばたくたびに花ふえて」(森澄雄)山茱萸3(080319)
「さんしゆゆの盛りの枝の錯落す」(富安風生)
山茱萸2(080309)
「山茱萸(さんしゅゆ)にけぶるや雨も黄となんぬ」(水原秋櫻子)
山茱萸1(070321)
「山茱萸(さんしゅゆ)をいまの齢(よわい)のよしとする」(山口誓子)

三月1(150301)
「梅がえのしぼめる花に露おちて 匂ひのこれる春雨の頃」(中務卿宗尊親王 三十首の歌の中に 玉葉集春)
「梅の花くれなゐにほふ夕暮に 柳なびきて春雨ぞふる」(前大納言為兼 家に歌合し侍りし時、春雨を 玉葉集春)
「隔てつる霞はやがて曇るらん 伊駒の山の春雨の空」(参議雅経 春日の社に百首の歌よみて奉りける時、春の歌 玉葉集春)「春雨はくる人もなく跡たえぬ 柳のかどの軒の玉みづ」(皇太后宮大夫俊成 春日の社に奉りける百首の歌の中に、春雨をよめる 玉葉集春)「三月や水をわけゆく風の筋」(久保田万太郎 春燈)
「いきいきと三月生る雲の奥」(飯田龍太 百戸の谿)

二月尽2(150228)
「花瓶の梅さかりなり 室の内の夕あたたかさ 春かたむけぬ」(木下利玄 春来る みかんの木)
「夕日かげ物になじめり まさしくも甦りたる春のしるしに」(木下利玄 春来る みかんの木)
「二月尽何か大きな忘れもの」(下村ひろし)
「二月尽手を垂れてゆくをとこ見ゆ」(柴田白葉女)
二月尽1(140228)
「よべ一夜(ひとよ)天(あま)つ春雨ゆたかに降り 今朝ふかく濡れし土のいろかも」(木下利玄 春来る みかんの木)「室の内に瓶の梅の花のにほひみち 午後あたたかに天気くもれる」(木下利玄 春来る みかんの木)「束の間のかげろふ立てば二月尽」(森澄雄 雪櫟)「雪間ありわが誕生の二月尽」(森澄雄 白小)

余寒6(150226)
「世に遠く住むをわびしと思はねど 鬚の白むを寂しとぞする」(吉井勇 京の早春 天彦)
「春いまだあさく冷たき街灯(まちともし) 夕戸出すれば項(うなじ)さむしも」(吉井勇 京の早春 天彦)
「比叡鶯いまだ来鳴かず 庭隅の笹の葉摺れ春と思ふに」(吉井勇 京の早春 天彦)
「かけ金の真赤に錆びて寒さかな」(一茶)
「あばら骨なでじとすれど夜寒かな」(一茶)
「掌(てのひら)に藍(あゐ)染(しみ)込んで夜寒かな」(一茶)
「青空のきれい過ぎたる夜寒かな」(一茶)
余寒5(140207)
「夜天(やてん)よりしんしんと降るものあり 音の冴ゆるは霜にかあるらし」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)「おのが身の起伏(おきふし)に思ひ入る 夜半はすさまじと聴く霜のひびきを」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)「星一つ見えて寐られぬ霜夜哉」(漱石)「本堂は十八間の寒さ哉」(漱石)
余寒4(130212)
「ことさらに世と隔つるにあらねども 人来ぬ春も楽しとやせむ」(吉井勇 洛北新春 風雪)「春来れどものを書かざること幾日(いくひ) 硯の水も凍てにけらしも」(吉井勇 洛北新春 風雪)「池田より炭くれし春の寒さかな」(蕪村)
余寒3(120211)
「春来むと人は云へれど風さむく わが家の屋根は朝ごとに霜」(吉井勇 天彦 残冬抄)「もの書かむこころ起りて墨磨(す)りぬ わび居さびしき酔のまぎれに」(吉井勇 天彦 残冬抄)「関守の火鉢小さき余寒かな」(蕪村)
余寒2(110212)
「空はなほ霞もやらず風冴へて 雪げにくもる春の夜の月」(余寒のこころを 摂政太政大臣良経 新古今集春)「梅が枝にものうきまでに散る雪を 花ともいはじ春の名だてに」(源重之 新古今集春)「ひなどりの羽ととのはぬ余寒かな」(室生犀星)
余寒1(100207)
「襟巻の浅黄にのこる寒さかな」(蕪村)

獺の祭3(150219)
「相共(あひとも)に鬚(ひげ)しろくなり 生きて居(ゐ)るはらから三人(みたり)山の上にあり」(土屋文明 川戸雑詠五 山の間の霧)
「ともに遊ぶ日もなく老いぬ 愚かさは幼きままに今日(けふ)もふるまふ」(土屋文明 川戸雑詠五 山の間の霧)
「草の名も木の名も知らず過ぎにきと 嘆息(たんそく)してさびしがるにもあらず」(土屋文明 川戸雑詠五 山の間の霧)
「獺の祭(うそのまつり)を画く意匠かな」(子規 明治35年春)
獺の祭2(140219)
「南吹きし一日(ひとひ)の夕べ 白梅(しらうめ)のそのはつ花のすがすがとして」(土屋文明 川戸雑詠三 山の間の霧)「温かに足の痛まぬ夕ぐれは 少しぼけ気味(ぎみ)にて散歩(さんぽ)する」(土屋文明 川戸雑詠三 山の間の霧)「獺の祭(うそのまつり)見て来よ瀬田の奥」(芭蕉)「獺の祭(うそのまつり)も過ぎぬ朧月」(子規 明治31年春)
獺の祭1(120219)
「霜いくらか少き朝(あした) 目に見えて増さる泉よ春待ち得たり」(土屋文明 山の間の霧 川戸雑詠)「尾長(をなが)一群(ひとむれ)去りたる後(のち)に起きいでて 昨日(きのふ)より温かしと思ふ楽しも」(土屋文明 山の間の霧 川戸雑詠)「茶器どもを獺の祭(おそのまつり)の並べ方」(子規)

春の雪12(150219)
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春の雪11(140214)
「わが苑(その)に梅の花散る ひさかたの天(あめ)より雪の流れ来るかも」(主人 万葉集巻五822)「梅の花散らくはいづくしかすがに この城(き)の山に雪は降りつつ」(大監大伴氏百代 万葉集巻五823)「吾が兄子(せこ)に見せむと思ひし梅の花 それともみえず雪のふれれば」(万葉集巻八1427)「含(ふふ)めりと言ひし梅が枝 今朝ふりし沫雪(あわゆき)にあひて咲きぬらむかも」(大伴宿禰村上の梅の歌一首 万葉集巻八1436)「雪沓(ゆきぐつ)をはかんとすれば鼠(ねずみ)ゆく」(蕪村)「懇(ねんごろ)な飛脚(ひきゃく)過ぎゆく深雪(みゆき)哉」(蕪村)
春の雪10(140219)
「かすが野は雪ふりつむと見しかども おひたるものはわかななりけり」(和泉式部 春)「春雨の日をふるままに わが宿のかきねの草はあをみわたりぬ」(和泉式部 春)「春雨やぬけ出たままの夜着(よぎ)の穴」(丈草)
春の雪9(130206)
「太郎を眠らせ、、太郎の屋根に雪ふりつむ 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。」(三好達治 雪)「春の雪霏々(ひひ)として又降って来る」(子規)「この道しかない春の雪ふる」(山頭火)
春の雪8(120219)
「含(ふふ)めりと言ひし梅が枝(え) 今朝ふりし沫(あわ)雪にあひて咲きぬらむかも」(大伴宿禰村上 万葉集巻八1436)「風交(まじ)り雪は降るとも 実(み)にならぬ吾家(わぎへ)の梅を花に散らすな」(大伴坂上郎女 万葉集巻八1445)「雪の旦(あした)母屋(もや)のけぶりのめでたさよ」(蕪村)
春の雪7(110307)
「梅が枝に降りかかりてぞ 白雪の花のたよりに折らるべらなる」(貫之 拾遺集春)「降る雪にいろはまがひぬ 梅の花香にこそ似たる物なかりけれ」(躬恒 拾遺集春)「この道しかない春の雪ふる」(山頭火)
春の雪6(100417)
「ぬばたまの今夜(こよひ)の雪にいざぬれな 明けむ朝(あした)に消なば惜しけむ」(小治田朝臣東麻呂 万葉集巻八1646)「わが背子(せこ)と二人見ませばいくばくか このふる雪のうれしからまし」(藤皇后 万葉集巻八1658)「湯屋まではぬれて行きけり春の雪」(来山)
春の雪5(100310)
「わが苑(その)に梅の花散る ひさかたの天(あめ)より雪の流れ来るかも」(主人 万葉集巻五822)「梅の花散らくはいづくしかすがに この城(き)の山に雪は降りつつ」(大伴氏百代 万葉集巻五823)「春雪三日祭の如く過ぎにけり」(石田波郷)
春の雪4(100213)
「春日野の下萌えわたる草のうへに つれなく見ゆる春のあわ雪」(権中納言国信 新古今集春上)「明日からは若菜摘まむと しめし野に昨日も今日も雪は降りつつ」(山部赤人 新古今集春上)「春来ては花とも見よと 片岡の松のうは葉にあわ雪ぞ降る」(藤原仲実朝臣 新古今集春上)「痩せ梅になほ重荷なり春の雪」(杉風)
春の雪3(090304)
「春雪の繽粉として舞ふを見よ」(虚子)
春の雪2(080207)
「わが背子(せこ)に見せむと思ひし梅の花 それとも見えず雪の降れれば」(山部赤人 万葉集巻八1426)「明日よりは春菜(はるな)摘まむと 標(し)めし野に昨日も今日も雪は降りつつ」(山部赤人 万葉集巻八1427)「み山には松の雪だに消えなくに 宮こはのべの若菜つみけり」(古今集春上)「春日野の若菜つみにや しろたへの袖ふりはへて人のゆくらん」(紀貫之 古今集春上)「みむろ山谷にや春の立ちぬらん 雪のした水たたくなり」(中納言国信 千載集春)「雪ふかき岩のかけ道あとたゆる 吉野の里も春はきにけり」(待賢門院堀河 千載集春)「今一俵炭を買はうか春の雪」(支考)
春の雪1(070307)
「今さらに雪降らめやも かぎろひのもゆる春へとなりにしものを」」(万葉集巻十1835)「あすよりは若菜摘まんと標めし野に きのふもけふも雪は降りつつ 山部赤人」(万葉集巻八1427)「わが妹子(せこ)に見せむと思ひし梅の花 それともみえず雪の降れれば 山部赤人」(万葉集巻八1426)「春の雪降るにもあらず降らぬにも」(千代女)

枝垂梅(140301)
「春されば梅の花咲く日にうとき 我が枕辺の梅も花咲く」(子規 紅梅の下に土筆など植ゑたる盆栽一つ、左千夫の贈り来しをながめて、朝な夕なに作れりし歌の中に 明治35年)
「枕べに友なき時は 鉢植の梅に向ひてひとり伏し居り」(子規 明治35年)
「散るも咲くも枝垂れ明りや薄紅梅」(渡辺水巴)
「一村は杏と柳ばかりかな」(子規 金州城外 明治28年)

朧月9(150307)
「雲なくておぼろなりとも見ゆるかな 霞(かすみ)かかれる春の夜の月」(西行法師 霞に月のくもれるを見て 山家集春)
「そらになる心は春の霞にて よにあらじとも思ひつるかな」(西行法師 世にあら時と思ひける頃、東山にて、人々霞によせて思をのべけるに 山家集春)
「世を厭ふ名をだにもさはとどめ置きて 数ならぬ身の思出にせむ」(西行法師 おなじ心をよみける 山家集春)
「よき人を宿す小家やおぼろ月」(蕪村 自筆句帖)
「壬生寺の猿うらみ啼けおぼろ月」(蕪村 壬生山科屋のもとにて 夜半叟 1778 63歳)
朧月8(120408)
「雲にまがふ花の下にてながむれば 朧に月は見ゆるなりけり」(西行法師 山家集春)「雪と見てかげに桜の乱るれば 花のかさ着る春の夜の月」(西行法師 山家集春)「草臥(くたびれ)て物買ふ宿や朧月」(蕪村 明和6年)
朧月7(110420)
「雲なくておぼろなりとも見ゆるかな 霞(かすみ)かかれる春の夜の月」(西行法師 山家集春)「薬盗(ぬす)む女やは有るおぼろ月」(蕪村)
朧月6(100430)
「あだに散る梢の花をながむれば 庭には消えぬ雪ぞつもれる」(西行法師 山家集春)「風あらみ梢の花の流れきて 庭に波立つしら川の里」(西行法師 山家集春)「月光西にわたれば花影東に歩むかな」(蕪村)
朧月5(100331)
「雲なくておぼろなりとも見ゆるかな 霞かかれる春の夜の月」(西行法師 山家集春)「月みれば風に桜の枝なべて 花かとつぐるここちこそすれ」(西行法師 山家集春)「女倶(ぐ)して内裏(だいり)拝まんおぼろ月」(蕪村)朧月4(090408)
「おぼろ夜や女盗まん計りごと」(子規)
朧月3(090213)
「照りもせず曇りもはてぬ春の夜の 朧月夜にしくものぞなき」(文集嘉陵春夜詩「不明不暗朧朧月」といへることをよめる 大江千里 新古今集春)「雨近き温泉(でゆ)のけぶりや朧月」(召波)
朧月2(070501)
「恨みある門も過ぎけりおぼろ月」(蕪村)
朧月1(070305)
「春のうららの隅田川 のぼりくだりの船人が 櫂のしずくも 花と散る 眺めを何にたとうべき見ずやあけぼの 露あびて われにもの言う 桜木を 見ずや夕暮れ 手を伸べて われさし招く 青柳を錦織りなす長堤に 暮るれば上る朧月 げに一刻の千金の 眺めを何にたとうべき」(花 武島羽衣作詞 滝廉太郎作曲(1900))「さしぬきを足でぬぐ夜や朧月」(蕪村)

啓蟄4(150306)
「南(みなみ)吹きし一日(ひとひ)の夕べ 白梅のそのはつ花のすがすがとして」(土屋文明 川戸雑詠三)
「温かに足の痛まぬ夕ぐれは 少しぼけ気味(ぎみ)にて散歩する」(土屋文明 川戸雑詠三)
「せばまりし谷は浅間(あさま)の方(かた)に開け 吾(あ)が坐るには一つ石あり」(土屋文明 川戸雑詠三)
「啓蟄に大庭石を据ゑむとす」(水原秋櫻子 玄魚)
「啓蟄や軍鶏(しゃも)の出てゐる水田べり」(水原秋櫻子 釣心四季)
啓蟄3(140306)
「生垣に沿ひて一路のまがれるに われもまがりて行くこころかも」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)「春山の雑木の花の黄いろきを見あげて われは行くかも」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)「啓蟄や指反りかへる憤怒仏」(加藤楸邨 啓蟄紀行 火の記憶)「啓蟄や簷(のき)に嘴摺る大鴉」(加藤楸邨 啓蟄紀行 火の記憶)「啓蟄や抱けば目ひらくぬひぐるみ」(加藤楸邨 望岳 昭和63年)
啓蟄2(130305)
「雨後(あめあと)の黒土にあるひびわれは 生ひ出くる種子(たね)の擡(もた)げゐるならむ」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)「草山の低き雑木が新芽ふく 枝のさきさきいのちかへり来(き)」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)「啓蟄や日はふりそそぐ矢の如く」(虚子 昭和13年)
啓蟄1(120305)
「尾長(をなが)一群(ひとむれ)去りたる後(のち)に起きいでて 昨日(きのふ)より温かしと思ふ楽しも」(土屋文明 川戸雑詠二)「こひねがひ向(むか)へば今朝は 緑ある土に靄(もや)のごとく降る雨」(土屋文明 川戸雑詠二)「蜥蜴(とかげ)以下啓蟄(けいちつ)のくさぐさなり」(虚子 五百句 昭和6年)

春雨18(140302)
「梅がえのしぼめる花に露おちて 匂ひのこれる春雨の頃」(中務卿宗尊親王 三十首の歌の中に 玉葉集春)「梅の花くれなゐ匂ふ夕ぐれに 柳なびきて春雨ぞふる」(前大納言為兼 家に歌合し侍りし時、春雨を 玉葉集春)「春雨や暮(くれ)なんとしてけふもあり」(蕪村)「春雨に下駄買ふ泊瀬(はせ)の法師かな」(蕪村)
春雨
「春雨のけふばかりとて降にけり」(鬼貫)
「春雨や暮(くれ)なんとしてけふもあり」(蕪村)「春雨に下駄買ふ泊瀬(はせ)の法師かな」(蕪村)

下萌え2(1503010)
「うちわたす佐保の河原の青柳も いまは春べと萌えにけるかも」(坂上郎女 玉葉集春)
「山本の霞のそこのうすみどり あけて柳の色になりぬる」(従二位兼行 玉葉集春)
「下萌えや土の裂目の物の色」(太祇)
下萌え1(120304)
「春日野の下萌えわたる草のうへに つれなく見ゆる春のあわ雪」(権中納言国信 新古今集春上) 「この里は山沢ゑぐを摘みそめて 野べの雪まもまたぬなりけり」(後村上天皇御製 新葉集春)「雪消えばゑぐの若菜も摘むべきに 春さへ晴れぬみ山辺の里」(曾禰好忠 金葉集春)「下萌えもいまだ那須野の寒さかな」(惟然)

わかめ9(150311)
「春のうみに淡路島かげ大きなり 山には垂りてにごる綿雲(わたぐも)」(中村憲吉 青松白砂 大正14年)
「松ばらを越ゆれば阿波の大浦囘(おほうらわ) ややはじまりし鳴るしほの音」(中村憲吉 青松白砂 大正14年)
「春の日の鳴門にむかふ旅ごころ 凡(おほ)におぼゆれ浜のうへの風」(中村憲吉 春汀旅情 大正14年)
「磯波の高くしぶけば 声あげて淡路の島を呼ばむとぞおもふ」(中村憲吉 春汀旅情 大正14年)
「ばらばらに漕いで若布刈の舟散らず」(橋本多佳子)
わかめ7(140305)
「うしほ今 和布(め)を東(ひんがし)に流しをり」(虚子 昭和13年)
わかめ7(260305)
「顕(うつ)しくも磯の潮香(しほか)」に胸ゆらげ 鳴門へむかふ春の旅路に」(中村憲吉 春汀旅情 大正14年)
「春まひる濱には居ると思(も)ひ来しに 鳴門がらすは何処にも啼かず」(中村憲吉 春汀旅情 大正14年)
「うしほ今和布(め)を東(ひんがし)に流しをり」(虚子 昭和13年)
わかめ6
「磯かげに乾せる若布(わかめ)のにほいにも 旅の情(こころ)は思ひ染(し)むもの」(中村憲吉 奔潮余録 大正14年)「砂浜が岩磯(いはいそ)となれば波あらし 潮が揉(も)むなる磯海苔(いそのり)の香や」(中村憲吉 奔潮余録 大正14年)
「岩の和布(め)に今とどきたる竿(さお)ゆれて」(虚子 昭和24年)
若布6(250309)
「磯に出て鳴門(なると)を見ればうごきくる 青海(あをうな)ばらや白波のとぶ」(中村憲吉 大毛浜途上 大正14年)「波たちて鳴門をいづる春しほの ひろがりとほき海となりぬる」(中村憲吉 大毛浜途上 大正14年)「霖雨(ながあめ)に生(いき)かへりたる若和布(わかめ)かな」(蕪村)
若布5(240228)
「比多潟(ひたがた)の磯(いそ)の若布の立ち乱(みだ)え 吾(あ)をか待つなも昨夜(きそ)も今夜(こよひ)も」(万葉集巻十四3563)「角島(つのじま)の迫門(せと)の稚海藻(わかめ)は人のむた 荒(あら)かりしかどわがむたは和海藻(にきめ)」(万葉集巻十六3871)
「魚は今鳥に似て若布を過ぎゆきし」(阿波野青畝)
若布4(240222)
「荒磯(ありそ)やに生ふる玉藻のうちなびき 独(ひと)りや寝らむ吾(あ)を待ちかねて」(万葉集巻十四3562)「ひた潟(がた)の磯の若布の立ち乱え 吾(あ)をか待つなも昨夜(きそ)も今夜(こよひ)も」(万葉集巻十四3563)
「潮の中和布(め)を刈る鎌の行くが見ゆ」(虚子)
若布3(230226)
「かりに世にあらはれ出づるわかめかな」(惟中)
若布2(220222)
「比多潟(ひたがた)の磯のわかめの立ち乱(みだ)え 我(わ)をか待つなも 昨夜(きそ)も今夜(こよひ)も」(万葉集 巻十四3563)「角島(つのしま)の迫戸(せと)の稚海藻(わかめ)は 人のむた荒(あら)かりしかどわがむたは和海藻(にきめ)」(万葉集巻十六3871)
「草の戸や二見の若和布貰ひけり」(蕪村)
若布1(230321)
「角島(つのしま)の迫戸(せと)の稚海布(わかめ)は人のむた荒かりしかどわれとは和海藻(にきみ)」(万葉集巻十六3871)
「春深く和布(わかめ)の塩を払いけり」(召波)

啓蟄3(260306)
「生垣に沿ひて一路のまがれるに われもまがりて行くこころかも」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)
「春山の雑木の花の黄いろきを見あげて われは行くかも」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)
「啓蟄や指反りかへる憤怒仏」(加藤楸邨 火の記憶)
「啓蟄や簷(のき)に嘴摺る大鴉」(加藤楸邨 火の記憶)
「啓蟄や抱けば目ひらくぬひぐるみ」(加藤楸邨 望岳 昭和63年)
「啓蟄や幼児のごとく足ならし」(阿部みどり女)
啓蟄2(250305)
「雨後(あめあと)の黒土にあるひびわれは 生ひ出くる種子(たね)の擡(もた)げゐるならむ」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)「草山の低き雑木が新芽ふく 枝のさきさきいのちかへり来(き)」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)
「啓蟄や日はふりそそぐ矢の如く」(虚子 昭和13年)
啓蟄1(240306)
「尾長(をなが)一群(ひとむれ)去りたる後(のち)に起きいでて 昨日(きのふ)より温かしと思ふ楽しも」(土屋文明 川戸雑詠二)「こひねがひ向(むか)へば今朝は 緑ある土に靄(もや)のごとく降る雨」(土屋文明 川戸雑詠二)
「蜥蜴(とかげ)以下啓蟄(けいちつ)のくさぐさなり」(虚子 五百句 昭和6年)

山茱萸9(140313)
「寒あけの雨後おもきくもり空(ぞら) 大地の凍(い)てはあまねくとけつ」(木下利玄 春 雨後)「この頃にて長くなりたる夕日あたり あかくしめらひ見のしづけさや」(木下利玄 春 雨後)
「山茱萸(さんしゅゆ)と知りてはなるる月の中」(加藤楸邨 火の記憶 昭和18年)「山茱萸(さんしゅゆ)やまばたくたびに花ふえて」(森澄雄 四遠)
山茱萸(さんしゅゆ)9
「山茱萸(さんしゅゆ)と知りてはなるる月の中」(加藤楸邨)
「山茱萸(さんしゅゆ)やまばたくたびに花ふえて」(森澄雄)
「ふさはしき山茱萸(さんしゅゆ)の花涅槃にて」(森澄雄)
「山茱萸(さんしゅゆ)は漢名にして花はよき」(森澄雄)
山茱萸(さんしゅゆ)8(130311)
「山茱萸やそらいちめんに嵐かな」(古館曹人)
山茱萸(さんしゅゆ)7(120311)
「山茱萸(サンシュユ)の鬱金(ウコン) しとどに雪とけて にぎにぎはしく里に来にけり」(釈迢空 水の上 静けき空)
「ふさはしき山茱萸の花涅槃にて」(森澄雄 花間)
山茱萸(さんしゅゆ)6(110306)
「朝さらずつぐみなくなる 我が藪(やぶ)の薯・iたら)の木みれば萌えにけるかも」(長塚節 明治36年)「たらの木のもゆらくしるく 我が藪の辛夷の花は散りすぎにけり」(長塚節 明治36年)
「山茱萸の黄や町古く人親し」(大野林火)
山茱萸(さんしゅゆ)5(100227)
「山茱萸(さんしゅゆ)の花のこまかさ相ふれず」(長谷川素逝)
山茱萸(さんしゅゆ)4(090222)
「山茱萸やまばたくたびに花ふえて」(森澄雄)
山茱萸(さんしゅゆ)3(080319)
「さんしゆゆの盛りの枝の錯落す」(富安風生)(註)錯落=入り交じる。(字通)
山茱萸(さんしゅゆ)2(070309)
「山茱萸(さんしゅゆ)にけぶるや雨も黄となんぬ」(水原秋櫻子)
山茱萸(さんしゅゆ)1(060321)
「山茱萸(さんしゅゆ)をいまの齢(よわい)のよしとする」(山口誓子)

春分2(150321)
「この岩の苔の乾きのぬくときに 寝てをれば見ゆ淵に遊ぶ魚」(若山牧水 湯ヶ島雑詠 山桜の歌)
「たぎち落つる真白き水のくるめきの  そこひ青めり春の日なたに」(若山牧水 湯ヶ島雑詠 山桜の歌)
「ひともとの椿の花に寄りてゆく わらべたち見ゆ枯草がくれ」(若山牧水 椿と浪 黒松)
「啼く声のみにくかれども 尾長鳥をりをり啼きて遊ぶ美し」(若山牧水 尾長鳥と鹿 黒松)
「曇りしが降らで彼岸の夕日影」(其角)
「善根に灸居(すえ)てやる彼岸かな」(太祇)
「爺婆(じじばば)の蠢(うごめ)き出(いづ)る彼岸かな」(内藤鳴雪)
「春分や手を吸いに来る鯉の口」(宇佐美魚目)
「山一つかはり雪道彼岸前」(宇佐美魚目)
春分1(140321)
「枯草のおどろがなかにひともとの椿 かがやく葉は葉の色に」(若山牧水 椿と浪 黒松)「ひともとの椿の花に寄りてゆく わらべたち見ゆ枯草がくれ」(若山牧水 椿と浪 黒松)「春分のおどけ雀と目覚めけり」(星野麥丘人)「春分の湯にすぐ沈む白タオル」(飯田龍太 山の木 昭和46年)

彼岸5(150320)
「春の日は、ただのどかにてあらましを―。人の家を出でて 目に泌む青空。」(釈迢空 忽忘 遠やまびこ)
「憎まれてありと思へり。はかなさを おしころしつつ、 問ふにいらへつ」(釈迢空 忽忘 遠やまびこ)
「をみな子の春の衣(コロモ)の 照りにおふ道を帰りて、世を憎むなり」(釈迢空 忽忘 遠やまびこ)
「牡丹餅の昼夜を分つ彼岸哉」(子規 明治29年)
「旅人のついでに参る彼岸哉」(子規 明治30年)
「賽銭の橡にこぼるる彼岸哉」(子規 明治30年)
「山寺の扉に雲あそぶ彼岸かな」(飯田蛇笏)
「家々に雨ふりしぶく彼岸道」(飯田龍太)
「子を負ふて彼岸の燕仰ぎゐる」(飯田龍太)
彼岸4(140320)
「友だちと おほく語らず還り来て、きのふも居たり。今日も然(シカ)居り」(釈迢空 忽忘 遠やまびこ)「何の書(ショ)も 心そそらず ひたすらに睡(ネム)きひと日を すわりとほせり」(釈迢空 忽忘 遠やまびこ)「ほろほろと椿こぼれる彼岸かな」(子規 明治27年)「雲はあれど彼岸の入日赤かりし」(子規 明治28年)
彼岸
「ほろほろと椿こぼれる彼岸かな」(子規 明治27年)
「雲はあれど彼岸の入日赤かりし」(子規 明治28年)
「友だちと おほく語らず還り来て、きのふも居たり。今日も然(シカ)居り」(釈迢空 忽忘 遠やまびこ)
「何の書(ショ)も 心そそらず ひたすらに睡(ネム)きひと日を すわりとほせり」(釈迢空 忽忘 遠やまびこ)
「さわやかに春来てなごむ 日々の晴れ。清き帽子は、風にとらさず」(釈迢空 春帽 倭をぐな)
「人なみにすぐれて 大き帽子著(キ)て あるくと 人は知らざらむかも」(釈迢空 春帽 倭をぐな)
「きよげなる帽子かづきて、出あるきし昔の春の こほしかりけり」(釈迢空 春帽 倭をぐな)
彼岸3(130320)
「「死者の書(フミ)」とどめし人のこころざしー。遠いにしへも、悲しかりけり」(釈迢空 死者の書 遠やもびこ)「神像に彫(ヱ)れる えぢぷと文字よりも、永久(トハ)なるものを 我は頼むなり」(釈迢空 死者の書 遠やもびこ)「神像と 木乃伊(ミイラ)と 幾つ並ぶ見て、わが弁別(ワカチ)なき心に おどろく」(釈迢空 死者の書 遠やもびこ)
「うき人よ彼岸参りの薄化粧」(子規)
彼岸2(120320)
「真しら梅さきむらがるに いよいよしろし 光をはなつ卓上の壷」(窪田空穂 清明の節 昭和42年)「世にめでたきもの無きにあらねど 紅梅の花に見しごときめでたきあらず」(窪田空穂 清明の節 昭和42年)
「数珠ひろふ人や彼岸の天王寺」(子規)
彼岸1(110323)
「毎年よ彼岸の入に寒いのは」(子規)

豆の花(080410)
「鉈(なた)豆のものものしくも擡(もた)げたる ふた葉ひらきて雨はふりつぐ」(泥のぬかり足駄の歯にわびしけれど心ゆくばかりのながめせんとてまたいでありく 長塚節 大正3年)
「豌豆の咲く上ぬくく小雨かな」(飯田蛇笏)

かたばみ11(150430)
「かたばみを見てゐる耳のうつくしさ」(横山白虹)
かたばみ10(140428)
「薄雲(うすぐも)に春日(はるび)はかくれ 杉が枝(え)に色こまやかなる藤のむらさき」(木下利玄 奈良晩春 一路)「老杉にかかれる藤浪 百花(ももはな)匂ひにほへり風なき春日」(木下利玄 奈良晩春 一路)「かたばみのさやはじけ飛ぶ砌(みぎり)かな」(村上鬼城)
かたばみ9(130425)
「たかだかに芽吹き光れる欅(けやき)の木 われはたしかに癒(い)えたるらしき」(古泉千樫 吾家のまはり 大正13年)「朝の日の地上を照らすすこやかさ 木木の若芽に手を触(さは)り見む」(古泉千樫 吾家のまはり 大正13年)「かたばみ草閉ぢ大門の鍵かける」(福田晴子)
かたばみ8(120425)
「逢ふことの酢漿(かたばみ)草も摘まなくに など我が袖のここら露けき」(古今六帖)「かたばみのそばに生ひたる鏡草 露さへ月に影磨きつつ」(為家 夫木和歌集)「蔵の陰かたばみの花めづらしや」(荷兮)
かたばみ7(110407)
「かたばみは何処にでも咲きすぐ似合ひ」(星野立子)かたばみ6(100516)
「かたばみの花の混み合ふ仏通寺」(垪和久仁子)
かたばみ5(090328)
「かたばみの花より淋し住みわかれ」(三橋鷹女)
かたばみ4(080403)
「かたばみの花の宿にもなりにけり」(乙二)
かたばみ3(070522)
「かたばみのそばに生ひたる鏡草 露さへ月に影磨きつつ 為家」(夫木和歌抄)「逢ふことの酢漿(かたばみ)草も摘まなくに など我が袖のここら露けき」(古今六帖)「かたばみの同じ色なる蝶々かな」(村上鬼城)
かたばみ2(070402)
「逢うことの酢漿草も摘まなくに など我が袖のここら露けき」(古今六帖)「かたばみのそばに生ひたる鏡草 露さへ月に影磨きつつ」
「沓脱の根のかたばみを心せよ」(富安風生)
かたばみ1(060410)
「かたばみの花ほどの嘘つきにけり」(西美知子)

えびね9(150429)
「さやさやにその音(ね)ながれつ 窓ごしに見上ぐれば青葉滝とそよげり」(若山牧水 窓 さびしき樹木)
「やはらけき欅(けやき)のわか葉さざなみなし 流れて窓にそよぎたるかも」(若山牧水 窓 さびしき樹木)
「さやさやにさやぐ青葉の枝見つつ 沖の白波おもひゐにける」(若山牧水 大樹 さびしき樹木)
「欅青葉さやげる見れば 額(ぬか)あげてわれも大きく眸(まみ)張るべかり」(若山牧水 大樹 さびしき樹木)
「青年去る古山小屋にえびね咲かせ」(遠藤煌)
「カナリアの影飛んでいるえびね蘭」(新間絢子)
えびね8(140429)
「欅(けやき)青葉さやげる見れば 額(ぬか)あげて われも大きく眸(まみ)張るべかり」(若山牧水 大樹 さびしき樹木)「あたりみな鏡のごとき明るさに 青葉はいま揺れそめにけり」(若山牧水 家の近くに伐り残されし楢の木あり さびしき樹木)「わが庭にいついずこよりの化偸草(えびねらん)」(富安風生)
えびね7(130424)
「春山の芽ぶきととのふ 谷の村。 昼鳴く鳥の声の ものうき」(釈迢空 水の上)「宵早く とざす庭かも。 石宮(イシミヤ)の夕花ざくら 甚(ヒタ)に散りつつ」(釈迢空 水の上)「隠者には隠の楽しみ花えびね」(林翔)「撫子(なでしこ)や少し日のさす庭の隅(すみ)」(荷風)
えびね6(120501)
「花化偸草(えびね)日陰の子供すくと立つ」(上林裕)
えびね5(110504)
「傍に山行き帽子えびね蘭」(後藤比奈夫)
えびね4(100501)
「ひたひたと来てすれちがふえびね堀」(飴山實)
えびね3(090423)
「街にこぼす山の言葉やえびね売り」(辺見京子)
えびね2(080424)
「わが庭にいついずこよりの化偸草(えびねらん)」(富安風生)
えびね1(070511)
「隠者には隠のたのしみ花えびね」(林翔)

アイリス9(150417)
「時ならぬ午後のくらさよ 二階より黒雲の此方(こなた)の木の芽を見るも」(木下利玄 黒雲 紅玉)
「黒雲はおつかぶせり 片空の日光(ひかり)に射られ雹落ち来る」(木下利玄 黒雲 紅玉)
「風折々汀(みぎわ)のあやめ吹き撓(たわ)め」(虚子 五百五十句 昭和15年)
アイリス8(140426)♯3073
「山里や軒の菖蒲に雲ゆきき」(虚子 五百五十句 昭和15年)
「アイリスや妻の悲しみ国を問わず」(楠本憲吉)
アイリス7(130418)
「かがまりてわが息づかひしたしもよ 菖蒲(あやめ)の花のかさなりて見ゆ」(木下利玄 菖蒲 紅玉)「花菖蒲(はなしょうぶ)かたき莟は粉(こな)しろし はつはつ濃むらさきはも」(木下利玄 菖蒲 紅玉)「風折々汀(みぎわ)のあやめ吹き撓(たわ)め」(虚子 昭和15年5月)
アイリス6(120503)
「壁ひとつ雨をへだてつ花あやめ」(鬼貫)
アイリス5(110421)
「あやめ草足に結ばん草鞋(わらぢ)の緒(を)」(芭蕉 奥の細道)
アイリス4(1004120)
「アイリスを見ゆる一眼にて愛す」(日野草城)
アイリス3(090414)
「アイリスの朝市に出す蕾かな」(川口しげ子)
アイリス2(080420)
「アイリスの束ねてありし楽屋口」(鈴木多江子)

菫11(150404)
「玉づさの君の使は 紫の菫の花を持ちて来(こ)しかも」(子規 京の人より香菫(にほひすみれ)の花の一束を贈り来しけるを 明治35年)
「君が手につみし菫(すみれ)の百菫(ももすみれ) 花紫の一たばねはや」(子規 明治35年)
「やみてあれば庭さへ見ぬを 花菫(はなすみれ)我が手にとりて見らくうれしも」(子規 明治35年)
「菫咲く川をとび越す美人哉」(一茶 七番日記)
「今少したしなくもがな菫草」(一茶 享和2年)(註)たしなく=乏しく。少なく。
「すみれ咲き手触れし楢の影もあり」(水原秋櫻子 玄魚 昭和31年)
「すみれ咲き白磁の茶器を卓に置く」(水原秋櫻子 磐梯 昭和18年)
「名もない草のいちはやく咲いてむらさき」(山頭火 一草庵)
菫10(140425)
「いそのかみ去年(こぞ)の古野(ふるの)の菫草(すみれくさ) いまは春べと咲きにけけるかな」(良寛)
「いそのかみ古野に生ふる菫草 摘みて贈らむその人やたれ」(良寛)
「鼻紙を敷いて座れば菫かな」(一茶)
「わがやどの菫の花は香はあれど 君が菫の花に及ばぬ」(子規 京の人より香菫(にほひすみれ)の花の一束を贈り来(こ)しけるを 明治35年)
「小包を開きて見れば花菫 その香(か)にほひてしをれてもあらず」(子規 明治35年)
菫9(130404)
「花さかばふたりかざしにさして見む このすみれぐさ色はうつらじ」(山川登美子 白百合)「去年の春蝶を埋めし桃の根に 菫もえいでて花さきにけり」(山川登美子 「明星」第3号 明治33年)「菫ほどな小さき人に生れたし」(漱石 明治30年)
菫6(100424)
「やみてあれば庭さへ見ぬを 花菫(はなすみれ)我が手にとりて見らくうれしも」(子規 明治35年)「君が手につみし菫の百菫(ももすみれ)花紫の一たばねはや」(子規 明治35年)
「何とはなしに何やらゆかし菫艸」(芭蕉) 「編笠しきて蛙(かはづ)聴き居る」(叩端)「田螺(たにし)わる賎(しづ)の童(わらべ)のあたたかに」(桐葉) 「公家に宿かす竹のなかみち」(芭蕉)菫5(100407)
「菫草(すみれぐさ)さきたる野べに宿りせむ わが衣手(ころもで)に染(し)まば染(し)むとも」(良寛)「わが宿にひともと植ゑし菫草 いまは春べと咲き初めぬらむ」(良寛)「当帰(たうき)よりあはれは塚のすみれ草」(芭蕉)(註)当帰=セリ科の多年草。
菫5(090331)
「咲かぬ間も物にまぎれぬ菫かな」(園女)
菫2(070401)
「春の野にすみれ摘みにし来し我ぞ 野をなつかしみ一夜寝にける 山部赤人」(万葉集巻八1424)「山吹きの咲きたる野辺のつほすみれ この春の雨に盛りなりけり 高田女王」(万葉集巻八1444)「一夜草夢さましつつ いにしへの花を思へば今も摘むらん」(蔵玉集)
「骨拾う人にしたしき菫かな」(蕪村)

筍10(150421)
「草山の低き雑木が新芽ふく 枝のさきさきいのちかへり来(き)」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)
「夕山の新芽にまじるさくらの花 明るみながくのこりてゐるも」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)
「笋(たけのこ)の藪(やぶ)の案内(あない)やおとしざし」(蕪村 自筆句帖)(註)おとしざし=鐺(こじり)を下げて刀を差すこと。
「笋(たかうな)を五本くれたる翁(おきな)かな」(蕪村 新花摘)
「笋(たけのこ)や垣のあなたは不動堂」(蕪村 新花摘)
筍9(140418)
「せせらぎの朽木越ゆるにふくらまり 水(み)の面(も)のしわみふるへてゐるも」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)「雨後(あめあと)の黒土(くろつち)にあるひびわれは 生ひ出くる種子(たね)の台(もた)げゐるならん」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)「筍(たけのこ)や露もこぼさぬ育ちぶり」(井月)「筍も黄金(こがね)の鍬(くは)の光りかな」(井月)
「笋(たけのこ)の藪(やぶ)の案内(あない)やおとしざし」(蕪村)(註)おとしざし=鐺(こじり)を下げて刀を差すこと。
「笋(たかうな)を五本くれたる翁(おきな)かな」(蕪村)
筍8(130422)
「鶯や竹の子藪に老いを鳴く」(芭蕉 笋 道中より聞ゆ 炭俵)
筍7(120427)
「昼冷えて新芽に靄のつゆたまる雑木林に道は入りつも」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)「ふる雨の枝葉つたひて しづくする音この森にこもれり、通る」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)「竹の子や児(ちご)の歯ぐきの美しき」(嵐雪)
筍6(110425)
「たけのこや稚(おさな)き時の絵のすさび」(芭蕉)
筍5(100420)
「竹の子の力を誰にたとふべき」(凡兆)
筍4(090427)
「うきふしや竹の子となる人の果て」(芭蕉)
筍2(080503)
「筍や甥の法師が寺とはん」(蕪村)「竹の子を食べて充実してゐたり」(角川春樹)
筍1(070430)
「筍を三日くらひて飽かざりき」(石田波郷)

行く春7(150428)
「枝にちる花こそあらめ 宇都井巣の音さへかれゆく春の暮かな」(二条院讃岐 千五百番歌合に 玉葉集春下)
「年をへて春の惜しさはまされども 老いは月日の早くもあるかな」(皇太后宮大夫俊成 春日の社へ奉りける百首の歌の中に、三月尽の心に)
「きのふ暮れけふ又くれてゆく春や」(蕪村)
「折もてるわらび凋(しを)れて暮遅し」(蕪村 自筆句帖)
行く春6(140430)
「けふのみの春を歩いてしまひけり」(蕪村)
「行く春や白き花見ゆ垣のひま」(蕪村)
「行く春やむらさきさむる筑波山」(蕪村)
「今日のみと思へばながき春の日も程なく暮るる心地こそすれ」(西行法師 山家集春)
「惜しめども今宵もあけば行く春を あすばかりとや明日は思はん」(従三位頼政 玉葉集春)
「年をへて春の惜しさはまされども 老いは月日の早くもあるかな」(皇太后宮太夫俊成 玉葉集春)
行く春5(130421)
「ぬれて折る藤のしたかげ露散りて 春やいくかの夕暮の雨」(前大納言基良 暮春雨といふ事を 玉葉集春歌下)「春とてや山郭公なかざらん 青葉の木木のむらさめの宿」(院御製 弥生の末つかた梢あをみ渡りて雨降りけるを御覧じて 玉葉集春歌下)「ゆく春やむらさきさむる筑波(つくば)山」(蕪村)
行く春4(120429)
「風吹けばかたもさだめず散る花を いづかたへゆく春とかはみむ」(貫之 拾遺集春)「花もみな散りぬる宿は ゆく春のふる里とこそなりぬべらなり」(貫之 拾遺集春)「行く春を近江の人と惜しみける」(芭蕉)
行く春3(110426)
「行く春や逡巡として遅桜」(蕪村)
行く春2(100426)
「行く春やおもたき琵琶の抱ごころ」(蕪村)
行く春1(090502)
「行く春や鳥啼き魚の目は泪」(芭蕉)
「行く春をとどめかねぬる夕暮れは あけぼのよりもあはれなりけり」(西行法師 山家集春)
熊蜂8(150424)
「山原に臥(ふ)しつつ咲ける藤浪の あはあはしくも ことはすぎなむ」(土屋文明 藤なみの花 信濃への道に 青南集)
「人を悪(にく)み人をしりぞけし 来し方(かた)も おぼろにあればまぬがるるらむ」(土屋文明 藤なみの花 信濃への道に 青南集)
「蜜蜂は光と消えつ影と生れ」(林翔)
「うなり落つ蜂や大地を怒り這ふ」(虚子 五百句 昭和2年)
「熊蜂のうなり飛び去る棒のごと」(虚子 五百五十句 昭和12年)
熊蜂7(140423)
「春山はけぶり立ちたる 若萌(わかもえ)の下ゆく道に上着を脱ぎつ」(土屋文明 尾張沓掛村四月二十一日 青南集)
「時すぎし墓原のわらび末つみて 村人一人通りゆきたり」(土屋文明 尾張沓掛村 青南集)
「年々に若葉にあそぶ日のありて その年々の藤なみの花」(土屋文明 藤なみの花 信濃への道 青南集)
「熊蜂のうなり飛び去る棒のごと」(虚子 五百五十句 昭和12年)
「うなり落つ蜂や大地を怒り這ふ」(虚子 五百句 昭和2年)
熊蜂6(130417)
「年々に若葉にあそぶ日のありて その年々の藤なみの花」(土屋文明 藤なみの花 信濃への道 青南集)「スカンボの穂のなびきつつ暮れてゆく 今日は草の葉に心とどめて」(土屋文明 藤なみの花 信濃への道 青南集)「出舟(いでふね)や蜂(はち)うち払うみなれ棹(ざを)」(蕪村)
熊蜂5(120428)
「長城に唸りぶつかる熊ん蜂」(川崎展宏)
熊蜂4(090419)
「寒山か拾得か蜂に螫(さ)されしは」(漱石)
熊蜂3(070422)
「蜂が来る火花のやうな脚を垂れ」(鷹羽狩行)
熊蜂2(060602)
「蜂の尻ふはふはと針をさめけり」(川端茅舎)
熊蜂1(060424)
「熊蜂のうなり飛び去る棒のごと」(虚子)

著莪の花11(150407)
「貧困の時よりつづく二十年 老いて胡蝶花(しゃが)さく槙尾(まきのを)に来つ」(佐藤佐太郎 形影 昭和44年)
「樟(くす)の木の春の落葉はひとしきり 壺坂寺に風にながるる」(佐藤佐太郎 形影 昭和44年)
「筍に括(くく)り添へたしゃがの花」(几董)
「一面の著莪(しゃが)にさざめく洩日かな」(松本たかし)
「男来て天暗くなる著莪の花」(赤尾兜子)
「かたまって雨が降るなり著莪の花」(清崎敏郎)
著莪の花10(140517)
「著莪咲くや谿に階なす吉野建(よしのだて)」(水原秋櫻子 玄魚)
著莪の花9(130328)
「樟の木の落葉を踏みてくだり行く 谷にもしげく胡蝶花の咲く」(長塚節 明治38年)「胡蝶花の根に籠る蜥蜴よ 夜も昼もあらじけむもの夜ぞしき鳴く」(長塚節 明治38年)
「著莪の淵魚のいくつをかぞふべし」(水原秋櫻子 玄魚)
著莪の花8(120414)
「しらじらと著莪(しゃが)の花咲く坂道を 木の間雲飛び鳴くほととぎす」(左千夫 明治41年 湯山行)「湯の山の岩間に咲ける著莪(しゃが)の花 しやが名ふみとはとはに忘れず」(左千夫 明治41年 長塚節へ)「秀次のあはれや著莪に骨埋もれ」(飴山實)
著莪の花7(110412)
「清澄の山路を来れば羊歯交じり 胡蝶花(しゃが)の花咲く杉の茂生(しげふ)に」(長塚節 明治38年)「清澄の胡蝶花(しゃが)の花咲く草むらに 夕さりごとに鳴く声や何(なに)」(長塚節 明治38年)「打出でて矢の根拾はんしゃがの花」(支考)
著莪の花6(100405)
「清澄の山路をくれば羊歯(しだ)交じり 胡蝶花(しゃが)の花さく杉の茂生(しげふ)に」(長塚節 明治38年)「清澄(きよすみ)の胡蝶花(しゃが)の花さく草むらに 夕さりごとに鳴く声や何(なに)」(長塚節 明治38年)「掌にかこむ燐寸 濡れし著莪(しゃが)を照らす」(加藤楸邨)
著莪の花4(090325)
「著莪咲いて住職ひそと朝帰り」(大牧広)
著莪の花3(080404)
「筍に括りつけたりしゃがの花」(几董)「姫著莪(ひめしゃが)の花に墨する朝かな」(杉田久女)
胡蝶花2(070330)
「水垢離(みずごり)の水流れくる著莪(しゃが)の花」(飯田龍太)著莪の花1(060408)
「紫の斑(ふ)の仏めく著莪の花」(虚子)

鶯17(140404)
「うちなびき春さりくれば ひさぎ生ふるかた山陰に鶯ぞなく」(鎌倉右大臣 春の歌の中に 玉葉集春)「山里はうぐひす鳴きぬ 今よりは都の空も春めきぬらん」(権中納言親宗 玉葉集春)「鶯の今朝なく時ぞ 山がつのかきほも春にあふ心地する」(後鳥羽院下野 玉葉集春)「鶯の啼くやあちらこちら向き」(蕪村 夜半叟)「うぐいすのかぞへのこした枝寒し」(蕪村 夜半叟)
鶯16(130330)
「春のほどは我が住む庵の友なりて 古巣な出でそ谷の鶯」(西行法師 山家集春)「うき身にて聞くも惜しきは 鶯の霞にむせぶ曙のこゑ」(西行法師 山家集春)「鶯や餅に糞(ふん)する縁(えん)の先」(芭蕉) 「日もまっすぐに昼のあたたか」(支考)「薮入りは只やぶ入りと見せかけて」(支考) 「慰みながら箒もつなり」(芭蕉)
鶯15(120508)
「うぐひすのこゑぞ霞をもれてくる 人目ともしき春の山里」(西行法師 山家集春)「雨しのぐ身延の郷のかき柴に 巣立はじむる鶯のこゑ」(西行法師 山家集春)「鶯の柳のうしろ藪のまへ」(芭蕉)

鶯10(090523)
「鶯や茶の木畠の朝月夜」(丈草)

囀り5(150419)
「うぐひすのこゑぞ霞をもれてくる 人目ともしき春の山里」(西行法師 閑中鶯といふことを 山家集春)
「鶯の声にさとりをうべきかは 聞くうれしさもはかなかけり」(西行法師 題しらず 山家集春)
「春のほどは我が住む庵の友になりて 古巣な出でそ谷の鶯」(西行法師 住みける谷に、鶯の声せずなりにければ 山家集春)
「うぐひすの歌の字余る引音(ひきね)哉」(蕪村 夜半叟)
「鶯や柏峠(かしはたうげ)をはなれかね」(蕪村 自筆句帖)(註)柏峠=伊豆修善寺と伊東の間にある峠。
囀り4(130412)♯2692
「うき身にて聞くも惜しきはうぐひすの 霞にむせぶ曙のこゑ」(西行法師 鶯によせておもひをのべけるに 山家集春)「山ふかみ霞こめたる柴の庵に こととふものは谷のうぐひす」(西行法師 題しらず 山家集春)「うぐひすの二声耳のほとりかな」(蕪村)
囀り3(110220)
「春の野にあさる雉(きぎす)の妻ごひに おのがありかを人に知れつつ」(大伴家持 拾遺集春)「美しく生れ拙(つたな)く囀るよ」(富安風生)
囀り2(090610)
「囀りや天地金泥に塗りつぶし」(野村喜舟)
囀り1(090323)
「空深き囀りは人忘じをり」(飯田龍太)

散る桜10(150421)
「梢ふく風の心はいかがせん したがふ花のうらめしきかな」(西行法師 山家集春)
「木のもとの花に今宵は埋もれて あかぬ梢を思ひあかさむ」(西行法師 山家集春)
「春ふかみ枝もうごかでちる花は 風のとがにはあらぬなるべし」(西行法師 山家集春)
「うらうらほろほろ花がちる」(山頭火 一草庵)
「あすはかへらうさくらちるちってくる」(山頭火 旅から旅へ)
散る桜9(140425)
「風もよし花をもちらせいかがせむ 思ひはつればあらまうき世ぞ」(西行法師 山家集春)
「鶯の声に桜ぞちりまがふ 花の言葉を聞くここちして」(西行法師 山家集春)
「花もちり涙ももろき春なれや又やはとおもふ夕暮の空」(西行法師 山家集春)
「花を踏みし草履も見えて朝寝かな」(蕪村)
「風に地理風吹きたえて落花かな」(蕪村)
「ちるはさくら落つるは花のゆうべかな」(蕪村)
散る花7(130415)
「あだにちる梢の花をながむれば 庭には消えぬ雪ぞつもれる」(西行法師 白河の花、庭面白かりけるを見て 山家集春上)「風あらみこずゑの花のながれきて 庭に波立つしら川の里」(西行法師 庭の花波に似たといふことを詠みけるに 山家集春上)「木のもとに汁も膾(なます)も桜かな」(芭蕉) 「明日くる人はくやしがる春」(風麦)「蝶蜂を愛するほどのなさけにて」(良品) 「水のにほひをわずらひにける」(土芳)
散る桜7(120426)
「雲にまがふ花の下にてながむれば 朧に月は見ゆるなりけり」(西行法師 山家集春)「ちらでまてと都の花を思はまし 春かへるべきわが身なりせば」(西行法師 山家集春)「思ひ出す木曾や四月の桜狩」(芭蕉)
散る花2(100428)
「濡るともとかげを頼みて思ひけむ 人の跡ふむ今日にもあるかな」(西行法師 山家集春)「ちるを見て帰る心や桜花 むかしにかはるしるしなるらむ」(西行法師 山家集春)
花吹雪6(120427)
「嶺にちる花は谷なる木にぞ咲く いたくいとはじ春の山風」(西行法師 山家集春)「山おろしに乱れて花ぞ散りにける 岩はなれたる滝とみたれば」(西行法師 山家集春)「千本が一時に落下する夜あり」(子規)
花吹雪5(100419)
「山ざくら枝きる風の名残なく 花をさながらわが物にする」(西行法師 山家集春)「青葉さへ見れば心のとまるかな 散りにし花の名残と思へば」(西行法師 山家集春)「散る花や鳥も驚く琴の塵」(芭蕉)
「扇にて酒汲む影や散る桜」(芭蕉)
花吹雪4(090426)
「あだに散るさこそ梢の花ならめ すこしは残せ春の山風」(西行法師 山家集)「風に散る花の行方は知らねども 惜しむ心は身にとまりけり」(西行法師 山家集)
「阿古久曾(あこくそ)のさしぬきふるふ落花かな」(蕪村)
落花(070501)
「中空にとまらんとする落花かな」(中村汀女)「烏帽子(えぼし)脱いで升(ます)よとはかる落花かな」(蕪村)

散る桜2(080426)
「木のもとに汁も膾も桜かな」(芭蕉 連句集四三)「明日くる人はくやしがる春」(風麦)「蝶蜂を愛するほどのなさけにて」(良品)「水のにほいをわずらひにける」(土芳)散る桜(070427)
「風に散る花の行方は知らねども 惜しむ心は身にとまりけり 西行」(山家集)「世の中を思へばなべて散る花の わが身をさてもいづちかかもせむ 西行」(山家集)「鶯の声に桜ぞ散りまがふ 花のこと葉を聞くここちして 西行」(山家集)「青葉さへ見れば心のとまるかな 散りにし花の名残と思へば 西行」(山家集)「梢うつ雨にしをれて散る花の 惜しき心を何にたとへむ 西行」(山家集)「山桜枝きる風の名残なく 花をさながらわが物にする 西行」(山家集)「年々や桜をこやす花の塵」(芭蕉)

ミミズ5(150426)
「もろもろの木芽(このめ)ふきいづる山の上に われは来りて寝(いね)むと思(も)ひて」(斎藤茂吉 木芽 寒雲 昭和12年)
「夜(よ)をこめて曇(くもり)のしづも山かひに 木芽はいまだととのはなくに」(斎藤茂吉 木芽 寒雲 昭和12年)
「みちのくの蚯蚓(みみず)短し山坂勝ち」(中村草田男)
ミミズ4(100506)
「みみずももいろ土の愉しき朝ぐもり」(柴田白葉女)ミミズ3(080430)
「朝すでに砂にのたうつ蚯蚓(みみず)またぐ」(西東三鬼)
ミミズ2(070503)
「出るやいなや蚯蚓(みみず)は蟻に引かれけり」(一茶)
ミミズ1(060419)
「弥撒(ミサ)の庭蚯蚓(ミミズ)が砂にまみれ這ふ」(石田波郷)

春耕3(150423)
「木のもとに散りしく花を吹きたてて ふたたび匂ふ春の山風」(兵部卿師成親王 落花の心を 新葉集春)
「花ははや散り過ぎにける 梢にもつらき名残の山風ぞ吹く」(権中納言實興 五百番歌合に 新葉集春)
「畑打つや耳うとき身の只一人」(蕪村)
春耕2(140421)
「畑打つや耳うとき身の只一人」(蕪村)
「畠打つや鍬の柄も朽ちるばかりにぞ」(蕪村)
「畑(はた)打つや峯の御坊の鶏(とり)の声)」(蕪村)
「よの中をなになげかまし 山ざくら花見るほどの心なりせば」(紫式部 後拾遺集春)
「花みてぞ身のうきこともわすらるる 春は限のなからましかば」(藤原公経朝臣 嘆かしき事侍りける頃、花をみてよめる 後拾遺集春)
春耕(130411)
「鍬の刃の土間(つちま)の石に或(ある)はふれ 畑のかわきに春日あつしも」(木下利玄 春日 紅玉)「どんよりと春日かすめり 桃畑の土のかわきに枝かげ淡く」(木下利玄 春日 紅玉)「耕すや鳥さへ啼かぬ山陰に」(蕪村)

穀雨3(150420)
「春ふかくなりぬと思ふを 桜花散る木のもとはまだ雪ぞふる」(貫之 きたの宮の裳著(もぎ)の屏風に 拾遺集春)
「桜ちる木(こ)のした風はさむからで 空にしられぬ雪ぞ降りける」(亭子院の歌合に 拾遺集春)
「あれこれと母に買ひ置く穀雨かな」(川上弘子)
「まっすぐに草立ち上がる穀雨かな」(岬雪夫)
穀雨2(140420)
「かくの如(ゴト) たくはへ薄く過ぎゆける我を 憎まむ族(ウカラ) 思ほゆ」(釈迢空 埃風 倭をぐな)
「貪(ムサボ)りて 世のあやぶさを思はざる大根(ダイコ)うりを 呼びて叱りぬ」(釈迢空 埃風 倭をぐな)
「あれこれと母に買ひ置く穀雨かな」(川上弘子)
「掘り起こす土くろぐろと穀雨かな」(伊藤節子)
「絶え間なく 人に読み説き、忘れ居つー。万葉集(マンネフシフ)の清き しらべを」(釈迢空 はるけき空 倭をぐな)
「三度版になるを喜び三度向かふ 三度にしてなほ飽き足らぬもの」(土屋文明)
「貧と窮と分ち読むべく悟り得しも 乏しき我が一生(ひとよ)なりしため」(土屋文明)
穀雨(130420)
「青草の生(オ)ひひろごれる 林間を思ひ来て ひとり脚をくみたり」(釈迢空 埃風 倭をぐな)「曇る日の 空際(ソラギハ)ゆ降る物音やー。 木の葉に似つつ しかもかそけき」(釈迢空 埃風 倭をぐな)「まさをなる林の中は 海の如。 さまよふ蝶は せむすべもなし」(釈迢空 埃風 倭をぐな)「掘り返す塊光る穀雨かな」(西山泊雲)

お花見4(150331)
「老いづとに何をかせまし 此春の花待ちつけぬ わが身なりせば」(西行法師 老見花といふことを 山家集春)
「おのづから花なき春の年もあらば 何につけてか日をくらさまし」(西行法師 春は花を友といふことを、せが院の斎院にて人々よみけるに 山家集春)
「おのづから来る人あらば もろともにながめまほしき山桜かな」(西行法師 せが院の花盛なりける頃、としただがいひ送りける 山家集春)
「ながめてふ数に入るべき身なりせば 君が宿にて春は経なまし」(西行法師 返し 山家集春)
「うぐひすのたまたま鳴くや花の山」(蕪村 自筆句帖)
「傾城はのちの世かけて花見かな」(蕪村 自筆句帖)
「かくれ住みて花に真田(さなだ)が謡(うたひ)かな」(蕪村 夜半叟)
「花に来て膾(なます)をつくるおうなかな」(蕪村 夜半叟)
「みよし野に花盗人(はなぬすびと)はなかりけり」(蕪村 自筆句帖)
「眠たさの春は御室(おむろ)の花よりぞ」(蕪村 自筆句帖)
「花に遠く桜に近しよしの川」(蕪村 句集)
お花見3(110418)
「ねがはくは花の下にて春死なん その如月のもち月のころ」(西行法師 山家集春)「仏には桜の花をたてまつれ わが後の世を人とぶらはば」(西行法師 山家集春)「何とかや世にありがたき名をしたる 花も桜にまさりしもせず」(西行法師 山家集春)「たぐひなき花をし枝にさかすれば 桜にならぶ木ぞなかりける」(西行法師 山家集春)「春慶の膳すゑわたす花見かな」(許六)お花見2(090403)
「草枕まことの花見しても来よ」(芭蕉)
お花見1(060402)
「又平に逢ふや御室の花さかり」(蕪村)

満天星の花9(150403)
「うらうらと照れる光にけぶりあひて 咲きしづもれる山ざくらの花」(若山牧水 山ざくら 山桜の歌)
「花も葉も光しめらひ われの上に笑みかたむける山ざくらの花」(若山牧水 山ざくら 山桜の歌)
「満天星や谷崎の墓寂一字」(肥田埜勝美)
「満天星(どうだん)に隠りし母をいつ見むや」(石田波郷)
満天星の花8(140411)
「枹杞(くこ)の芽の一夜(ひとよ)の伸びをのびてゐる 青芽(あをめ)つやつや春の朝冷ゆ」(木下利玄 春山一路 一路)
「木苺の下向(したむ)く花に顔よせて 嗅げばほのけき香(か)に匂ひゐる」(木下利玄 春山一路 一路)
「いっせいに咲き満天星の千の花」(鷹羽狩行)満天星の花7(130319)
「春さればとほき海より吹き来(く)とふ 潮風(しほかぜ)ぐもり山はかすみたり」(中村憲吉 大正7年)「浅(あさ)みどり眼に山川はおぼろなれど 其処(そこ)にすがしき水(みづ)おときこゆ」(中村憲吉 大正7年)「受難曲満天星の雨しろがねに」(古賀まり子)
満天星の花6(120417)
「銀閣は寂びて満天星雨気に散らす」(渡辺水巴)
満天星の花5(110411)
「どうだんの白鈴の花日に振りて」(猿山木魂)
満天星の花4(100406)
「雲ひくし満天星に雨よほそく降れ」(水原秋櫻子)
満天星の花3(090330)
「触れてみしどうだんの花かたきかな」(星野立子)
満天星の花2(080402)
「触れてみしどうだんの花かたきかな」(星野立子)
満天星の花1(070328)
「いっせいに咲き満天星(どうだん)の千の花」(鷹羽狩行)

石楠花10(150401)
「蛇崩(じゃくづれ)の桜はさきそめて けふ往路より帰路花多し」(佐藤佐太郎 天眼 昭和53年)
「帰り路の坂をあゆめば 夕つ日は連翹の黄の花群にあり」(佐藤佐太郎 天眼 昭和53年)
「道のべの日々花多き 山吹もつつじも旧知 わが声を待つ」(佐藤佐太郎 天眼 昭和53年)
「ゆききする道に わが知る山吹のしげみ 草藪に似てあたたかし」(佐藤佐太郎 天眼 昭和53年)
「石楠花を天井に描き庭に植え」(後藤夜半)
石楠花9(140405)
「石楠花は寂しき花か 谷あひの岩垣淵に影うつりつつ」(赤彦 木曽街道より入ること六里にして氷が瀬に至る 大正14年)
「跣足(はだし)にて谷川の石を踏みわたり 石楠の花を折りにけるかな」(赤彦 木曽街道より入ること六里にして氷が瀬に至る 大正14年)
「石楠花に暮れて鐘衝く寂光土」(水原秋櫻子 玄魚)
「石楠花や谷をゆるがす朝の鐘」(水原秋櫻子 玄魚)
石楠花8(130327)
「石楠(しゃくなげ)の花にしまらく照れる日は 向うの谷に入りにけるかな」(赤彦 大正14年)「夕ぐるる谷川はたに石楠の花を折らむとするが幽(かそ)けさ」(赤彦 大正14年)「石楠木(しゃくなげ)が咲く庭の草とりありたり」(碧梧桐 八年間)
石楠花7(120412)
「石楠(しゃくなげ)は寂しき花か 谷あひの岩垣淵に影うつりつつ」(赤彦 大正14年)「跣足(はだし)にて谷川の石を踏みわたり 石楠の花を折りにけるかな」(赤彦 大正14年)
「石楠花に暮れて鐘撞く寂光土」(水原秋櫻子)
石楠花6(110409)
「石楠花や谷をゆるがす朝の鐘」(水原秋櫻子)
石楠花5(100323)
「石楠花に踊りゆく瀬や室生川」(水原秋櫻子)
石楠花4(090327)
「石楠花や朝の大気は高嶺より」(渡辺水巴)
石楠花3(080329)
「石楠花の大群落のなかに来ぬ うつし世のこといかで思はむ」(吉井勇 天彦 多良獄)「石楠(しゃくなげ)の群落ありて さみだれの雨のしづくの花にとどまる」(佐藤佐太郎 形影 昭和42年)「石楠花や雲の巻舒(けんじょ)をまのあたり」(阿波野青畝)
石楠花2(070331)
「濁声(だみごえ)去りて東国(あずま)石楠(しゃくなげ)咲く可(びよ)う」(金子兜太)
石楠花1(060403)
「石楠花に碁の音響く山深し」(虚子)

花水木9(150415)
「しきりにも苞(はう)脱ぎすてて花となる 紫の藤うつくしく忙(せは)し」(窪田空穂 病臥 木草と共に)
「若葉して咲ききりたるに藤の花 いよいよ美しこぼれ落つなゆめ」(窪田空穂 病臥 木草と共に)
「夕あかね駿河の空に深くして ほのかに白し天上の富士」(窪田空穂 東海道を行く 木草と共に)
「山ざくら白じろ群れて 大き山目ざめ見はれる瞳のごとき」(窪田空穂 東海道を行く 木草と共に)
「うつくしく咲き散る花よ 大方はその実を結ぶためにはあらず」(窪田空穂 庭の木草 木草と共に)「くれなゐの影淡くゆれ花水木」(小島花枝)
花水木7(140414)♯3060
「静かなるおどろきをもて日日を見る 庭の木草のわが目に余る」(窪田空穂 庭の木草 木草と共に)
「もの言はぬ木草と居(を)ればこころ足り 老い痴(し)れし身を忘れし如し」(窪田空穂 庭の木草 木草と共に)
「花みづき川は疲れて芥溜む」(角川源義)
花水木6(130501)
「最終の息する時まで生きむかな 生きたしと人は思ふべきなり」(窪田空穂 清明の節 昭和42年)「安心して生き安心して死ぬべき責め負ひて 生れ生き来し我ならずやも」(窪田空穂 清明の節 昭和42年)「一つづつ花の夜明けの花みづき」(加藤楸邨)
花水木5(120421)
「春の日は ただのどかにてあらましをー。 人の家を出でて 目に沁む青空」(釈迢空 忽忙 遠やまひこ)「をみな子の春の衣(コロモ)の 照りにほふ道を帰りて、世を憎むなり」(釈迢空 忽忙 遠やまひこ)「水売りのようにそよいで花水木」(阿部完市)
花水木4(110417)
「花みづきさへぎる傘をかたむけつ」(水原秋櫻子)
花水木3(090412)
「昏るるとき白き極みよ花みづき」(中村苑子)
花水木2(070416)
「一つづつ花の夜明けの花みづき」(加藤楸邨)
花水木1(060418)
「花みづき十あまり咲けりけふも咲く」(水原秋櫻子)

花韮3(150326)
「風道にひかりてしろき花ひと木 しきりにさびし何の花ぞも」(白秋 春意動く 白南風)
「庭土に花びらしろき春真昼 つぶさに観れば風あるかなきか」(白秋 春意動く 白南風)
「人去って風残りけり韮の花」(岸田稚魚)
「花韮や歩いて行けば猫神社」(星野麥丘人)
花韮2(140413)
「花韮の白さどぎまぎ嘘ばかり」(小堤香珠)
「記憶といふ淋しさ花韮それは」(小林一枝)
「山里の薄花桜 はつはつに咲く時見れば、あはれなりけり」(釈迢空 静けき空 水の上)「送られ来て、檞(カシ)も くぬぎも ひたしづむゆうべとなりぬ。別れなむとす」(釈迢空 静けき空 水の上)「山原になほ鳴きやまず 夜のふくる山の雉子(キギシ)を 聞きて寝むとす」(釈迢空 山霞む日 水の上)「木立ち深くふみゆく足の、たまさかは、ふみためて思ふ。山の深さを」(釈迢空 山霞む日 水の上)花韮1(080415)
「花韮の昼の静けさよろけけり」(篠田悦子)

春深し(130413)
「山里は春まだ寒し 旅人の桜かざして いづくよりか来(こ)し」(子規 明治31年)「山毎に緑うるほひ 家毎に花咲かせたり 日の本うれし」子規 (明治31年)
「春深く腐りし蜜柑好みけり」(子規)

囀り4(130412)
「うき身にて聞くも惜しきはうぐひすの 霞にむせぶ曙のこゑ」(西行法師 鶯によせておもひをのべけるに 山家集春)「山ふかみ霞こめたる柴の庵に こととふものは谷のうぐひす」(西行法師 題しらず 山家集春)「うぐひすの二声耳のほとりかな」(蕪村)

清明3(150405)
「手槌もて梁と柱をうつ音の やはらかにして春あたたかし」(窪田空穂 春の歌 清明の節 昭和42年)
「日本人は日本の花をみな好む 木花草花花ならぬ花」(窪田空穂 春の歌 清明の節 昭和42年)
「清明や午前半ばに雨上り」(森澄雄 四遠)
「水替へて清明の日の小鳥籠」(星野麥丘人)
清明2(140406)
「純白の円き花びら群れはなれ 落ちゆくさまの静かさを見よ」(窪田空穂 春暖 清明の節 昭和42年)
「桜花ひとときに散るありさまを 見てゐるごときおもひといはむ」(窪田空穂 春暖 清明の節 昭和42年)
「たのしきもはた苦しきも過ぎぬれば 夢にことならず無思惟に生きよ」(窪田空穂 生 清明の節 昭和42年)
「生きのこころつぶさに見する先覚者 わが前にあり少くはあらず」(窪田空穂 生 清明の節 昭和42年)
「臥してをりわがこころまた清明に」(森澄雄 虚心)
「清明や羽閉じてゐる大鳳蝶(あげは)」(森澄雄 深泉)
清明(120405)
「渡津海(わたつみ)の豊旗雲(とよはたぐも)に入日さし 今夜(こよひ)の月夜(つくよ)清明(あきら)けくこそ」(天智天皇 万葉集巻一15)
「清明といふといへどもけふ朧」(森澄雄 虚心)

土筆6(150402)
「赤羽根のつつみに生ふるつくづくし しのびにけらしも摘む人なしに」(子規 つくしほど食ふてうまきはなく、つくしとりほどして面白きはなし。碧梧桐赤羽根村に遊びて、つくしを得て帰る。再び行かんといふに思ひやり興じてよめる。明治35年)1
「うちなげき物なおもひそ 赤羽根の汽車行く路につくづくしつめ」(子規 明治35年)7
「つくづくし又つみに来ん 赤羽根の汽車行く路と人に知らゆな」(子規 明治35年)11
「つくつくぼうしあまりにちかくつくつくぼうし」(山頭火 山行水行)
土筆5(140401)
「つくづくししじに生ひける赤羽根に いざ往きて摘め道しるべせな」(子規 明治35年)5
「痩せし身を肥えんすべもが赤羽根に 生ふるつづくしつむにしあるべし」(子規 明治35年)8
「看病や土筆摘むのも何年目」(子規 明治35年)
「病床を三里離れて土筆取」(子規 明治35年)
「一つ長く一つ短しつくづくし」(子規 明治34年)*
「道のべにたまたま土筆一つかな」(子規 明治34年)*
「仏を話す土筆の袴剥ぎながら」(子規 明治33年)
土筆4(130325)
「赤羽根のつつみにみつるつくづくし 我妹(わぎも)と二人(ふたり)摘めど尽きなくに」(子規)4「赤羽根の汽車行く道のつくづくし 又来(こ)ん年も往きて摘まなん」(子規)6
「土筆かさかさ音を手ざはりを一包み地べた」(碧梧桐 三昧)
土筆3(120413)
「女(おみな)らが割籠(わりこ)たづさへ つくづくし摘みにと出づる春たのしも」(子規 明治35年)13「赤羽根の茅草(ちぐさ)の中のつくづくし 老いほうけけりはむ人なしに」(子規 明治35年)2「家を出でて土筆摘むのも何年目」(子規 明治35年 律土筆取りにさそはれて行く)
土筆(080406)
「赤羽根に積み残したるつくづくし 再び往かん老い朽ちぬまに」(つくしほど食ふてうまきはなく、つくしとりほどして面白きはなし。碧梧桐赤羽根村に遊びて、つくしを得て帰る。再び行かんといふに思ひやり興じてよめる。 子規 明治35年)3「つくづくし摘みて帰りぬ 煮てや食はんひしほと酢(す)とにひでてや食はん」(子規 明治35年)9「つくづくし長き短きそれもかも 老いし老いざる何もかもうまき」(子規 明治35年)10「つくづくし故郷の野に積みし事を 思ひいでけり異国(ことぐに)にして」(子規 明治35年)12
「土筆(つくし)煮て飯食ふ夜の台所」(子規)

チューリップ10(150409)
「つめたきは山ざくらの性(さが)にあるやらむ ながめつめたき山ざくらの花」(若山牧水 山ざくら 山桜の歌)
「吊橋のゆるるあやふき渡りつつ おぼつかなくも見し山ざくら」(若山牧水 山ざくら 山桜の歌)
「赤黄白まっすぐだからチューリップ」(川崎展宏)
「チューリップ或る日或る刻(とき)老い易く」(三橋鷹女)
「チュウリップ影もつくらず開きけり」(長谷川かな女)
チューリップ9(140412)
「うすべにに葉はいちはやく萌えいでて 咲かむとすなり山桜花」(若山牧水 山ざくら 山桜の歌)
「ひともとや春の日かげをふくみもちて 野づらに咲ける山ざくら花」(若山牧水 山ざくら 山桜の歌)
「チューリップの花には侏儒が棲むと思ふ」(松井たかし)
チューリップ8(130409)
「夕山の新芽にまじるさくらの花 明るみながくこもりてゐるも」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)「昼冷えて新芽に靄(もや)のつゆたまる 雑木林に道は入りつも」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)「チューリップ見て朝霞なほ深し」(水原秋櫻子 玄魚 昭和30年)
チューリップ7(120422)
「うらうらと照れる光にけぶりあひて 咲きしづもれる山ざくら花」(若山牧水 山ざくら 山桜の歌)「花も葉も光しめらひ われの上に笑みかたむける山ざくら花」(若山牧水 山ざくら 山桜の歌)「ぽかりと真ッ黄ぽかりと真ッ赤チューリップ」(松本たかし)
チューリップ6(110410)
「チューリップ或る日或る刻(とき)老い易く」(三橋鷹女)チューリップ3(080405)
「赤黄白まっすぐだからチューリップ」(川崎展宏)
チューリップ(060426)
「チューリップ散る一片はゴッホの耳」(有馬朗人)

タンポポ10(150406)
「金色(こんじき)の本尊(ほぞん)に奉(たてまつ)れるさくらの花 春しんとしてはなやぐ御堂(みどう)」(木下利玄 東山法然院に詣る 一路)
「訪(おと)なへる春山のみ寺庭きよみ ひっそり閑(かん)として真清水(ましみづ)の音」(木下利玄 東山法然院に詣る 一路)
「み堂静み昼間の蝋の灯現(うつ)しきに 山の真清水(ましみづ)音かよひ来(く)も」(木下利玄 東山法然院に詣る 一路)
「御仏(みほとけ)のお前の板敷(いたじき)つめたきに 散華(さんげ)の椿の紅白映れる」(木下利玄 東山法然院に詣る 一路)
「今日の道のたんぽぽ咲いた」(山頭火 鉢の子)
「たんぽぽは地の糧(かて)詩人は不遇でよし」(寺山修司)
「たんぽぽや一天玉の如くなり」(松本たかし)
「すずめをどるやたんぽぽちるや」(山頭火 其中一人)
「何が何やらみんなさいてゐる」(山頭火 行乞途上)
タンポポ9(140415)
「蒲公英や臥したる犬も耳立てて」(水原秋櫻子 緑雲)
「たんぽぽちるやしきりにおもふ母の死のこと」(山頭火 一草庵)
「ふまれてたんぽぽひらいてたんぽぽ」(山頭火 昭和15年)
「新道(しんだう)のここの曲がりに人見えず ゆくてに白き夕山桜」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)
「新道の道はばひろみ やまざくらほのじろみつつ暮れがてぬかも」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)
タンポポ8(130406)
「わがやどの菫の花も香(か)はあれど 君が菫の花に及ばぬ」(子規 京の人より香(にほひ)菫を贈り来しけるを 明治35年)「土かひし君が菫は色に香(か)に 野べの菫にたち勝れけり」(子規 明治35年)
「蒲公英(たんぽぽ)の天窓(あたま)はりつつ猫の恋」(一茶)
タンポポ7(110411)
「蒲公英やボール転げて通りけり」(子規)「たんぽぽの黄が目に残り障子が黄」(虚子)

タンポポ3(080422)
「たんぽぽや折折さます蝶の夢」(千代女)

山吹11(150330)
「春ふかみ井出の河水かげそはば いくへか見えん山吹の花」(前中納言匡房 堀河院御時の百首のうち、山吹をよめる 千載集春下)
「吉野河きしの山吹咲きぬれば 底にぞふかき色は見えける」(藤原範綱 水辺款冬(やまぶき)といへる心をよめる 千載集春下)
「裏口の木戸のかたへの竹垣に たばねられたる山吹の花」(子規 病室のガラス障子より見ゆる処に裏口の木戸あり。木戸の傍、竹垣のうちに一むらの山吹あり。明治34年)
「小縄(こなわ)もてたばねあげられ 諸枝(もろえだ)の垂れがてにする山吹の花」(子規 明治34年)
「山吹の垣にとなりはなかりけり」(子規 明治25年)
「山吹や尋ねあたらぬ乳母が家」(子規 明治31年)
山吹10(140402)
「駒とめてなほ水かはむ 山吹のはなの露そふ井出の玉川」(皇太后宮太夫俊成 新古今集春)*
「岩根越す清滝川のはやければ 波をりかくる岸の山吹」(権中納言国信 堀河院御時、百首歌奉りけるに 新古今集春)*
「裏口の木戸のかたへの竹垣に たばねられたる山吹の花」(子規 病室のガラス障子より見ゆる処に裏口の木戸あり。木戸の傍、竹垣のうちに一むらの山吹あり。明治34年)
「小縄(こなわ)もてたばねあげられ 諸枝(もろえだ)の垂れがてにする山吹の花」(子規 明治34年)
「山吹の露菜の花のかこち顔なるや」(芭蕉 延宝9年1681)(註)かこち顔=うらめしそうな顔。ぐちをいう。
「山吹の花食う馬を叱りけり」(子規 明治31年)*
「山吹や小鮒入れたる桶に散る」(子規 明治30年)
「山吹の溝に垂れたる垣根かな」(子規 明治31年)*
「山吹に木瓜のまじりし垣根かな」(子規 明治31年)*
「山吹や尋ねあたらぬ乳母が家」(子規 明治31年)
「山吹の花の雫やよべの雨」(子規 明治28年)
「山吹の垣にとなりはなかりけり」(子規 明治25年)
山吹9(130329)
「山吹の花とり持ちて つれなくも離(か)れにし妹(いも)を偲(しの)ひつるかも」(万葉集十九4184)「山吹をやどに植ゑては見るごとに 思ひはやまず恋こそまされ」(万葉集十九4186)
「山吹の卯の花の後(あと)や花いばら」(蕪村)
山吹6(100421)
「人も来ず春行く庭の水の上に こぼれてたまる山吹の花」(子規 明治31年)「わが宿の山吹咲きて 向(むか)つ家(や)の一重桜(ひとへざくら)は葉となりにけり」(子規 明治33年)「山吹をさし出し顔の垣ねかな」(一茶)
山吹8(120410)
「春の日の雨しき降れば ガラス戸の曇りて見えぬ山吹の花」(子規 明治34年)「ガラス戸のくもり拭へば あきらかに寝ながら見ゆる山吹の花」(子規 明治34年)「山吹や宇治の焙炉(ほいろ)の匂ふ時」(芭蕉)
山吹7(110406)
「かはづ鳴く甘南備(かむなび)川に影みえて 今か咲くらむ山吹の花」(厚見王の歌 万葉集巻八1435)「花咲きて実はならねども 長き日(け)に思ほゆるかも山吹の花」(万葉集巻十1860)「山吹や宇治の焙炉の匂ふ時」(芭蕉)
山吹6(100421)
「人も来ず春行く庭の水の上に こぼれてたまる山吹の花」(子規 明治31年)「わが宿の山吹咲きて 向(むか)つ家(や)の一重桜(ひとへざくら)は葉となりにけり」(子規 明治33年)「山吹をさし出し顔の垣ねかな」(一茶)
山吹5(090401)
「山吹の花を手折(たお)りて思ふどし かざす春日はくれずともがな」(良寛)「山吹の花のさかりにわが来れば 蛙(かはず)鳴くなりこの川のべに」(良寛)「山吹や笠に指すべき枝の形(な)り」(芭蕉)
山吹4(080402)
「山吹は日に日に咲きぬ うるはしと我が思ふ君はしくしく思ほゆ」(大伴池主 万葉集巻十七3974)「咲けりとも知らずしあらば黙(もだ)もあらむ この山吹を見せつつもとな」(大伴家持 万葉集巻十七3976)
「蕎麦すする夕山吹のなつかしき」(渡辺水巴)
山吹3(080328)
「かくしあらば何か植えけむ 山吹のやむ時もなく恋ふらく思へば」(万葉集巻十1907)「山吹のにほへる妹が はねず色の赤裳の姿夢に見えつつ}(万葉集巻十一2786)「鶯の来鳴く山吹うたかたも 君が手触れず花散らめやも」(大伴池主 万葉集巻十七3968)「山吹や葉に花に葉に花に葉に」(太祗)
山吹2(070329)
「花咲きて実はならずとも長き日(け)に思ほゆるかも山吹の花」(万葉集巻十1860)「山振(やまぶき)の立ちよそひたる山清水(やましみず)酌(く)みに行かめど道の知らなく」(高市皇子(たけちのみこ)万葉集巻二158)「七重八重花は咲けども山吹の みのひとつだになきぞあやしき」(後拾遺和歌集、兼明親王)
「山吹や井出を流るる鉋屑(かんなくず)」(蕪村)
山吹1(060329)
「ほろほろと山吹ちるか滝の音」(芭蕉)
「山吹や小鮒入れたる桶に散る」(子規)

連翹8(150322)
「照りとどまる春の日輪 庭の奥に緋木瓜の花が熱(ほてり)に倦める」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)
「鉢植の草花のにほひ 昼ふかみひそまれるわれにときどきせまる」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)
「朝晴れに花売る人を呼び入れて 緋桃を買はず連翹を買ふ」(子規 明治32年)
「連翹や紅梅散りし庭の隅」(子規 明治33年)
「連翹に似て非なる木の花黄なり」(子規 明治35年)
「連翹や泣き石仏また笑まふ」(森澄雄 花眼)
連翹7(140403)
「連翹の雨に乱れてしどろ也」(子規 明治27年)
「連翹やたばねられたる庭の隅」(子規 明治29年)
「枳殻(からたち)のかたくかぐろき刺(とげ)の根に 黄いろの芽あり春たけにけり」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)
「この花は受胎(じゅたい)のすみしところなり 雄蕊(しずゐ)の根もとのふくらみを見よ」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)
連翹6(130407)
「草山の低き雑木が新芽ふく 枝のさきさきいのちかへり来(き)」(木下利玄 雑木の芽)「春山の雑木の花の黄いろきを 見あげて われはふもとゆくかも」(木下利玄 雑木の芽)
「遠くゐて連翹の黄と思ひをり」(森澄雄 花眼)
連翹5(120329)
「連翹のまぶしき春のうれひかな」(久保田万太郎)「原爆跡涙のごとし連翹も」(森澄雄)
連翹4(110405)
「連翹の一枝円を描きたり」(虚子)
連翹3(100329)
「帰り路の坂を歩めば 夕つ日は連翹の黄の花群にあり」(佐藤佐太郎 天眼 昭和52年)「山吹や連翹などの日にけぶり 藪なつかしき蛇崩(じゃくづれ)の道」(佐藤佐太郎 星空 昭和54年)「連翹に見えて居るなり隠れんぼ」(虚子)
連翹2(080322)
「連翹(れんぎょう)に一閑張(いっかんばり)の机かな」(子規)連翹1(070323)
「連翹(れんぎょう)の一枝づつの花ざかり」(星野立子)

楓の芽4(150414)
「春日野(かすがの)の瑠璃空(るりぞら)の下(もと) 杉が枝(え)にむらさき妙(たへ)なり藤の垂(た)り花」(木下利玄 奈良晩春 一路)
「薄雲(うすぐも)に春日(はるび)はかくれ 杉が枝(え)に色こまやかなる藤のむらさき」(木下利玄 奈良晩春 一路)
「老杉(おいすぎ)にかかる藤波 百花(ももはな)の匂ひににほへり風なき春日(はるび)」(木下利玄 奈良晩春 一路)
「楓の芽廊下も朝の塵泛(うか)ぶ」(石田波郷 風切)
「芽楓の石の図書館眠り来し」(鷹羽狩行)
楓の芽3(140327)♯3042
「地の上にてわが手ふれゐるこの欅(けやき)は 高みの梢(うれ)へ芽ぶきつつあり」(木下利玄 春光 一路)
「榧(かや)の木と接骨木(にはとこ)並べり 春さりてにはとこ芽ぐみ榧ぢぢむさき」(木下利玄 春光 一路)
「神田より帰りて木あり楓の芽」(石田波郷 風切)
「楓の芽紅するどしや手枕に」(石田波郷 風切)
楓の芽2(130402)
「ふる雨の枝葉つたひてしづくする音 この森にこもれり、通る」(木下利玄 雑木の芽 紅玉)「ふり過ぎし今のひと雨 若葉樹の一ぱいに含み 大粒(おほつぶ)雫(しづく)す」(木下利玄 新樹 みかんの木)「繋(つな)がれて鼻擦(す)る牛の楓の芽」(野村泊月)
楓の芽1(090407)
「楓の芽もはらに燃えてしづかなり」(加藤楸邨)(註)もはら=専ら。

柿若葉6(150411)
「日もすがら若葉のうへの曇り空 暮るれば赤き月いでにけり」(赤彦 亀原の家 大正6年)
「柿若葉かげのすずしき庭草の 朝けの露にさをどる雛家鶏」(赤彦 明治41年)
「火をたきて煙こもれる窓さきの 柿のわか葉はいくらものびず」(赤彦 高木の家 大正7年)
「燈籠の一基いと古る柿若葉」(水原秋櫻子 残鐘 昭和27年)
「柿若葉丘の南は田もまぶし」(水原秋櫻子 霜林 昭和24年)
「柿の若葉のかがやく空を死なずにゐる」(山頭火 山行水行)
柿若葉5(140408)
「かうして生きてはゐる木の芽や草の芽」(山頭火 緑平老に 柿の葉)
「暁のもののしめりの深ければ 目ぶける木々の立ちて静けき」(若山牧水 渓間の春 黒松)
「木炭山(すみやま)とひとのたてたる雑木山 木々はきほいて芽ぶきたるかも」(若山牧水 渓間の春 黒松)
柿若葉4(120419)
「さやさやにその音(ね)流れつ 窓ごしに見上ぐれば青葉滝とそよげり」(若山牧水 室に高窓ありて東に面す さびしき樹木)「欅青葉さやげる見れば 額(ぬか)あげてわれも大きく眸(まみ)張るべかり」(若山牧水 大樹 さびしき樹木)「富める家の光る瓦や柿若葉」(虚子)
柿若葉3(110416)
「柿若葉むかしちちはは貧に澄み」(藤沢紗智子)
柿若葉2(100502)
「遠つ雲夕立つ風の湖をこえて 柿の青葉を壁に吹きつく」(赤彦 明治36年)「柿の木の若葉のうへに 紅き月のぼりてさむき夕となれり」(赤彦 大正7年)「柿の若葉のかがやく空を死なずにゐる」(山頭火)
柿若葉1(090530)
「茂山やさては家ある柿若葉」(蕪村)

木の芽
「ふるさとは遠くして木の芽」(山頭火)
「山のふかさはみな芽吹く」(山頭火 柿の葉)

山椒の芽5(150329)
「顔の汗ぬぐひながらに九段坂 桜ながめてのぼるひとりか」(若山牧水 桜 白梅集)*
「九段坂息づきのぼりながめたる 桜の花はいまさかりなり」(若山牧水 桜 白梅集)*
「天つ日にひかりかぎろひこまやかに 羽根ふるはせて啼く雲雀見ゆ」(若山牧水 山桜の歌)
「東風(こち)吹くや空にむら立つ白雲の 今朝にしげきに雲雀なくなり」(若山牧水 山桜の歌)
「何の木としらで芽を吹く垣根哉」(子規 明治27年)
「つぶつぶと芽を吹いてゐる老木哉」(子規 明治27年)
「老木の枯枝多く芽少し」(子規 明治29年)
「人声のちかづいてくる木の芽あかるく」(山頭火 雑草風景)*
「ふっとふるさとのことが山椒の芽」(山頭火 旅心)*
「木の芽や草の芽やこれからである」(山頭火 鴉)*
山椒の芽4(140404)
「山のふかさはみな芽吹く」(山頭火 柿の葉)*
「山椒の芽母に煮物の季節来る」(古賀まりこ)*
「摺鉢は膝でおさへて山椒の芽」(草間時彦)
「竹むらにかくれて生ふる山椒の芽の からくもきみにこひわたるかも」(子規 明治33年4月21日 長塚節へ)
山椒の芽3(130401)
「枝のさきわれよりひくく垂りさがり 老木桜(おいきざくら)のつぼみ繁きかも」(若山牧水 秩父の春 くろ土)「蟻の虫這ひありきをり うす紅(べに)につぼみふふめる桜の幹を」(若山牧水 秩父の春 くろ土)「ふっとふるさとのことが山椒の芽」(山頭火 旅心)
山椒の芽2(120406)
「独活(うど)も食へず蕨(わらび)も食へず山椒つむ」(村上鬼城)
「九段坂息づきのぼりながめたる 桜の花はいまさかりなり」(若山牧水 白梅集)「酒買ひに爺(ぢい)をやりおき 裏山に山椒(さんしょ)つみをれば独活(うど)を見つけたり」(若山牧水 くろ土)山椒の芽1(060331)
「何にでも添ふる山椒の芽を摘んで」(稲畑汀子)

藤の花14(150413)
「去年(こぞ)の春亀戸(かめゐど)に藤を見しことを 今藤を見て思ひいでつも」(子規 明治34年)
「この藤は早く咲きたり 亀井戸の藤咲かまくは十日(とおか)まり後」(子規 明治34年)
「落ちかかる石を抱へて藤の花」(子規 明治28年)
「明寺に藤の花咲く枯木哉」(子規 明治27年)
「藤咲きぬ松に一夜を寝てみやう」(子規 明治27年)
「掛茶屋や頭にさはる藤の花」(子規 明治29年)
「藤さがるあちらこちらの梢かな」(子規 明治29年)
「刺繍に倦んで女あくびす藤の花」(子規 明治29年)
藤の花13(140418)
「かくしてぞ人の死ぬとふ 藤波のただ一目のみ見し人ゆゑに」(万葉集巻十二3075)
「妹が家に伊久里(いくり)の森の藤の花 今来む春も常かくし見む」(万葉集巻十七3952)
「藤なみの花をし見れば 奈良のみかど京(きやう)のみかどの昔こひしも」(子規 明治34年)
「藤なみの花をし見れば 紫の絵の具取り出で写さんと思ふ」(子規 明治34年)
「くれなゐの牡丹(ぼたん)の花にさきだちて 藤の紫咲きいでにけり」(子規 明治34年)
「念仏に季はなけれども藤の花」(子規 明治35年)
藤の花12(130408)
「瓶(かめ)にさす藤の花ぶさ 一ふさは かさねし書(ふみ)の上に垂れたり」(子規 明治34年)「藤なみの花の紫 絵にかかば こき紫にかくべかりける」(子規 明治34年)
「木の末をたわめて藤の下りけり」(子規)
藤の花11(120423)
「かくしてそ人の死ぬとふ 藤なみのただ一目のみ見し人ゆゑに」(万葉集巻十二3075)「春べ咲く藤の末(うら)葉のうら安(やす)に さ寝(ぬ)る夜ぞなき子ろをし思へば」(万葉集巻十四3504)「山もとに米踏ム音や藤のはな」(蕪村)
藤の花10(110422)
「藤波の花は盛りになりにけり 奈良の都を思ほすや君」(大伴四綱 万葉集巻三330)「かくしてぞ人は死ぬといふ 藤波のただ一目のみ見し人ゆゑに」(万葉集巻十二3075)「藤の花雲の梯(かけはし)かかる也」(蕪村)
藤の花9(100423)
「恋しけば形見にせむとわが屋戸(やど)に 植ゑし藤波いま咲きにけり」(山部赤人 万葉集巻八1471)「わが屋戸(やど)の時じき藤のめづらしく 今も見てしか妹が笑まひを」(大伴家持 万葉集巻八1627)「うつむけに春うちあけて藤の花」(蕪村)
藤の花7(090417)
「わがやどに咲ける藤なみ たちかへりすぎがてにのみ人の見るらん」(家に藤の花さけりけるを、人のたちとまりて見けるをよめる みつね 古今集春下)「月に遠くおぼゆる藤の色香かな」(蕪村)
藤の花6(080421)
「百花(ももはな)の千花(ちはな)を糸につらぬける 藤の花房(はなぶさ)長く垂れたり」(子規 明治33年)「広庭(ひろにわ)の松の木末(こずえ)にさく藤の 花もろ向けて夕風吹くも」(子規 明治43年)「池の辺のさじきに垂るる藤の花 見れば長けく折れば短し」(子規 明治43年)「山藤や短き房の花ざかり」(子規)
藤の花5(080417)
「藤浪の花は盛りになりにけり 平城(なら)の京(みやこ)を思ほすや君」(大伴四綱 万葉集巻四330)「藤なみの咲ける春野にはふ葛(かづら) 下よし恋ひば久しくもあらむ」(万葉集巻十1901)「瓶(かめ)にさす藤の花ぶさ短ければ 畳の上にとどかざりけり」(夕餉(ゆふげ)したためをはりて、仰向けに寝ながら左の方を見れば、机の上に藤を活けたる、いとよく水をあげて、花は今を盛りの有様なり。艶(ゑん)にも美しきかなと、ひとりごちつつ、そぞろに昔の物語などしのばるるにつけて、あやしくも歌心なん催されける、その道には日頃うとくなりまさりたれば、おぼつかなくも筆を取りて 子規 明治34年)「藤なみの花をし見れば 奈良のみかど京(きやう)のみかどの昔こひしも」(子規 明治34年)「藤なみの花をし見れば 紫の絵の取り出で写さんと思ふ」(子規 明治34年)「藤の花長うして雨ふらんとす」(子規)
藤の花3(070417)
「我が宿に咲ける藤波 立ち返り過ぎごとにのみ人の見るらむ 凡河内躬恒」(古今集120)「よそに見てかへらん人に藤の花 はひまつわれよ枝は折るとも 僧正遍照」(古今集119)
「藤の花雲の梯(かけはし)かかるなり」(蕪村)
藤の花(060420)
「草臥(くたび)れて宿かる比(ころ)や藤の花」(芭蕉)

つつじ10(150407)
「水伝(つた)ふ磯(いそ)の浦廻(うらみ)の石(いは)つつじ もく咲く道をまた見なむかも」(万葉集巻二185)
「細領巾(たくひれ)鷺坂(さぎさか)山の白(しら)つつじ 吾に染(にほ)はね妹に示さむ」(鷺坂にして作れる歌一首 万葉集巻九1694)
「躑躅咲き雲澱むなり山の窪」(水原秋櫻子 玄魚)
「躑躅咲き影つばらかに駒立てる」(水原秋櫻子 磐梯)
つつじ9(140424)♯3070
「躑躅わけ親仔の馬が牧に来る」(水原秋櫻子 残鐘)
「躑躅燃え林あさきに家居あり」(水原秋櫻子 重陽)
「風早(かざはや)の美保(みほ)の浦廻(うらみ)の白つつじ 見れどもさびし亡き人思へば」(和銅4年辛亥、川辺の宮人、姫島の松原に美人の屍を見て、哀慟(かな)しみて作れる歌 万葉集巻三434)
「山越えて遠津の浜の岩つつじ 我が来るまでに含(ふふ)みてあり待て」(万葉集巻七1188)
つつじ8(130410)
「庭の面(も)のむらさきつつじ 晩春(おそはる)の夕冷(び)え時(どき)を艶(つや)やかに冴ゆ」(木下利玄 春光 一路)「地の上にてわが手ふれゐるこの欅(けやき)は 高みの梢(うれ)へ芽ぶきつつあり」(木下利玄 春光 一路)「大原やつつじが中に蔵建(たて)て」(蕪村)
つつじ6(110423)
「躑躅生けてその陰に干鱈割く女」(芭蕉)つつじ6(100419)
「風速(かざはや)の美保(みほ)の浦廻(うらみ)の白つつじ 見れども寂し亡き人思へば」(万葉集巻三434)「をみなへしさき野に生ふる白つつじ 知らぬこともち言はえし吾背」(万葉集巻十1905)
「ひとり尼わら家すげなし白つつじ」(芭蕉)
つつじ4(090415)
「女郎花(をみなへし)さき野に生ふる白つつじ 知らぬこともち言はえし吾背」(万葉集巻十1905)「龍田道(たつたぢ)の丘辺の路に 丹つつじのにほはむ時の 桜花咲きなむ時に 山たづの迎へ参(まひ)出む君が来まさば」(万葉集巻六971)(註)「つつじ咲きて片山里の飯白し」(蕪村)
初音10(150327)
「あづさ弓春山近く家をらし 続(つ)ぎて聞くらむ鶯の声」(万葉集巻十1829)
「うちなびく春さり来れば 小竹(しの)の末(うれ)に尾羽(をは)うち触(ふ)れて鶯鳴くも」(万葉集巻十1830)
「」()
「」()
初音9(140330)
「うぐひすを魂(たま)にねむるか嬌(たは)柳」(芭蕉)
「うぐひすの笠おとしたる椿かな」(芭蕉)
「鶯や柳のうしろ藪のまへ」(芭蕉)
「鶯の麁相(そさう)がましき初音かな」(蕪村)
「冬ごもり春さり来(く)らし あしひきの山にも野にも鶯なくも」(万葉集巻十1824)
「春されば妻を求むと 鶯の木末(こぬれ)を伝ひ鳴きつつもとな」(万葉集巻十1826)
初音8(130307)
「春されば木末(こぬれ)隠(がく)りて鶯ぞ 鳴きていぬなる梅が下枝(しづえ)に」(万葉集巻五827)「春の野に鳴くや鶯なつけむと わが家(へ)の苑(その)に梅が花咲く」(万葉集巻五837)「うら道を来て鶯の初音かな」(蕪村)
初音7(120319)
「梅の花の咲ける岡辺に 家をれば ともしくもあらず鶯の声」(万葉集巻十1820)「春がすみ流るるなへに 青柳(あをやぎ)の枝くひ持ちて鶯鳴くも」(万葉集巻十1821)「鶯や竹の子藪(やぶ)に老(おい)を鳴く」(芭蕉)
初音6(110402)
「うぐひすの麁相(そそう)がましき初音かな」(蕪村)初音5(100315)
「梅の花散り乱(まが)ひたる岡傍(をかび)には 鶯鳴くも春かたまけて」(大隈目榎氏鉢麻呂 万葉集巻五838)「鶯の声(おと)聞くなへに梅の花 吾家(わぎへ)の苑に咲きて散る見ゆ」(対馬目高氏老 万葉集巻五841)「この梅に牛も初音と鳴きつべし」(芭蕉)
初音4(090413)
「春されば妻を求むと鶯の 木末(こぬれ)を伝ひ鳴きつつもとな」(万葉集巻十1826)「あづさ弓春山近く家をらし 続(つ)ぎて聞くらむ鶯の声」(万葉集巻十1829)「この梅に牛も初音と聞きつべし」(芭蕉)
初音3(080316)
「鶯も音づよになりぬ二三日」(去来)
初音2(070228)
「春山の霧に惑へる鶯も 我にまさりて物思はめやも」(万葉集1892)「鶯は今は鳴かむと片待てば 霞たなびき月は経にけり」(万葉集4030)「うちなびく春ともしるく鶯は 植木の木間を鳴き渡らむ」(万葉集4495)
「鶯の枝ふみはづす初音かな」(蕪村)初音1(060228)
「梅の花散らまく惜しみ 我が園の竹の林に鶯鳴くも」(万葉集巻五824)「春されば木末(こぬれ)隠(がく)りて 鶯の鳴きて去ぬる梅が下枝(しづえ)に」(万葉集巻五827)
「鶯の身をさかさまに初音かな」(基角)

お花見3(110418)
「ねがはくは花の下にて春死なん その如月のもち月のころ」(西行法師 山家集春)「仏には桜の花をたてまつれ わが後の世を人とぶらはば」(西行法師 山家集春)「何とかや世にありがたき名をしたる 花も桜にまさりしもせず」(西行法師 山家集春)「たぐひなき花をし枝にさかすれば 桜にならぶ木ぞなかりける」(西行法師 山家集春)「春慶の膳すゑわたす花見かな」(許六)
桜咲く2(140326)
「老づとに何をかせまし 此春の花待ちつけぬわが身なりせば」(西行法師)
「おのづから花なき年の春もあらば 何につけてか日をくらさまし」(西行法師)
「おのづから来る人あらば もろともにながめまほしき山桜かな」(西行法師)
「やまざくら瓦ふくもの先(まづ)ふたつ」(芭蕉)
「うらやましうき世の北の山桜」(芭蕉)
桜咲く1(130318)
「春といへば誰も吉野の花をおもふ 心にふかきゆゑやあるらむ」(西行法師 山家集春)「おぼつかないづれの山の峰よりか 待たるる花の咲きはじむらむ」(西行法師 花を待つ心を 山家集春)「うらやましうき世の北の山桜」(芭蕉)

遅桜3(130423)
「とどまらぬ別れのみかは 花鳥の名残につけて惜しき春かな」(平宗宣朝臣 玉葉集春下)「枝にちる花こそあらめ 鶯の音さへかれゆく春の暮かな」(二条院讃岐 玉葉集春下)「柏木(かしはぎ)のひろ葉見するを遅ざくら」(蕪村)
遅桜(100416)
「人恋しくば隣人を訪へ遅桜」(中村草田男)

八重桜15(150410)
「花もちり人もこざらむ折はまた 山のかひにてのどかなるべし」(西行法師 山家集春)
「わび人の涙に似たる桜かな 風身にしめばまづこぼれつつ」(西行法師 山家集春)
「ならひありて風さそふとも山桜 たづぬる我をまちつけてちれ」(西行法師 山家集春)
「山姥(やまんば)の遊びのこして遅桜」(蕪村 落日庵)(註)山姥=深山に棲むと信じられた鬼女。
「風声(かざごえ)の下り居の君や遅桜」(蕪村 落日庵)(註)風声=風邪声。下り居=宮仕えの女の里帰り。
「時鳥(ほととぎす)不図(ふと)思ひけり遅桜」(蕪村 落日庵)
「驟雨すぎ町ひた濡れに八重桜」(水原秋櫻子 玄魚)
「八重桜地上に画(えが)く大伽藍」(村上鬼城)
「日と空といづれか溶くる八重桜」(渡辺水巴)

八重桜14(140409)
「花見にとむれつつ人のくるのみぞ あたら桜のとがにはありける」(西行法師 山家集春)*
「白河の春の梢のうぐひすは 花の言葉を聞くここちする」(西行法師 山家集春)*
「命二つの中に生きたる桜かな」(芭蕉)*
「思ひ出す木曽や四月の桜狩」(芭蕉)*
「桜がりきどくや日々に五里六里」(芭蕉 笈の小文)
「木のもとに汁も膾(なます)も桜かな」(芭蕉)
 「明日来る人はくやしがる春」(風麦)
 「蝶蜂を愛するほどのなさけにて」(良品)
 「水のにほひをわずらひにける」(土芳)
 「くさまくらこのごろになき月のはれ」(雷洞)
 「猿のなみだか落つる椎の実」(芭蕉)
「木のもとに汁も膾(なます)も桜かな」(芭蕉)
 「西日のどかによき天気なり」(珍碩)
 「旅人の虱かきゆく春くれて」(曲水)
 「はきも習はぬ太刀のひきはだ」(芭蕉)

八重桜13(130405)
「よしの山雲をはかりに尋ね入りて 心にかけし花を見るかな」(西行法師 山家集春)「花ちらで月はくもらぬ世なりせば ものを思はぬわが身ならまし」(西行法師 山家集春)
「春の世は桜に明けてしまひけり」(芭蕉)
八重桜11(120416)
「おしなべて花の盛りになりにけり 山の端ごとにかかる白雲」(西行法師 山家集春)「花みればそのいはれとはなけれども 心のうちぞ苦しかりける」(西行法師 山家集春)「春風にふき出し笑ふ花も哉」(芭蕉)
八重桜10(110415)
「花の色や声に染むらむ鶯の なく音ことなる春のあけぼの」(西行法師 山家集春)「花をみし昔の心あらためて 吉野の里にすまむとぞ思ふ」(西行法師 山家集春)「西行の菴(いほり)もあらん花の庭」(芭蕉)
八重桜10(100425)
「あくがるる心はさても山桜 ちりなむ後や身にかへるべき」(西行法師 山家集春)「花みればそのいはれとはなけれども 心のうちぞ苦しかりける」(西行法師 山家集春)
「春の夜は桜に明けてしまひけり」(芭蕉)
八重桜9(100412)
「たぐひなき花をし枝に咲かすれば 桜にならぶ木ぞなかりける」(西行法師 山家集春)「何とかや世にありがたき名をしたる 花も桜にまさりしもせじ」(西行法師 山家集春)「旅人の鼻まだ寒し初桜」(蕪村)
八重桜8(090416)
「雲もかかれ花とを春は見て過ぎむ いづれの山もあだに思はで」(西行法師 山家集春)「雲かかる山とは我も思ひ出でよ 花ゆゑ馴れしむつび忘れず」(西行法師 山家集春)「海手より日は照りつけて山桜」(蕪村)
八重桜7(090409)
「空晴るる雲なりけりな吉野山 花もてわたる風と見たれば」(西行法師 山家集春)「さらにまた霞にくるる山路かな 花をたづぬる春のあけぼの」(西行法師 山家集春)「山は朝日薄花桜紅鷺(とき)の羽」(素堂)
八重桜6(080419)
「今よりは花見む人に伝へおかむ 世をのがれつつ山に住まむと」(西行法師 山家集春)「のどかなる心をさへに過ごしつつ 花ゆゑにこそ春を待ちしか」(西行法師 山家集春)「仏には桜の花をたてまつれ わが後の世を人とぶらはば」(西行法師 山家集春)「木の下に襟(えり)こそばゆき桜かな」(嵐雪)
八重桜5(080413)
「わきて見む老木はあはれなり 今いくたびか春にあふべき」(老木の桜のところどころに咲きたるを見て 西行法師 山家集春)「老づとに何をかせましこの春の 花待ちつけぬわが身なりせば」(老見花といふことを 西行法師 山家集春)「おのづから花なき年の春もあらば 何につけてか日をくらさまし」(西行法師 山家集春)「下よりも上の高嶺を眺むれば 霞のうちにやどる小桜」(良寛)「世の中の花を袂(たもと)にこき入れて 立ち帰るらむ白雲の山」(良寛)「いのちあらば又の春べに来ゐて見む 眺めも飽かぬ山の桜を」(良寛)「観音の大悲の桜咲きにけり」(子規)
八重桜4(070421)
「ちらばまた嘆きやそはむ 山桜さかりになるはうれしかりけり 西行」(山家集)「花いかで我をあはれと思ふらむ 見て過ぎにける春をかぞへて 西行」(山家集)「今の我も昔の人も花見てむ 心の色はかはらじものを 西行」(山家集)
「おのずから来る人あらば もろともに眺めまほしき山桜かな 西行」(山家集)「年を経ておなじ梢に匂へども 花こそ人にあかれざりけり 西行」(山家集)「ねがはくは花の下にて春死なん その如月(きさらぎ)のもち月のころ 西行」(山家集)「海手より日は照りつけて山桜」(蕪村)
八重桜3(070418)
「おぼつかな春は心の花にのみ いづれの年かうかれそめけむ 西行」(山家集)「吹く風のなべて梢にあたるかな かばかり人の惜しむ桜を 西行」(山家集)「ながめつるあしたの雨の庭の面に 花の雪しく春の夕暮 西行」(山家集)
「花にそむ心のいかで残りけむ 捨てはててきと思ふわが身に 西行」(山家集)「風さそふ花の行方は知らねども 惜しむ心は身にとまりけり 西行」(山家集)「仏には桜の花をたてまつれ わが後の世を人とぶらはば 西行」(山家集)「日と空といずれか溶くる八重桜」(渡辺水巴)
遅桜(070415)
「夏山の青葉まじりの遅桜 初花よりもめづらしきかな」(金葉集)「下さゆるひむろの山の遅桜 消え残りける雪かとぞ見る」(千載集)
「ゆく春や逡巡として遅桜」(蕪村)
八重桜2(070416)
「あしひきの山桜花(やまさくらばな)日並べてかく咲きたらばいたく恋ひめやも」(万葉集巻八)「いにしえの奈良の都の八重桜 けふ九重に匂ひぬるかな 」(伊勢大輔(いせのだいふ、女性) 詞花集)
「八重桜日輪すこしあつきかな」(山口誓子)
桜3(070404)
「世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし 在平業平」(古今集春上53)「花の色はうつりけりな いたずらにわが身世にふるながめせしまに 小野小町」(古今集春下113)
「さまざまな事思ひ出す桜かな」(芭蕉)
八重桜2(060416)
「風に落つ楊貴妃桜房のまま」(杉田久女)
八重桜1(060412)
「奈良七重七堂伽藍八重桜」(芭蕉)

黄水仙10(150326)
「その翌朝おしろいやけの素顔吹く 水仙の芽の青きそよかぜ」(白秋 早春 桐の花)
「山ゆけばしみみに恋(こほ)し日のさして 黒木に萌ゆるいろのやさしさ」(白秋 春意動く 白南風)
「野の方にしろき煙の行く見れば おろそかならず春はうごけり」(白秋 春意動く 白南風)
「唐筆の安きを売るや水仙花」(子規 明治33年)
「筆洗の水こほしけり水仙花」(子規 明治33年)
「水仙も処を得たり庭の隅」(子規 明治30年)
「水仙の日向に坐して写真哉」(子規 庭前撮影 明治30年)

「徹夜ほのぼの明けそめし心水仙に」(山頭火 出家以前)
「あすはお正月の一りんひらく」(山頭火 机上水仙花 一草庵)
「一りん咲けばまた一りんのお正月」(山頭火 卓上水仙花 一草庵)
黄水仙9(140329)
「水仙や晉山の僧黄衣なり」(子規 明治31年)
「水仙の花のさかりや桃の花」(子規 田家 明治31年)
黄水仙8(130403)
「うぐひすの稚(わか)くこもりて啼く山の 芽吹かぬ谷を人写すかも」(中村憲吉 谷の道「比叡山」 大正10年)「いぢけたる植林の杉は花結び その低木原にうぐひす啼きつ」(中村憲吉 春山行 昭和5年)「世に悟る満足もあり水仙花」(碧梧桐)
黄水仙7(120403)
「白鳥の生みたるもののここちして 朝夕めづる水仙の花」(与謝野晶子 草の夢)「春のいろ青し二寸の水仙の芽も 翡翠(ひすい)なるひとの耳輪も」(与謝野晶子 深林の香)
「古寺や大日如来黄水仙」(子規)
黄水仙6(110326)
「黄水仙雀(すずめ)はいつも遊び好き」(星野麥丘人)
黄水仙5(100408)
「黄いろなる水仙の花あまた咲き そよりと風は吹きしぎにけり」(古泉千樫 大正3年)「ふるさとの日光のなか ひやりひやり水仙の葉を踏みて居りけり」(古泉千樫 大正3年)「水仙も所を得たり庭の隅」(子規)
黄水仙4(090317)
「真中(まんなか)の小さな黄色のさかづきに 甘き香もれる水仙の花」(木下利玄 銀 芯)「霜しのぐ水仙の葉の萌え立ちは 或はよぢれて莟芽抱けり」(木下利玄 みかんの木)「卓上に家庭百科と黄水仙」(長谷川梧逸)
黄水仙3(080405)
「石崖に黄水仙咲く午後も通る」(加倉井秋を)
黄水仙2(070402)
「突風や算を乱して黄水仙」(中村汀女)
黄水仙1(060405)
「黄水仙ひしめき咲いて花浮かぶ」(高浜年尾)

白木蓮12(150325)
「玉蘭(はくれん)は空すがすがし光発(さ)す 一朝(ひとあさ)にしてひらき満ち」(白秋 玉蘭吟 黒檜)
「木高きは現(うつつ)あらぬか 玉蘭(はくれん)の花多(さは)にしてむしろ幽(かす)けき」(白秋 玉蘭吟 黒檜)
「木蓮を打つほどもなく雹(ひょう)晴れぬ」(水原秋櫻子 葛飾)
「木蓮のこぞる築地に行きあたる」(水原秋櫻子 霜林)
白木蓮11(140328)
「その母の子らをかきおこす声きけば 白木蓮(はくれん)の咲きて夜明ちかきか」(白秋 春寒 黒檜)
「木蓮を石矢のやうにおとす風 折りから園に鵞鳥あらはる」(与謝野晶子 緑階春雨)
「木蓮の白光(びゃっこう)薫ず池のうへ」(水原秋櫻子 霜林)
白木蓮10(130315)
「白木蓮の花の木の間に飛ぶ雀 遠くは行かね声の寂しさ」(北原白秋 白木蓮花 雀の卵)
「木蓮の急須めでたき白磁かな」(水原秋櫻子 磐梯)
白木蓮9(120401)
「白木蓮の花咲きたりと話す声 何処やらにして日の永きかな」(白秋 雀の卵)「白木蓮の花の木かげのたまり水 いつしか青き苔の生ひたり」(白秋 雀の卵)
「木蓮の夢のやうなる小雨哉」(漱石)
白木蓮8(100327)
「はくれんに朝日うやうやしくありぬ」(綾部仁喜)
白木蓮7(110316)
「木蓮の落花ひろひてみほとけの 指とおもひぬ十二の智円」(与謝野晶子 舞姫)「木蓮の散りて干潟(ひがた)の貝めける はやしの道の夕月夜かな」(与謝野晶子 火の鳥)「木蓮の花びらを立て船一つ あらはれしかな水平線に」(与謝野晶子 心の遠景)
「木蓮の花びら風に折れてあり」(松本たかし)
白木蓮5(100125)
「モクモクと地(つち)のきほひや木蓮花」(松根東洋城)
白木蓮4(090318)
「白木蓮に純白という翳りあり」(能村登四郎)
紫木蓮2(080411)
「竪川(たてかは)に牛飼ふ家や楓(かへで)萌え 木蓮咲き児牛遊べり」(左千夫)
「木蓮に日強くして風さだまらず」(飯田蛇笏)
白木蓮3(080328)
「白木蓮の花の木の間に飛ぶ雀 遠くは行かぬ声の寂しさ」(白秋)
「はくれんのひらくとくもりそめにけり」(星野麥丘人)紫木蓮1(070409)
「木蓮が頭上にありて胸開く」(坪内稔典)
白木蓮2(070307)
「木蓮の花許(ばか)りなる空を瞻(み)る」(草枕 夏目漱石)
白木蓮1(060417)
「木蓮や読書の窓の外側に」(子規)

桜咲く3(150324)
「山ざくらほどなくみゆる匂ひかな 盛りを人に待たれ待たれて」(西行法師 山家集春)
「山桜さきぬと聞きて見にゆかむ 人をあらそふ心とどめて」(西行法師 山家集春)
「山三里桜に足駄穿きながら」(漱石 明治29年)
「川向ひ桜咲きけり今戸焼」(漱石 明治29年)
「おくれたる一本桜憐なり」(漱石 明治41年)
桜咲く2(140326)
「老づとに何をかせまし 此春の花待ちつけぬわが身なりせば」(西行法師)「おのづから花なき年の春もあらば 何につけてか日をくらさまし」(西行法師)「うらやましうき世の北の山桜」(芭蕉)
桜咲く1(130318)
「春といへば誰も吉野の花をおもふ 心にふかきゆゑやあるらむ」(西行法師 山家集春)「おぼつかないづれの山の峰よりか 待たるる花の咲きはじむらむ」(西行法師 花を待つ心を 山家集春)「うらやましうき世の北の山桜」(芭蕉)

蕗の葉3(150416)
「こだまする谷に向ひて吾は居り 青葉になりしみ吉野の山」(土屋文明 吉野山 ゆづる葉の下)
「この庭の奥にまはりて見渡せば 奥ふかき吉野山のしたしき」(土屋文明 吉野山 ゆづる葉の下)
「蕗の葉や道しるべ負ふ石の亀」(水原秋櫻子 余生)
「蕗伸びてくらき典医の家構」(水原秋櫻子 殉教)
蕗の葉2(140426)♯3072
「今日(けふ)までに老いたることもあはれにて 若葉夕(ゆふ)てる山に向ふも」(土屋文明 五月十六日温泉獄 ゆづる葉の下)「夕光(ゆふひかり)うするる山に手をとりて つつじの花も見えなくなりぬ」(土屋文明 五月十六日温泉獄 ゆづる葉の下)「蕗の葉に谷わたり来し落花あり」(水原秋櫻子 古鏡)「蕗の葉をかざす菫の濃むらさき」(水原秋櫻子 重陽)
蕗の葉1(130428)
「快(こころよ)き夏来にけりといふがごと まともに向ける矢車の花」(長塚節 大正3年)「窓の外(と)は甍(いらか)ばかりのわびしきに 苦菜(にがな)ほうけて春行かむとす」(長塚節 大正3年)「やまみずの珠なす蕗の葉裏かげ」(飯田蛇笏)

諸葛菜11(150323)
「枝のさきわれよりひくく垂りさがり 老木桜(おいきざくら)のつぼみ繁きかも」(若山牧水 秩父の春 くろ土)
「岩がくり落ち落つる水は 八十(やそ)にあまり分れてぞ落つこの岩の渓は」(若山牧水 秩父の春 くろ土)
「手を洗ふにほどよきほどのほそき滝 きよらにかかる道の傍(かたへ)に」(若山牧水 秩父の春 くろ土)
「夕暮は妻恋ひのとき諸葛菜」(森澄雄 白小)
「諸葛菜窓塞ぐかに活けくれぬ」(石田波郷 酒中花)
諸葛菜10(140323)
「渓ばたの老木の梅は 荒き瀬のとびとびの岩に散りたまりたり」(若山牧水 一夜を小さき鉱泉宿に過し翌日名栗川に沿うて飯能町に出づ、川小さけれど岩清く水澄みたり。秩父の春 くろ土)「手を洗ふにほどよきほどのほそき滝 きよらにかかる道の傍(かたへ)に」(若山牧水 秩父の春 くろ土)「諸葛菜やたらに咲かせ悉皆(しっかい)屋」(星野麥丘人)
諸葛菜9(130316)
「渓の音ちかく澄みゐて 春の夜の明けやらぬ庭に うぐひすの啼く」(若山牧水 秩父の春 くろ土)「渓ばたの老木の梅は 荒き瀬のとびとびの岩に 散りたまりたり」(若山牧水 秩父の春 くろ土)「師を訪ひ得しはずみ歩みや諸葛菜」(石田波郷 鶴)
諸葛菜7(120327)
「なにごとぞ今朝の霞といひすてて 庭にいづれば白梅咲けり」(若山牧水 白梅集 春浅し)「白梅の花が咲きたり咲きたりと 朝な夕なに過すこのごろ」(若山牧水 白梅集 春浅し)「病室にむらさき充てり諸葛菜」(石田波郷 酒中花)
諸葛菜6(100304)
「ありありと縄焼きし灰諸葛菜」(能村登四郎)
諸葛菜5(090305)
「城跡や大根花咲く山の上」(子規)
諸葛菜4(080318)
「諸葛菜(しょかつさい)晩年の文字美しや」(角川源義)
諸葛菜2(070202)
「足もとに点(とも)るむらさき諸葛菜(しょかつさい)」(草間時彦)
諸葛菜1(060326)
「諸葛菜咲き伏したるに又風雨」(水原秋桜子)

大根の花4(150425)
「朝づく日峰をはなれつ わが歩む渓間のあを葉ひとつひとつ光る」(若山牧水 上州吾妻の渓にて くろ土)
「飛沫(しぶき)よりさらに身かろくとびかひて 鶺鴒(せきれい)はあそぶ朝の渓間に」(若山牧水 上州吾妻の渓にて くろ土)
「荒き瀬のうへに垂れつつ風になびく 山藤のはなの房長からず」(若山牧水 上州吾妻の渓にて くろ土)
「岬への単線をどり花大根」(林翔)
大根の花3(110329)
「城跡や大根花咲く山の上」(子規)
大根の花2(100411)
「春もはや一畝(ひとせ)うつろふ大根花」(浪化)
大根の花1(070413)
「花咲いて人にはうとき大根かな」(旧国)

草青む3(150318)
「都人いとまありてや けふも又とばたの面(おも)に若菜つむらん」(前大納言宗房 新葉集春)
「草の原みどりをこめて むさし野や限りもしらず霞む春かな」(前大納言光有 野霞といふことを 新葉集春)
「草青む歩よりもこころ遠く遠く行き」(森澄雄 四遠)
「湖へ草の青めば今日さらに」(森澄雄 四遠)
草青む2(140408)
「身のまはりは日に日に好きな草が咲く」(山頭火 鴉)
「石畳つぎ目つぎ目や草青む」(一茶)
「草青むこころに剣ひかる夜を」(飯田龍太)
「草青む方へ亡き母亡き子連れ」(飯田龍太)
「あすからは若菜摘まむと 片岡のあしたの原はけふぞやくめる」(人麿 題しらず 拾遺集春)
「野辺みれば若菜積みけりうべしこそ 垣根の草も春めきにけり」(貫之 恒佐の右大臣の家の屏風に 拾遺集春)
「春日野におほくの年は摘みつれど 老いせぬものは若菜なりけり」(円融院御製 若菜を御覧じて 拾遺週春)
草青む1(130324)
「春日野の春はみどりになりにけり 若菜摘まむと誰かしめけむ」(壬生忠見 新古今集春上)「若菜つむ袖とぞ見ゆる かすがのの飛火の野辺の雪のむらぎえ」(前参議教長 新古今集春上)「石畳つぎ日つぎ日や草青む」(一茶)

草の芽5(140309)
「春萌ゆる芽かも掘るらむ 裏の川の岸にひさしくかがまれる人」(中村憲吉 早春雑詠 昭和6年)「春いまだ田は鋤(す)かねども 堰(せき)のみづ分れひかりて山蔭にみゆ」(中村憲吉 早春雑詠 昭和6年)「のんびり尿する草の芽だらけ」(山頭火 柿の葉)「木の芽や草の芽やこれからである」(山頭火 鴉)
草の芽4(130306)
「おく山は芽吹きのおそき樹ごもりに 淡(うす)くれなゐの桂木の花」(中村憲吉 春雑詠 昭和5年)「春にして芽吹かんとする枯山(からやま)は 木原のうへぞ霞わたれる」(中村憲吉 春雑詠 昭和5年)
「ほろにがさもふるさとの蕗のとう」(山頭火)
「やっぱり一人がよろしい雑草」(山頭火)
草の芽3(120305)
「あるがまま雑草として芽をふく」(山頭火)
草の芽2(070208)
「門の草芽を出すやいなやむしらるる」(一茶)

野蒜5(150222)
「梅の花紙屑めきて枝に見ゆ われのこころのこのごろに似て」(若山牧水 春浅し 朝の歌)
「地とわれと離ればなれにある如き 今朝のさびしさを何にたとへむ」(若山牧水 春浅し 朝の歌)
「野蒜掘る今宵の酒をたのしみて」(上村占魚)
「芹噛んで苦みひろがる淋しさも」(能村登四郎)
野蒜4(140310)
「汝(なれ)は芹つめわれは野蒜を摘まましと むきむきにしてあさる枯原」(若山牧水 春浅し 朝の歌)「斯くて早や春は立つにか をちかたの峰(を)の上(へ)かすみて芹つむわれは」(若山牧水 春浅し 朝の歌)「みちのくのひとはかなしや野蒜掘る」(山口青邨)「摘みたきもの空にもありて野蒜摘」(能村登四郎)「野蒜摘む老婆の爪のひび割れて」(夏目雅子)
野蒜3(110315)
「野蒜掘るあしたのことは考へず」(鈴木真砂女)
野蒜2(090218)
「ビードロのガラス戸すかし 向ひ家の棟(むね)の薺(なずな)の花咲ける見ゆ」(子規 明治33年)「おろそかにい行き到(いた)れる春なれや 青める草は水の辺(へ)に多し」(長塚節 明治40年)「野蒜掘れば強き匂いや暮の春」(松本たかし)
野蒜1(070319)
「みちのくのひとやかなしや野蒜掘る」(山口青邨)

草萌ゆ2(150408)
「ここにおちつき草萌ゆる」(山頭火 鉢の子)
「ほんにしづかな草の生えては咲く」(山頭火 山行水行)
「うれしいこともかなしいことも草しげる」(山頭火 山行水行)
「いつでも死ねる草が咲いたり実ったり」(山頭火 山行水行)
「ここを死に場所とし草のしげりにしげり」(山頭火 山行水行)
草萌ゆ1(140324)
「おちついて死ねそうな草萌ゆる」(山頭火)
「其中一人いつも一人の草萌ゆる」(山頭火)
「囚人の墓としひそかに草萌えて」(山頭火)

「我が庭の小草(をぐさ)萌えいでぬ 限りなき天地(あめつち)今やよみがへるらし」(子規 明治31年)
「鶏(にはとり)のつつく日向(ひなた)の垣根より うら若草は萌えそめにけん」(子規 明治31年)

「石激(いはばし」る垂水の上のさ蕨の 萌え出づる春になるにけらしも」(志貴皇子 万葉集巻八1418)
「春日野に煙立つ見ゆ をとめらし春野のうはぎ採(つ)みて煮(に)らしも」(万葉集巻十1879)

三千
「三千の俳句を閲(けみ)し柿二つ」(子規)
「ところてん逆しまに銀河三千尺」(蕪村)

「辛菜(からしな)も淋しき花の咲きにけり」(一茶)

椿11(140319)
「フランスの人がつくりしビードロの一輪ざしに椿ふさはず」(子規 明治33年)
「砥部焼きの乳の色なす花瓶に梅と椿と共に活けたり」(子規 明治33年例会席上)
「落したか落ちたか路の椿かな」(子規 明治23年)
「鳥の声一樹に深き椿哉」(子規 明治30年)
寒椿8(130116)
「雑木山落葉しつくし この頃の冬日に光るは椿と青木」(木下利玄 冬山 紅玉)「底(そこ)温(ぬく)き落葉の中に 常葉樹の芽生そだてるここの杜かも」(木下利玄 冬山 紅玉)
「わが庵(いお)の椿に鵯(ひよ)の来る日課」(虚子)
椿10(120415)
「説法の今日ありといふ里寺の 椿の花は今盛りなり」(子規 明治32年)「法師等も住まずなりぬる山寺の 椿の花を折りて帰りつ」(子規 明治32年)
「ひとつ落ちて二つ落たる椿かな」(子規)
椿9(120226)
「わが門(かど)の片山椿(つばき) まこと汝(なれ)わが手触(ふ)れなな 地に落ちもかも」(物部廣足 万葉集巻二十4418)「あしひきの八峯(やつを)の椿 つらつらに見とも飽かめや 植ゑてける君」(大伴家持 万葉集巻二十4481)
「庭前(ていぜん)に白く咲いたる椿かな」(鬼貫)
椿8(110317)
「花の数おしくらしあふ椿かな」(水原秋櫻子)
椿7(100422)
「落椿夜めにもしろきあはれかな」(久保田万太郎)
椿6(100307)
「奥山の八峯(やつほ)の椿つばらかに 今日は暮らさねますらをのとも」(大伴家持 万葉集巻十九4152)
「葉にそむく椿や花のよそ心」(芭蕉)
寒椿7(111127)
「ひともとの野なかの椿 枯草のすさまじきなかのひともと椿」(若山牧水 黒松)「枯草のおどろがなかに ひともとの椿かがやく葉は葉の色に」(若山牧水 黒松)「ひともとの椿の花に 寄りてゆくわらべたち見ゆ枯草がくれ」(若山牧水 黒松)
「椿艶(つばきえん)これに対して老ひとり」(虚子)
寒椿6(101212)
「巨勢(こせ)山のつらつら椿 つらつらに見つつ思(しの)はな 巨勢の春野を」(万葉集巻一54)「川上のつらつら椿 つらつらに見れども飽かず 巨勢の春野は」(万葉集巻一58)
「寒椿竹の枝打つ音すなり」(飯田龍太)
寒椿5(091202)
「あしひきの山椿咲く八つ峰越え 鹿待つ君が斎(いわ)ひ妻かも」(万葉集巻七1262)「奥山の八つ峰の椿 つはらかに今日は暮らさね大夫の伴」(大伴家持 万葉集巻十九4162)
「火のけなき家つんとして冬椿」(一茶)
寒椿4(091112)
「あしひきの八峯(やつを)の椿 つらつらに見とも飽かめや植えてける君」(大伴家持 万葉集巻二十4481)「わが門(かど)の片山椿まこと汝(なれ) わが手触れなな土に落ちもかも」(物部廣足 万葉集巻二十4418)
「花咲いておのれをてらす寒椿」(飯田龍太)
寒椿3(081202)
「冬椿咲き焦げ落つる春の如」(虚子)
寒椿2(071208)
「巨勢山(こせやま)のつらつら椿(つばき)つらつらに見つつ思はな巨勢の春野を」(万葉集巻一54 坂門人足(さかとのひとたり))「我妹子を早見浜風大和なる我を松椿吹かざるなゆめ」(万葉集巻一73 長皇子)「わが門(かど)の片山椿(かたやまつばき)まこと汝(なれ)わが手触れなな土に落ちもかも」(万葉集巻二十4418 防人の歌)
「古井戸のくらきに落つる椿かな」(蕪村)
椿5(090328)
「一筵(むしろ)ちるや日かげの赤椿」(去来)
椿3(080327)
「はなびらの肉やはらかに落椿」(飯田蛇笏)
椿2(080217)
「我が門の片山椿まこと汝れ 我が手触れなな土に落ちもかも」(万葉集巻二十4418)「奥山のやつをの椿 君が代にいくたびかげを変へんとすらん」(藤原基俊 千載集賀歌)「とやかへるたかの尾山の玉椿 霜をば経とも色は変はらじ」(前中納言匡房 新古今集賀歌)
「一筵(むしろ)ちるや日かげの赤椿」(去来)
椿2(080317)
「巨勢(こせ)山のつらつら椿つらつらに見つつ思ふな こせの春野を」(坂門人足(さかとのひとたり)万葉集巻一54)「わが門の片山椿まこと汝 わが手触れなな土に落ちもかも」(万葉集巻二十4418)
「椿折りてきのふの雨をこぼしけり」(蕪村)
「椿落ちて昨日の雨をこぼしけり」(蕪村)
「落ちざまに水こぼしけり花椿」(芭蕉)
「落ちざまに虻(あぶ)を伏せたる椿かな」(漱石)
寒椿2(061225)
「冬つばき世をしのぶとにあらねども」(久保田万太郎)
椿1(060327)
「赤い椿白い椿と落ちにけり」(河東碧梧桐)

朧月9
「山の端はそこともわかぬ夕暮に 霞を出づる春の夜の月」(中務卿宗尊親王 春月を 玉葉集春)
「曇りなくさやけきよりもなかなかに 霞める空の月をこそ思へ」(権中納言定頼 玉葉集春)
「雲みだれ春の夜風の吹くなべに 霞める月ぞなほ霞みゆく」(従三位親子 玉葉集春)
「眺むればそこはかとなく霞む夜の 月こそ春の気色なりけれ」(法王御製 玉葉集春)

「よき人を宿す小家やおぼろ月」(蕪村)
「月おぼろ高野の坊の夜食時」(蕪村)
春の月9(130214)
「いかばかり山のあなたも霞むらん 曇りて出づる春の夜の月」(権中納言経高 新葉集巻第一)「百敷(ももしき)や衛士(ゑじ)のたく火の煙さへ 霞そへたり春の夜の月」(前左近大将公冬 新葉集巻第一)
「もの忘れせし手つめたく春の月」(松村蒼石)
朧月8(120408)
「雲にまがふ花の下にてながむれば 朧に月は見ゆるなりけり」(西行法師 山家集春)「雪と見てかげに桜の乱るれば 花のかさ着る春の夜の月」(西行法師 山家集春)
「草臥(くたびれ)て物買ふ宿や朧月」(蕪村 明和6年)
春の月7(110210)
「雲なくておぼろなりとも見ゆるかな 霞かかれる春の夜の月」(西行法師 山家集春)
「春の月城の北には北斗星」(中村草田男)
朧月7(110420)
「雲なくておぼろなりとも見ゆるかな 霞(かすみ)かかれる春の夜の月」(西行法師 山家集春)
「薬盗(ぬす)む女やは有るおぼろ月」(蕪村)
朧月6(100430)
「あだに散る梢の花をながむれば 庭には消えぬ雪ぞつもれる」(西行法師 山家集春)「風あらみ梢の花の流れきて 庭に波立つしら川の里」(西行法師 山家集春)「月光西にわたれば花影東に歩むかな」(蕪村)
朧月5(100331)
「雲なくておぼろなりとも見ゆるかな 霞かかれる春の夜の月」(西行法師 山家集春)「月みれば風に桜の枝なべて 花かとつぐるここちこそすれ」(西行法師 山家集春)
「女倶(ぐ)して内裏(だいり)拝まんおぼろ月」(蕪村)朧月4(090408)
「おぼろ夜や女盗まん計りごと」(子規)
朧月3(090213)
「照りもせず曇りもはてぬ春の夜の 朧月夜にしくものぞなき」(文集嘉陵春夜詩「不明不暗朧朧月」といへることをよめる 大江千里 新古今集春)
「雨近き温泉(でゆ)のけぶりや朧月」(召波)
朧月2(070501)
「恨みある門も過ぎけりおぼろ月」(蕪村)
朧月1(070501)
「照りもせず曇りも果てぬ春の夜の 朧月夜にしくものぞなき 大江千里」(新古今集)「春霞たなびきにけり 久方の月の桂の花も花や咲くらむ 貫之」(後撰集18)「いつとてもあはれと思うを寝ぬる夜の 月は朧げ泣く泣くぞ見し」(新古今集)
「さしぬきを足でぬぐ夜や朧月」(蕪村)
春の月3(080323)
「雲なくておぼろなりとも見ゆるかな 霞かかれる春の夜の月」(西行法師 山家集春)「大空は梅の匂ひにかすみつつ くもりもはてぬ春の夜の月」(藤原定家朝臣 新古今集春上)「梅の花あかぬ色香もむかしにて おなじかたみの春の夜の月」(皇太后宮太夫俊成女 新古今集春上)
「春月の病めるがごとき黄なるかな」(松本たかし)
春の月2(080222)
「春の夜は軒端の梅をもる月の ひかりもかをる心ちこそすれ」(皇太后宮太夫俊成 千載集春上)「匂ひもて分かばぞ分かむ梅の花 それとも見えぬ春の夜の月」(前中納言匡房 千載集春上)
「芝居出て舞台に似たり春の月」(松根東洋城)
春の月1(070310)
「梅が香に昔を問へば 春の月こやへぬ影ぞ袖にうつれる 藤原家隆」(新古今集巻一春上)「空はなほ霞もやらず風冴えて ゆきげに曇る春の夜の月」(新古今集)「山ふかみなほかげさむし春の月 空かきくもり雪は降りつつ」(新古今集)
「春の月さはらば雫(しづく)たりぬべし」(一茶)

春暖(260317)
「せせらぎのこぼこぼこもる落窪を たわみおほへる木いちごの花」(木下利玄 春暖 一路)「嫩芽(わかめ)ふく春山林(はるやまばやし)しづけさをば 立ちどまりきき立ちどまりきく」(木下利玄 春暖 一路)
「恩に謝し怨みを忘れあたたかし」(富安風生)

木瓜の花3(140316)
「木瓜咲けりその色飛びし赤絵かも」(水原秋櫻子 晩華)
「木瓜の朱は匂ひ石棺の朱は失ひぬ」(水原秋櫻子 霜林)
木瓜の花2(130205)
「風まぜに 雪は降りきぬ 雪まぜに 風は吹ききぬ あづさゆみ 張るにはあれど うぐひすも いまだ来鳴かず 野べに出て 若菜も摘まず つでづれと 草のいほりに こもりゐて うち数ふれば 如月(きさらぎ)も すでに半(なか)ばを すぎにけらしも」(良寛)
「木瓜(ぼけ)咲くや漱石拙(せつ)を守るべく」(漱石)木瓜の花1(100308)
「浮雲の影あまた過ぎ木瓜の花」(水原秋櫻子)

土佐みづき9(150319)
「夕かけて双子の山にゐる雲の白きを見れば春たけにける」(白秋 水之尾道の春 風隠集)
「濃き淡き遠山霞あかねさし 夕べは親し日の漏れにけり」(白秋 水之尾道の春 風隠集)
「まだ白き野火のけむりの春じめり ゆふべは靄にこもらひにけり」(白秋 水之尾道の春 風隠集)
「夕空のすこし傾く土佐みづき」(大嶽青児)
土佐みづき8(140315)
「土佐水木良寛堂を燭しけり」(松崎鉄之介)
土佐みづき7(130313)
「今は 冬もまたく過ぎたり。 日あたりにひとしきりづつ降る 梅の花」(釈迢空 曽我の里 遠やまひこ)「梅の花 すでに盛りの村に入り来て、雛(ヒヒナ)を棄つる子の群れに あふ」(釈迢空 曽我の里 遠やまひこ)
「土佐みづき風塵知らぬ星生れ」(市村究一郎)
土佐みづき6(120323)
「土佐みづき山茱萸も咲きて黄をきそふ」(水原秋櫻子)「土佐みづき小房こぞりぬ誕生日」(石田波郷)
土佐みづき4(110316)
「土佐水木仰ぎて星の息と合ふ」(古賀まりこ)
土佐みづき4(100318)
「空はれし一日(ひとひ)辛夷(こぶし)の明るきは はなびらゆれて風をよろこぶ」(佐藤佐太郎 天眼 昭和52年)「窓外に来る尾長鳥二つゐて 咲ける辛夷の花をついばむ」(佐藤佐太郎 星宿 昭和57年)
「峡空(かひぞら)の一角濡るる土佐みづき」(上田五千石)
土佐みづき3(090320)
「土佐みずき山茱萸も咲きて黄をきそふ」(水原秋櫻子)
土佐みづき2(080314)
「土佐みずき箱根細工を刳る音す」(水原秋櫻子)
土佐みづき1(080309)
「とさみづき一つ一つに霧雫」(五十嵐播水)

春の嵐6(140331)
「花に嵐のたとえもあるぞ(花発多風雨)さよならだけが人生だ(人生足別離)」(井伏鱒二訳 干武陵)
「草なら雨に萌えでても(草色全経細雨湿)花の枝には風さむし(花枝欲動春風寒)ああ世の中は流れ雲(世事浮雲何足問)飲んで笑うて寝るがよし(不如高臥且加餐)」(王維 酌酒与斐廸)「合戦の絵詞(えことば)となる春嵐」(原裕)
「をさまりし春の嵐のあとの宵」(森田公司)
春の嵐5(130313)
「やけあとの小さき家によもすがら とよもして吹く春の嵐は」(佐藤佐太郎 帰潮 昭和24年)「対岸の春山(はるやま)を焼く火のけむり やまずなびきぬ湖(うみ)の上の風」(佐藤佐太郎 帰潮 昭和24年)
「春嵐鳩飛ぶ翅を張りづめに」(橋本多佳子)
春の嵐4(120331)
「春疾風(はるはやて)木々が鞭打つ湯の湖見ゆ」(水原秋櫻子)
春の嵐3(090314)
「春疾風(はるはやて)すっぽん石となりにけり」(水原秋櫻子)春の嵐1(070325)
「音にのみ明けゆく春の嵐かな」(一萍)

春曙
「霞みゆく波路の舟もほのかなり まつらが沖の春の曙」(院御製 玉葉集春)
「夜をこめて霞まちとる山の端に 横雲しらで明くる空かな」(西園寺入道前太政大臣 玉葉集春)
「花おそき外山の春の朝ぼらけ 霞めるほかはまた色もなし」(二品法親王覚助 題しらず 玉葉集春)
「春あけぼの鵙(もず)はひかりの刃をみつめ」(飯田龍太 春の道 昭和45年)
「春あけぼの蓋開いてゐる小筥見え」(飯田龍太 山の木 昭和46年)

春暁7(120316)
「春はなほ花の匂ひもさもあらばあれ ただ身にしむはあけぼのの空」(藤原季通朝臣 千載集春)
「春暁の時の太鼓や旧城下」(虚子)
春暁6(110225)
「聞く人ぞ涙は落つる かへる雁なきて行くなるあけぼのの空」(皇太后宮太夫俊成 新古今集春)
「春の夜や宵あけぼのの其の中に」(蕪村)
春暁5(100312)
「梅が枝の花にこづたふ うぐいすの声さへにほふ春のあけぼの」(仁和寺法親王守覚 千載集春上)「風わたる軒端の梅に うぐひすの鳴きてこづたふ春のあけぼの」(権大納言実家 千載集春上)「春はなほ花の匂ひもさもあらばあれ ただ身にしむはあけぼのの空」(藤原季通朝臣 千載集春上)
「春暁やくらりと海月(くらげ)くつがへる」(加藤楸邨)
春暁4(090421)
「春暁や雨の洗ひし松の幹」(久保田万太郎)
春暁3(090311)
「春はなほ花の匂ひもさもあらばあれ ただ身にしむはあけぼのの空」(崇徳院に百首歌たてまつるとき、春の歌とてよめる 藤原季通朝臣 千載集春上)
「春暁何すべくして目覚めけむ」(野沢節子)
春暁1(060413)
「春眠のこの家つつみし驟雨かな」(星野立子)

春の曙3(150307)
「もえ出づる若菜あさるときこゆなり きぎす鳴く野の春の曙」(西行法師 きぎすを 山家集)
「花の色や声に染むらむ 鶯のなく音ことなる春のあけぼの」(西行法師 春のあけぼの、花見けるに、鶯の鳴きければ 山家集春)
「月みれば風に桜の枝なべて 花かとつぐるここちこそすれ」(西行法師 春の月あかかりけるに 山家集春)
「うき身にて聞くも惜しきは うぐひすの霞にむせぶ曙のこゑ」(西行法師 鶯によせておもひをのべけるに 山家集春)
「春あけぼの木々も茜のこゑを出す」(飯田龍太 山の影 昭和60年)
春の曙2(130302)
「風わたる軒端の梅に うぐひすの鳴きてこづたふ春のあけぼの」(権大納言実家 千載集春)「梅が枝の花にこづたふ うぐひすの声さへにほふ春のあけぼの」(仁和寺法親王守覚 千載集春)
「春あけぼのひと豊かなる日もありし」(飯田龍太)
春の曙1(080302)
「あまのはら富士の煙の春の色の 霞たなびくあけぼのの空」(前大僧正慈円 新古今集春上)「梅が枝の花にこづたふ鶯の 声さへ匂ふ春のあけぼの」(仁和寺法親王守覚 千載集春)「さらにまた霞にくるる山路かな 花をたづぬる春のあけぼの」(西行法師 山家集)「もえ出づる若菜あさるときこゆなり きぎす鳴く野の春の曙」(西行法師 山家集)
「春暁の竹筒にある筆二本」(飯田龍太)

日永4(250323)
「春の野に霞たなびき うらがなし この夕かげにうひすい鳴くも」(大伴家持 万葉集巻十九4290)「うらうらに照れる春日に 雲雀(ひばり)あがり 情(こころ)悲しも独りしおもへば」(大伴家持 万葉集巻十九4292)
「良寛にまりをつかせん日永哉」(漱石)
日永3(240325)
「恋ひつつも今日は暮らしつ 霞たつ明日の春日をいかにくらさむ」(万葉集巻十1914)「相おもはずあるらむ児ゆゑ 玉の緒の長き春日を思ひ暮らさむ」(万葉集巻十1936)「世に遠き心ひまある日永かな」(漱石)
日永2(2205)
「おほほしく君を相見て 菅(すが)の根の長き春日(はるひ)を恋ひわたるかも」(万葉集巻十1921)「朝戸出の君が姿をよく見ずて 長き春日を恋ひや暮らさむ」(万葉集巻十1925)
「永き日を太鼓打つ手のゆるむ也」(漱石)
日永1(2105)
「霞たつ春の永日を恋ひ暮らし 夜のふけ行きて妹にあへるかも」(万葉集巻十1894)「相おもはぬ妹をやもとな 菅の根の長き春日をおもひ暮らさむ」(万葉集巻十1934)「永き日や欠伸うつして別れ行く」(漱石)

杏の花7(150227)
「縁側に置きし小瓶(をがめ)に 花売(はなうり)がいけてくれたるまばら白梅」(子規 瓶梅 明治33年)
「後(のち)の世を願ふ阿弥陀(あみだ)の御仏(みほとけ)に 薄紅の梅奉(たてまつ)る」(子規 瓶梅 明治33年)
「畑中に一本咲くや桃の花」(子規 明治28年)
「荷車に娘載せけり桃の花」(子規 明治28年)
「桃の花鏡を知らぬ娘かな」(子規 明治28年)
「昔爺と婆と住みけり桃の花」(子規 明治32年)
「百姓の娘うつくし桃の花」(子規 明治32年)
「背戸並ふ小家々々や桃の花」(子規 明治32年)
「故郷に桃咲く家や知らぬ人」(子規 明治33年)
「三年にして六尺の桃の花」(子規 明治33年)
「飯くはす小店もなくて桃の花」(子規 明治33年)
杏の花6(130310)
「よき人の昔住みにし家の跡に 青菜花咲く鎌倉の里」(子規 鎌倉懐古 明治33年)「鎌倉の右の大臣(おとど)のおくつきに 草花咲きて人も詣でず」(子規 鎌倉懐古 明治33年)「山越えて伊豆へ来にけり花杏子」(松本たかし)「花杏中に日の照る寺甍」(森澄雄 空艪)「姉妹(おととい)の二人遊びや花杏」(森澄雄 余白)
杏の花6(130310)
「くれなゐの緞子(どんす)の衾(ふすま)重ね著(き)て 君と語りし春昔なり」(子規 春夜 明治33年)「春の夜の衾(ふすま)しかんと 紅梅のさかりの鉢を片よせおきぬ」(子規 春夜 明治33年)「もろこしは杏の花の名所かな」(子規 金州 明治28年)
杏の花5(120321)
「片空(かたそら)へよどむ黒雲下(した)びにて 正面(まとも)の夕日に遠(とほ)光る李花(りか)」(木下利玄 一路 春)「どんよりと春日かすめり 桃畑の北のかわきに枝かげ淡く」(木下利玄 紅玉 春日)「荷車に娘乗せけり桃の花」(子規)
杏の花4(110320)
「一村は杏の花に眠るなり」(星野立子)
杏の花3(110304)
「城中(じゃうちゅう)の千株(せんしゅ)の杏(あんず)花咲きて 関帝廟下(くわんていべうか)人(ひと)市(いち)をなす」(子規 明治31年)「山間や村は杏の花曇り」(子規)
杏の花2(100224)
「向つ峯(を)に立てる桃の樹ならめやと 人ぞ耳言(ささめ)きし汝(な)が情(こころ)やも」(万葉集巻七1356)「はしきやし吾家(わぎへ)の毛桃(けもも)本(もと)しげく 花のみ咲きてならざらめやも」(万葉集巻七1358)「山間や村は杏の花曇り」(子規)

彼岸花
「悔いるこころの曼珠沙華燃ゆる」(山頭火 柿の葉)
「うつりきてお彼岸花の花ざかり」(山頭火 其中一人)

冬至

冬至(12月22日―)
冬至8(141222)
「冬空の日の脚(あし)いたくかたよりて わが草家の窓にとどかず」(赤彦 冬の日 大正9年)
「冬ふけて久しとおもふ 日の脚(あし)は土蔵(つちくら)のうへに高くのぼらず」(赤彦 冬の日 大正9年)
「日かげ土かたく凍れる庭の上を 鼠走りて土蔵(くら)に入りたり」(赤彦 冬の日 大正9年)
「山国の虚空日わたる冬至かな」(飯田蛇笏)
「風雲の少しく遊ぶ冬至かな」(石田波郷 雨覆)
「奈良の筆手づさに呉れし冬至かな」(石田波郷 馬酔木)
「苫低く裏に日のさす冬至かな」(子規 明治27年)
冬至7(131222)
「山北の峡(はざま)の雪の消えやらず 冬至(とうじ)に近くなれるこのごろ」(赤彦 柿蔭山房の冬 大正13年)「西空は日の入るころか 雪あれの雲紅(くれなゐ)に染りつつ」(赤彦 柿蔭山房の冬 大正13年)「仏壇の菓子うつくしき冬至かな」(子規 明治33年)
冬至6(121221)
「畑(はたけ)みち霜解(しもど)けの水気(みづけ)土にしみ 真昼の冬日のまともにはあつき」(木下利玄 一路 冬日)「おきわたす今朝の大霜(おほしも)日を浴びて 野山の光いときらびやか」(木下利玄 一路 冬日)「貧乏な儒者訪(とひ)来ぬる冬至哉」(蕪村)
冬至5(111222)
「この日ごろ堅く凍れる庭の土に さす光さへ蹙(しじ)まりにけり」(赤彦 小寒)「小禽(ことり)来てひそけきものか 土の上に茨の赤実(あけみ)を食(は)みこぼしたり」(赤彦 小寒)「仏壇に水仙活けし冬至かな」(子規)
冬至4(101222)
「柑子の実熟れて落ちたり 降りたまる落葉音なき夕庭あはれ」(吉井勇 身辺の冬)「柑子の実すでに黄ばみて うす日さす冬至の午後の庭のひそけさ」(吉井勇 身辺の冬)「雑煮食ふ冬至も昼の日ざしかな」(太祗)
冬至3(091222)
「いづくにか月はひかりをとどむらん やどりし水もこほりゐにけり」(氷の歌とてよみ侍りける 左大臣親宗 千載集冬)「冬来ればゆくてに人は汲まねども こほりぞむすぶ山の井の水」(藤原成家朝臣 千載集冬)「書記典主(でんす)故園に遊ぶ冬至かな」(蕪村)
冬至2(071222)
「貧乏な儒者(じゅしゃ)訪ひ来ます冬至かな」(蕪村)
冬至1(061222)
「仏壇に水仙(すいせん)活(い)けし冬至かな」(子規)

二月4(150201)
「冬日かげ一日あたるふるさとの 広き縁がはを思ひつつあはれ」(古泉千樫 冬籠 大正15年(昭和元年))「冬の日の今日あたたかし 妻にいひて古き硯(すずり)を洗はせにけり」(古泉千樫 冬籠 大正15年(昭和元年)「寒(かん)の水にしづかにひたす硯石(すずりいし) 蒼(あを)き匂ひのいさぎよくして」(古泉千樫 冬籠 大正15年(昭和元年))「旅人の八重山こゆる二月哉」(子規 明治27年)「大仏の胴中まはる二月哉」(子規 明治27年)「中山をひとりこえたる二月哉」(子規 明治28年)
二月3(140201)
「梅が香におどろかれつつ 春の夜のやみこそ人はあくがらしけれ」(和泉式部 題しらず 千載集春)「梅の花香はことごとににほへども 色は色にもにほひぬるかな」(ただの梅、紅梅などおほかるをみて 和泉式部集)「春の夜は軒端の梅をもる月の ひかりもかをる心ちこそすれ」(皇太后宮太夫俊成 千載集春)「波を追ふ波いそがしき二月かな」(久保田万太郎)「われとわがつぶやきさむき二月かな」(久保田万太郎)
二月2(110202)
「かをる香のたえせぬ春は梅の花 吹きくる風やのどけかるらん」(久我前太政大臣 千載集春)「今よりは梅咲く宿は心せむ 待たぬにきます人もありけり」(大納言師頼 千載集春)「木の間出る人に二月の光かな」(虚子)
二月1(090202)
「柴の庵によるよる梅の匂ひ来て やさしき方もあるすまひかな」(伊勢のにしふくやまと申すところに侍りけるに、庵の梅かうばしくにほひけるを 西行法師 山家集春)「二ン月や天神様の梅の花」(一茶)

雪の朝10(150130)
「降る雪にしをりし柴も埋もれて 思はぬ山に冬ごもりする」(西行法師 雪道を埋む 山家集冬)
「雪埋むそのの呉竹折れふして ねぐら求むるむら雀かな」(西行法師 雪埋竹といふことを 山家集冬)
「たけのぼる朝日の影のさすままに 都の雪は消えみ消えずみ」(西行法師 雪の朝、霊山と申す所にて眺望を人々よみけるに 山家集冬)
「降り積もる雪を友にて春までは 日を送るべきみ山べの里」(西行法師 仁和寺の御室にて、閑居見雪といふことをよませ給ひけるに 山家集冬)
「五六軒雪つむ家や枯木立」(子規 明治29年)
「つらなりていくつも丸し雪の岡」(子規 明治29年)
「武蔵野やあちらこちらの雪の山」(子規 明治29年)
雪の朝9(140208)
「白雪にふり隠さるる梅の花 人知れずこそ匂ふべらなれ」(貫之 玉葉集春)「梅の花にほひも雪に埋もれば いかに分きてか今朝は折らまし」(藤原清輔朝臣 きさらぎの頃雪降るあした、後白河院の梅壷の女房のもとへ罷かりたるけるに、ただにはいかになど女房の申し侍りければ、軒ちかき梅を折りて差入るとてよめる 玉葉集春)「君見ずばかひなからまし梅の花 にほひは雪にうづもれずとも」(詠み人しらず 返し 玉葉集春)「今朝の雪根深(ねぶか)を薗(その)の枝折(しをり)かな」(芭蕉)「箱根こす人もあるらし今朝の雪」(芭蕉)「一村は雪にうもれて煙かな」(子規 明治27年)「松の雪われて落ちけり水の中」(子規 明治28年)「声悲し鴉の腹に雪を吹く」(子規 明治29年)「南天に雪吹きつけて雀鳴く」(子規 明治29年)
雪の朝8(130128)
「たけのぼる朝日の影のさすままに 都の雪は消えみ消えずみ」(西行法師 雪の朝、霊山と申す所にて眺望を人々よみけるに 山家集冬)「何となくくぐる雫の音までも 山辺は雪ぞあはれなりける」(西行法師 雪の歌どもよみけるに 山家集冬)「いくたびも雪の深さを尋ねけり」(子規 明治29年)
雪の朝7(120124)
「夜を寒み朝戸を開き出で見れば 庭もはだらにみ雪降りたり」(万葉集巻十2318)「あしひきの山に白きは わが屋戸(やど)に昨日の暮(ゆふべ)降りし雪かも」(万葉集巻十2329)「馬をさへながむる雪の朝かな」(芭蕉)
雪の朝6(110211)
「梅の花それともみえず ひさかたのあまぎる雪のなべて降れれば」(柿本人麻呂 拾遺集)「降る雪にいろはまがひぬ梅の花 香にこそ似たるものなかりけれ」(躬恒 拾遺集春)「黒森をなにといふとも今朝の雪」(芭蕉)雪の朝5(100218)
「残りたる雪に交れる梅の花 早くな散りそ雪は消ぬとも」(万葉集巻五849)「雪の色を奪ひて咲ける梅の花 いま盛りなり見む人もがな」(万葉集巻五850)「いざ行かむ雪見にころぶ所まで」(芭蕉)
雪の朝4(090202)
「我が背子と二人見ませばいくばくか このふる雪のうれしからまし」(藤(光明)皇后 (聖武)天皇に奉れる御歌一首 万葉集巻八1658)「沫雪(あはゆき)の庭にふりしき寒き夜を 手枕まかず一人かも寝む」(大伴家持 万葉集巻八1663)「箱根越す人もあるらし今朝の雪」(芭蕉) 「舟に焼火(たきび)を入るる松の葉」(聴処)「五六丁布網(ぬのあみ)干せる家見えて」(如行) 「朸(あふこ)むれつつ葦(よし)の中行く」(野水)「明くるまで戻らぬ月の酒の酔(ゑひ)」(越人)雪の朝3(080203)
「雪ふれば木ごとに花ぞさきにける いづれを梅とわきて折らまし」(雪のふりけるを見てよめる 紀友則 新古今集冬)「明けやらぬ寝覚めの床に聞こゆなり まがきの竹の雪の下をれ」(夜深聞雪といふことを 刑部卿範兼 新古今集冬)「朝戸あけて見るぞさびしき 片岡の楢の広葉に降れる白雪」(山家の雪の朝といへる心をよみ侍りける 大納言経信 千載集)「降る雪にしをりし柴も埋もれて 思はぬ山に冬ごもりする」(雪道を埋む 西行法師 山家集冬)「降りつもる雪を友にて 春までは日を送るべきみ山べの里」(仁和寺の御室にて山家閑居見雪といふことをよませ給ひけるに 西行法師 山家集冬)「雪埋むそのの呉竹折れふして ねぐら求むるむら雀かな」(雪埋竹といふことを 西行法師 山家集冬)「馬をさへながむる雪の朝かな」(芭蕉)「雪の夜やひとり釣瓶(つるべ)の落つる音」(千代女)「住吉の雪にぬかづく遊女かな」(蕪村)
雪の朝2(080123)
「わが宿は雪降りしきて道もなし 踏み分けて訪ふ人もなし」(古今集冬)「雪ふれば冬ごもりせる草も木も 春に知られぬ花ぞ咲きける」(紀貫之 古今集冬)「冬ながら空より花の散り来るは 雲のあなたは春にやあるらむ」(清原深養 古今集冬)「常よりも篠屋(しのや)の軒(のき)ぞうづもるる 今日は都(みやこ)に初雪や降る」(瞻西上人 新古今集冬)「降ればなほ憂さのみまさる世を知らで 荒れたる庭に積もる白雪」(紫式部 新古今集冬)「音羽山さやかにみする白雪を 明けぬとつぐる鳥のこゑかな」(高倉院御製 新古今集)「我が雪と思へばかろし笠の上」(其角)「応々といへど敲(たた)くや雪の門」(去来)「これがまあつひの薯戟iすみか)か雪五尺」(一茶)「いくたびも雪の深さを尋ねけり」(子規)

鶫(つぐみ)6(150130)
「鶫死して翅拡ぐるに任せたり」(山口誓子)
「逆落す鶫の群や霧の穴」(水原秋櫻子)
鶫(つぐみ)5(120215)
「吉野山みねの白雪いつ消えて けさは霞(かすみ)のたちかはるらん」(源重之 金葉集春)「うちなびき春は来にけり 山川の岩間の氷けふやとくらん」(修理太夫顕季 金葉集春)「つぐみ哀れおくれかかりし一羽あり」(高浜年尾)
鶫(つぐみ)4(110305)
「鶫飛び木の葉のやうにさびしきか」(細見綾子)
鶫(つぐみ)3(091129)
「つぐみ哀れおくれかかりし一羽あり」(高浜年尾)
鶫(つぐみ)2(090129)
「耳聡(さと)き墓(はか)もあるべし鶫(つぐみ)鳴く」(飯田龍太)
鶫(つぐみ)1(090110)
「つぐみ哀れおくれかかりし一羽あり」(高浜年尾)

霜の夜4(150129)
「夜天よりしんしんと降るもののあり 音に冴ゆるは霜にかあるらし」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)
「おのが身の起伏(おきふし)に思ひ入る 夜半はすさまじと聴く霜のひびきを」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)
「世に出でじとおもふ心のつのればか 霜いや深し白川の里」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)
「みづからをいたはりて云ふ もの思(も)はず霜のひびきに聴き入りて居れ」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)
「不忍(しのばず)の鴨寝(ね)静まる霜夜かな」(子規 )
「ほんのりと茶の花くもる霜夜かな」(子規 明治15年)
「辻堂に狐の寐たる霜夜かな」(子規 明治27年)
霜の夜3(140127)
「霜かづく枯野の草は寂しきに いづくに人の心とむらむ」(西行法師 枯野の草をよめる 山家集冬)「さまざまに花咲きたりと見し野辺の 同じ色にも霜がれにけり」(西行法師 野の辺りの枯れたる草といふことを、双林寺にてよみけるに 山家集冬)「独り寝のさめて霜夜をさとりけり」(千代女)
霜の夜2(110125)
「かたみにやうは毛の霜をはらふらん とも寝の鴛(をし)のもろ声に鳴く」(源親房 千載集冬)「おく霜をはらひかねてやしをれ伏す かつみがしたに鴛(をし)の鳴くらん」(賀茂重保 千載集冬)「わが骨のふとんにさはる霜夜かな」(蕪村)
霜の夜1(070125)
「我が骨のふとんにさはる霜夜かな」(蕪村)

春を待つ6(150127)
「やがて生(あ)るる蝌蚪(くわと)のいのちを思ふなり このごろしるき寒(かん)の衰へ」(吉井勇 冬去んぬ 遠天)
「縕袍(うんぽう)の膝のあたりの酒汚染(さけじみ)もはだらはだらに冬去りにけり」(吉井勇 冬去んぬ 遠天)
「何事の頼みなけれど春を待つ」(虚子 五百五十句 昭和13年)
「過ぎて行く日を惜しみつつ春を待つ」(虚子 六百句 昭和16年)
春を待つ5(140124)
「冬ここに残るかと思ふはだらなる鬢(びん)の白みをいかにせましな」(吉井勇 冬去んぬ 遠天)「冬去んぬ凡兆(ぼんてう)の句なつかしむこころ起るも寒過ぎしゆゑ」(吉井勇 冬去んぬ 遠天)「なべてよし世に忘られてあるもよし 炭の乏しきそれもまたよし」(吉井勇 冬去んぬ 遠天)「春を待つ娘心や手鞠(てまり)唄」(井月)「庵(いほ)の夜や春待兼(まちかね)て人の寄る」(井月)
春を待つ4(130201)
「草も木も降りまがへたる雪もよに 春待つ梅の花の香ぞする」(右衛門督通具 新古今集冬)「春やくる人やとふともまたれけり けさ山里の雪をながめて」(赤染衛門 後拾遺集冬)「春待(まつ)や何書を見ても得る所」(碧梧桐 明治40年)
春を待つ3(120201)
「雪深き山路に何にかへるらむ 春待つ花のかげにとまらで」(能宣 拾遺集冬)「ゆきつもるおのが年をば知らずして 春をばあすと聞くぞ嬉しき」(源重之 拾遺集冬)「口明けて春を待つらん犬はりこ」(一茶)
春を待つ2(110201)
「やはらかき春の日射しとなりにけり 濡いろ見する庭石の艶」(吉井勇 天彦)「比叡鶯いまだ来鳴かず 庭隅の笹の葉摺れども春と思ふに」(吉井勇 天彦)「春待つや万葉、古今、新古今」(久保田万太郎)
春を待つ1(080201)
「草も木も降りまがへたる雪もよに 春待つ梅の香ぞする」(右衛門督通具 新古今集冬)「いつしかと山の桜もわがごとく 年のこなたに春を待つらむ」(後撰集冬)「地の底に在るもろもろや春を待つ」(松本たかし)

春浅し9(140131)
「地(つち)のうへにくろびかりする石ひとつ 朝な夕なに誰かも見らむ」(斎藤茂吉 春山 霜 昭和16年)「春のみづ砂をながせる跡ありて 山の小鳥らむつみあそびし」(茂吉 春山 霜)「木々の葉まだ芽ぶかざる 上野(かみつけ)の山路をゆけば地(つち)ふるふおと」(茂吉 春山 霜)「春浅き水(みづ)を渉(わた)るや鷺(さぎ)一つ」(碧梧桐 明治34年)「春浅き木立の上の空のいろ」(柴田白葉女)

春の日射し(140127)
「鎌倉の山あひ日だまり冬ぬくみ 摘むにゆたけき七草なづな」(木下利玄 なづな 一路)「なづななづな切抜き模様を地に敷きて まだき春ありここのところに」(木下利玄 なづな 一路)「春の日や高くとまれる尾長鶏(とり)」(村上鬼城)

春めく6(140126)
「冬山に来つつ しづけき心なり。われひとり 出でて 踏む 道の霜」(釈迢空 春のことぶれ)「しみじみと ぬくみを覚ゆ。山の窪。 冬の日ややに くだり行く いろ」(釈迢空 春のことぶれ)「なんといふ空がなごやかな柚子の二つ三つ」(山頭火 山行水行)「焚くだけの枯木はひろへた山が晴れている」(山頭火 山行水行)「春めきし人の起居(たちい)に冴え返る」(虚子 六百五十句 昭和21年)
春めく5(130214)
「さわやかに春来てなごむ 日々の晴れ。清き帽子は、風にとらさず」(釈迢空 春帽)「きよげなる帽子かづきて、出あるきし昔の春の こほしかりけり」(釈迢空 春帽)「湖の空繊月の針春めきし」(森澄雄 四遠)
春めく4(120206)
「ふるさとは春めきにけり み吉野のみかきの原も霞(かすみ)こめたり」(平兼盛 金葉集春)「山路こそ雪のした水とけざらめ 都の空は春めきぬらむ」(西行法師 山家集春)「春めきし野山消え去る夕かげり」(虚子)
春めく3(110205)
「かぎろひの春なりければ 木の芽みな吹き出(いづ)る山べ行きゆくわれよ」(斎藤茂吉 赤光)「かぎろひのゆふさりくれど 草のみづかくれ水なれば夕光なしや」(斎藤茂吉 赤光)「春めくや山の小家に魚を烹る」(雅堂)
春めく2(100206)
「年のはに春の来(きた)らばかくしこそ 梅をかざして楽しく飲まめ」(大令史野氏宿奈麻呂 万葉集巻五833)「春さらばあはむと思ひし梅の花 今日の遊びにあひ見つるかも」(薬師高氏義通 万葉集巻五835)「春めきてものの果てなる空の色」(飯田蛇笏)
春めく1(090205)
「春めくと雲に舞ふ陽に旅つげり」(飯田龍太)

春隣り5(140125)
「今日もくもる空に秀(ひい)づる冬木の梢(うれ) 待たねばならぬ春の遠さよ」(木下利玄 春動く 一路)「春を浅み日かげればさむき雑木原(ざふきはら) 小禽(ことり)見うしなひしが再び鳴かず」(木下利玄 春動く 一路)「村びとに遠く星ある春隣り」(飯田龍太 山の影 昭和60年))「座布団のいろのさまざま春隣り」(飯田龍太 遅速 平成元年)

白梅13(140216)
「わが岳(をか)に盛に咲ける梅の花 残れる雪をまがへつるかも」(太宰帥大伴卿の歌一首 万葉集巻八1640)「引きよぢて折らば散るべみ梅の花 袖にこきれつ染(し)まば染(し)むとも」(三野連石守の歌一首 万葉集巻八1644)「沫雪(あわゆき)のこのころ続ぎてかくふれば 梅の初花散りか過ぎなむ」(大伴坂上郎女の歌一首 万葉集巻八1651)「酒杯(さかづき)に梅の花浮かべ思ふどち 飲みての後は散りぬともよし」(大伴坂上郎女の歌一首 万葉集巻八1656)「こちの梅も隣のうめも咲きにけり」(蕪村)「白梅やわすれ花にも似たる哉」(蕪村)

紅梅15(140202)
「朝あけの窓ふく風は寒けれど 春にはあれや梅の香ぞする」(従三位親子 春の歌の中に 玉葉集春)「降る雪のしたに匂へる梅の花 しのびに春の色ぞみえける」(源信明朝臣 玉葉集春)「埋木の下にやつるる梅の花 香をだに散らせ雲の上まで」(紫式部 上東門院中宮と申し侍りける時、里より梅を折りて参らすとて 玉葉集春)「色につき匂にめづる心とも 梅がえよりやうつりそめけん」(皇太后宮太夫俊成 賀茂の社に奉りける百首の歌の中に、梅をよみ侍りける 玉葉集春)「紅梅や 神のこころも堅からず」(蓼太「紅梅(うめ)生けて をみなの膝のうつくしき」(室生犀星)

まんさく5(140212)
「春と云へど峡間(はざま)はさむし 夜をいとひ厚き衾(ふすま)に人を寝(い)ねしむ」(中村憲吉 春峡清音 大正8年)「春あさき峡(かひ)はともしき水のおと 此処(ここ)に住む我を思はね」(中村憲吉 春峡清音 大正8年)「まんさくや峡人はまだ外に出ず」(森澄雄 花眼)

臘梅4(140206)
「霜雪もいまだ過ぎねば思はぬに 春日(かすが)の里に梅の花見つ」(大伴宿禰三林の梅の歌一首 万葉集巻八1434)「莟(ふふ)めりと言ひし梅が枝(え) 今朝降りし沫(あわ)雪にあひて咲きぬらむかも」(大伴宿禰村上の梅の歌一首 万葉集巻八1436)「臘梅に光琳笹(こうりんざさ)の風少し」(石川星水女)

節分2(140203)
「飽かなくの匂を散らす梅がえの 花にいとはぬ庭の春風」(亀山院御製 庭梅といふ事を 玉葉集春)「色も香もことしの春は梅の花 ふたたび匂ふ心地こそすれ」(源公忠朝臣 枇杷左大臣の大臣になりて侍りけるよろこびに、貞信公まかりて杯などたびたびになりて、人人歌よみ侍りけるに 玉葉集春)「年の豆鬼とりひしぐ礫(つぶて)かな」(井月)「三方(さんぱう)の豆にも添へよ熨斗包(のしづつみ)」(井月)

クロッカス8(140227)
「この庭で手鞠(てまり)遊ばむ待ちがたく 孫の童(こ)を待つ春のあけぼの」(宮柊二 緑金の森)「霞晴れあやめ咲くべき水の辺の いまだ寒けき春はあけぼの」(宮柊二 緑金の森)
「クロッカス咲きそめさんがあらたまる」(飴山實)
「クロッカス汚れ知らず土に咲く」(森田峠)
「クロッカス咲きそめさんがあらたまる」(飴山實)
クロッカス7(130227)
「十年(ととせ)まへ三里塚より移し経し辛夷(こぶし)咲き初め春はあけぼの」(宮柊二 緑金の森)「霞晴れあやめ咲くべき水の辺のいまだ寒けき春のあけぼの」(宮柊二 緑金の森)「芝ひろく踝(くびす)をかへすクロッカス」(富安風生)

蕗の薹11(260304)
「一つ鉢にこもりつつある蕗の薹 いづれを見ても春のさきがけ」(斎藤茂吉 蕗の薹 のぼり路 昭和15年)
「十あまり一つ鉢なる蕗の薹 おくれ先立つ一様(ひとさま)ならず」(斎藤茂吉 蕗の薹 のぼり路 昭和15年)
「雨ふらぬ冬日つづきてわが庭の蕗の薹の萌えいまだ目だたず」(斎藤茂吉 蕗の薹 小園 昭和19年)
「山ふかく蕗のとうなら咲いている」(山頭火 旅から旅へ)
蕗の薹10(250301)
「川原(かはら)べの石の間(あひ)より萌えいづる 小(を)ぐさの芽にも声あれなとおもふ」(中村憲吉 大正7年)「みどり立つ春の山川へ起きてゆかば 我がいかばかりなつかしからむ」(中村憲吉 大正7年)
「ひっそり蕗のとうここで休もう」(山頭火)
蕗の薹9(240209)
「まぼろしに現(うつつ)まじはり 蕗の薹(ふきのたう)萌(も)ゆべくなりぬ狭き庭のうへ」(斎藤茂吉 庭前 昭和12年)
「いつも出てくる蕗のとう出てきてゐる」(山頭火)「赤字つづきのどうやらかうやら蕗のとう」(山頭火)
蕗の薹8(230324)
「一つあると蕗のとう二つ三つ」(山頭火)
蕗の薹7(220301)
昭和19年には、蕗の薹まで配給品だったことを知って、びっくりしました。「朝はやき土間のうへには青々と 配給の蕗の薹十ばかりあり」(斎藤茂吉 蕗の薹 小園 昭和19年)
「南瓜(たうなす)を猫の食ふこそあはれなり 大きたたかひここに及びつ」(蕗の薹 小園 昭和19年)「配給の沢庵みれば黄ににほふ その黄のにほひわが腹のなか」(随縁随歌 小園 昭和19年)
「いつも出てくる蕗のとう出てきてゐる」(山頭火)「蕗のとうことしもここに蕗のとう」(山頭火)
蕗の薹6(210228)
「ほろにがさもふるさとの蕗のとう」(山頭火)
蕗の薹5(200312)
「あるけば蕗のとう」(山頭火)「けふは蕗をつみ蕗をたべ」(山頭火)
蕗の薹4(200226)
「莟(つぼみ)とはなれもしらずよ蕗のたう」(蕪村)
蕗の薹3(190302)
「白紙に包みし土産(みやげ)蕗の薹」(虚子)蕗の薹2(180220)
「古垣や縄ほろと落つ蕗の薹」(室生犀星)

草の芽
「食べる物はあって酔ふ物もあって雑草の雨」(山頭火 山行水行)
「ある日ひとのこひしさも木の芽草の芽」(山頭火 雑草風景)
「それもよからう草が咲いている」(山頭火 雑草風景)
「死んでしまへば、雑草雨ふる」(山頭火 雑草風景)
「ともかくも生かされている雑草の中」(山頭火 山行水行)
「のんびり尿する草の芽だらけ」(山頭火 柿の葉)
「其中一人いつも一人の草萌ゆる」(山頭火 孤寒)
「ひとり住めばあをあをとして草」(山頭火 孤寒)
「身のまはりは日に日に好きな花が咲く」(山頭火 鴉)
「囚人の墓としひそかに草萌えて」(山頭火 鴉)
「木の芽や草の芽やこれからである」(山頭火 鴉)
「おちついて死ねさうな草萌ゆる」(山頭火 一草庵)
「何の草ともなく咲いてゐてふるさとは」(山頭火 一草庵)
草の芽4(250306)
「おく山は芽吹きのおそき樹ごもりに 淡(うす)くれなゐの桂木の花」(中村憲吉 花雑詠 昭和5年)「春にして芽吹かんとする枯山(からやま)は 木原のうへぞ霞わたれる」(中村憲吉 花雑詠 昭和5年)
「ほろにがさもふるさとの蕗のとう」(山頭火)
「やっぱり一人がよろしい雑草」(山頭火)
草の芽3(240305)
「あるがまま雑草として芽をふく」(山頭火)
草の芽2(230208)
「門の草芽を出すやいなやむしらるる」(一茶)

犬ふぐり9(140307)
「ねたましき思ひをつつむ手弱女(たおやめ)の 笑(えみ)にたぐへむ紅梅のはな」(左千夫 紅梅 明治42年)「かぎろひの朝日の軒に 鮮やかに咲きつつ憂(う)けき紅梅のはな」(左千夫 紅梅 明治42年)「こんこんと日は恙(つつが)なしや犬ふぐり」(森澄雄)
「観音は天平乙女犬ふぐり」(森澄雄)
「そこここに名もいとほしや犬ふぐり」(森澄雄)
犬ふぐり8(260308)
「春にむかふ山家(やまが)のうしろ 檪(くぬぎ)ひくき林にまじる白梅の花」(中村憲吉 比叡山 大正10年)「比叡山(ひえやま)へのぼる谷村の日かげ茶屋 谷べにさむき白梅の花」(中村憲吉 比叡山 大正10年)
「紺碧の空のなみだかいぬふぐり」(室岡純子)
犬ふぐり7(250307)
「ぬばたまの夜の起居(おきゐ)の春ごころ おのづからおもふ梅のまがきを」(左千夫 春来 明治42年)「春めきしこの一夜(ひとよ)さに梅もやと こころ動けば書(ふみ)読みがたし」(左千夫 春来 明治42年)「犬ふぐり空を仰げば雲も無し」(虚子 七百五十句 昭和26年)
犬ふぐり6(240309)
「汝(なれ)に謝(さ)す我が眼明(あきら)かいぬふぐり」(虚子)
犬ふぐり5(230130)
「犬ふぐり太陽軽く渡るなり」(川崎展宏)
犬ふぐり4(220316)
「陽は一つだに数へあまさず犬ふぐり」(中村草田男)
犬ふぐり3(210308)
「陽は一つだに数へあまさず犬ふぐり」(中村草田男)
犬ふぐり2(200131)
「雑草と言ふ草はなし犬ふぐり」(川本一誠子)

春の雪11(140214)
「わが苑(その)に梅の花散る ひさかたの天(あめ)より雪の流れ来るかも」(主人 万葉集巻五822)「梅の花散らくはいづくしかすがに この城(き)の山に雪は降りつつ」(大監大伴氏百代 万葉集巻五823)「吾が兄子(せこ)に見せむと思ひし梅の花 それともみえず雪のふれれば」(万葉集巻八1427)「含(ふふ)めりと言ひし梅が枝 今朝ふりし沫雪(あわゆき)にあひて咲きぬらむかも」(大伴宿禰村上の梅の歌一首 万葉集巻八1436)「雪沓(ゆきぐつ)をはかんとすれば鼠(ねずみ)ゆく」(蕪村)「懇(ねんごろ)な飛脚(ひきゃく)過ぎゆく深雪(みゆき)哉」(蕪村)

日向ぼこ4(150125)
「いく日(にち)もつづきて晴るる湖(みづうみ)の 氷を切りて冬田に積めり」(赤彦 氷湖 大正9年)
「磯の田にいく日にかならむ 積みてある氷の群れのとくることなし」(赤彦 氷湖 大正9年)
「氷切りて漁(と)りたる魚は生きてあり 山の我が家にくばりて持て来」(赤彦 氷湖 大正9年)
「田の中に爪もて我のたたき見る 堅き氷に日のあたりをり」(赤彦 氷湖 大正9年)
「人を見る目細く日向ぼこりかな」(虚子 六百句 昭和18年)
「縁に腰そのまま日向ぼこりかな」(虚子 七百五十句 昭和28年)
日向ぼこ3(111228)
「冬の日の脚(あし)いたくかたよりて 我が草家(くさいへ)の窓にとどかず」(赤彦 冬の日 大正9年)「冬ふけて久しとおもふ 日の脚は土蔵(つちぐら)のうへに高くのぼらず」(赤彦 冬の日 大正9年)
「日に酔ひて死にたるごとし日向ぼこ」(虚子)
日向ぼこ2(111217)
「寒つばき深紅に咲ける小さき花 冬木の庭の瞳のごとき」(窪田空穂 冬庭)「もの言はぬ木草と居(を)れば こころ足り老いしれし身を忘れし如き」(窪田空穂 庭の木草)「ちかよりて老婦親しく日向ぼこ」(飯田蛇笏)

初春4(150125)
「」()
初春3(140103)
「春霞かすみなれたるけしきかな 睦月もあさき日数と思ふに」(従三位為子 玉葉集春)「鳥の音ものどけき山の朝あけに 霞の色は春めきにけり」(前大納言為兼 山中春望といふ事をよみ侍りし 玉葉集春)「二日にもぬかりはせじな花の春」(芭蕉)「目出度さもちう位なりおらが春」(一茶)
初春2(110104)
「正月(むつき)立ち春の来たらば かくしこそ梅を招(を)きつつ楽しきをへめ」(万葉集巻五815)「寒(ふゆ)過ぎて暖(はる)し来たれば 年月(としつき)は新たなれども人は古(ふ)りゆく」(万葉集巻十1884)「青空にきず一つなし玉の春」(一茶)
初春1(080103)
「鐘ひとつ売れぬ日はなし江戸の春」(基角)

老の春(150125)
「老い痴(し)れて目(ま)たたきして過す我とはなりぬあるか無きかに」(窪田空穂 老齢 冬木原 昭和22年)
「耳うとく聴き取りかぬるもどかしさ 馴るるがままに忘れなむとす」(窪田空穂 老齢 冬木原 昭和22年)
「もの妬(ねた)みする暇(いとま)なくせはしくも過すに老いしわれとはいはむ」(窪田空穂 老齢 冬木原 昭和22年)
「大切の事を忘れてゐるごとき思ひのありて身より離れず」(窪田空穂 老身 去年の雪 昭和39年)
「老いぬれば心のどかにあり得むと思ひたりけり誤りなりき」(窪田空穂 老身 去年の雪 昭和39年)
「いそがしき心をもちて為(な)すなくも過(すご)す老ぞと己れあはれむ」(窪田空穂 老身 去年の雪 昭和39年)
「舌少し曲り目出度(めでた)し老の春」(虚子 六百五十句 昭和25年)
「今年子規(しき)五十年忌や老の春」(虚子 六百五十句 昭和25年)
「其他の事皆目知らず老の春」(虚子 六百五十句 昭和25年)
「両の手に玉と石とや老の春」(虚子 六百五十句 昭和25年)
「見栄もなく誇りもなくて老の春」(虚子 六百五十句 昭和25年)
「斯(かく)の如く俳句を閲(けみ)し老の春」(虚子 七百五十句 昭和27年)
「世に四五歩常に遅れて老の春」(虚子 七百五十句 昭和27年)
「とはいへど涙もろしや老の春」(虚子 七百五十句 昭和27年)
「起き出でてあら何ともな老の春」(虚子 七百五十句 昭和27年)
「下手謡(へたうたい)稽古(けいこ)休まず老の春」(虚子 七百五十句 昭和27年)
「目(め)悪きことも合ッ点老の春」(虚子 七百五十句 昭和27年)
「何事も知らずと答へ老の春」(虚子 七百五十句 昭和27年)
「傲岸(ごうがん)と人見るままに老の春」(虚子 七百五十句 昭和27年)
「書き留めて即(すなわ)ち忘れ老の春」(虚子 七百五十句 昭和28年)
「耄碌(もうろく)と人に言はせて老の春」(虚子 七百五十句 昭和31年)
「忘るるが故に健康老の春」(虚子 七百五十句 昭和31年)
「同し道歩み来りし老の春」(虚子 七百五十句 昭和33年)
「風雅とは大きな言葉老の春」(虚子 七百五十句 昭和33年)

葱2(150123)
「水仙の薫(かを)りのなかに眼をあけば めんめんと冬の日のふりそそぐ」(古泉千樫 大正3年)
「たけたかき棕櫚(しゅろ)の木かげは 水仙の青きが上にうつりてゐたり」(古泉千樫 大正3年)
「葱(ねぶか)洗ふ流れもちかし井出の里」(蕪村)(註)井出の里=京都府綴喜郡内。六玉川の一。
「ひともじを刈居(かりゐ)る関のこなたかな」(蕪村)(註)ひともじ=関西にてねぶかといふ。近江にてひともじといふ。関東にてねぎといふ。(物類呼称)
葱1(061210)332
「葱白くあらひたてたる寒さかな」(芭蕉)

炬燵2(150121)
「炉の上の炬燵櫓(こたつやぐら)に板置きし わが文机(ふづくゑ)のあはれなるかな」(吉井勇 冬夜独座 天彦)
「炉に火なし冷たき灰をながめつつ おもふおのれが寒きいのちを」(吉井勇 冬夜独座 天彦)
「炉酒酌む人もなければ 煤(すす)竹の自在の竹もさびしげに見ゆ」(吉井勇 猪野々行 天彦)
「ひさびさに雨戸開くれば 火の気なき炉の灰さむし霜を見るごと」(吉井勇 猪野々行 天彦)
「世の様の手に取る如く炬燵(こたつ)の間(ま)」(虚子 六百五十句 昭和25年)
「贈り来し写真見てをり炬燵(こたつ)かな」(虚子 七百五十句 昭和27年)
「炬燵あり城に籠(こも)るが如くなり」(虚子 七百五十句 昭和28年)
「我が仕事炬燵の上に移りたり」(虚子 七百五十句 昭和28年)
炬燵1(110116)
「腰ぬけの妻うつくしき巨燵(こたつ)かな」(蕪村)

冬の空9(150131)
「墨の線一つ走りて冬の空」(虚子 五百五十句 昭和15年)
「冬の空すこし濁りしかと思ふ」(虚子 六百句 昭和16年)
冬の空8(141212)
「比叡が嶺のうへにはすでに雪あれど わが心なほ寒からぬかな」(吉井勇 比叡の冬 遠天)「わが歌は朝(あした)ゆふべに 比叡が嶺に向ひて吐ける息に似しもの」(吉井勇 比叡の冬 遠天)「いまの世をいかにか思ふ かく問へど 人にあらねば比叡は答へず」(吉井勇 比叡の冬 遠天)「雲なきに時雨を落す空が好き」(虚子 五百五十句 昭和15年)「冬空に大樹のこずえ朽ちてなし」(虚子 六百句 昭和18年)「冬空を見ず衆生(しゅじょう)を視(み)大仏」(虚子 六百句 昭和18年)
冬の空6(121223)
「そこはかとなき思ひもてながめゐぬ 障子にさせる冬のうす日を」(吉井勇 身辺の冬 天彦)「柑子の実すでに黄ばみて うす日さす冬至の午後の庭のひそけき」(吉井勇 身辺の冬 天彦)「いくたびか寝てさめてまた冬の天」(加藤楸邨 起伏)

雪解(150131)
「しみじみと地(つち)にひびける雪どけの あまねき雫四方(よも)に起れり」(若山牧水 大雪のあと くろ土)
「鷭(ばん)の鳥めづらしきかも 大雪の降りうづみたる庭に来てをる」(若山牧水 大雪のあと くろ土)
「庭の雪かたく氷りて寒けきに ひとり籠れば部屋の明るさ」(若山牧水 大雪のあと くろ土)
「首縮め雪解(ゆきげ)雫(しずく)を仰ぎつつ」(虚子 六百五十句 昭和22年)
「雪解(ゆきどけ)の俄(にわか)に人のゆききかな」(虚子 六百五十句 昭和21年)

冬苺(150131)
「力ある大地の恵み冬苺」(虚子)

蒟蒻(150131)
「蒟蒻も舌も此夜を凍りけり」(子規 明治29年)

冬木立8(150131)
「」()
冬木立7(141227)
「宿ごとにさびしからじとはげむべし 煙こめたる小野の山里」(西行法師 山家集冬)「限あらむ雲こそあらめ 炭がまの烟に月のすすけぬるかな」(西行法師 山家集冬)「玉まきし垣ねのまくず霜がれて さびしくみゆる冬の山里」(西行法師 山家集冬)「冬木立北の家(や)かげの韮(にら)を刈る」(蕪村 夜半叟)「里ふりて江の鳥白し冬木立」(蕪村 暁台宛)
冬木立6(121226)
「何処(いづく)にかゆかむ 山ことごとし海も憂し 多摩川ぞひの冬木の中」(若山牧水 白梅集 多摩川)「多摩の川真冬(まふゆ)ほそぼそ痩せながれ 音(ね)を立つるかも冬の夜ふけに」(若山牧水 白梅集 多摩川)「乾鮭(からざけ)ものぼるけしきや冬木立」(蕪村)

冬の夜8(150122)
「」()
冬の夜7(141225)
「適薬のなしといふなるじんましん この身に生れこの身悩ます」(窪田空穂 蕁麻疹 木草と共に 昭和37年)「癒えがたきじんましんぞと諦めて 忘れんとおもへこの悪痒(わるがゆ)さ」(窪田空穂 蕁麻疹 木草と共に 昭和37年)「じんましん怠けてくれよ 病みやすき老の心の暗くなれるを」(窪田空穂 蕁麻疹 木草と共に 昭和37年)「飛騨(ひだ)山の質屋(しちや)戸ざしぬ夜半(よは)の冬」(蕪村 落日庵)「われを厭(いと)ふ隣家寒夜(かんや)に鍋(なべ)を鳴らす」(蕪村)冬の夜6(130124)
「箱の隅の粉炭(こなずみ)つげば 何の枯葉かまじりて 燃ゆる匂ひするかな」(若山牧水 冬の夜 白梅集)「とりとめて何おもふとにはあらねども 夜半ひとり居るはたのしかりけり」(若山牧水 冬の夜 白梅集)「葉の落ちて落ちる葉のない太陽」(山頭火 柿の葉)「風の中からかあかあ鴉」(山頭火 柿の葉)「何事もない枯木雪ふる」(山頭火 柿の葉)
冬の夜5(121228)
「寝しづまる街の遠くの遠くより 下駄の音来(く)も地(つち)凍てたらむ」(木下利玄 紅玉 深夜)「遠方の下駄の音来(こ)ずやみにけり 深夜の地(つち)を霜とざすらむ」(木下利玄 紅玉 深夜)「ふとん着て達磨(だるま)もどきに居(すわ)りけり」(一茶)

冬深み(150118)
「夜ふかく音なく降るは霜ならむ 炭継ぎ足して耳を澄ますも」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)
「夜ふかく天(あめ)よりくだるものありて 玻璃戸(はりど)もいつか凍(い)てにけらずや」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)
「冬深し扉すとんと地にひびき」(飯田龍太 涼夜 昭和52年)
「冬深し鉄くろがねと読むことも」(飯田龍太 山の影 昭和56年)
「石があれば草があれば枯れてゐる」(山頭火 山行水行)
「空のふかさは落葉しづんでゐる」(山頭火 山行水行)

冬の雲11(150119)
「雲見れば羅漢の形してゐたり 空おもしろしあかず眺めむ」(吉井勇 身辺の冬 天彦)
「風強くなりぬとおもひて見てありぬ 障子にうつる枝の動きを」(吉井勇 身辺の冬 天彦)
「冬の雲古墳おほかた暴かれし」(飯田龍太 遅速 平成2年)
「寒雲の下の蘇鉄の花蕾」(飯田龍太 涼夜 昭和52年)
「星空の冬木ひそかにならびゐし」(山頭火 大正8年)
「空には風が出る凧あがるあがる」(山頭火 一草庵)
「寒空とほく夢がちぎれてとぶやうに」(山頭火 一草庵)
「水に雲かげもおちつかせないものがある」(山頭火 昭和十年十二月六日)
「寒い雲がいそぐ」(山頭火 鉢の子)
冬の雲10(121227)
「身の終り近しとおもふに 身の始しきりに思はるその故となく」(窪田空穂 去年の雪 師走)「縁ありて幾その人の生涯を わが眼もて見ぬ人皆さしし」(窪田空穂 去年の雪 師走)「光りつつ冬雲消えて失(う)せんとす」(虚子)
冬の雲9(111214)
「この朝の小雨に堪へず うつくしく脆き紅葉のあはれ散りつぐ」(窪田空穂 老槻の下)「苔のうへに散りて重なるもみぢ葉の 雨にぬれたる美しく見む」(窪田空穂 老槻の下)「雲のひまに夜は明けて有(ある)しぐれかな」(蕪村)
冬の雲8(110123)
「澄みとほる冬の日ざしの光あまねく われのこころも光れとぞ射す」(若山牧水 くろ土)「啼きすます小鳥は一羽 あたりの木ひかりしづまり小鳥は一羽」(若山牧水 くろ土)「寒雲の片々たれば仰がるる」(楠本憲吉)
冬の雲7(101220)
「雲見れば羅漢の形してゐたり 空おもしろしあかず眺めむ」(吉井勇 身辺の冬 天彦)「人の世の半(なかば)を過ぎてやうやくに おのれの痴遇に思ひあたれる」(吉井勇 身辺の冬 天彦)「寒雲の下の蘇鉄の花蕾」(飯田龍太)
冬の雲6(091205)
「柑子の実熟れて落ちたり 降りたまる落葉音なき夕庭あはれ」(吉井勇 天彦 身辺の冬)「人の世の半ばを過ぎてやうやくに おのれの癡愚に思ひあたれる」(吉井勇 天彦 身辺の冬)「冬の雲生後三日の仔牛立つ」(飯田龍太)
冬の雲5(081226)
「冬雲は薄くもならず濃くもならず」(虚子)
冬の雲3(080105)
「そこはかとなき思ひもてながめゐぬ 障子にさせる冬のうす日を」(吉井勇 天彦 身辺の冬)「冬空を見つつ冷たき酒酌むを せめて怒りのやりばとぞする」(吉井勇 身辺の冬)「雲見れば羅漢の形してゐたり 空おもしろしあかず眺めむ」(吉井勇 身辺の冬)「三日月も似合に凄し冬の雲」(支考)
冬の雲2(071210)
「しぐれゆくをちの外山の峯つづき 移りもあへず雲がくるらん」(源師光 千載集冬)「移りゆく雲にあらしの声すなり 散るかまさ木のかづらきの山」(藤原雅経 新古今集冬)「秋篠(あきしの)やとやまの里やしぐるらむ 生駒のたけに雲のかかれる」(西行法師 新古今集冬)「噴煙を追ふつぎつぎの冬の雲」(高野素十)
冬の雲2(061227)
「いそがしや脚もやすめぬ冬の雲」(園女)
冬の雲1(061211)
「大空に飛石(とびいし)の如(ごと)冬の雲」(虚子)

雑炊2(150116)
「鎌倉の山あひ日だまり冬ぬくみ 摘むにゆたけき七草なづな」(木下利玄 なづな みかんの木)
「なづななづな切抜き模様を地に敷きて まだき春ありここのところに」(木下利玄 なづな みかんの木)
「雑炊に非力ながらも笑ひけり」(虚子 五百句 昭和8年)
「雑炊や後生大事(ごしょうだいじ)といふことを」(虚子 五百五十句 昭和12年)
雑炊1(140130)
「午(ご)に近く雪どけざかりのあたたかさ 厨(くりや)にものの煮ゆる匂ひす」(木下利玄 雪晴れ 一路)「雪どけの水すひ飽(あ)ける黒土の 湯気(ゆげ)まもり居り昼餉(ひるげ)に坐(すわ)り」(木下利玄 雪晴れ 一路)
「雑炊に舌をこがして勿体なし」(富安風生)「雑炊をこのみしゆゑに遁世す」(虚子 七百五十句 昭和28年)「雑炊に非力ながらも笑ひけり」(虚子 五百句 昭和8年)

小正月5(150115)
「雪ふれば山の端しらむ明け方の 雲間に残る月のさやけさ」(左大臣 雪の歌の中に 玉葉集冬)
「たれかくて住むらんとだに しら雪のふかきみ山の奥の庵かな」(大蔵卿有家 千五百番歌合に 玉葉集冬)
「あしの葉も霜枯れはてて難波がた 入江さびしき浪の上かな」(右兵衛督基氏 水郷寒蘆 玉葉集冬)
「代々の農を誇りに小正月」(深見けん二)
「時かけて生木燃え出す小正月」(廣瀬直人)
「小正月路傍の石も祀(まつ)らるる」(鍵和田秞子)
小正月4(140115)
「夜をこめて谷のとぼそに風寒み かねてぞしるき峯の初雪」(崇徳院御製 百首歌の中に、雪の歌とてよませ給うける 千載集冬)「さえわたる夜はのけしきに み山べの雪の深さを空に知るかな」(藤原季通朝臣 千載集冬)「小正月寂然として目をつむる」(飯田蛇笏)
小正月3(130115)
「山里の垣根は雪にうづもれて 野べとひとつになりにけるかな」(右大臣実定 千載集冬)「呉竹の折れ伏す音のなかりせば 夜ぶかき雪をいかで知らまし」(坂上明兼 千載集冬)「来る人が道つける也門(かど)の雪」(一茶)
小正月2(120115)
「召使新しきかな小正月」(一茶)小正月1(110115)
「衰ふや一椀おもき小正月」(石田波郷)

寒夜4(150114)
「寂しければ古りし自在を炉のうへに 吊(つ)るして思ふかへらぬことを」(吉井勇 続寂しければ 天彦)
「寂しければこころも枯るるおもひして 鬚こそ白め夜毎夜ごとに」(吉井勇 続寂しければ 天彦)
「寂しければ炉に酒を煮て今日もあり 韮生山峡冬深みつつ」(吉井勇 続寂しければ 天彦)
「から鮭も空也の痩せも寒の内」(芭蕉)
「病雁(びょうがん)の夜さむにおちて旅寝かな」(芭蕉)
「乳麺(にゅうめん)の下(した)たきたつる夜寒(よさむ)かな」(芭蕉)
寒夜3(140120)
「この家に酒をつくりて年(とし)古(ふり)ぬ 寒夜(かんや)は蔵に酒の滴(た)る音」(中村憲吉 搾酒場 大正9年)「夜(よ)を凍(しみ)る古き蔵かも 酒搾場(しぼりば)の燈(ひ)のくらがりに高鳴る締木(しめぎ)」(中村憲吉 搾酒場 大正9年)「暗がりに雑巾(ぞうきん)を踏む寒さ哉」(漱石 明治32年)
寒夜2(130110)
「寒ければ朝寝(あさい)はしつつ 日日(にちにち)の飲食(おんじき)の時も定まらなくに」(古泉千樫 冬籠 大正15年)「冬日かげ一日あたるふるさとの 広き縁がはを思ひつつあはれ」(古泉千樫 冬籠 大正15年)「内陣に仏の光る寒さ哉」(漱石)
寒夜1(120114)
「夜寒く帰りて来れば わが妻ら明日(あす)炊(た)かむ米の石ひろひけり」(古泉千樫 寒夜 大正8年)「みづからが拾ひ分けたる 米の石かずをかぞへてわが児は誇(ほこ)る」(古泉千樫 寒夜 大正8年)「挽(ひ)かれゐると知らで立つ枯木かな」(虚子)

冬ざれ4(1501109)
「笹の葉はみ山もさやにうちさわぎ 氷れる霜を吹くあらしかな」(摂政太政大臣 百首歌奉りし時 新古今集冬)
「さ夜ふけて声さへ寒きあしたづは 幾重の霜か置きまさるらむ」(藤原道信朝臣 新古今集冬)
「冬されを人住みかねて明屋敷」(子規 明治27年)
「冬されや稲荷の茶屋の油揚」(子規 明治27年)
「冬されや水なき河の橋長し」(子規 明治28年)
「冬さるる小店や蜜柑薩摩芋」(子規 明治28年)
「冬ざれや石に腰かけ我孤独」(虚子 六百五十句 昭和25年)
冬ざれ3(140109)
「冬されば嵐の声も 高砂の松につけてぞきくべかりける」(能宣 恒徳公の家の屏風に 拾遺集冬)「蘆の葉に隠れて住みし 津の国のこやもあらはに冬は来にけり」(源重之 百首の中に 拾遺集冬)「冬ざれや樹々(きぎ)数ふべき筑波山」(蕪村)
冬ざれ2(130112)
「冬空の下に相寄りこんもりと 此の杜の樹は枝交えたる」(木下利玄 冬山 紅玉)「窓により仰げば見ゆる裏山の 尖ほそ冬木はさびしかもよ」(木下利玄 冬山 紅玉)「冬ざれや韮(にら)にかくるる鳥ひとつ」(蕪村)
冬ざれ1(120113)
「冬枯の森の朽葉の霜のうへに 落ちたる月のかげのさむけさ」(藤原清輔朝臣 新古今集冬)「冴えわびてさむる枕に影見れば 霜ふかき夜のありあけの月」(皇太后宮太夫俊成女)「冬ざれや小鳥のあさる韮畑(にらばたけ)」(蕪村)

冬の星9(150110)
「白きもの剛(たけ)きもの、あたらしき賛歌(ほめうた)の語と霜柱立つ」(宮柊二 霜柱のごとく 昭和43年)
「含みたり寒紅梅(かんこうばい)あり眼鏡(めがね)あり 机上に現在(いま)あり未来あり」(宮柊二 霜柱のごとく 昭和43年)
「わが上に過ぎむ若さを 自らに惜しみつつ食(は)む真白き餅を」(宮柊二 霜柱のごとく 昭和43年)
「初日さす梅の木下の土凍り 楕円に鳥の影走りをり」(宮柊二 鳥の影 昭和42年)
「ぴしぴしと白き霰を凍る土 鋼(はがね)のひびく音にて迎ふ」(宮柊二 鳥の影 昭和42年)
「庭さきに梅が枝黒しあたらしき風触(さや)りつつ蕾やや紅」(宮柊二 年の初の日 昭和44年)
「戸を引けばすなはち待ちしもののごと すべり入り来ぬ光といふは」(宮柊二 鳥の影 昭和42年)
「冠(かんむり)のごとくきらめく冬の夜の星 ひかりつつ年逝かんとす」()
「蝋梅の上なる寒の星月夜」(森澄雄 虚心)
「仰ぎゐて無我になりをり冬の星」(森澄雄 深泉)
冬の星8(131216)
「冬の夜を長きまにまに 良寛の詩や白秋の歌に遊びつ」(宮柊二 冬夜 昭和45年)「障子戸に朝(あした)をしんと映りをり 冬木の葡萄その棚もまた」(宮柊二 冬夜 昭和45年)「ゆびさして寒星一つづつ生かす」(上田五千石)
椋鳥9(150112)
「寝(ね)よといはばわれはもいかで寝ざらんや 霜に凍てたる石の上にも」(吉井勇 石に寄す 渓鬼荘雑詠)
「やまにあればいささかごともめづらしや 石に白きは何鳥(なにどり)の糞」(吉井勇 石に寄す 渓鬼荘雑詠)
「石楠花の杖もて打てば石鳴りぬ 喝とするどくさけぶごとくに」(吉井勇 石に寄す 渓鬼荘雑詠)
「欅高枝に椋鳥が見てをり日の出すすむ」(森澄雄 雪檪)
「伝染に椋鳥その上を渡り鳥」(森澄雄 所生)
椋鳥8(140108)
「からすさへ見るは偶(たま)なり 雨さむき稲城(いなぎ)のすそを擦れずれに飛ぶ」(中村憲吉 昭和11年)「人の見て静かなるべきわが生活(くらし) よしなしごとに多くわづらふ」(中村憲吉 昭和11年)「椋鳥のかぶさり飛べる小家かな」(虚子)「跫音のとまるを椋鳥のおそれけり」(中村草田男)
椋鳥7(130130)
「ひとりなれば語るすべなし 尾根に立ち山の谺(こだま)を楽しむわれは」(吉井勇 渓鬼荘雑詠)「堪へかねておらぶ谺(こだま)におどろきて 山の諸鳥(しょてう)も鳴き出でにけり」(吉井勇 渓鬼荘雑詠)「椋鳥(むく)は椋鳥(むく)づれ寒く背まるめ旅夫婦」(加藤楸邨 深田刈 まぼろしの鹿)
椋鳥6(120119)
「あれ程の椋鳥(むくどり)をさまりし一樹かな」(松根東洋城)
椋鳥5(110112)
「久闊(きゅうかつ)を叙し椋鳥を共に仰ぐ」(富安風生)
椋鳥3(090928)
「椋鳥や枝に来るほど木の葉散る」(桃水)
椋鳥1(060604)
「むく鳥の声聞きつけし林かな」(子規)

冴ゆ5(150111)
「さゆる夜の池の玉藻のみがくれて 氷二すける波の下草」(光明峯寺入道前摂政左大臣 百首の歌の中に、冬の歌 玉葉集冬)
「さゆる夜の氷のうへにゐる鴨は とけて寝られぬねをのみや鳴く」(平宣直 題しらず 玉葉集冬)
「さゆる日の時雨の後の夕山に うす雪ふりて雲ぞ晴れゆく」(前大納言為兼 冬夕山を 玉葉集冬)
「星冴えて篝火白き砦かな」(子規 明治29年冬)
「鐘冴ゆる夜かかげても灯の消んとす」(子規 明治29年冬)
冴ゆ4(140116)
「つららゐてみがけるかげの見ゆるかな まことにいまや玉川の水」(崇徳院御製 百首歌めしける時、氷の歌とてよませ給うける 千載集冬)「月さゆるこほりのうへにあられ降り 心くだくる玉川の里」(皇太后宮太夫俊成 千載集冬)「風冴えて今朝よりも又山近し」(暁台)
冴ゆ3(130129)
「冴えわびてさむる枕に影見れば 霜ふかき夜のありあけの月」(皇太后宮太夫俊成女 新古今集冬)「さゆる日は岩まの水も行きなやみ 氷のしたにみちもとむなり」(右近大将長親母 新葉集冬)「冴えかへるそれも覚悟のことなれど」(虚子)
冴ゆ2(120131)
「とびかよふをしの羽風の寒ければ 池の氷ぞ冴えまさりかえる」(紀友則 拾遺集冬)「あまの原そらさへ冴ゆやわたるらむ 氷と見ゆる冬の夜の月」(恵慶法師 拾遺集冬)「冴え返る寒さに炬燵(こたつ)又熱く」(虚子)
冴ゆ1(110128)
「さゆる夜の真木の板屋のひとり寝に 心くだけとあられ降るなり」(左近中将良経 千載集冬)「さえわたる夜はのけしきに み山べの雪の深さを空に知るかな」(藤原季通朝臣 千載集冬)「冴ゆる夜のこころの底にふるるもの」(久保田万太郎)

凍る10(141227)
「ただひとへ上はこほれる川の面に ぬれぬ木の葉ぞ風にながるる」(九条左大臣女 玉葉集冬)
「朝あけのこほる浪間にたちゐする 羽音も寒き池の村鳥」(広義門院 池水鳥といふ事を 玉葉集冬)
「淵は瀬にかはるのみかは飛鳥川 きのふの波ぞけさは凍れる」(参議雅経 千五百番歌合に 玉葉集冬)
「水とりや氷の僧の沓の音」(芭蕉)
「冬の日や馬上に氷る影法師」(芭蕉)
「生きながらひとつに氷る生海鼠(なまこ)かな」(芭蕉)
「氷苦く偃鼠(えんそ)が咽(のど)をうるほせり」(芭蕉 茅舎買水)
凍る9(140210)
「雪ふりて人もかよはぬ道なれや あとはかもなく思ひきゆらん」(凡河内みつね 雪のふれるを見てよめる 古今集冬)「わがやどは雪ふりしきて道もなし ふみわけてとふ人もなければ」(古今集冬)「油凍りともし火細き寝覚めかな」(芭蕉)
凍る8(130111)
「霜の降るひびきかと耳をすませども 夜気(やき)凝(こご)るがに もの音もなし」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)「もの読みを楽しとすれど 夜を寒み ただいささかの酒欲りにけり」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)「瓶(かめ)破(わ)るるよるの氷の寝覚(ねざめ)哉」(芭蕉)
凍る7(120112)
「風さむみよどの沢水こほるらし つねよりまさる蘆鴨の声」(太宰帥泰成親王 新葉集冬)「こやの池の玉藻の床や氷るらん うきねの鴨の声さはぐなり」(上野太守懐邦親王 新葉集冬)「瓶(かめ)破(わ)るるよるの氷の寝覚めかな」(芭蕉)
凍る6(111226)
「蘆鴨のすだく入江の月かげは こほりぞ波の数にくだくる」(前左衛門督公光 千載集冬)「月さゆるこほりのうへにあられ降り 心くだくる玉川の里」(皇太后宮太夫俊成 千載集冬)「山水の減るほど減リて氷かな」(蕪村)
凍る5(110213)
「冴えかへり又こそ谷に氷りぬれ たかねにとくる雪の下水」(関白左大臣 新葉集春)「つれもなき梢の雪も消えそめて 雫ににごる松の下水」(前中納言為忠 )「山水の減るほど減りて氷かな」(蕪村)
凍る4(110109)
「このごろの鴛(をし)のうき寝ぞあはれなる うは毛の霜よしたのこほりよ」(崇徳院御製 千載集冬)「をし鳥のうき寝のとこや荒れぬらん つららゐにけり昆陽(こや)の池水」(権中納言藤原経房 千載集冬)「氷る燈(ひ)の油うかがふ鼠(ねずみ)かな」(蕪村)
凍る3(090115)
「氷苦く偃鼠(えんそ)が咽(のど)をうるほせり」(芭蕉)
凍る2(080128)
「いづくにか月は光をとどむらん やどりし水も氷りゐにけり」(左大弁親宗 千載集冬)「冬来れば行く手に人は汲まねども 氷ぞ結ぶ山の井の水」(藤原成家朝臣 千載集冬)「つららゐて磨ける影の見ゆるかな まことに今や玉川の水」(崇徳院御製 千載集冬)「歯あらわに筆の氷を噛む夜かな」(蕪村)
凍る1(080119)
「佐保川に凍り渡れる薄氷(うすらひ)の 薄き心をわが思はなくに」(万葉集巻二十4478)「大空の月のひかりしきよければ 影みし水ぞまづこほりける」(よみ人しらず 古今集冬)「澄む水を心なしとはたれかいふ こほりぞ冬のはじめをも知る」(大納言隆季 千載集冬)「いつのまに筧の水のこほるらん さこそあらしの音のかはらめ」(藤原孝善 千載集冬)「かつ氷りかつはくだくる山河の 岩間にむせぶあかつきの声」(皇太后宮太夫俊成 新古今集冬)「いきながら一つに氷る海鼠(なまこ)かな」(芭蕉)

臘梅4(140206)
「霜雪もいまだ過ぎねば思はぬに 春日(かすが)の里に梅の花見つ」(大伴宿禰三林の梅の歌一首 万葉集巻八1434)「莟(ふふ)めりと言ひし梅が枝(え) 今朝降りし沫(あわ)雪にあひて咲きぬらむかも」(大伴宿禰村上の梅の歌一首 万葉集巻八1436)「臘梅に光琳笹(こうりんざさ)の風少し」(石川星水女)
臘梅3(130221)
「あるじをば誰ともわかず 春はただ垣根の梅をたづねてぞ見る」(藤原敦家朝臣 新古今集春)「ながめつる今日は昔になりぬとも 軒端の梅はわれを忘るな」(式子内親王 新古今集春)「臘梅を透けし日差しの行方なし」(後藤比奈夫)
臘梅2(120208)
「匂ふなり木のもとしらぬ 梅がかの 便りとなれる春の夕かぜ」(後村上院御製 新葉集春)「梅の花よそのかきねの匂ひをも 木の下風の便りにぞしる」(後醍醐天皇御製 新葉集春)「臘梅や枝まばらなる時雨ぞら」(芥川龍之介)
臘梅1(110125)
「霞立つ春日(かすが)の里の梅の花 山のあらしに散りこすなゆめ」(万葉集巻八1437)「霞立つ春日(かすが)の里の梅の花 花に問はむとわが思(も)はなくに」(万葉集巻八1438)「臘梅の香の一歩づつありそめし」(稲畑汀子)

蕪3(150121)
「老身(らうしん)はひたすらにしていひにけり「群鳥(むらどり)とともにはやく春来(こ)よ」」(斎藤茂吉 東雲 白き山 昭和22年)
「雪しづく夜すがらせむとおもひしに 暁(あかつき)がたは音なかりけり」(斎藤茂吉 東雲 白き山 昭和22年)
「夢の世界は中間(ちゅうかん)にして わが生(せい)はきのふも今日(けふ)もその果(はか)なさよ」(斎藤茂吉 東雲 白き山 昭和22年)
「運命(うんめい)にしたがふ如くつぎつぎに 山の小鳥は峡(かひ)をいでくる」(斎藤茂吉 東雲 白き山 昭和22年)
「大鍋に煮くづれ甘きかぶらかな」(河東碧梧桐)
「赤蕪を一つ逸(いっ)しぬ水迅(はや)く」(山口誓子)
「蕪まろく煮て透きとほるばかりなり」(水原秋櫻子)
蕪2(120111)
「冬ざれの廓(くるわ)に赤き蕪(かぶら)かな」(子規)
蕪1(071205)
「食薦(すこも)敷(し)き蔓菁(あをな)煮(に)持ち來(き) 梁(うつはり)に 行騰(むかばき)懸(か)けて息(やす)むこの公(きみ)」(万葉集巻十六 3825)「誰か知る今朝(けさ)雑炊の蕪の味」(惟然)

切干3(150117)
「たとふれば走る鼠のごとき音 幾年ぶりに聞くにかあらん」(佐藤佐太郎 天眼 昭和52年)
「午後の夢さめて一時間道あゆみ 充実したる一日終る」(佐藤佐太郎 天眼 昭和52年)
「晴れし日はやうやく低く帰りくる 一足ごとに空気ひえそむ」(佐藤佐太郎 天眼 昭和52年)
「七十年生きて来しかば わが顔のさびて当然に愁ただよふ」(佐藤佐太郎 天眼 昭和52年)
「切干大根ちりちりちぢむ九十九里」(大野林火)
「切干刻んで根が生えたやう老婆の座」(加藤楸邨 まぼろしの鹿 昭和30年)
切干2(140123)
「湖岸(うみぎし)のひろき畑に 甘藍(かんらん)の霜やけて赤き葉を見つつゆく」(佐藤佐太郎 冬木 昭和9年)「餅のかび百合(ゆり)の根(ね)などのはつかなる黄色もたのし大寒の日々」(佐藤佐太郎 冬木 昭和9年)「人参の葉など小葉(せうえふ)は安らかに 庭の上ひくく冬の日わたる」(佐藤佐太郎 開冬 昭和48年)「冬ごもる蜂のごとくにある時は 一塊の糖にすがらんとす」(佐藤佐太郎 開冬 昭和48年)「切干のむしろを展(の)べて雲遠し」(富安風生)「切干やいのちの限り妻の恩」(日野草城)
切干2(130117)
「切干の煮ゆる香座右に針仕事」(虚子)

七草粥7(150107)
「天地(あめつち)のめぐみのままにあり経(ふ)れば 月日(つきひ)楽しく老も知らずも」(左千夫 家の楽しみ 明治41年)
「貧(まづ)しきも貧しきままに救はれて 神のめぐみの御(み)手に住むべし」(左千夫 明治41年)
「七草に更に嫁菜を加へけり」(虚子 五百五十句 昭和12年1月7日)
「七日客七草粥の残りなど」(虚子)
七草粥6(140107)
「あら玉の年のはじめの七草を 籠(こ)に植ゑて来(こ)し病めるわがため」(子規 新年 明治34年)「あら玉の年をことほぎ 梅の花 一枝(ひとえだ)買ひていけにけるかも」(子規 御題新年梅 明治35年)「うましとて口をもたたく若菜哉」(貞徳)「さざんくわは名残の花や七日粥」(渡辺水巴)
七草粥5(130109)
「芭蕉葉のしきりに折るる音すなり 遅き朝餉(あさげ)をわが食(はみ)居れば」(古泉千樫 大正15年)「いささかもたべすぎぬらし 冬眠る蛇や蛙のたふとかりける」(古泉千樫 大正15年)「骨の上に春滴(したた)るや粥の味」(漱石 明治43年)
七草粥4(120107)
「君がため 夜ごしにつめる七草の なずなの花を見てしのびませ」(源俊頼)「けふぞかし なずなはこべら芹つみて はや七草の御物まゐらん」(慈円)「雑炊の名もはやされて薺かな」(支考)
七草粥3(110108)
「けふぞかし なづなはこべら芹つみて はや七草の 御物まゐらん」(慈円)
「雑炊の名もはやされて薺(なずな)かな」(支考)
七草粥2(080107)
「雑炊の色も雪間の薺(なずな)かな」(几董)
七草粥1(080107)
「七草やあまれどたらぬものも有り」(千代女)

寒月12(150105)
「冴ゆと見えて冬深くなる月影は 水なき庭に氷をぞ敷く」(西行法師 山家集冬)
「氷しく沼の蘆原かぜ冴えて 月も光ぞさびしかりける」(西行法師 山家集冬)
「寒月に木を割る寺の男かな」(蕪村)
「寒月や開山堂の木の間より」(蕪村)(註)開山堂=寺院の開祖の像を安置する堂。
「寒月や衆徒(しゅと)の群議の過(すぎ)て後」(蕪村)
「寒月や石塔の影杉の影」(子規 明治28年)
「寒月や猫の眼光る庭の隅」(子規 明治28年)
寒月11(140117)
「起きてみれば明けがたさむき 庭の面の霜にしらめる冬の月影」(前参議家親 玉葉集冬)「澄みのぼる空にはくもる影もなし 木かげしぐるる冬の夜の月」(前右兵衛督為教 玉葉集冬)「寒月や渓(たに)に茶を汲(く)む峯の寺」(蕪村)
寒月10(130123)
「ひとりすむ片山かげの友なれや 嵐にはるる冬の夜の月」(西行法師 山家集冬)「さびしさは秋見し空にかはりけり 枯野をてらす有明の月」(西行法師 山家集冬)「寒月や門(もん)をたたけば沓(くつ)の音」(蕪村)
寒月9(120110)
「霜さゆる庭の木葉をふみ分けて 月は見るやと訪ふ人もがな」(西行法師 山家集冬)「月出づる嶺の木の葉もちりはてて 麓の里は嬉しかるらむ」(西行法師 山家集冬)「寒月や小石のさはる沓(くつ)の底」(蕪村)
寒月8(111211)
「千鳥なく絵島の浦にすむ月を 波にうつして見る今宵かな」(西行法師 山家集冬)「小倉山ふもとの里に木葉散れば 梢(こずえ)にはるる月を見るかな」(西行法師 山家集冬)「寒月や鋸岩(のこぎりいわ)のあからさま」(蕪村)
寒月7(110119)
「氷しく沼の蘆原かぜ冴えて 月も光ぞさびしかるける」(西行法師 山家集冬)「月出づる嶺の木葉もちりはてて 麓の里は嬉しかりらむ」(西行法師 山家集冬)「寒月や枯木の中の竹三竿(さんかん)」(蕪村)
寒月6(101221)
「霜さゆる庭の木の葉を踏み分けて 月は見るやと訪ふもがな」(西行法師 山家集冬)「冴ゆと見えて冬深くなる月影は 水なき庭に氷をぞ敷く」(西行法師 山家集冬)「寒月や衆徒(しゅと)の群議の過ぎて後(のち)」(蕪村)
寒月5(100129)
「冬枯のすさまじげなる山里に 月のすむこそあはれなりけれ」(山家冬月 西行法師 山家集冬)「花におく露にやどりし影よりも 枯野の月はあはれなりけり」(月枯れたる草を照らす 西行法師 山家集冬)「寒月や門なき寺の天高し」(蕪村)
寒月4(100104)
「旅寝する草の枕に霜さえて 有明の月の影ぞまたるる」(西行法師 山家集冬)「あかるさや風さへ吹かず寒の月」(樗良)
寒月3(081221)
「寒月に立つや仁王のからつ臑」(一茶)
寒月2(080131)
「寒月を網する如き枯枝かな」(虚子)
寒月1(061224)
「寒月(かんげつ)や僧に行き合ふ橋の上」(蕪村)

寒の入り8(150106)
「歎異抄読まむと思ふこころもちて いまだ果たさず夜を籠り居り」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)
「虫麻呂と名さへ呼ばれてありなまし 寒さを怖(お)づる冬蟄(とうちつ)の身は」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)
「うつし世の冷たき風を入れぬこと これをわが家の掟(おきて)とぞする」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)
「焚くだけの枯木はひろへた山が晴れてゐる」(山頭火 山行水行)
「なんといふ空がなごやかな柚子が二つ三つ」(山頭火 山行水行)
「ここにかうしてわたしおいてゐる冬夜」(山頭火 山行水行)
「寒空とほく夢がちぎれてとぶやうに」(山頭火 一草庵)
「ひとり焼く餅ひとりでにふくれたる」(山頭火 一草庵)
「身のまはりかたづけて遠く山なみの雪」(山頭火 一草庵)
「凍土(いてつち)につまづきがちの老いの冬」(虚子 五百五十句 昭和15年)
「寒といふ字に金石(きんせき)の響(ひびき)あり」(虚子 五百五十句 昭和15年)
寒の入り7(140106)
「夜ふかく音なく降るは霜ならむ 炭継ぎ足して耳を澄ますも」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)「厳しきは寒さが迫る切なさか もの思ひ居れば骨もこほりぬ」(吉井勇 冬夜沈吟 天彦)「寒に入る石を掴みて一樹根」(加藤楸邨 起伏 昭和21年)
寒の入り6(130105)
「大土佐の干鰯(ほしいわし)をば焼きて酌む 年(とし)祝(ほ)ぎ酒はまづしけどよし」(吉井勇 風雪 洛北新春)「ただならぬ年はわび居の古恕タ袍(ふるどてら) 大(おほ)あぐらゐて迎うるもよし」(吉井勇 風雪 洛北新春)「天日の虚ろありけり寒に入る」(森澄雄 天日)
寒の入り5(120106)
「冬ふかみ霜焼けしたる杉の葉に 一と時明かき夕日のひかり」(赤彦 小寒)「雪の上に落ちちらばれる杉の葉の 凍りつきたるを拾ひわが居り」(赤彦 小寒)「鮭鱒(さけます)の孵化(ふくわ)のさかりや寒の入」(碧梧桐)
寒の入り4(110106)
「柴かこふ庵のうちは旅だちて すとほる風もとまらざりけり」(西行法師 山家集冬)「谷風は戸を吹きあけて入るものを なにと嵐の窓たたくらむ」(西行法師 山家集冬)「宵過(よひすぎ)や柱ミリミリ寒(かん)が入(いる)」(一茶)
寒の入り3(100105)
「春になる桜の枝は何となく 花なけれどもむつまじきかな」(西行法師 山家集春)「猶(なほ)白し寒に入る夜の月の影」(蝶夢)
寒の入り2(090106)
「晴天も猶つめたしや寒の入」(杉風)
寒の入り1(080106)
「月花の愚に針立てん寒の入り」(芭蕉)

冬木立8(141227)
「宿ごとにさびしからじとはげむべし 煙こめたる小野の山里」(西行法師 山家集冬)
「限あらむ雲こそあらめ 炭がまの烟に月のすすけぬるかな」(西行法師 山家集冬)
「玉まきし垣ねのまくず霜がれて さびしくみゆる冬の山里」(西行法師 山家集冬)
「冬木立北の家(や)かげの韮(にら)を刈る」(蕪村 夜半叟)
「里ふりて江の鳥白し冬木立」(蕪村 暁台宛)
冬木立7(140118)
「くやしくも雪のみ山へ分け入らで 麓にのみも年をつみける」(西行法師 山家集冬)「大原は比良の高嶺の近ければ 雪ふるほどを思ひこそやれ」(西行法師 山家集冬)「花もかれもみぢも散らぬ山里は さびしさを又とふ人もがな」(西行法師 山家集冬)「宿ごとにさびしからじとはげむべし 煙こめたる小野の山里」(西行法師 山家集冬)「冬木立北の家(や)かげの韮(にら)を刈る」(蕪村)
冬木立6(121226)
「何処(いづく)にかゆかむ 山ことごとし海も憂し 多摩川ぞひの冬木の中」(若山牧水 白梅集 多摩川)「多摩の川真冬(まふゆ)ほそぼそ痩せながれ 音(ね)を立つるかも冬の夜ふけに」(若山牧水 白梅集 多摩川)「乾鮭(からざけ)ものぼるけしきや冬木立」(蕪村)
冬木立5(120109)
「冴ゆと見えて冬深くなる月影に 水なき庭に氷をぞ敷く」(西行法師 山家集冬)「冬枯のすさまじげなる山里に 月のすむこそあはれなりけれ」(西行法師 山家集冬)「冬こだち月にあはれをわすれたり」(蕪村)
冬木立4(111220)
「啼きすます小鳥は一羽 あたりの木ひかりしづまり小鳥は一羽」(若山牧水 くろ土)「遅れたる楓一(ひと)もと 照るばかりもみぢしてをり冬木がなかに」(若山牧水 鴨鳥の歌)「鴛(おしどり)に美を尽くしてや冬木立」(蕪村)
冬木立3(101223)
「楢(なら)の木の枯木のなかに 幹(みき)白き辛夷(こぶし)はなさき空蒼(あお)く濶(ひろ)し」(長塚節 大正3年)「雀鳴くあしたの霜の白きうへに 静かに落つる山茶花の花」(長塚節 大正3年)「このむらの人は猿也(なり)冬木だち」(蕪村)
冬木立2(091214)
「小倉山ふもとの里に木葉ちれば 梢にはるる月を見るかな」(西行法師 山家集冬)「冬枯のすさまじげなる山里に 月のすむこそあはれなりけり」(西行法師 山家集冬)「斧入れて香におどろくや冬木立」(蕪村)
冬木立1(070205)
「冬木立(ふゆこだち)月に隣(となり)をわすれたり」(蕪村)

霜の朝9(141225)
「かきこめし裾野の薄(すすき)霜がれて さびしさまさる柴の庵かな」(西行法師 山家枯草といふ事を、覚雅僧都の坊にて人々詠みけるに 山家集冬)
「霜にあひて色あらたむる蘆の穂の 寂しくみゆる難波江の浦」(西行法師 水辺寒枯 山家集冬)
「さればこそあれたきままの霜の宿」(芭蕉 人のいほりをたづねて)(註)流寓中の杜国を三河保美の里に訪れた折の作。
「霜の朝せんだんの実のこぼれけり」(杜国 阿羅野)
霜の朝8(131221)
「野辺はただ小笹ばかりの青葉にて さらではなべて霜枯の色」(左近中将道輔 玉葉集冬)「ならの葉に霜やおくらんと思ふにも 寝でこそ冬の夜を明かしつれ」(基俊 霜のいみじく降りたるあした、奈良なる子を思ひやりて僧正永縁がもとに申し遣はしける 玉葉集冬)「みな出(いで)て橋をいただく霜路かな」(芭蕉 新両国の橋かかりければ)
霜の朝7(121225)
「木の間よりわれにさしたる冬の日の 日かげは寒し光ながらに」(若山牧水 雑詠 くろ土)「ふらふらと眩暈(めまひ)おぼえて 縁側ゆころげ落ちたり冬照る庭に」(若山牧水 雑詠 くろ土)「置(おく)霜の朝日くろぶや牧の駒」(蕪村)
霜の朝6(111217)
「けさのまに散りけるほどもあらはれて 霜こそをかね庭の紅葉(もみぢ)葉」(関白左大臣 新葉集冬)「花に見し野べの千種(ちぐさ)は霜おきて おなじ枯葉となりにけらしも」(後村上院御製 新葉集冬)「火を焚(た)いて今宵(こよひ)は屋根の霜消さん」(芭蕉)
霜の朝5(110126)
「霜枯れし冬の柳は 見る人のかづらにすべく萌えにける」(万葉集巻十1846)「はなはだも夜更けてな行き 道の辺のゆ小竹(ささ)が上に霜の降る夜を」(万葉集巻十2336)「霜冴ゆる庭の木の葉をふみ分けて 月は見るやと訪ふ人もがな」(西行法師 山家集冬)「夜すがらや竹凍らする今朝の霜」(芭蕉)霜の朝3(080104)
「初霜やおきはじむらん あかつきの鐘の音こそほの聞こゆなれ」(大炊御門右大臣 千載集冬)「高砂の尾上(おのへ)の鐘の音すなり あかつきかけて霜やおくらん」(前中納言匡房 千載集冬)「柊(ひさぎ)生ふる小野の浅茅におく霜の 白きを見れば夜やふけぬらん」(藤原基俊 千載集冬)「野の馬の韮(にら)をはみ折る霜の朝」(蕪村)
霜の朝2(070105)
「はなはだも夜更けてな行き、道の辺の斎小竹(ゆさき)の上に霜(しも)の降る夜を」(万葉集巻十冬)「思ふより又もあはれはかさねけり 露に霜をく庭のよもぎふ](夫木和歌抄 寂蓮法師)「冬はつとめて。雪の降りたるはいうべきにもあらず。霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに」(枕草子第1段)「野の馬の韮(にら)をはみ折る霜の朝」(蕪村)

霜柱7(141227)
「露霜(つゆじも)の消(け)やすきわが身老いぬとも また若(を)ち返(かへ)り君をし待たむ」(万葉集巻十二3043)
「朝霜(しも)の消(け)ぬべくのみや 時なしに思ひわたらむ気(いき)の緒にして」(万葉集巻十二3045)
「日のささぬ四角な庭や霜柱」(子規 明治31年)
霜柱6(130216)
「春されば水草(みくさ)の上におく霜の 消(け)つつも我は恋わたるかも」(万葉集巻十1908)「はなはだも夜ふけてな行き 道の辺のゆ小竹(ささ)が上に霜が降る夜を」(万葉集巻十2336)「霜柱ふむ抵抗も年古りぬ」(石田波郷 主婦と生活)
霜柱5(120128)
「夜を寒み寝覚めて聞けばをしぞ鳴く 払ひあへず霜やおくらむ」(よみ人しらず 拾遺和歌集冬)「霜の上にふる初雪の朝 氷とけずも物を思ふころかな」(よみ人しらず 拾遺和歌集冬)「霜柱顔ふるるまで見て佳(よ)しや」(橋本多佳子)
霜柱5(101226)
「梅龕(ばいがん)の墓に花無し霜柱」(子規)
霜柱4(091219)
「冬きてはひと夜ふた夜を 玉ずさの葉分けの霜のところせきまで」(藤原定家 千載集冬)「霜むすぶ袖のかたしきうちとけて 寝ぬ夜の月の影ぞ寒けき」(藤原雅経 新古今集冬)「縄帯の倅いくつぞ霜柱」(一茶)
霜柱3(081227)
「霜柱ほそくからびたる日影かな」(惟中)
霜柱2(080127)
「谷深き岩屋に立てる霜柱 たが冬ごもるすみかなるらん」(葉室光俊 古今六帖)「冴えわびてさむる枕に影見れば 霜ふかき夜の有明の月」(皇太后宮太夫俊成女 新古今集冬)「さ夜ふけて声さへ寒き あしたづは 幾重の下か置きまさるらん」(藤原道信朝臣 新古今集冬)「君来ずは一人や寝なむ さきの葉の み山のそよにさやぐ霜夜を」(藤原清輔朝臣 新古今集冬)「霜柱(しもばしら)顔ふるるまで見て佳(よ)しや」(橋本多佳子)

蓮根3(141229)
「」()
蓮根2(131229)
「一たびも南無阿弥陀仏といふ人の 蓮の上にのぼらぬはなし」(空也上人 拾遺集 哀傷)「底清くこころの水を澄まさずは いかがさとりの蓮をも見む」(入道前関白太政大臣 新古今集 釈教)「泥水の流れ込みつつ蓮根掘る」(虚子)

尾長3(150124)
「啼く声の みにくかれども尾長鳥 をりをり啼きて遊ぶ美し」(若山牧水 尾長鳥 黒松)
「尾長の刻鳩の刻ある枯木かな」(石田波郷 酒中花)
尾長2(131225)
「尾長鳥その尾はながく羽根ちさく 真白く昼をとべるなりけり」(若山牧水 尾長 砂丘)「尾長鳥石磨(す)るごとき音(ね)には啼き 山風強みとびあへぬかも」(若山牧水 尾長 砂丘)「啼く声のみにくかれども尾長鳥 をりをり啼きて遊ぶ美し」(若山牧水 黒松)「尾長らと落葉踏みなどしてみたし」(石田波郷 酒中以後)

冬の夜7(141225)
冬の夜は、脛(すね)が、むしょうに痒(かゆ)くなります。
空気が乾燥するためかもしれません。
左右、同じところが痒くなるのが、ふしぎです。
クリームをすりこんで、がまんするしかありません。
眠ってしまえば、かゆみも感じません。

「適薬のなしといふなるじんましん この身に生れこの身悩ます」(窪田空穂 蕁麻疹 木草と共に 昭和37年)
「癒えがたきじんましんぞと諦めて 忘れんとおもへこの悪痒さ」(窪田空穂 蕁麻疹 木草と共に 昭和37年)
「じんましん怠けてくれよ 病みやすき老の心の暗くなれるを」(窪田空穂 蕁麻疹 木草と共に 昭和37年)
「何となく冬夜隣を聞かれけり」(其角)
「われを厭ふ隣家寒夜に鍋を鳴らす」(蕪村)(註)鍋を鳴らす=平素から自分を嫌っている隣家では、冷え込む夜に鍋料理などを作ったらしい匂いが漂ってくるが、仲間に招くどころか、もうないよとばかり鍋のそこをかきならす音を立てている。
「飛騨山の質屋戸ざしぬ夜半(よは)の冬」(蕪村 落日庵)
冬の夜6(130124)
「箱の隅の粉炭(こなずみ)つげば 何の枯葉かまじりて 燃ゆる匂ひするかな」(若山牧水 冬の夜 白梅集)「とりとめて何おもふとにはあらねども 夜半ひとり居るはたのしかりけり」(若山牧水 冬の夜 白梅集)「葉の落ちて落ちる葉のない太陽」(山頭火 柿の葉)「風の中からかあかあ鴉」(山頭火 柿の葉)「何事もない枯木雪ふる」(山頭火 柿の葉)
冬の夜5(121228)
「寝しづまる街の遠くの遠くより 下駄の音来(く)も地(つち)凍てたらむ」(木下利玄 紅玉 深夜)「遠方の下駄の音来(こ)ずやみにけり 深夜の地(つち)を霜とざすらむ」(木下利玄 紅玉 深夜)「ふとん着て達磨(だるま)もどきに居(すわ)りけり」(一茶)
冬の夜4(100108)
「ひとり見る池の氷に澄む月に やがて袖にもうつりぬるかな」(守覚法親王、五十首歌よませ侍りけるに 皇太后宮太夫俊成 新古今集冬)「かつ氷りかつはくだるる山河の 岩間にむせぶあかつきの声」(題しらず 皇太后宮太夫俊成 新古今集冬)「冬の夜は古き仏を先づ焼かむ」(蕪村)
冬の夜3(090106)
「冬の夜を真丸に寝る小隅かな」(一茶)
冬の夜2(080130)
「むかし思ふさ夜の寝覚めの床さえて 涙もこほる袖の上かな」(守覚法親王 新古今集冬)「枕にも袖にも涙つららゐて 結ばぬ夢をとふ嵐かな」(新古今集冬)「さゆる夜の真木の板屋のひとり寝に 心くだけとあられ降るなり」(左近中将良経 千載集冬)「さえわたる夜はのけしきに み山べの雪の深さを空に知るかな」(藤原季通朝臣 千載集冬)「降りかかる霰(あられ)の酒の寒夜かな」(貞徳)
冬の夜1(061216)
「露霜の夜半に起きゐて、冬の夜の月見るほどに袖は凍りぬ」(新古今集、曽根好忠)「あはれなり冬の夜寒み、明けぬよりおのが世急ぐ里人の声」(夫木和歌抄)「洟(はな)たれて独(ひとり)碁をうつ夜寒(よさむ)かな」(蕪村)

みぞれ6(141229)
「霰(あられ)ふる冬とはなりぬ この街に借りてわが住む二階のひと室(ま)」(赤彦 番町の家 大正7年)
「冬をとほす心寂しも もの書きて肩凝(こ)りぬれば頚根(くびね)をまはす」(赤彦 番町の家 大正7年)
「みぞれ降る音や朝飯(あさげ)の出来るまで」(膳所晝好 猿蓑)
「みぞれせば網代(あじろ)の氷魚(ひを)を煮て出さむ」(芭蕉 膳所草庵を人々訪ひけるに)
みぞれ5(121222)
「おのれ盛(も)りて飯を食べをり 窓の曇りいよよ曇りてみぞるる音す」(赤彦 番町の家 大正7年)「一人して二階を戸ざす たそがれの霙(みぞれ)の雨は雪となりをり」(赤彦 番町の家 大正7年)「灯(ひ)の洩(もれ)る壁やみぞれの降処(ふりどころ)」(一茶)

冬の雨8(131219)
「雪降れば山よりくだる小鳥おほし 障子の外にひねもす聞ゆ」(赤彦 帰国 大正8年)「雨の音聞きつつあれば 軒下の土と落葉とわかれて聞ゆ」(赤彦 帰国 大正8年)「近づいて冬雨ひびく山の家」(飯田龍太)
冬の雨7(110124)
「杣人のまきのかり屋の下ぶしに 音するものは霰なりかり」(西行法師 山家集冬)「音もせで岩間たばしる霰こそ 蓬の宿の友になりけれ」(西行法師 山家集冬)「雁さわぐ鳥羽の田づらや寒の雨」(芭蕉)
冬の雨6(091211)
「欅(けやき)高し根笹を濡らす冬の雨」(渡辺水巴)
冬の雨5(081214)
「冬の雨火箸ともして遊びけり」(一茶)
冬の雨4(071229)
「冬の雨の名残の霧は明け過ぎて 曇らぬ空に残る月影」(為家 夫木和歌抄)「面白し雪にやならん冬の雨」(芭蕉)
冬の雨3(070106)
「垣越しに一中節(いっちゅうぶし)や冬の雨」(荷風)冬の雨2(061226)
「冬の雨火箸(ひばし)ともして遊びけり」(一茶)
冬の雨1(061209)
「冬の雨柚(ゆ)の木の刺(とげ)の雫かな」(蕪村)

初雪8(150101)
「初雪やいつ大仏の柱立(はしらだて)」(芭蕉)
「雪降れば野路も山路も埋れて 遠近しらぬ旅のそらかな」(西行法師 山家集冬)
「折ならぬめぐりの垣の卯の花をうれしく雪の咲かせつるかな」(西行法師 山家集冬)
「あをね山苔のむしろの上にして 雪はしとねの心地こそすれ」(西行法師 山家集冬)
「初雪に兎の皮の髭(ひげ)作れ」(芭蕉 山中の子どもと遊ぶ)
「はつゆきや幸庵(さいわひあん)にまかりある」(芭蕉)
「初雪は顔洗ふ間の眺めかな」(井月)
「初雪や聖小僧(ひじりこぞう)の笈(おひ)の色」(芭蕉 旅行)
「初雪やかけかかりたる橋の上」(芭蕉 深河大橋半(なかば)かかりける比(ころ))
初雪7(140205)
「急がずば雪に我が身やとめられて 山べの里に春をまたまし」(西行法師 山家集冬)「あはれしりて誰か分けこむ山里の 雪降り埋む庭の夕ぐれ」(西行法師 山家集冬)「初雪や水仙の葉のたわむまで」(芭蕉)「初雪は盆にもるべき詠(ながめ)哉」(其角)
初雪6(130114)
「雪埋むそのの呉竹折れふして ねぐら求むるむら雀かな」(西行法師 山家集冬)「降りつもる雪を友にて 春までは日を送るべきみ山べの里」(西行法師 山家集冬)「初雪や幸(さいはひ)庵(あん)にまかりある」(芭蕉)
初雪5(120120)
「冬ごもり思ひかけぬを 木のまより花と見るまで雪ぞふりける」(つらゆき 古今集冬)「雪ふれば木ごとに花ぞさきにける いづれを梅とわきて折らまし」(紀とものり 古今集冬)「初雪やかけかかりたる橋の上」(芭蕉)「初雪や水仙のはのたわむまで」(芭蕉)
初雪4(110120)
「都にてめづらしと見る初雪は 吉野の山にふりやしぬらむ」(源景明 拾遺集冬)「梅が枝にふりつも雪は ひととせに二度咲ける花かとぞみる」(右衛門督公任 拾遺集冬)「闇の夜の初雪らしやぼんの凹」(一茶)
初雪3(100113)
「我が雪と思へばかろし笠の上」(其角)
初雪2(080117)
「わがめづる庭の小松にこのあした 初雪ふれり芝の小松に」(左千夫 明治42年)「松の上にいささ雪つみ 松が根の土はかぐろし今朝の初雪」(左千夫 明治42年)「初雪の松のながめをくはしみと 室を清めて友よびあそぶ」(左千夫 明治42年)「初雪の忽ち松に積りけり」(日野草城)
初雪1(070120)
「初雪や水仙の葉の撓(たわ)むまで」(芭蕉)

枯菊7(141224)
「親としてすべきあらまし終へぬれば わが傍らに子の一人(ひとり)ゐず」(窪田空穂 親明闇 昭和18年)
「子の三たり人となれるに離れゆき わが身はもとの一人(ひとり)となりぬ」(窪田空穂 親 明闇)
「愚かしきわれにもあるよ つぶやきて 子にかまくるが慰(なぐさ)なりしか」(窪田空穂 親 明闇)
「枯菊を剪(き)らずに日毎(ひごと)あはれなり」(虚子 六百句 昭和16年)
「枯菊に尚(な)ほ或物(あるもの)をとどめずや」(虚子 六百句 昭和18年)
「起き直り起き直らんと菊枯るる」(虚子 六百句 昭和18年12月24日)
枯菊6(140113)
「皺のみの姉が手わが手さし並べ 似たる形をわらひつつ見る」(窪田空穂 老いし姉 卓上の灯 昭和23年)「老いさぶるままにますます似勝(にまさ)ると 顔見かはして姉と笑ひつ」(窪田空穂 老いし姉 卓上の灯 昭和23年)「枯菊も留守守(も)るものの一つかな」(虚子 六百句 昭和20年)「枯菊に莚(むしろ)のはしのかかりけり」(虚子 六百句 昭和20年)
枯菊5(130108)
「からまつの落ち葉たまれる細経(ほそみち)は 踏むに柔かくこころよきかも」(赤彦 大正12年)「野の道の霜どけしるくなりぬれば 踏みつつぞゆく枯芝の上を」(赤彦 大正12年)「枯菊に愚かな杖の立ててあり」(虚子)
枯菊4(120104)
「山ざとは冬ぞさびしさまさりける 人めも草もかれぬと思へば」(源宗于朝臣 古今集冬)「わがまたぬ年はきぬれど 冬草のかれにし人はおとづれもせず」(みつね 古今集冬)「枯菊に尚(なお)色といふもの存す」(虚子)
枯菊3(110115)
「岩間せく木葉わけこし山水を つゆ洩らさぬは氷なりけり」(西行法師 山家集冬)「わりなしやこほるかけひの水ゆゑに 思ひ捨ててし春の待たるる」(西行法師 山家集冬)「一露(ひとつゆ)もこぼさぬ菊の氷かな」(芭蕉)
枯菊2(091207)
「枯菊と言捨てんには情あり」(松本たかし)
枯菊1(080113)
「枯れ果てて尚(なほ)赤菊のあはれなる」(虚子)

柚子湯10(141223)
「柑子の実熟れて落ちたり 降りたまる落葉気音なき夕庭あはれ(吉井勇 身辺の冬 天彦)
「柑子の実すでに黄ばみて うす日さす冬至の午後の庭のしづけさ」(吉井勇 身辺の冬 天彦)
「柚子湯とて庭木の薪を焚きそへつ」(水原秋櫻子 重陽)
柚子湯9(131228)
「柑子の実すでに黄ばみて うす日さす冬至の午後の庭のひそけさ」(吉井勇 身辺の冬 天彦)「しづかなる心をもちてわびずみの 師走の紙襖(ふすま)妹とつくらふ」(吉井勇 身辺の冬 天彦)「匂ひ艶よき柚子姫と混浴す」(能村登四郎)
柚子湯8(121205)
「冬の夜も薬餌(やくじ)かしこみ ひたすらに現身(うつそみ)をこそいとしみにけれ」(吉井勇 冬夜の茗 天彦)「目蓋裏(まぶたうら)やうやく熱くなるここちするを寂しみ小夜床に入る」(吉井勇 冬夜の茗 天彦)「柚子湯出て慈母観音のごとく立つ」(上田五千石) 「修羅を経てきし身を沈む柚子湯かな」(佐藤晃一)
柚子湯7(11116)
「うらぶれて土佐三界に日を経れば 酢橘(すだち)の香にも涙さそはる」(吉井勇 天彦 身辺の冬)「手に取れば土佐の酢橘は目に沁()しみぬ 涙はこれにまぎらしてゐむ」(吉井勇 風雪 海南抄)「柚子湯かな沈めば頤(あご)に柚子の玉」(石塚友二)
柚子湯6(101214)
「柚子湯して妻とあそべるおもひかな」(石川桂郎)
柚子湯4(100109)
「柚子風呂に浸す五体の蝶番(ちょうつがい)」(川崎展弘)
柚子湯3(091221)
「柚子風呂に妻をりて音小止みなし」(飴山實)
柚子湯2(090118)
「藁かけし梢に照れる柚子の実をの かたへは青く冬さりにけり」(長塚節 大正3年)「柚子どもと衝突しつつ湯浴みせり」(相生垣瓜人)
柚子湯1(090104)
「柚子湯して柚子とあそべる独りかな」(及川貞)

寒雀10(141220)
「風に飛ぶ朽葉(くちは)のごとく 子雀ら 粟(あは)の実見ては集ひ来」(窪田空穂 庭雀 丘陵地 昭和31年)
「撒(ま)ける粟(あは)食(は)みつくす間のしばらくを 雀たのしく見る我たのし」(窪田空穂 庭雀 丘陵地 昭和31年)
「かく深き悸(おび)えごころを身にもちて 生れ出でたる小雀のむれ」()
「適薬のなしといふなるじんましん この身に生れこの身悩ます」(窪田空穂 蕁麻疹 木草と共に 昭和37年)
「癒えがたきじんましんぞと諦めて 忘れんとおもへこの悪痒さ」(窪田空穂 蕁麻疹 木草と共に 昭和37年)
「じんましん怠けてくれよ 病みやすき老の心の暗くなれるを」(窪田空穂 蕁麻疹 木草と共に 昭和37年)
「寒雀露地の旭がはづみ出づ」(加藤楸邨 寒雷)
「寒雀ひともひとりの顔を出す」(加藤楸邨 寒雷)
「寒雀午前はどこも煙はづむ」(加藤楸邨 まぼろしの鹿 昭和28年)
「寒雀一羽が日暮を負ひにけり」(加藤楸邨 吹越 昭和45年)
寒雀9(140112)
「風に飛ぶ朽葉(くちは)のごとく 子雀ら 粟(あは)の実見ては集ひ来」(窪田空穂 庭雀 丘陵地)「かく深き悸(おび)えごころを身に持ちて 生れ出でたる子雀のむれ」(窪田空穂 庭雀 丘陵地)「撒(ま)ける粟(あは)食(は)みつくす間のしばらくを 雀たのしく見る我たのし」(窪田空穂 庭雀 丘陵地)「選句しつつ火種なくしぬ寒雀」(渡辺水巴)
寒雀8(121203)
「この朝の小雨に堪へずうつくしく 脆き紅葉のあはれ散りつぐ」(窪田空穂 雑詠 老槻の木)「苔のうへに散りて重なるもみぢ葉の 雨に濡れたる美しさ見む」(窪田空穂 雑詠 老槻の木)「牢屋(らうや)から出たり入(いつ)たり雀の子」(一茶)
寒雀7(111206)
「小雀の集ふ七羽のいといたく 悸(おび)えつつ食(は)むあはれ粟(あは)の実」(窪田空穂 丘陵地 庭雀)「同じ巣に生れ出でたる子雀か 来たると去ると七羽離れず」(窪田空穂 丘陵地 庭雀)「天餌足りて胸づくろひの寒雀」(中村草田男)
寒雀6(101218)
「風に飛ぶ朽葉(くちば)のごとく子雀ら 庭の泡(あは)の実見ては集ひ来」(窪田空穂 昭和31年)「撒ける粟(あは)食(は)みつくす間のしばらくを 雀たのしく見る我たのし」(窪田空穂 昭和31年)「雀子やものやる児(ちご)も口を明(あく)」(一茶)
寒雀5(091224)
「寒雀身を細うして闘へり」(中村普羅)
寒雀4(091213)
「脇へ行くな鬼が見るぞよ寒雀」(一茶)
寒雀3(090126)
「倉庫の扉打ち開きあり寒雀」(虚子)
寒雀2(080121)
「寒雀顔見知るまで親しみぬ」(富安風生)
寒雀1(070102)
「雀の子を犬君(いぬき)が逃がしつる。伏籠(ふせご)のうちに籠(こ)めたりつるものを」(源氏物語若紫)。「うつくしきもの。瓜(うり)に書きたるちごの顔。雀の子の、ねず鳴きするにをどり来る。」(枕草子151)「荒庭や桐の実つつく寒雀」(永井荷風)

寒鴉9(141219)
「烏だに 憂き世を厭ひて 墨染めに染めたるや 身を墨染めに染めたり」(閑吟集)
「烏(からす)は見る世に色黒し、鷺(さぎ)は年を経(ふ)れども猶(なを)白し、鴨(かも)の首は短しとて継(つ)ぐものか、鶴の足をば長しとて切るものか。」(梁塵秘抄)
「見下ろしてやがて啼きけり寒鴉」(虚子 六百五十句 昭和21年)
「口明けてやうやく啼きぬ寒鴉」(虚子 六百五十句 昭和22年)
寒鴉8(140111)
「木の上に鴉は啼けり 上野山(うへのやま) 土にあまねく霜ふる時か」(赤彦 上野山 大正5年)「上野山 土に霜降れり たまさかのいとま寂しく来りて歩む」(赤彦 上野山 大正5年)「寒鴉明恵(みょうえ)のごとく樹に居たり」(相生垣瓜人)
寒鴉7(140119)
「空わたり来る鶴(つる)むれまのあたり声 さわがしく近づきにけり」(佐藤佐太郎 冬木 昭和38年)「荒崎(あらさき)の田に降りるまでいとまありて 空めぐりつつとぶ鶴のむれ」(佐藤佐太郎 冬木 昭和38年)「田に下りて一羽のこゑの寒鴉」(森澄雄 花間)
寒鴉6(120108)
「冬の日といへど一日(ひとひ)は長からん 刈田に降りていこふ鴉(からす)ら」(佐藤佐太郎 冬木 昭和37年)「鳩群のなかに足病む鳩ひとつ みとめなどして広場に憩ふ」(佐藤佐太郎 天眼 昭和51年)「寒鴉清潔に鳴きわかれゆく」(飯田龍太)
寒鴉5(110113)
「鴉一羽霜田かすめてかおかおと こがらしの枝に今とまりたる」(白秋 雀の卵)「鴉一羽山の枯木にとまりたり 向きを変へたり吹く風の中」(白秋 雀の卵)「この家は何うる家と寒鴉」(虚子)
寒鴉4(091225)
「冬来ては案山子(かかし)のとまる鴉かな」(其角)
寒鴉3(090127)
「寒鴉(かんがらす)己(おの)が影の上におりたちぬ」(芝不器男)
寒鴉2(080122)
「病みこもるガラスの窓の窓の外の 物干竿に鴉鳴く見ゆ」(子規 竹の里歌)「愚かなり阿呆烏の啼くよりも わがかなしみをひとに語るは」(牧水 独り歌える)「人はいま一番高き木のうへに 鴉鳴く見て橋わたりたり」(白秋 雲母集)「寒烏(かんがらす)かはいがられてとられけり」(一茶)
寒鴉1(070103)
「貧(ひん)かこつ隣(となり)同士の寒鴉(かんがらす)」(子規)

寒さ10(141218)
「冬の夜も薬餌(やくじ)かしこみ ひたすらに現身(うつそみ)をこそいとしみにけれ」(吉井勇 冬夜の茗 天彦)
「目蓋裏(まぶたうら)やうやく 熱くなるここちするを 寂しみ小夜床に入る」(吉井勇 冬夜の茗 天彦)
「つづくと見てあるほどに ほのぼのと おもかげぞ立つ冬菊の花」(吉井勇 冬夜の茗 天彦)
「次の間(ま)の灯(ひ)で飯を喰ふ夜寒哉」(一茶 七番日記)
「死にこじれ死にこじれつつ寒さかな」(一茶 急ぐことのかなはねば、濡れたきままにぬれつつ、申(さる)の刻過るころ、からうじて長沼(ながぬま)の郷(さと)に入る。 志多良)
「本町の木戸りんとして寒さ哉」(一茶 七番日記)
「椋鳥(むくどり)と人に呼ばるる寒さ哉」(一茶 八番日記)
寒さ9(140110)
「炉に火なし冷たき灰をながめつつ おもふおのれが寒きいのちを」(吉井勇 冬夜独座 天彦)「うつらうつら遠ゐる人をおもふなり 炉の火の消えしことも忘れて」(吉井勇 冬夜独座 天彦)「追分で引き剥がれたる寒かな」(漱石 明治32年)「三階に独り寐に行く寒かな」(漱石 明治35年)
寒さ7(121211)
「うつそみを厳(きび)しき冬のなかに置く 阿修羅(あしゅら)のおもひ消さむよすがに」(吉井勇 冬夜の茗)「つくづくと見てあるほどに ほのぼのと おもかげぞ立つ冬菊の花」(吉井勇 冬夜の茗)「忘れ置(おく)仏のめしの寒さ哉」(蕪村 落日庵)
寒さ6(111223)
「寂しければ自在(じざい)の竹の煤(すす)竹に 懸けし茶釜も鳴りか出づらめ」(吉井勇 天彦 続寂しければ)「寂しければ古りし自在を炉のうへに 吊るして思ふかへらぬことを」(吉井勇 天彦 続寂しければ)「ふとんきて達磨(だるま)もどきに居(すわ)りけり」(一茶)
寒さ6(111203)
「このままに石になるべきここちしぬ 膝(ひざ)を抱(いだ)きてものを思へば」(吉井勇 人間経)「鬢の毛もいよよ白みて うつしみのわが身もいよよ冬さびにけり」(吉井勇 人間経)「寺寒く樒(しきみ)はみこぼす鼠(ねずみ)かな」(蕪村)
寒さ6(110129)
「夜をこめて谷のとぼそに風寒み かねてぞしるき峯の初雪」(崇徳院御製 千載集冬)「山里の垣根の梅は咲きにけり かばかりこそは春もにほはめ」(天台座主明快 千載集冬)「葱(ねぶか)白く洗ひたてたる寒さかな」(芭蕉)
寒さ6(110111)
「岸の辺の石の地蔵に霜降りて 物部磧(ものべがはら)に冬寂びにけり」(吉井勇 身辺の冬)「うらぶれて土佐三界に日を経れば 酢橘(すだち)の香にも涙さそはる」(吉井勇 身辺の冬)「皿を踏む鼠(ねずみ)の音の寒さかな」(蕪村)
寒さ4(100106)
「さ夜ふけて声さへ寒きあしたづは 幾重の霜か置きまさるらむ」(藤原道信朝臣 新古今集冬)「中々に消えは消えなで埋火の 生きてかひなき世にもあるかな」(権僧正永縁 新古今集冬)「易水(えきすい)に葱(ねぶか)流るる寒さかな」(蕪村)
寒さ3(091217)
「夜ふかく音なく降るは霜ならむ 炭継ぎ足して耳を澄ますも」(吉井勇 冬夜沈吟)「虫麻呂と名さへ呼ばれてありなまし 寒さを怖(お)ずる冬蟄(とうちつ)の身は」(吉井勇 冬夜沈吟)「井のもとへ薄刃(うすば)を落(おと)す寒さ哉」(蕪村)
寒さ2(081214)
「塩鯛の歯ぐきも寒し魚の店(たな)」(芭蕉)
寒さ1(080118)
「み吉野の山の白雪つもるらし ふるさと寒くなりまさるなり」(奈良の京にまかれりける時に、やどれりける所にてよめる 坂上是則 古今集冬)「矢田の野に浅茅色づくあらち山 嶺のあわ雪寒くあるらし」(人麿 新古今集冬)「夜をこめて谷のとぼそに風寒み かねてぞしるき峯の白雪」(崇徳院御製 千載集冬)「両の手に朝茶を握る寒さかな」(杉風)

寒鴉8(140111)
「木の上に鴉は啼けり 上野山(うへのやま) 土にあまねく霜ふる時か」(赤彦 上野山 大正5年)「上野山 土に霜降れり たまさかのいとま寂しく来りて歩む」(赤彦 上野山 大正5年)「寒鴉明恵(みょうえ)のごとく樹に居たり」(相生垣瓜人)

寒雀9(140112)
「風に飛ぶ朽葉(くちは)のごとく 子雀ら 粟(あは)の実見ては集ひ来」(窪田空穂 庭雀 丘陵地)「かく深き悸(おび)えごころを身に持ちて 生れ出でたる子雀のむれ」(窪田空穂 庭雀 丘陵地)「撒(ま)ける粟(あは)食(は)みつくす間のしばらくを 雀たのしく見る我たのし」(窪田空穂 庭雀 丘陵地)「選句しつつ火種なくしぬ寒雀」(渡辺水巴)

年の暮7(141230)
「はかなくて暮れぬる年をかぞふれば 我が身も末になりにけるかな」(左京太夫顕輔 玉葉集冬)
「年くれて我が世ふけゆく風の音に 心のうちのすさまじきかな」(紫式部 里に侍りけるが、しはすのつごもりに内に参りて、御物忌にてなりければ局にうち臥したるに、人の忙しげに行きかふ音を聞きて思ひつづけける 玉葉集冬)
「春秋のすてて別れし空よりも 身にそふ年の暮れぞかなしき」(前大納言為家 歳暮の心を 玉葉集冬)
「なぞもかく積れば老いとなる 年の暮をばいそぐならひなるらん」(後徳大寺左大臣 歳暮の心を 玉葉集冬)
「めでたき人の数にも入らむ年の暮」(芭蕉)
「旧里(ふるさと)は臍(ほぞ)の緒に泣く年の暮」(芭蕉)
「皆拝め二見(ふたみ)の七五三(しめ)を年の暮」(芭蕉)
「蛤(はまぐり)の生ける甲斐あれ年の暮」(芭蕉)
「分別の底たたきけり年の昏(くれ)」(芭蕉)
「古法眼(こほうふげん)出どころあはれ年の暮」(芭蕉)
年の暮6(131231)
「過ぎぬればわが身の老となるものを 何ゆゑあすの春を待つらん」(京極前関白家肥後 除夜をよみ侍りける 玉葉集冬)「あはれなり数にもあらぬ老の身を なほ尋ねても積る年かな」(皇太后宮太夫俊成 歳暮 玉葉集冬)「今年はやあすは明けなん 足引の山に霞のたてりやと見ん」(貫之 年の暮の心をよめる 玉葉集冬)「年くれてわが世ふけゆく風の音に 心のうちのすさまじきかな」(紫式部 里に侍りけるが、しはすのつごもりに内に参りて、御物忌なりければ局にうち臥したるに、人の忙しげに行きかふ音を聞きて思ひつづけける 玉葉集冬)「さっぱりと鱈(たら)一本に年暮(くれ)て」(嵐蘭 芭蕉連句集) 「夜着(よぎ)たたみ置く長持(ながもち)の上」(岱水)「灯の影めづらしき甲(きのえ)待ち」(芭蕉) 「山ほととぎす山を出る声」(許六)「児達(ちごたち)は鮎(あゆ)の白焼きゆるされて」(洒堂) 「尻目(しりめ)にかよふ翠簾(みす)の女房」(蘭)「いかやうな恋もしつべきうす霙(みぞれ)」(水) 「琵琶をかかへて出(いづ)る駕物(のりもの)」(翁)年の暮5(121229)
「あはれにも暮れゆく年の日数かな 帰らんことは夜のまと思ふに」(相模 年の暮の心をよめる 千載集冬)「ひととせははかなき夢の心地して 暮れぬるけふぞおどろかれぬる」(前律師俊宗 年の暮の心をよみ侍りける 千載集冬)「盗人に逢(あ)うたよも有(あり)年のくれ」(芭蕉)

年忘れ3(141229)
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「人に家を買(かは)せて我は年忘れ」(芭蕉)
「魚鳥の心はしらず年わすれ」(芭蕉)
「せつかれて年忘れするきげんかな」(芭蕉)
年忘れ2(131230)
「命あるものを見るに、人ばかり久しきはなし。かげろうふの夕べを待ち、夏の蝉の春秋(はるあき)を知らぬもあるぞかし。つくづくと一年(ひととせ)を暮すほどだにも、こよなうのどけしや。飽(あ)かず、惜(を)しと思はば、千年(ちとせ)を過ぐすとも、一夜(ひとよ)の夢の心地(ここち)こそせめ。住み果てぬ世にみにくき姿を待ち得て、何かはせん。命長ければ辱(はぢ)多し。長くとも四十(よそぢ)に足らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ。」(第七段)「兼好は死ねというたに年忘れ」(支考)「せつかれて年忘れするきげんかな」(芭蕉)
年忘れ1(121230)
「半日(はんじつ)は神を友にや年忘れ」(芭蕉 年忘れ 歌仙) 「雪に土民の供物(くもつ)納(おさ)むる」(示右)「水光る芦(あし)のふけ原鶴(つる)啼(な)いて」(凡兆) 「闇の夜渡るおも楫(かぢ)の声」(去来)「なまらずに物いふ月の都人」(景桃丸) 「秋に突(つき)折る虫食いの杖」(乙所T)「実(み)入りよき岡部(おかべ)の早田(わさだ)あからみて」(史邦) 「里ちかくなる馬の足蹟(あしあと)」(玄哉)「押(おし)わって犬にくれけりあぶり餅」(示右) 「奉加(ほうが)に出(いづ)る僧の首途(かどいで)」(芭蕉)
行く年6(141231)
「嘆きつつくれ行く年を世にふれば 猶急ぐと野卑とのみるらん」(中院入道一品 題しらず 新葉集冬)
「なにをして過ぎつるかたの月日ぞと さらにおどろく年の暮かな」(祥子内親王 新葉集冬)
「数(かぞ)ふるに残(のこり)少なき身にしあれば せめても惜しき年の暮かな」(藤原永実 金葉集冬)
「いかにせむ暮れ行く年をしるべにて 身を尋ねつつ老は来にけり」(三宮 金葉集冬)
「喰(くう)て寝てことしも今(こ)よい一夜かな」(一茶 七番日記)
行く年5(121231)
「さりともと嘆き嘆きて過ぐしつる 年もこよひに暮れはてにけり」(前左衛門督公光 籠り居て侍りける年の暮によめる 千載集冬)「みやこにて送り迎ふといそぎしを 知らでや年のけふは暮れなん」(民部卿親範 頭(かしら)下ろして大原に籠り居て侍りけるに、閑中歳暮といへる心を上人どもよみけるによみ侍りける 千載集冬)「魚鳥の心は知らず年の暮」(芭蕉)
行く年4(111230)
「一とせを鴨山考(かもやまかう)にこだはりて 悲しきこともあはれ忘れき」(斎藤茂吉 白桃 昭和9年)「ひそむごとくあり経(へ)て来(き)つる一とせを われの机だにしばし知り居(ゐ)よ」(斎藤茂吉 白桃 昭和9年)「行(ゆく)年や覚(おぼえ)一つと書(かく)附木(つけぎ)」(一茶)
行く年3(101231)
「かぞふれば年の残りもなかりけり 老いぬるばかり悲しきはなし」(和泉式部 新古今集冬)「今日ごとに今日や限りと惜しめども 又も今年に逢ひにけるかな」(皇太后太夫俊成 新古今集冬)「行く年の瀬田(せた)を廻るや金飛脚(かねびきゃく)」(蕪村)
行く年2(091231)
「いつかわれ昔の人といはるべき かさなる年を送りむかへて」(西行法師 山家集冬)「行くとしや空の青さや守谷(もりや)まで」(一茶)
行く年1(081231)
「ひととせははかなき夢の心地して 暮れぬるけふぞおどろかねぬる」(年の暮の心をよみ侍りける 前律師俊宗 千載和歌集冬)「みやこにて送り迎ふといそぎしを 知らでや年のけふは暮れなん」(頭(かしら)おろしてのち大原に籠り居て侍りけるに、閑中歳暮といへる心をよみけるによみ侍りける 民部卿親範 千載和歌集冬)「行く年の女歌舞伎や夜の梅」(蕪村)

元日9(150101)
「むれ立ちて雲井にたづの声すなり 君が千年や空にみゆらん」(西行法師 山家集賀)
「君が代は天つそらなる星なれや 数も知られぬここちのみして」(西行法師 山家集賀)
「萬代のはじめと今日を祈りおきて 今ゆくすゑは神のみぞ知るらむ」(中納言朝忠 拾遺集賀)
「朝まだききりふの岡にたつきじは 千代の日つぎの始めなりけり」(清原元輔 拾遺集賀)
「正月やごろりと寝たるとつとき着(ぎ)」(一茶)
「元日やわれのみならぬ巣なし鳥」(一茶 歳旦)
「二日にもぬかりはせじな花の春」(芭蕉)
「元日やおもへばさびし秋の暮」(芭蕉)
元日8(140101)
「今日にあけて昨日に似ぬは みな人の心に春のたちにけらしな」(紀貫之 春立つ日よめる 玉葉集春)「春きぬと思ひなしぬる朝けより 空も霞の色になりゆく」(院御製 早春霞といふ事をよませ給うける 玉葉集春)「元日や深く心に思ふこと」(虚子 七百五十句 昭和30年)「元日や句は須(すべから)く大らかに」(虚子 七百五十句 昭和30年)
元日7(130101)
「沢べより巣立ちはじむる鶴の子は 松の枝にやうつりそむらむ」(西行法師 山家集 賀歌)「光さす三笠の山の朝日こそ げに万代のためしなりけれ」(西行法師 山家集 賀歌)「年々(としどし)や猿に着せたる猿の面」(芭蕉)
元日6(120101)
「元日も爰(ここ)らは江戸の田舎(ゐなか)哉」(一茶)
元日5(110101)
「老(おい)われも夢なきにあらず初日満つる 今日のよき日の真蒼(まさお)なる空」(窪田空穂 昭和32年正月)「除夜の余音(よいん)の長くたゆたひて 消えやらぬ音(ね)の胸にまつはる」(窪田空穂 昭和32年正月)「正月の子どもに成って見たきかな」(一茶)
元日4(100101)
「元日は田毎の日こそこひしけれ」(芭蕉)
元日3(090101)
「門ごとに立つる小松にかざされて 宿てふ宿に春は来にけり」(家々に春を翫ぶといふことを 西行法師 山家集春)「岩間とぢし氷も今朝はとけ初めて 苔の下水みち求むらむ」(初春 西行法師 山家集春)「元日や上々吉の浅黄空」(一茶)
元日2(080101)
「新しき年の始めの初春の きょう降る雪のいやしけ吉事(よごと)」(大伴家持 万葉集巻二十)「年立つや家中の礼は星月夜」(基角)
元日1(070101)
「きのうより後をば知らず、百年の春の始めは今日にぞありける 貫之」(古今六帖)「あら玉の年も月日も行きかへり、三つのはじめの春は来にけり 顕朝」(夫木和歌抄)「元日や袴をはいて家に在る」(松根東洋城)
新年5(150103)
「いたづらにすぐす月日はおもほえで 花みてくらす春ぞすくなき」(藤原のおきかぜ 古今集賀歌)
「春くれば宿にまづさく梅の花 きみが千歳(ちとせ)のかざしとぞ見る」(きのつらゆき 古今集賀歌)
「元日の門を出づれば七人の敵」(虚子 七百五十句 昭和27年)
「斯(かく)の如く俳句を閲(けみ)し老の春」(虚子 七百五十句 昭和27年)
「とはいへど涙もろしや老の春」(虚子 七百五十句 昭和27年)
「起き出でてあら何ともな老の春」(虚子 七百五十句 昭和27年)
「何事も知らずと答へ老の春」(虚子 七百五十句 昭和27年)
「傲岸(ごうがん)と人見るままに老の春」(虚子 七百五十句 昭和27年)
新年4(130103)
「おのづから まなこは開く。朝日さし 去年(こぞ)のままなる部屋のもなかに」(釈迢空 朝山 海やまのあひだ)「目の下の冬木の中の村の道 行く人はなし 鴉おりゐる」(釈迢空 朝山 海やまのあひだ)「猫の子の眷属(けんぞく)ふゑて玉の春」(子規)
新年3(120102)
「ちはやぶる神代のことも 人ならば問はましものを白菊の花」(八条前太政大臣 千載集)「吹く風も木々の枝をば鳴らさねど 山は久しき声聞こゆなり」(崇徳院御製 千載集)「年立つやもとの愚がまた愚にかへる」(一茶)
新年2(110102)
「わが地球地軸かたむき来たる時 年を改め事新たにす」(窪田空穂 昭和32年正月)「おぼろげに思へることを確めし たのしさもちて夜床に就かん」(窪田空穂 昭和35年大寒のころ)「一輪の霜の薔薇より年明くる」(水原秋櫻子)
新年1(100102)
「山路こそ雪のした水とけざらめ 都のそらは春のきぬらむ」(西行法師 山家集春)「年たつや家中の礼は星月夜」(其角)

初夢3(150113)
「さしあたり吾にむかひて伝ふるな 性欲に似し情の甘美を」(斎藤茂吉 一月一日 昭和24年)
「朝のうち一時間あまりはすがすがし それより後(のち)は否(いな)も応(う)もなし」(斎藤茂吉 一月一日 昭和24年)
「をとめ等のみづみづとして清きとき この国がらもやうやくに「新」」(斎藤茂吉 新年昭和25年)
「新春が来りてこぞりことほぎぬ 老いたるわれもまじはり行きて」(斎藤茂吉 新春 昭和25年)
「わが窓より鍵ぬきとりて 日光を入れむとおもふ午前の十一時」(斎藤茂吉 無題 昭和26年)
「わが色欲いまだ微(かす)かに残るころ 渋谷の駅にさしかかりけり」(斎藤茂吉 無題 昭和26年)
「女こよ初夢語りなぐさまん」(子規 明治27年)
「初夢の思ひしことを見ざりける」(子規 明治28年)
「初夢の何も見ずして明けにける」(子規 明治30年)
初夢2(140102)
「数へ年もて齢(とし)いはむ老(おい)われは幼(あさな)と共に多きがたのし」(窪田空穂 年初 昭和31年)「たまさかに来し客人(まらうど)と言葉なく眼を見合ひては笑まひの長き」(窪田空穂 年初 昭和31年)
「初夢の思ひしことを見ざりける」(子規 明治28年)
初夢1(130102)
「あたたかき飯(いひ)くふことをたのしみて 今しばらくは生きざらめやも」(斎藤茂吉 昭和4年 一月某日)「あたらしき年(とし)のはじめは楽(たの)しかり わがたましひを養(やしな)ひゆかむ」(斎藤茂吉 昭和6年 新年)「初夢に古郷(ふるさと)を見て涙かな」(一茶 寛政6年)

雑煮6(150102)
「やうやくに日は延びゆくとおもひつつ こころ寂しく餅あぶりけり」(斎藤茂吉 餅 白桃 昭和9年)
「みちのくの妹が吾におくり来し 餅(もちひ)をぞ食ふ朝もゆふべも」(斎藤茂吉 餅 白桃 昭和9年)
「わが詠む歌我よりまさるものとならずしか 諦めて心つくし詠む」(窪田空穂 米寿の日に 昭和39年)
「思ふこと歌の形式(かたち)となることの たのしさ知りて溺れ入りつも」(窪田空穂 米寿の日に 昭和39年)
「歌詠みて足らはぬことの何あらむ 心たのしく齢(よはひ)の延びぬ」(窪田空穂 米寿の日に 昭和39年)
「老二人ひそかに生きて 笑ふこと少かれども涙はあらず」(窪田空穂 老夫妻 昭和40年)
「笑み設(ま)けて老い妻が我に言ふことは 己が作らむ食べ物の上」(窪田空穂 老夫妻 昭和40年)
「老い妻は一つ願ひをくりかへす 風邪ひくな君皹(ひび)きらすまじ我も」(窪田空穂 老夫妻 昭和40年)
「めでたさも一茶くらいや雑煮餅」(子規 明治31年)
「雑煮くふてよき初夢を忘れけり」(子規 明治31年)
「盃の用意も見ゆる雑煮膳」(井月)
「揺らげる歯そのまま大事雑煮食ふ」(虚子 六百五十句 昭和24年)
「大勢の子育て来し雑煮かな」(虚子 六百五十句 昭和25年)
「斯(か)くの如く只ありて食ふ雑煮かな」(虚子 七百五十句 昭和27年)
雑煮5(140105)
「あたたかき飯(いひ)食うことをたのしみて 今しばらくは生きざらめやも」(斎藤茂吉 一月某日 昭和4年)「納豆を餅(もちひ)につけて食(を)すことを われは楽しむ人にいはぬかも」(斎藤茂吉 冬ふかむ 昭和9年)「大切のこと忘れてゐるごとき 思ひのありて身より離れず」(窪田空穂 老身 昭和35年)「命あるままに齢(よはひ)つもり凡愚 われ九十を一つ超す身となりぬ」(窪田空穂 元日 昭和42年)「満ち足りてこころうろつく雑煮かな」(金子兜太)「雑煮食うてねむうなりけり勿体(もったい)な」(村上鬼城)
雑煮4(130125)
「配給のわが分の餅よ 思はざるこの真白きをいかにして食はむ」(窪田空穂 昭和16年 歳首)「貴重なる品よと人の笑みまけて わが前に置くいささかの菓子」(窪田空穂 昭和16年 歳首)「ひそひそと雑煮食ひたる夫婦かな」(尾崎紅葉)
雑煮3(120103)
「旨き物食(たう)ぶる顔のやさしきを 恋ふるこころに旨き物もがも」(窪田空穂 昭和21年)「食(しょく)とかねにつながりあらぬ業(わざ)しては 老い来しわれの飢ゑてやあらむ」(窪田空穂 昭和22年)「雑煮ぞと引きおこされし旅寝かな」(路通)
雑煮2(100103)
「袖ひじてむすびし水のこほれるを 春たつけふの風やとくらん」(紀貫之 古今集春)「塗椀の家に久しき雑煮かな」(子規)
雑煮1(090102)
「三椀の雑煮かゆるや長者ぶり」(蕪村)

大寒7(150120)
「おぼろげに思へることを確かめし たのしみもちて夜床に就かん」(窪田空穂 大寒のころ 木草と共に 昭和35年)
「下駄はけば動きたくなり 吹く風の冷たきに向かひ歩みを移す」(窪田空穂 大寒のころ 木草と共に 昭和35年)
「大寒や転(ころ)びて諸手(もろて)つく悲しさ」(西東三鬼)
「常盤木(ときわぎ)の大寒に入るひびきかな」(加藤楸邨)
「大寒の一戸もかくれなき故郷」(飯田龍太)
大寒6(140120)
「仏手柑(ぶしゅかん)の汁を魚のうへにかけ うそ寒く食(を)す夕がれひかな」(吉井勇 身辺の冬 天彦)「太腹を撫づればこころ和むなり わび居をすればわれもをかしき」(吉井勇 身辺の冬 天彦)「しめやかに生きむと思(も)へば 鉄瓶のたぎちの音もにくからなくに」(吉井勇 残冬抄 天彦)「悔(くい)ごころにはかに湧き来(く) いかにせむ杯の酒も寒しこよひは」(吉井勇 残冬抄 天彦)「大寒と敵(かたき)のごとく対(むか)ひたり」(富安風生)「大寒や半天の碧(へき)玲瓏(れいろう)と」(日野草城)
大寒5(130120)
「たまきはる命はわれのものならず 厳しき冬に堪へてわが居り」(吉井勇 冬夜沈吟)「厳しきは寒さか迫る切なさか もの思ひ居れば骨(ほね)もこほりぬ」(吉井勇 冬夜沈吟)「立(たち)ん坊の地団太(じだんだ)を踏む寒かな」(漱石)
大寒4(120120)
「雪しまきひと夜すさべば さむざむと比叡の山肌荒れにけらずや」(吉井勇 天彦 比叡山)「われここに老いむと思ひ 比叡が嶺を仰ぐ朝ごころかも」(吉井勇 天彦 比叡山)「大寒(だいかん)にまけじと老(おい)の起居(たちい)かな」(虚子)「大寒に埃(ほこり)の如く人死ぬる」(虚子)「大寒や見舞に行けば死んでをり」(虚子)
大寒3(110120)
「夜をかさねむすぶこほりのしたにさへ 心ふかくもすめる月かな」(平実重 千載集冬)「いづくにか月はひかりをとどむらん やどりし水もこほりゐにけり」(左大弁親宗 千載集冬)「大寒や見舞に行けば死んでをり」(虚子)
大寒2(100120)
「夜ふかく石楠花(しゃくなげ)の葉を煎じれば 己(し)が命さへかそけかりけり」(吉井勇 冬夜独座)「炉のうへの炬燵櫓(こたつやぐら)に板置きし わが文机(ふづくゑ)のあはれなるかな」(吉井勇 冬夜独座)「大寒の大々とした月よかな」(一茶)
大寒1(090120)
「大寒の埃の如く人死ぬる」(虚子)

秋の風

秋の風14(140916)
「玉にぬく露はこぼれて むさし野の草の葉むすぶ秋の初風」(西行法師 山家集秋)
「秋風のふけ行く野辺の虫の音の はしたなきまでぬるる袖かな」(西行法師 山家集秋)
「枝もろし緋唐紙(ひたうし)やぶる秋の風」(芭蕉)
「蜘(くも)何と音をなにと鳴く秋の風)」(芭蕉)
「たびねして我句をしれや秋の風」(芭蕉)
「見送りのうしろや寂びし秋の風」(芭蕉)
「秋風のふけども青し栗のいが」(芭蕉)
秋の風13(130906)
「思ふにも過ぎてあはれにきこゆるは 荻の葉みだる秋の夕風」(西行法師 荻 山家集秋)「あたりまであはれ知れともいひがほに 荻の音する秋の夕風」(西行法師 隣の夕べの荻の風 山家集秋)「あかあかと日はつれなくも秋の風」(芭蕉 おくのほそ道)秋の風12(120905)
「夏衣まだひとへなるうたたねに こころして吹け秋の初風」(秋のはじめに詠み侍りける 安法法師 拾遺集巻三)「荻の葉のそよぐ音こそ 秋風の人にしらるるはじめなりけれ」(延喜の御時御屏風に 貫之 拾遺集巻三)「桃の木のその葉ちらすな秋の風」(芭蕉)
秋の風11(110911)
「おしなべてものを思はぬ人にさへ 心をつくる秋のはつ風」(西行法師 山家集秋)「玉にぬく露はこぼれて むさし野の草の葉むすぶ秋の初風」(西行法師 山家集秋)「石山の石より白し秋の風」(芭蕉)
秋の風10(100919)
「秋は来ぬ年もなかばに過ぎぬとか 萩吹く風のおどろかすらん」(寂然法師 千載集秋上)「木の葉だに色づくほどはあるものを 秋風吹けば散る涙かな」(読み人しらず 千載集秋上)「物ごとに秋のけしきはしるけれど まづ身にしむは萩のうは風」(大蔵卿行宗 千載集秋上)「身にしみて大根からし秋の風」(芭蕉)
秋の風9(090913)
「江(こう)渺々(べうべう)として釣の糸吹く秋の風」(蕪村)
秋の風8(090819)
「庭十歩秋風吹かぬ隈もなし」(子規)
秋の風7(080821)
「あかあかと日はつれなくも秋の風」(芭蕉)
秋の風6(070921)
「夕さればたま散る野辺の女郎花(おみなえし) まくらさだめぬ秋風ぞ吹く」(新古今和歌集秋上)「藤袴(ふぢばかま)ぬしはたれともしら露の こぼれて匂ふ野辺の秋風」(新古今和歌集秋上)「野辺ごとにおとづれわたる秋風を あだにもなびく花薄(はなすすき)かな」(新古今和歌集秋上)「秋はただものをこそ思へ 露かかる萩のうへ吹く風につけても」(新古今和歌集秋上)
「秋風やしら木の弓に弦はらん」(去来)
秋の風5(070824)
「淋しさに飯をくふなり秋の風」(一茶)
秋の風4(061024)
「猿を聞く人捨子に秋の風いかに」(芭蕉)
秋の風3(061006)
「淋しさに飯をくふなり秋の風」(一茶)
秋の風2(060926)
「身にしみて大根からし秋の風」(芭蕉)
秋の風1(060914)
「物いへば唇(くちびる)寒し秋の風」(座右の銘 人の短をいふ事なかれ 己が長をとく事なかれ 芭蕉)

枝豆8(141031)
「いさぎよき月の光や夜のふけは 白髪薄(しらがみすすき)炎なす見ゆ」(北原白秋 橡(つるばみ))
「雲をりをりかげる月夜をよろしみと また秋くさに照り出(づ)る待ちぬ」(北原白秋 橡(つるばみ) 橡)
「紅葉(もみぢば)にい照り足らへる日のひかり 我が家(や)とぞおもふ庭のしづけさ」(北原白秋 紅葉箋 橡(つるばみ))
「日の照りて二本(ふたもと)あかる黄の銀杏 時はららめき茶の間より見ゆ」(北原白秋 紅葉箋 橡)
「卓上や狼藉として豆のから」(子規 明治31年)
「学校ニ行カズ枝豆売ル子カナ」(子規 枝豆12句より 明治34年)
「枝豆ヤ病ノ牀ノ昼永シ」(子規 枝豆12句より 明治34年)
枝豆7(131028)
「下蔭(したかげ)の草花惜み 日を蔽(おお)ふ松が枝伐らん 家主怒るとも」(子規 仰臥漫録より 明治34年)「我庭の三もと松伐り あはれ深き千草の花に 日の照るを見ん」(子規 仰臥漫録より 明治34年)「芋アリ豆アリ女房ニ酒ネダリケリ」(子規 枝豆12句より 明治34年)「芋ヲ喰ハヌ枝豆好ノ上戸カナ」(子規 枝豆12句より 明治34年)
枝豆6(121029)
「話しながら枝豆をくふあせりかな」(子規 明治31年)「枝豆ヤ三寸飛ンデ口に入ル」「枝豆ノ月ヨリ先ニ老イニケリ」「枝豆ノツマメバハヂク仕掛カナ」「明月ノ豆盗人ヲ照ラシケリ」「枝豆ノカラ棄テニ出ル月夜カナ」「枝豆ヤ月ハ糸瓜ノ棚ニアリ」枝豆5(111101)
「枝豆のから捨てに出る月夜かな」(子規)
枝豆4(101023)
「枝豆を喰へば雨月(うづき)の情(なさけ)あり」(虚子)
枝豆3(091017)
「枝豆のから捨てに出る月夜かな」(子規)
枝豆2(081013)
「枝豆や舞妓の顔に月上る」(虚子)
枝豆1(071026)
「枝豆 枝豆 よくはぢく枝豆ぷいと飛んで 三万里月の兎の目にあてた 目つかち兎よくはぢく枝豆 十三夜のお月様」「枝豆のつまめばはぢく仕掛けかな」(子規)「枝豆の月より先に老いにけり」(子規)「枝豆やつきは糸瓜の棚にあり」(子規)

霜降3(141023)
「天(あま)飛ぶや雁のつばさの覆羽(おほひば)の いづく漏りてか霜のふりけむ」(霜をよみける 万葉集巻十2238)
「秋山に霜ふりおほひ木の葉散り 歳は行くとも我(われ)忘れめや」(秋相聞 万葉集巻十2243)
「霜降や陳皮投ぜし湯につかる」(吉岡桂六)
霜降2(131023)
「さを鹿の妻よぶ山の岡辺なる早稲田は刈らじ霜はふるとも」(水田を詠める 万葉集巻十2220)「秋山の木葉(このは)もいまだもみちねば 今朝吹く風は霜もおきぬべく」(風を詠める 万葉集巻十2232)「乗鞍にけふ霜降の星月夜」(森澄雄 虚心)
霜降1(121023)
「葦辺ゆく鴨の羽交(はがひ)に霜降りて 寒き夕べは大和し思ほゆ」(志貴皇子 万葉集巻一64)「橘は実さへ花さへその葉さへ 枝(え)に霜降れどいや常葉(とこは)の樹」(万葉集巻六1009)「霜降といふ日の薔薇を高掲げ」(綾部仁喜)

初時雨8(141024)
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初時雨7(131126)
「初時雨あはれ知らせて過ぎぬなり 音に心の色を染めにし」(西行法師 時雨 山家集冬)「月をまつ高嶺の雲は晴れにけり 心ありける初時雨かな」(西行法師 時雨 山家集冬)「初時雨(はつしぐれ)猿も小蓑(こみの)をほしげ也」(芭蕉)「人々をしぐれよやどは寒くとも」(芭蕉)
初時雨6(111111)
「立田やま時雨しぬべく 曇る空に心の色を染めはじめつる」(西行法師 山家集冬)「ねざめする人の心をわびしめて しぐるる音は悲しかりけり」(西行法師 山家集冬)「初時雨(はつしぐれ)初の字を我(わが)時雨哉」(芭蕉)
初時雨5(101030)
「よもすがらをしげなく吹く嵐かな わざと時雨の染むる紅葉を」(西行法師 山家集冬)「立田やま時雨しぬべく曇る空に 心の色をそめはじめつる」(西行法師 山家集冬)「ぼた餅の来(く)べき空なり初時雨」(一茶)
初時雨4(091111)
「東屋のあまりにもふる時雨かな 誰かは知らぬ神無月とは」(時雨の歌よみけるに 西行法師 山家集冬)「おのづから音なふ人もなかりけり 山めぐりする時雨ならでは」(閑中時雨といふことを 西行法師 山家集冬)「けふばかり人も年よれ初しぐれ」(芭蕉)
初時雨3(081124)
「初時雨あはれ知らせで過ぎぬなり 音に心の色を染めにし」(西行法師 山家集冬)「宿かこふははその柴の色をさへ したひて染むる初時雨かな」(西行法師 山家集冬)
「旅人とわが名呼ばれん初時雨」(芭蕉)
初時雨2(071110)
「初時雨(はつしぐれ)しのぶの山のもみぢ葉を 嵐吹けとは染めずやありけむ」(七条院大納言 新古今集冬)「しぐれつつ袖もほしあへず あしびきの山の木の葉に嵐吹くころ」(信濃 新古今集冬)「初時雨あはれ知らせて過ぎぬなり 音に心の色を染めにし」(西行法師 山家集冬)「月を待つ高嶺の雲は晴れにけり こころありける初時雨かな」(西行法師 山家集冬)「霜さえて枯れゆく小野の岡べなる 楢(なら)の広葉にしぐれ降るなり」(藤原基俊 千載集冬)「寝覚めしてたれか聞くらん このごろの木の葉にかかる夜半のしぐれを」(馬内侍 千載集冬)「鳶(とび)の羽も刷(かいつくろい)ぬ初しぐれ」(去来 猿蓑集巻五)「ひと吹き風の木の葉しづまる」(芭蕉)「股引(ももひき)の朝から濡るる川こえて」(凡兆)「たぬきをおどす篠張(しのはり)の弓」(史邦)「まいらどに蔦(つた)這ひかかる宵の月」(蕉)「人にもくれず名物の梨」(来)「かきなぐる墨絵おかしく秋暮れて」(邦)「はきごころよきめりやすの足袋」(兆)
初時雨1(061111)
「十月(かむなづき)しぐれに逢へる黄葉(もみじば)の吹かば散りなむ風のまにまに」(万葉集巻八)「竜田川(たつたがわ)錦(にしき)織りかく神無月(かみなづき)しぐれの雨を経緯(たてぬき)にして」(古今集冬)
「初時雨(はつしぐれ)猿(さる)も小蓑(こみの)をほしげなり」(芭蕉)

秋霧1(141021)
「立ちこむる朝けの霧のそのままに 曇りて暮るる秋の空かな」(前中納言俊光 嘉元の百首の歌奉りけるに、霧を 玉葉集秋)
「秋霧の絶えまを見れば朝づく日 むかひの岡は色づきにけり」(後一条入道前関白左大臣 秋の歌の中に 玉葉集秋)
「そことしも麓はみえぬ 朝霧に残るもうすき秋の山のは」(権大納言内経 玉葉集秋)
「雲霧の暫時百景を尽くしけり」(芭蕉)
「霧しぐれ富士を見ぬ日ぞ面白き」(芭蕉)

薄紅葉8(141022)
「もずのゐる櫨(はじ)の立枝(たちえ)の薄紅葉(もみぢ) たれわが宿の物と見ゆらん」(藤原仲実朝臣 摂政左大臣家にて、紅葉隔墻といへるこころをよめる 金葉集秋)
「関越ゆる人に問はばや みちのくのあだちのまゆみ紅葉(もみぢ)しにきや」(堀河右大臣 宇治前太政大臣の白河にて、見行客といへることをよめる 金葉集秋)
「町庭のこころに足るや薄紅葉」(太祇)
「真青なる紅葉の端の薄紅葉」(虚子)
薄紅葉7(131020)
「誰かそめし外山の峯のうす紅葉 時雨れぬさきの秋の一しほ」(西園寺入道前太政大臣 建保四年内裏の百番歌合に 玉葉集秋下)「夕づく日むかひの岡のうす紅葉 まだきさびしき秋の色かな」(前中納言定家 水無瀬殿にて秋の歌よみ侍りけるに 玉葉集秋下)「友も鳥も待てば来ぬもの薄紅葉」(渡辺水巴)
薄紅葉6(101104)
「町庭のこころに足るや薄紅葉」(太祗)
薄紅葉4(091023)
「色づくや豆腐に落ちて薄紅葉」(芭蕉)
薄紅葉3(080928)
「多摩の水すこし激する薄紅葉」(山口青邨)
薄紅葉2(071030)
「いつのまに紅葉しぬらむ山ざくら 昨日か花の散るを惜しみし」(中務卿具平親王 新古今集秋下)「もずのゐるはじの立枝の薄紅葉 たれ我が宿のものとみるらむ」(金葉集秋)「小倉山秋とばかりの薄紅葉 時雨の後のいろぞゆかしき」(玉葉集秋下)「色づくや豆腐に落ちて薄紅葉」(芭蕉)薄紅葉1(070929)
「もずのゐるはじの立枝の薄紅葉(うすもみじ) たれ我が宿のものと見るらむ」(金葉集秋)「小倉山秋とばかりの薄紅葉 時雨(しぐれ)の後の色ぞゆかしき」(玉葉集秋)「いつのまに紅葉しぬらむ山桜 昨日か花の散るを惜しみし」(新古今集秋下)「色づくや豆腐に落ちて薄紅葉」(芭蕉)

茶の花7(141024)
「夕餉(ゆふげ)にとから鮭焼ける杉の葉の にほひ寒けき渓ぞひの宿」(若山牧水 秩父の秋 渓谷集)
「渓おくの温泉(いでゆ)の宿の間(ま)ごと間ごと ひとも居らぬに秋の日させり」(若山牧水 秩父の秋 渓谷集)
「ひちひちと音の聞えてうち上(あが)り 秋のひなたに光る早き瀬」(若山牧水 秩父の秋 渓谷集)
「木がくれにやがてなりゆく 細渓(ほそたに)のみなかみの山は秋霞(あきがすみ)せり」(若山牧水 秩父の秋 渓谷集)
「茶畠に細道つけて冬籠(ふゆごもり)」(蕪村)
「茶の花の月夜もしらず冬籠(ふゆごもり)」(蕪村)
「藪陰に茶の花白し昼の月」(子規 明治28年)
「茶の花や庭にもあらず野にもあらず」(子規 明治27年)
「藪陰に茶の花咲きぬ寺の道」(子規 明治29年)
「茶の花や詩僧を会す万福寺」(子規 明治29年)
茶の花6(131031)
「胡桃(くるみ)樹枝さしかはし 渓あひの早瀬(はやせ)のうへに薄紅葉せり」(若山牧水 秩父の秋 渓谷集)「山鳩のするどく飛びて 樫鳥(かしどり)ののろのろまひて 秋の渓晴る」(若山牧水 秩父の秋 渓谷集)「杉落葉(すぎおちば)しげき渓間の湯のやどの 屋根にすてられし白き茶の花」(若山牧水 秩父の秋 渓谷集)「茶の花や石をめぐりて路(みち)を取る」(蕪村)
茶の花5(121102)
「稲幹(いながら)に束(つか)ねて掛(か)けし胡麻(ごま)のから 打つべくなりぬ茶の木さく頃」(長塚節 秋冬雑詠 明治38年)「掛けなめし稲のつかねを取り去れば 藁(わら)のみだれに淋し茶の木は」(長塚節 秋冬雑詠 明治38年)「茶の花や黄にも白にもおぼつかな」(蕪村)
茶の花4(111022)
「冷(ひや)やけく茶の木の花に晴れ渡る 空のそぐへに見ゆる秋山」(長塚節 明治36年 雑詠十六首)「おしなべて折れば短くかがまれる 茶の木も秋の花咲きにけり」(長塚節 明治40年 晩秋雑詠)「茶の花や雨にぬれたる庭の石」(子規)
茶の花3(101109)
「遠雲や卵開きに咲く茶の木」(秋元不死男)
茶の花2(091210)
「はるかなこゑ『茶の花がもう咲いてます』」(加藤楸邨)
茶の花1(081017)
「茶の花のわづかに黄なる夕べかな」(蕪村)

新米6(141020)
「配給の沢庵みれば黄ににほふ その黄のにほひわが腹のなか」(斎藤茂吉 随縁随歌 小園)
「われひとり山形あがたの新米(にひごめ)を 食ふよしあらば食はむと思ふ」(斎藤茂吉 秋はれ つきかげ)
「豚の肉少し入れたる汁つくり うどん煮込にこみたり娘とともに」(斎藤茂吉 つきかげ)
「秋の丘に整理されたり畑(はたけ)あり 黒きにとなり大根の列(れつ)青々(あをあを)」(斎藤茂吉 蝿 つきかげ)
「米粒(べいりふ)は玉のごとしといへる句も 陳腐(ちんぷ)といはばわれは黙(もく)せむ」(斎藤茂吉 猫柳の花 つきかげ)
「みんなではたらく苅田ひろびろ」(山頭火 雑草風景)
「飯のうまさが青い青い空」(山頭火 旅心)
「一握の米をいただきいただいてまいにちの旅」(山頭火 一草庵)
「御飯のうまさほろほろこぼれ」(山頭火 一草庵)
新米5(131013)
「夜寒く帰りて来れば わが妻ら明日(あす)炊(た)かむ米の石ひろひ居り」(古泉千樫 寒夜 大正8年)「みづからが拾ひ分けたる米の石 かずをかぞへてわが兒は誇(ほこ)る」(古泉千樫 寒夜 大正8年)「専(もは)らなる日本(やまと)の米の白き米 けふは食(たう)べつわが兒の忌日(いみび)に」(古泉千樫 寒夜 大正8年)「夜ふけて米の石をば拾ふゆゑ 寝(ね)むといへども妻は寝まくに」(古泉千樫 寒夜 大正8年)「餅も酒も皆新米の手柄かな」(井月)「方丈へ嫁の使や今年米」(井月)
新米4(121028)
「つづきあふ畑(はた)にとりどり日のさして いまぞ静けき秋みのりどき」(若山牧水 郊外の秋 くろ土)「折り持てばわがたなごころあたたかき 重みをおぼゆ黍の垂穂を」(若山牧水 郊外の秋 くろ土)「新米や塩打って焼く魚の味」(井月)
新米3(111017)
「さびしさに草の庵(いほり)を出て見れば 稲葉おしなみ秋風ぞ吹く」(良寛)「飯乞(いひこ)ふとわれ来にければ この園の萩の盛りにあひにけるかも」(良寛)「新米といふよろこびのかすかなり」(飯田龍太)
新米2(101026)
「にぎはしく指間をこぼれ今年米」(鷹羽狩行)
新米1(071207)
「米あらふ白きにごりは咲き垂れし 秋海棠のしたながれ過ぐ」(左千夫 明治37年)「をみなども朝ゆふいでて米あらふ 背戸川岸の秋海棠の花」(左千夫 明治37年)「新米のまだ草の実の匂ひかな」(蕪村)

甘藷9(141028)
「丑三(うしみ)つはものの音さへふけて行く 福良の湾の二十一夜月」(中村憲吉 福良湾の月 大正14年)
「月も出よむかし平家(へいけ)の落ちびとの 浪まくらあと福良の湾に」(中村憲吉 福良湾の月 大正14年)
「友は大官芋掘ってこれをもてなしぬ」(虚子 明治36年)
「ころころと月と芋との別れかな」(虚子 明治29年)
「甘藷うまし秋湖鑑定(めきき)をあやまたず」(水原秋櫻子 蘆雁 昭和52年)
甘藷8(131005)
「猫も食ひ鼠も食ひし野(や)のいくさ こころ痛みて吾(あ)は語らなく」(宮柊二 野戦 小紺珠)「子のために欲しきバターと言ふ妻よ 着物を売りて金を得しゆゑ」(宮柊二 硝子戸 小紺珠)「わたくしに得しよろこびと 胡麻の実の黒く熟(う)れしを妻は見せに来(く)」(宮柊二 硝子戸 小紺珠)「甘藷食ふは至福にちかし寝転べば」(伊藤白潮)
甘藷7(121013)
「ゆふ潮と海は満つらし遠きへの 鳴門もいまは潮(しほ)飛(と)ばず見ゆ」(中村憲吉 海中の岩)「淡あはしく暮れゆく空をひとすぢに 淡路へかへる阿波山の雲」(中村憲吉 海中の岩 大正14年)「芋の葉のいやいや合点(がてん)々々(がてん)かな」(虚子 昭和15年10月12日)
甘藷6(111011)
「新甘藷があがりて狸稲荷かな」(富安風生)
甘藷5(101020)
「兄弟の多かりし世のさつまいも」(保坂加津夫)
甘藷4(090911)
「好藷あり好日とこそ言ふべけれ」(相生垣瓜人)
甘藷3(080927)
「ほっこりとはぜてめでたしふかしいも」(富安風生
甘藷2(071010)
「ほっこりとはぜてめでたしふかし藷(いも)」(富安風生)
甘藷1(061002)
「そのいもを此(この)仏にも供養かな」(虚子)

里芋4(141019)
「車挽きし馬峡(かひ)を行く その馬がいななくこともなくて行きたり」(斎藤茂吉 秋山 白き山)
「栗の実もおちつくしたるこの山に 一時(ひととき)を居てわれ去らむとす」(斎藤茂吉 秋山 白き山)
「ここにして大きく見ゆる月山(ぐわつさん)も 雪近からむ秋に入りたり」(斎藤茂吉 肘折 白き山)
「あかつきのいまだくらきに物負ひて 山越えきたる女(をみな)ら好(よ)しも」(斎藤茂吉 肘折 白き山)
「箸逃ぐる此奴新芋煮ころがし」(石塚友二)
里芋3(111123)
「八方を睨める軍鶏(しゃも)や芋畑」(川端茅舎)
里芋2(101024)
「小便も玉となりけり芋畠」(一茶)
里芋1(091019)
「芋洗う女西行ならば歌よまむ」(芭蕉)

野菊11(141025)
「我が庭の松の木陰に菊咲けば 昔の人ぞ思ほゆるかも」(子規 菊 明治33年)
「朝ながめ夕ながめして 我が庭の菊の花咲く待てば久しも」(子規 菊 明治33年)
「湯壷から首だけ出せば野菊かな」(漱石 塩原にて 大正2年)
「馬の子と牛の子と居る野菊かな」(漱石 正岡子規に送りたる句稿その三十四 明治32年)
野菊10(131019)
「檜扇の丹つらふ色にくらぶれは 野菊の花はやさしかりけり」(左千夫 小園秋来 明治38年)「うつそみに吾ささげけむ野菊はも みはか冬さび枯れにけるかも」(左千夫 子規子百日忌 明治35年)「道の辺や荊(いばら)がくれに野菊咲く」(子規 明治28年)「野菊一輪手帳の中に挟みけり」(漱石 明治32年)野菊9(121002)
「秋立つとおもふばかりを わが宿の垣の野菊は早咲きにけり」(左千夫 明治38年)「むらさきのか弱に見ゆる野菊には 猛き男(を)の子も心なぐらし」(左千夫 明治38年)「草刈の籠(かご)の中より野菊かな」(漱石)
野菊8(111016)
「山路なる野菊の茎の伸びすぎて 踏まれつつ咲けるむらさきの花」(若山牧水 山桜の歌)「枯草のぬくとげなるに寝てみれば この崖()がけ」の窪(くぼ)に野菊むら咲けり」(若山牧水)「なつかしきしをにがもとの野菊かな」(蕪村)
野菊7(091005)
「竪川(たてがわ)の野菊(のぎく)の宿(やど)は初芽(はつめ)すぎ 二の芽(め)摘(つ)むべく群(むれ)生(お)ひにけり」(こたへ歌 左千夫 明治40年)
「秋天の下に野菊の花弁欠く」(虚子)
野菊6(081020)
「人力をよけたるくろの野菊かな」(子規)
野菊5(080721)
「らんぼうに野菊を摘んで未婚なり」(秋元不死男)
野菊4(071011)
「手弱女(たおやめ)のこころの色をにほふらむ 野菊はもとな花咲きにけり」(左千夫 明治38年)「射干(ひあふぎ)の丹(に)づらふ色にくらぶれば 野菊の花はやさしかりけり」(左千夫 明治38年)「むらさきのか弱(よわ)に見ゆる野菊には 猛(たけ)き男(を)の子も心なぐらし」(左千夫 明治38年)「朝見えて痩せたる岸の野菊かな」(支考)
野菊3(071006)
「み墓(はか)びの右手に咲ける秋草の 野菊の花はちらずありこそ」(左千夫 明治35年)「秋草のいづれはあれど 露霜(つゆじも)に痩(や)せし野菊の花をあはれむ」(左千夫 明治37年)「足元に日の落ちかかる野菊かな」(一茶)
野菊2(070721)
「名も知らぬ小草花咲く野菊かな」(素堂)
野菊1(060728)
「憂(う)さ晴れてそぞろに行けば野菊かな」(河東碧梧桐)

青柚子16(141025)
「橘の下(もと)に吾(あ)を立て 下枝(しづえ)取り成らむや君と問ひし子らはも」(万葉集巻十一2489)
「吾妹子にあはず久しも うましもの阿倍たちばなの苔むすまでに」(万葉集巻十一2750)
「君が家の花橘はなりにけり 花なる時にあはましものを」(橘の歌一首 遊行女婦 万葉集巻八1492)
「たかだかともののかずなる柚子のいろ」(飯田龍太 涼夜 昭和52年)
「柚子匂ふすぐそこの死に目をひらけば」(加藤楸邨 まぼろしの鹿 壷中通信二)
「雨の柚子とるとて妹(いも)の姉かぶり」(虚子 昭和14年11月14日)
青柚子15(130907)
「短編のはじめは怖し青柚削(そ)ぐ」(石寒太)「柚子存在す爪たてられて匂ふとき」(加藤楸邨 まぼろしの鹿)
青柚子14(131212)
「橘は実さへ花さへその葉さへ 枝(え)に霜降れどいや常葉(とこは)の樹」(万葉集巻六1009)「古家や累々として柚は黄なり」(子規 明治29年)
青柚子13(110802)
「短編のはじめは怖し青柚削(そ)ぐ」(石寒太)
青柚子11(100821)
「盛りこぼれつつことごとく柚の実かな」(飯田龍太)
青柚子9(090909)
「少数に深く教へて柚子の軒」(中村草田男)
青柚子8(090813)
「柚子青き視野に顔あり何か言ふ」(加藤楸邨)
青柚子6(080912)
「すぐ眠くなる父の夢柚子ふたつ」(石寒太)
青柚子4(070910)
「少数に深く教へて柚子の軒」(中村草田男)
青柚子1(061001)
「地に落す音の目出たき柚の実かな」(飯田龍太)
青蜜柑9(140905)
「山かげに深山雀(みやますずめ)といふ鳥の 蜩(ひぐらし)に似て鳴くあはれなり」(赤彦 峡谷の湯 大正14年)「山の上に残る夕日の光 消えて忽ち暗し谷川の音」(赤彦 峡谷の湯 大正14年)「蜜柑山遠雲垂れて天城見ゆ」(水原秋櫻子)
青蜜柑8(1209011)
「夕まぐれ縁にのぼれるこほろぎは いとけなければ未だ鳴かざらむ」(赤彦 家に帰りて 大正6年)「おのづから秋づきぬらむ 庭のうへの雑草の穂の動くを見れば」(赤彦 家に帰りて 大正6年)「青蜜柑横目の牛が通りけり」(桂信子)
青蜜柑7(100827)
「たとへむに物なき青き蜜柑売る」(相垣内瓜人)
青蜜柑6(080913)
「老の眼に僅かにたのし青蜜柑」(百合山羽公)
青蜜柑3(070914)
「伊吹より風吹いてくる青蜜柑」(飯田龍太)
青蜜柑2(060914)
「行く秋のなほ頼もしや青蜜柑」(芭蕉)
青蜜柑1(060908)
「海を見て青き蜜柑の手に匂う」(水原秋櫻子)

蜜柑17(141018)
「蜜柑園垣結ぶ海色づけり」(碧梧桐 大正5年)
「蜜柑木からもいでそのやうに籠(かご)を汐(しほ)ちかく」(碧梧桐 鳴門観測 昭和3年)
蜜柑16(121126)
「からびたる木(こ)の葉のそよぎきこゆなり 十一月に入り日ざしきららか」(木下利玄 一路 十一月)「十一月の日かげさむけき午后の風 さやさやあひつぐ笹の葉の鳴り」(木下利玄 一路 十一月)「蜜柑吸ふ目の恍惚をともにする」(加藤楸邨 吹越 昭和46年)
蜜柑14(111020)
「蜜柑すず熟(な)りの老木の十年」(碧梧桐)
蜜柑12(101108)
「蜜柑山わたりて月も匂ふなり」(水原秋櫻子)
蜜柑8(081104)
「寒き夜を賜へ時をかけて蜜柑食ふ」(石田波郷)
蜜柑2(061014)
「行く秋のなほ頼もしや青蜜柑」(芭蕉)

都忘れ5(141017)
「秋深き八十うぢ川のはやき瀬に 紅葉ぞくだるあけのそほ舟」(順徳院御製 名所の百首の歌めされける時、宇治川 玉葉集秋)
「秋をだにいつかと思ひしあらを田は 刈りほすほどになりぞしにける」(順徳院御製 百番歌合に 玉葉集秋)
「紫の厚きを都忘とて」(後藤夜半)
「老ゆらくをさやさや都忘れかな」(岩城久治)
「爪木(つまぎ)こる遠山人はかへるなり 里までおくれ秋の三日月」(順徳院御製 秋の御歌の中に 玉葉集秋)
「狩人の草分衣ほしもあへず 秋の嵯峨野のよもの白露」(順徳院御製 名所の百首の御歌の中に、嵯峨野 玉葉集秋)
「命やはあだの大野の草枕 はかなき夢も惜しからぬ身を」(順徳院 新続古今1331)
都忘れ4(131024)
「人恋し都忘れが庭に咲き」(高橋淡路女)「とほく灯火のともりし都忘れかな」(倉田紘文)
都忘れ3(121025)
「風になびく雲のゆくてに時雨れけり むらむらあをき木々の紅葉ば」(順徳院 御百首)「谷ふかき八峰(やつを)の椿いく秋の 時雨にもれて年のへぬらん」(順徳院 御百首)「紫の厚きを都忘れとて」(後藤夜半)
都忘れ2(111031)
「しづかなる力満ちゆき償[傷レ(ばった)とぶ」(加藤楸邨)
都忘れ1(101026)
「いかにして契りおきけむ白菊の都忘れと名づくるもよし」(順徳天皇)「人恋し都忘れが庭に咲き」(高橋淡路女)

秋の露5(131027)
「朝戸開(あ)けてもの思(も)ふ時に 白露のおける秋萩見えつつもとな」(文忌寸(あやのいみき)馬養(うまかひ) 万葉集巻八1579)「秋の野に咲ける秋萩 秋風になびける上に秋の露おけり」(大伴宿禰家持の秋の歌 万葉集巻八1597)「しら露もこぼさぬ萩のうねり哉「(芭蕉)
秋の露4(121101)
「錦かとみるだにあるを 秋萩の花に結べる露の白玉」(後村上院御製 新葉集第4)「萩の戸の花も色そふ白露に 千世のかずみる玉しきの庭」(前大納言守房 新葉集第4)「白露や茨(いばら)の刺(はり)にひとつづつ」(蕪村)
秋の露3(111102)
「秋萩における白露 朝(あさ)な朝(さ)な 玉としぞ見るおける白露」(万葉集巻十2168)「秋萩の枝もとををに露霜(つゆじも)おき 寒くも時はなりにけるかも」(万葉集巻十2170)「鳴きわたる雁(かり)の涙や落ちつらん 物思ふやどの萩の上の露」(古今集秋上)「折りて見ば落ちぞしぬべき 秋萩の枝もたわわにおける白露」(古今集秋上)「西行の草履もかかれ秋の露」(芭蕉)
秋の露2(081002)
「さびしさはみ山の秋の朝ぐもり 露にしをるるまきの下露」(太上天皇 新古今集秋下)「村雨の露もまだひぬまきの葉に 露たちのぼる秋のゆふぐれ」(寂蓮法師 新古今集秋下)「千たびうつ砧のおとに夢さめて 物思ふ袖の露ぞくだくる」(式子内親王 新古今集秋下)「しら露やさつ男の胸毛ぬるるほど」(蕪村)
秋の露1(071112)
「白露の色はひとつを いかにして秋の木の葉をちぢに染むらん」(敏行朝臣 古今集秋下)「秋の夜の露をばつゆと置きながら かりの涙や野べを染むらん」(壬生忠岑 古今集秋下)「白露も時雨(しぐれ)もいたくもる山は 下葉のこらず色づきにけり」(貫之 古今集秋下)「秋の野の千草の色にうつろへば 花ぞかへりて露を染めける」(仁和寺法親王守覚 千載集秋上)「草木まで秋のあはれをしのべばや 野にも山にも露こぼるらん」(法印慈円 千載集秋上)「おほかたの露には何のなるならん 袂(たもと)におくは涙なりけり」(西行法師 千載集秋上)「初茸(はつたけ)やまだ日数経(へ)ぬ秋の露」(芭蕉)「青きすすきに濁(にご)る谷川」(岱水)「野分より居むらの替地(かへち)定まりて」(史邦)「さし込む月に藍瓶(あゐがめ)のふた」(半落)「塩付けて餅食ふほどの草枕」(嵐蘭)「撫でてこはばる革の引きはだ」(翁)「年寄は土持ゆるす夕間暮れ」(岱水)「諏訪の落ち湯に洗ふ馬の背」(史邦)

朝寒2(141016)
「あめつちの四季の秋には寂(さび)あれど こころの秋はただに冷たき」(吉井勇 相模野の庵にて詠みける歌その一 人間経)
「おもひ出づ昔の友の誰彼(だれかれ)と 酌みたる酒の秋の寒さよ」(吉井勇 相模野の庵にて詠みける歌その一 人間経)
「ひとりあれば心を刺しにしのびよる 何ものかあり秋の夜更けに」(吉井勇 相模野の庵にて詠みける歌その二 人間経)
「客きたる主人(あるじ)のごとく 人の世の秋の寒さをかこち顔して」(吉井勇 相模野の庵にて詠みける歌その二 人間経)
「朝寒やけふの日南(ひなた)や鳥の声」(鬼貫)
「朝寒や旅の宿たつ人の声」(太祇)
朝寒1(111208)
「しれびとのいと愚かなるかきおきは 落葉のごとく焼くべかりけり」(吉井勇 人間経)「思ふことあまりに寂し かかる夜は落葉の中に埋もれて寝む」(吉井勇 人間経)「朝寒も夜寒も人の情けかな」(漱石)

秋の暮10(141030)
「おしなべて思ひしことのかずかずに なほ色まさる秋の夕暮」(新古今集秋)
「暮れかかるむなしき空の秋を見て おぼえずたまる袖の露かな」(新古今集秋)
「物おもはでかかる露やは袖に置く ながめてけりな秋の夕暮」(新古今集秋)
「何ごとをいかに思ふとなけれども 袂(たもと)かわかぬ秋の夕ぐれ」(西行法師 山家集秋)
「なにとなくものがなしくぞ見え渡る 鳥羽田の面の秋の夕暮」(西行法師 山家集秋)
「去年より又さびしいぞ秋の暮」(蕪村 老懐)
秋の暮9(131109)
「草木みなあす見ざるべき色もなし わが心にぞ秋は暮れけり」(入道前太政大臣 秋の歌 玉葉集秋)「心とめて草木の色もながめおかん 面影にだに秋や残ると」(前大納言為兼 暮秋の十首の歌奉りし時 玉葉集秋)「我を慕ふ女やはある秋のくれ」(蕪村)
秋の暮8(121120)
「うち群れて散るもみぢ葉を尋ぬれば 山路よりこそ秋はゆきけれ」(前大納言公任 新古今集秋)「なれきにし都もうとくなりはてて 悲しさ添ふる秋の暮かな」(西行法師 山家集秋)「限りある命のひまや秋の暮」(蕪村)
秋の暮7(111115)
「おしなべて思ひしことのかずかずに なほ色まさる秋の夕暮」(新古今集秋上)「もの思はでかかる露やは袖に置く ながめてけりな秋の夕暮」(新古今集秋上)「鳥さしの西へ過ぎけり秋のくれ」(蕪村)
秋の暮5(091030)
「何とかく心をさへはつくすらむ 我がなげきにて暮るる秋かは」(西行法師 山家集秋)「堪へぬ身にあはれおもふもくるしきに 秋の来ざらむ山里もがな」(西行法師 山家集秋)「雲かかる遠山ばたの秋されば 思ひやるだにかなしきものを」(西行法師 山家集秋)「こちら向けわれもさびしき秋の暮」(芭蕉)
秋の暮4(081030)
「身にとまる思を萩のうは葉にて このごろかなし夕ぐれの空」(前大僧正慈円 新古今集秋上)「み山路やいつより秋の色ならむ 見ざりし雲のゆふぐれの空」(前大僧正慈円 新古今集秋上)「篠原や霧にまがひて鳴く鹿の 声かすかなる秋の夕暮」(夕暮に鹿を聞く 西行法師 山家集秋)「秋暮るる月なみわかぬ山がつの 心うらやむ今日の夕暮」(西行法師 山家集秋)「愚案ずるに冥途もかくや秋の暮」(芭蕉)
秋の暮3(071122)
「過ぎにしもけふ別るるも 二道に行くかた知らぬ秋の暮かな」(けふぞ冬立つ日なりけるもしるく、うちしぐれて、空の景色いとあはれなり。ながめ暮らし給ひて、 源氏物語 夕顔)「さりともと思ふ心も虫の音も 弱りはてぬる秋の暮かな」(皇太后宮太夫俊成 千載集秋下)「たまさかに逢ひて別れし人よりも まさりて惜しき秋の暮かな」(続後撰集)「嵐吹く山の木の葉の空にのみ 誘はれて行く秋の暮かな」(為氏 続古今集)
「燈(ひ)ともせと云ひつつ出るや秋の暮」(蕪村)
秋の暮2(071020)
「ながむれば衣手(ころもで)すずし ひさかたの天の河原の秋の夕暮れ」(式子内親王 新古今集秋上)「をぐら山ふもとの野辺の花薄(はなすすき) ほのかに見ゆる秋の夕暮れ」(よみ人しらず 新古今集秋上)「おしなべて思ひしことのかずかずに なほ色まさる秋の夕暮」(新古今集秋上)「物思はでかかる露やは袖に置く ながめてけりな秋の夕暮」(新古今集秋上)「たへてやは思ありともいかがせむ 葎(むぐら)のやどの秋の夕暮れ」(藤原雅経 新古今集秋上)「さびしさはその色としもなかりけり まき立つ山の秋の夕暮」(寂連法師 新古今集秋上)「心なき身にもあはれは知られけり 鴫(しぎ)立つ沢の秋の夕暮れ」(西行法師 新古今集秋上)「見わたせば花も紅葉もなかりけり 浦のとまやの秋の夕暮れ」(藤原定家 新古今集秋上)
「萩の葉を吹き過ぎてゆく風の音に 心みだるる秋の夕暮れ」(西行法師 山家集秋)「吹きわたる風も哀をひとしめて いづくも凄き秋の夕暮れ」(西行法師 山家集秋)「何ごとをいかに思ふとなけれども 袂(たもと)かわかぬ秋の夕暮れ」(西行法師 山家集秋)「何となくものがなしくぞ見え渡る 鳥羽田の面の秋の夕暮」(西行法師 山家集秋)「ながむれば袖にも露ぞこぼれける 外面の小田の秋の夕暮」(西行法師 山家集秋)「吹き過ぐる風さへことに身にぞしむ 山田の庵の秋の夕暮れ」(西行法師 山家集秋)「風の音に物思ふ我が色そめて 身にしみわたる秋の夕暮」(西行法師 山家集秋)「篠原や露にまがひて 鳴く鹿の声かすかなる秋に夕暮れ」(西行法師 山家集秋)
「枯枝に烏のとまりたる秋の暮」(芭蕉)「死にもせぬ旅寝の果(はて)よ秋の暮」(芭蕉)「この道や行く人なしに秋の暮」(芭蕉)
秋の暮1(061119)
「心なき身にもあはれは知られけり、鴫(しぎ)立つ沢(さわ)の秋の夕暮れ」(西行)「見渡せば花も紅葉もなかりけり、浦(うら)の苫屋(とまや)の秋の夕暮れ」(定家)「枯枝(かれえだ)に烏(からす)のとまりたるや秋の暮」(芭蕉)

暮の秋3(141031)
「」()
「」()
「手向(たむ)くべき線香もなくて暮の秋」(漱石 明治36年)
暮の秋2(131110)
「山里は秋の末にぞ思ひしる 悲しかりけるこがらしの風」(西行法師 山家集秋)「暮果つる秋のかたみにしばし見む 紅葉散らすなこがらしの風」(西行法師 山家集秋)「暮の秋有職(いうそく)の人は宿に在(ま)す」(蕪村)「跡かくす師はいづちへぞ暮の秋」(蕪村)
暮の秋1(121027)
「鵲(かささぎ)の雲のかけはし秋暮れて 夜半には霜や冴えわたるらむ」(寂蓮法師 新古今集秋下)「かくしつつ暮れぬる秋と老いぬれど しかすがに猶物ぞ悲しき」(暮の秋、思ふこと侍りける頃 新古今集秋下)「能すみし面の衰へ暮の秋」(虚子)

枯葉6(131125)
「嵐はく庭の落葉のをしきかな まことのちりになりぬと思へば」(西行法師 落葉 山家集冬)「津の国の難波の春は夢なれや 蘆の枯葉に風わたるなり」(西行法師 題しらず 山家集冬)「松茸やしらぬ木の葉のへばりつく」(芭蕉)枯葉5(121124)
「ねざめする人の心をわびしめて しぐるる音は悲しかりけり」(西行法師 山家集冬)「嵐はく庭の落葉のをしきかな まことのちりになりぬと思へば」(西行法師 山家集冬)
「菊(きく)は黄に雨疎(おろ)そかに落葉かな」(蕪村)
枯葉4(111026)
「秋ふかしいまわが見るは信濃路に死にたる友の絵に似たる山」(吉井勇 風雪 山峡の秋)「朝ごとに渓よりのぼる雲を見て また風塵に入るを思はず」(吉井勇 風雪 山峡の秋)「古寺の藤あさましき落葉かな」(蕪村)
枯葉3(101119)
「あしひきの山のもみぢ葉今夜(こよひ)もか 浮かび去(ゆ)くらむ山川の瀬に」(大伴宿禰書持 万葉集巻八1587)「手折(たお)らずて散りなば惜しと我が思(も)ひし 秋のもみぢをかざしつるかも」(橘朝臣奈良麻呂 万葉集巻八1581)「みなだまりしときや枯葉のうらがへる」(加藤楸邨)
枯葉2(091003)
「このまろき石一枚の枯葉のせ」(山口青邨)
枯葉1(071108)
「桐の葉も踏み分けがたくなりにけり 必ず人を待つとならねど」(式子内親王 新古今集秋下)「松にはふ正木のかづら散りにけり 外山の秋は風すさぶらむ」(西行法師 新古今集秋下)「散りつもる木の葉も風にさそはれて 庭にも秋の暮れにけるかな」(法橋慈弁 千載集秋下)「散りかかる谷の小川の色づくは 木の葉や水のしぐれなるらん」(摂政前右大臣 千載集秋下)「しがみ付く岸の根笹の枯葉かな」(惟然)

満天星紅葉7(141102)
「わきてなほ紅葉の色やふかからん 都のにしの秋の山ざと」(慈道法親王 よし峯に侍りける時よみ侍りける 玉葉集秋)
「うち群れて紅葉たづぬと日は暮れぬ あるじも知らぬ宿やからまし」(権大納言長家 山里の紅葉尋ぬとて 玉葉集秋)
「家やいづこ夕山紅葉人帰る」(子規 明治27年)
「きらきらと紅葉まはゆし藪の中」(子規 明治27年)
満天星紅葉6(131122)
「紅葉(もみぢ)ちるころなりけりな 山里(やまざと)のことぞともなく袖のぬるるは」(清原元輔 山里にまかりてよみ侍りける)「紅葉ばの雨とふるなる木の間より あやなく月の影ぞもりくる」(白河天皇御製 月前落葉といふこころを 後拾遺集秋)「山暮れて紅葉(もみぢ)の朱(あけ)を奪ひけり」(蕪村)
満天星紅葉5(121102)
「村雲のしぐれてそむるもみぢ葉は うすくこくこそ色はみえけれ」(覚延法師 千載集秋)「おぼろげの色とや人の思ふらん 小倉(をぐら)の山をてらすもみぢ葉」(道命法師 千載集秋)「ふた葉三葉ちりて日くるる紅葉哉」(蕪村)
満天星紅葉4(111130)
「はしばみのすがれ黄葉(もみぢ)のひや露の あなすがしもよこの朝の晴」(左千夫 明治42年)「おく山にいまだ残れる一むらの あずさの紅葉(もみぢ)雲に匂へり」(左千夫 明治43年)「紅葉して錦に埋(うず)む家二軒」(子規)
満天星紅葉3(101113)
「このもよりかのも色濃き紅葉(もみじ)かな」(蕪村)
満天星紅葉2(091116)
「ふるさとの初もみぢ葉を手折(たお)りもち きょうぞ我が来し見ぬ人のため」(万葉集巻十2216)「君が家の初もみぢ葉は早くふる 時雨(しぐれ)の雨にぬれにけらしも」(万葉集巻十2217)「一年(ひととせ)にふたたび行かぬ秋山を こころに飽かず過ぐしつるかも」(万葉集巻十2218)「山丸くどうだん紅葉裾に丸し」(虚子)
満天星紅葉1(081127)
「生垣をつづる満天星紅葉かな」(山田梅屋)

紅葉かつ散る5(141104)
「もみぢ葉を手ごとに折りてかへりなむ 風の心もうしろめたさに」(源延光朝臣 天暦の御時男ども紅葉見に大井にまかりけるに 拾遺集秋)
「枝ながら見てを帰らむもみぢ葉は 折らむ程にも散りもこそすれ」(源兼光 拾遺集秋)
「馬の沓かふるや櫨(はぜ)の紅葉かな」(子規 明治28年)
「箒持って所化二人立つ紅葉かな」(子規 明治28年)
(註)所化(しょけ)=寺で修行中の僧侶。教化されるものの意。
紅葉かつ散る4(131029)
「秋の夜の雨と聞えてふるものは 風にしたがふ紅葉なりけり」(貫之 拾遺集秋)「心もて散らむだにこそをかしからめ などか紅葉に風の吹くらむ」(拾遺集秋)「風に聞け何れか先に散る木の葉」(漱石 明治43年)
紅葉かつ散る3(121014)
「秋の夜に雨と聞えてふるものは 風にしたがふ紅葉なりけり」(貫之 拾遺集秋)「あさまだき嵐の山の寒ければ 散る紅葉葉を著ぬ人ぞなき」(右衛門督公任 拾遺集秋)「濃紅葉(こもみじ)に涙せき来る如何(いか)にせん」(虚子)
紅葉かつ散る2(111030)
「庭の面(おも)に散りてつもれるもみぢ葉は 九重(ここのえ)にしく錦(にしき)なりけり」(近衛院御時、禁庭ノ落葉といへる心をよめる 藤原公重朝臣 千載集秋下)「秋の田にもみぢ散りける山里を こともおろかに思ひけるかな」(源俊頼朝臣 千載集秋下)「かつ散りて御簾(みす)に掃かるる薯o(もみじ)かな」(其角)
紅葉かつ散る1(061128)
「一枚の紅葉且(かつ)散る静かさよ」(虚子)

枯尾花7(141030)
「雲母(きらら)越白川越は知らねども かしこき堂の剥落は知る」(吉井勇 比叡晩秋 遠天)
「ましぐらに谷底めがけて飛ぶときは 天狗礫(てんぐつぶて)に似たり鶫(つぐみ)は」(吉井勇 比叡晩秋 遠天)
「狐火の燃えつくばかり枯尾花」(蕪村)
枯尾花6(131117)
「比叡の嶺の四明が獄へゆく道の 薄濡れたり雨過ぎしかば」(吉井勇 比叡晩秋 遠天)「夕薄街の灯見ゆるあたりへと 破戒無慙(むざん)の道のかよへる」(吉井勇 比叡晩秋 遠天)「おどろきし風さへなくて枯尾花」(蕪村)
枯尾花5(121108)
「山兎人におどrき走るとき 薄の茎は折られけらしも」(吉井勇 比叡晩秋 遠天)「しらじらと風にほほけし薄穂を 野干(やかん)和尚の仏子(ほつす)かな」(吉井勇 比叡晩秋 遠天)「枯尾花(かれをばな)真昼の風に吹(ふか)れ居る」(蕪村 安永6年)
枯尾花4(111105)
「人皆は萩を秋といふよし 吾は尾花が末(うれ)を秋とはいはむ」(万葉集巻十2120)「夕立の雨降るごとに 春日野の尾花が上の白露おもほゆ」(万葉集巻十2169)「狐火(きつねび)の燃えつくばかり枯尾花(かれをばな)」(蕪村)
枯尾花3(101227)
「かきこめし裾野の薄(すすき)霜がれて さびしさまさる柴の庵かな」(西行法師 山家集冬)「枯尾花野守が髭にさはりけり」(蕪村)
枯尾花2(091214)
「人皆は萩を秋といふよし 吾は尾花が末(うれ)を秋とはいはむ」(万葉集巻十2110)「秋の野の尾花が末(うれ)の生(お)ひなびき 心は妹に依りにけるかも」(万葉集巻十2242)「我も死して碑に辺(ほとり)せむ枯尾花」(蕪村)
枯尾花1(081125)
「霜枯れの尾花ふみわけ行く鹿の、声こそ聞かねあとは見えけり」(夫木和歌抄)「野辺みれば尾花も見えぬ、むらすすき枯葉が末に霜ぞ置きける」(同)「秋去りていく日(か)になりぬ枯尾花」(蕪村)
千両の実10(141029)
「命ありて今年また仰ぐ秋の空 げにうつくしく高く晴れたり」(古泉千樫 秋風吟 大正14年)
「夕づく日赤くさしたる 朴の木の広葉うごかし秋風吹くも」(古泉千樫 秋風吟 大正14年)
「いくたび病みいくたび癒えき実千両」(石田波郷 )
千両の実9(131103)
「朝夕に時を定めてそぞろありく 身のさわやかになりにけるかも」(古泉千樫 秋風吟 大正14年)「空たかみ白雲さやにうごくなり 土をふみつつ仰ぎ見るかも」(古泉千樫 秋風吟 大正14年)「千両のこぼれやすさや生けてをり」(飴山實)
千両の実8(121115)
「掛茶屋(かくぢやや)の秋の真西日(まにしび)菊つくる 背戸(せど)へぬけて見れば土のつめたさ」(木下利玄 晩秋 夕陽)「落葉掃く箒(ほうき)の音は何処(いづべ)かも 築山(つきやま)紅葉の夕冷えの光沢(つや)」(木下利玄 晩秋 洛西桂離宮)「夜半亭(やはんてい)蕪村の墓や草さんご」(星野麥丘人)
赤い実7(130118)
「青木の実毎年落ちて生ひけらし ここの渓間の多くの青木」(木下利玄 冬山)「青木の実赤くなりたり冬さりて かわききりたる山の斜面に」(木下利玄 冬山)「千両や一夜の雪に寺の変」(森澄雄 空艪)
千両の実6(111023)
「けふ晴れてけふの奢(おご)りや実千両」(岩井英雅)
赤い実5(110131)
「おほかたはさもあらばあれ 紅梅は朝日の映(はえ)に見るべくもあるらし」(左千夫 明治42年)「かぎろひの朝日の軒に 鮮やかに咲きつつ憂(う)けき紅梅のはな」(左千夫 明治42年)「夕凍のにはかに迫る青木の実」(飯田龍太)
赤い実5(101017)
「千両に障子を白くかくれ住む」(松隅子)

南天の実6(141027)
「おし黙(だま)る一人の歩み昼たけて 八瀬大橋を渡りけるかも」(木下利玄 洛北大原行 一路)
「大原の三千院に行きつきて 靴脱ぎたれば汗ばみ冷えつ」(木下利玄 先づ三千院へ 洛北大原行 一路)
「小坊主の後(あと)より入りつ 往生極楽院(わうじゃうごくらくゐん)浄(きよ)らにつめたみ虔(つつし)ましもよ」(木下利玄 洛北大原行 一路)
「山の堂しじまの深みに 物言ひしあとの幽(かそ)けき身を省みる」(木下利玄 洛北大原行 一路)
「実南天鴎外旧居北向に」(松崎鉄之介)
「実南天曙楼は古びけり」(川端茅舎)
「あるかなし南天の紅竹垣に」(滝井孝作)
「坐してゐて時飛んでをり実南天」(森澄雄 游方)
「億年のなかの今生実南天」(森澄雄 四遠)
南天の実5(131115)
「朝つゆのつめたき庭に下(お)りたちて 菊の花剪(き)れば香のきよみかも」(木下利玄 菊 晩秋初冬)「陶壷(すゑつぼ)に黄菊白菊挿(さ)したれば 花々(はなばな)寄り添ひ黄のそばに白」(木下利玄 菊 晩秋初冬)「一茶忌や南天の実に青のこり」(森澄雄 四遠)
南天の実4(091020)
「日当りや南天の実のかん袋」(一茶)
南天の実3(081125)
「霜枯れの垣根に赤き木の実は何ぞ 雪降らば雪の兎の眼(まなこ)にはめな」(子規)
「万両は兎の眼もち赤きかな」(千代女)
南天の実2(081121)
「億年のなかの今生実南天」(森澄雄)

朝顔の実5(141014)
「ちぎれ雲走りつくして 夕空にとよはた雲のしづかにたかし」(木下利玄 伯嗜の大山 紅玉)
「大山(だいせん)の峰(みね)の木原を遠入日(とほいりひ) あかくそめゐてきざす夕冷え」(木下利玄 伯嗜の大山 紅玉)
「さむざむと木原の奥に月ひくく お山の嵐ふきすさぶかも」(木下利玄 伯嗜の大山 紅玉)
「径(みち)をきる山のせせらぎすみとほり くらき木原にながれ入りたり」(木下利玄 伯嗜の大山 紅玉)
「朝顔に手拭(てぬぐひ)のはしの藍(あゐ)をかこつ」(蕪村 夜半叟)
「朝顔(あさがほ)にうすきゆかりの木槿(むくげ)哉」(蕪村 句集)
朝顔の実4(130805)
「朝涼しみ朝顔の花のいろよさよ あなみずみずし一輪一輪」(木下利玄 朝涼 みかんの木)「朝涼の静けさに見る 目の前の瑠璃あさ顔の輪の大きさ」(木下利玄 朝涼 みかんの木)「朝顔の種採る雲のゆききかな」(鈴木真砂女)
朝顔の実3(120917)
「朝顔や実も朝々にひとつづつ」(蕪村)
朝顔の実2(111008)
「ひきほどく朝顔の実のがらがらに」(内藤鳴雪)
朝顔の実1(101012)
「人老ゆる朝顔も実となりにけり」(山口青邨)

芙蓉の実5(141012)
「なごりなく吹き荒らされし暴風雨後(しけあと)の庭は土さへ新しく見ゆ」(若山牧水 雨と風と 渓谷集)
「手をつけむ術(すべ)なきごとくすておきし 暴風雨(しけ)後(あと)の園に花はみな咲けり」(若山牧水 雨と風と 渓谷集)
「竹生島見えて吹かるる芙蓉の実」(森澄雄 鯉素)
芙蓉の実4(131018)
「長雨(ながさめ)のあとの秋日を忙しみ ひとの来(こ)ぬちふ渓の奥の温泉(いでゆ)」(若山牧水 秩父の秋 渓谷集)「渓おくの温泉(いでゆ)宿の間(ま)ごと間ごと ひとも居らぬに秋の日させり」(若山牧水 秩父の秋 渓谷集)「教師やめしその後知らず芙蓉の実」(能村登四郎)
芙蓉の実3(121016)
「山鳩(やまばと)のするどく飛びて 樫鳥(かしどり)ののろのろまひて 秋の渓(たに)晴(は)る」(若山牧水 渓谷集)「ひちひちと音(おと)の聞えてうち上(あが)り 秋のひなたに光(ひか)る早き瀬(せ)」(若山牧水 渓谷集)「一生のをはりを思ふ芙蓉の実」(森田公司)
芙蓉の実2(111009)
「師の齢いくつ超えしや芙蓉は実に」(石田波郷)
芙蓉の実1(101025)
「芙蓉の実枯れてはなやぐことありぬ」(安住敦)

蓼の花11(141012)
「とりどりに色あはれなる 秋草の花をゆすりて風ふきわたる」(左千夫 百花園 明治33年)
「秋草の千(ち)ぐさの園(その)にしみ立ちて 一むらたかき八百蓼(やほたで)の花」(左千夫 百花園 明治33年)
「塩淡く穂蓼(ほたで)を嗜(たし)む法師かな」(蕪村 夜半)蓼を食べると利発聡明になる。「うちわたすをちかた人に物申す我 そのそこに咲けるは何の花ぞも」(古今集)
「黄に咲くは何の花ぞも蓼の中」(蕪村 夜半叟)
「暮れなんとして蓼の花を踏む」(漱石 明治39年)
蓼の花10(131022)
「秋草の千くさの園に 女郎花穂蓼の花と高さあらそふ」(左千夫 百花園 明治33年)「いささめの雲のきれめよ月もれて 道の穂蓼の花を照らせり」(左千夫 後の月 明治33年)
「蓼の穂を真壷(まつぼ)に蔵(かく)す法師哉」(蕪村 天明2年)「塩淡く穂蓼を嗜(たし)む法師かな」(蕪村 天明2年)「黄に咲くは何の花ぞも蓼の中」(蕪村 天明2年)
赤まんま9(120625)
「野に出でて乳を飲まする親馬の こころよきかもただに静けき」(古泉千樫 沼畔雑詠一 大正12年)「親馬も子馬も顔をあげにけり 日光(ひかり)かげろふそのたまゆらを」(古泉千樫 沼畔雑詠一 大正12年)「犬蓼の花くふ馬や茶の煙」(子規)
赤まんま8(120919)
「ひとりねの友にはならで きりぎりす鳴く音をきけば物思ひそふ」(西行法師 山家集秋)「わが世とはふけ行く月を思ふらむ 声もやすめぬきりぎりすかな」(西行法師 山家集秋)「老いぬれば無性に親し赤のまま」(山口いさを)
赤まんま7(110714)
「手にしたる赤のまんまを手向草」(富安風生)
赤まんま6(100701)
「ごみすてて汚からずよ赤のまま」(虚子)
赤まんま5(090612)
「赤のままそと林間の日を集め」(川端茅舎)
赤まんま4(080909)
「日ねもすの埃のままの赤のまま」(虚子)
赤まんま3(080618)
「この辺の道はよく知り赤のまま」(虚子)
赤まんま2(060520)
「長雨のふるだけ降るやあかのまま」(中村汀女)
蓼の花4(110718)
「溝川を埋めて蓼のさかりかな」(子規)
蓼の花3(101006)
「門前に舟繋ぎけり蓼の花」(子規)
蓼の花1(090906)
「三径の十歩に尽きて蓼の花」(蕪村)

桜紅葉6(141011)
「小倉山秋とばかりのうす紅葉 しぐれの後の色ぞゆかしき」(延政門院新大納言 亀山院より召されける秋の十首の歌の中に 玉葉集秋)
「山本の里のしるべのうす紅葉 よそにも惜しき秋の色かな」(後鳥羽院御製 百首の御歌の中に 玉葉集秋)
「おぼろげの色とや人の思ふらん 小倉(をぐら)の山をてらすもみぢ葉」(道命法師 題しらず 千載集秋)
「ふるさとに問ふ人あらば もみぢ葉の散りなむのちを待てと答へよ」(素意法師 紅葉留客といへる心をよめる 千載集秋)
「つりがねの肩におもたき一葉(ひとは)哉」(蕪村 鐘)
「初もみぢお染といはば竜田山」(蕪村 ある女の、応挙に猿の画をかかせて賛望みけるに、、立圃(りふほ)が口質(くちつき)に倣(なら)ふとて)
桜紅葉5(131026)
「いとと山時雨に色を染めさせて かつがつ織れる錦なりけり」(紅葉未遍といふことを 西行法師 山家集秋)「さまざまに錦ありけるみ山かな 花見し嶺を時雨そめつつ」(寂蓮高野にまうでて、深き山の紅葉といふことをよみける 西行法師 山家集秋)「紅葉(もみぢ)見や用意かしこき傘(かさ)弐本」(蕪村)「時雨(しぐ)るるや用意かしこき傘弐本(にほん)」(蕪村)
桜紅葉4(1321110)
「染めてけりもみぢの色のくなゐを しぐると見えしみ山べの里」(西行法師 山家紅葉 山家集秋)「しぐれそむる花ぞの山に秋くれて 錦の色もあらたむるかな」(西行法師 山家集秋)「木の葉散る桜は軽し檜笠」(芭蕉 暮秋桜の紅葉見んとて吉野の奥に分入り侍るに、藁(わら)ぐつに足痛く、杖を立(たて)てやすらふ程に)桜紅葉3(121002)
「汝なき桜紅葉に還りける」(加藤楸邨)
桜紅葉2(111010)
「小原女の足の早さよ夕紅葉」(蕪村)
桜紅葉1(061121)
「雁(かり)がねは今は来(き)鳴きぬ、わが待ちし黄葉(もみじ)はや継げ待てば苦しも」(万葉集巻十)「見る人もなくて散りぬる奥山の紅葉は夜の錦なりけり」(古今六帖)「紅葉してそれも散り行く桜かな」(蕪村)

生姜2(141010)
「たそがれの羅漢の山にのぼり来て はろばろ遠き秋の日を見つ」(吉井勇 五百羅漢 天彦)
「風吹かばころげて谷に落ちぬべき 羅漢の膝の栗の毬(いが)かも」(吉井勇 五百羅漢 天彦)
「肩の落葉払ひてやれど 石なれば半跏(はんか)羅漢はもの云はずけり」(吉井勇 五百羅漢 天彦)
「一心に羅漢はものを案ずらむ 頭(かしら)の落葉払ふともせず」(吉井勇 五百羅漢 天彦)
「さまざまの羅漢の姿刻みたる 石ことごとく秋風に鳴る」(吉井勇 五百羅漢 天彦)
「かぜもくなき夕日しづけくきたまゆらや 羅漢の背(せな)に蜻蛉(とんぼ)とまりぬ」(吉井勇 五百羅漢 天彦)
「置所変る厨の生姜かな」(虚子)
「肴には生姜を少し月見酒」(森澄雄 天日)
「ジンジャーの闇匂はせて雨の音」(山口笙堂)
生姜1(061104)
「命惜しむ如(ごと)葉生姜を買ひて提(さ)ぐ」(石田波郷)

寒露3(141008)
「浮き雲の こころにかかる 空ならで 今よひばかりの 月を見まほし」(橘曙覧 月あかき夜、ひとり夜ふかしをりて 襁褓集)
「おちかかる 山辺の月を をしみ余り 暁露(あかときつゆ)に 立ちぞぬれける」(橘曙覧 翠眉山落月 襁褓集)
「水底を水の流るる寒露かな」(草間時彦)
寒露2(131008)
「芽子(はぎ)すすき はかなき花を 折りかこふ 籬(まがき)にあまる 秋の色かな」(橘曙覧 閑居秋 襁褓集)「痩(や)せて咲く 垣の朝貌(あさがほ) 見るにつけ 秋くれかかる 伏せ屋をぞ思ふ」(橘曙覧 閑居秋 襁褓集)「道端の竹伐られたる寒露かな」(星野麥丘人)
寒露1(121008)
「芽子(はぎ)すすき はかなき花を 折りかこふ 籬(まがき)にあまる 秋の色かな」(橘曙覧 閑居秋 襁褓艸)「痩(や)せて咲く 垣の朝貌(あさがほ) 見るにつけ 秋くれかかる 伏(ふ)せ屋をぞ思ふ」(橘曙覧 閑居秋 襁褓艸)「朝夕を寒露となりし猫じゃらし」(森澄雄 花間)

熟柿8(141007)
「柿の木の上より物を言ひにけり 道を通る人は皆村の人」(赤彦 山村小情 大正14年)
「蜂屋柿(はちやがき)大き小さき盛りあげて 心明るく眺めわが居り」(赤彦 山村小情 大正14年)
「渋柿や古寺多し奈良の町」(子規 明治28年)
「渋柿やあら壁つづく奈良の町」(子規 明治28年)
「柿落ちて犬吠ゆる奈良の横町かな」(子規 明治28年)
「茶菓子売る茶店の門の柿青し」(子規 明治28年)
「柿食ふて洪水の詩を草しけり」(子規 明治29年)
「書に倦みて燈下に柿をむく半夜」(子規 明治29年)
「米櫃や米にたくはふ柿一つ」(子規 明治29年)
「三千の俳句を閲し柿二つ」(子規 明治30年)
「木の実くふ我が前の世は猿か鳥か」(子規 明治30年)
熟柿7(131106)
「柿の実やくちばし赤き鳥が来る」(子規 明治28年)「晩鐘や寺の熟柿の落つる音」(子規 明治28年)「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」(子規 法隆寺の茶店に憩ひて 明治28年)「垣ごしに渋柿垂るる隣かな」(子規 明治28年)
熟柿6(121030)
「柿喰ヒの俳句好みと伝ふべし」(子規 我死にし後は 明治30年)「側に柿くふ人を恨みけり」(明治33年)「奈良の宿御所柿食へば鹿が鳴く」(子規 明治29年)「柿に思ふ奈良の旅籠の下女の顔」(明治30年)「御仏に供へあまりの柿十五」(同上)「樽柿(たるがき)の少し渋きをすてかねし」(同上)「渋柿や高尾の紅葉猶早し」(同上)「大なるやはらかき柿を好みけり」(明治32年)
熟柿5(111119)
「山つづき柿の畑に雲の来て 時雨(しぐれ)ふる日は寂しかりけり」(島木赤彦 大正14年 山村小情)「草の家に柿をおくべき所なし 縁(えん)に盛り上げて明るく思ほゆ」(島木赤彦 大正14年 山村小情)「稍(やや)渋き仏の柿をもらひけり」(子規)
熟柿4(111006)
「山つづき柿の畑に雲の来て 時雨(しぐれ)降る日は寂しかりけり」(島木赤彦 大正14年)「柿の実を摘むこと遅し 故郷(ふるさと)の高嶺(たかね)に雪の見ゆる頃まで」(島木赤彦 大正14年)「くやしくも熟柿仲間の座につきぬ」(一茶)熟柿3(101103)
「切株において全き熟柿かな」(飯田蛇笏)
熟柿2(091015)
「日あたりや熟柿の如き心地あり」(漱石)
熟柿1(081126)
「柿の樹に梯子(はしご)掛けたれば 藪(やぶ)越しに隣の庭の柚子(ゆず)黄ばみ見ゆ」(長塚節 大正3年)「日あたりや熟柿のごとき心地あり」(漱石)

時雨13(131210)
「おのづから音なふ人もなかりけり 山めぐりする時雨ならでは」(西行法師 閑中時雨といふことを 山家集冬)「ねざめする人の心をわびしめて しぐるる音は悲しかりけり」(西行法師 題しらず 山家集冬)「山城へ井出の駕籠(かご)かる時雨かな」(芭蕉)

初時雨7(131126)
「初時雨あはれ知らせて過ぎぬなり 音に心の色を染めにし」(西行法師 時雨 山家集冬)「月をまつ高嶺の雲は晴れにけり 心ありける初時雨かな」(西行法師 時雨 山家集冬)「初時雨(はつしぐれ)猿も小蓑(こみの)をほしげ也」(芭蕉)「人々をしぐれよやどは寒くとも」(芭蕉)

野分6(141006)
「秋の雨のやみがた寒き山風に かへさの雲もしぐれてぞ行く」(前大納言為家 秋雨を 玉葉集秋)
「染めやらぬ三室の山のうす紅葉 今いくしほの時雨まつらん」(従一位教良 紅葉の歌と手 玉葉集秋)
「抱き起こす萩と吹かるる野分かな」(碧梧桐 明治30年)
「芒伏し萩折れ野分晴れにけり」(子規)
「人を恐れ野分を恐れ住みにけり」(虚子 昭和29年)
「古家に釘打つ音の野分かな」(虚子 昭和25年)
野分5(131016)
「野分せし小野の草ぶし荒れはてて み山に深きさをしかの声」(寂蓮法師 新古今集秋下)「嵐吹く真葛が原に啼く鹿は うらみてのみや妻を恋ふらむ」(俊恵法師 題しらず 新古今集秋下)「吹き飛ばす石は浅間の野分かな」(芭蕉)
野分4(10926)
「冷々と朝日うれしき野分かな」(支考)
野分3(091008)
「猪(いのしし)もともに吹かるる野分(のわき)かな」(芭蕉)
野分2(070907)
「野分する秋の景色を見るときは 心なき人はあらじとぞ思ふ」(千載集)「野分せし小野の草ぶし荒れ果てて み山に深きさを鹿の声」(新古今集)「吹きすさむ野分の空の雲間より あらはれわたる有明の月」(夫木和歌抄)「芭蕉野分して盥(たらい)に雨を聞く夜かな」(芭蕉)
野分1(061107)
「芭蕉野分(ばしょうのわき)して盥(たらい)に雨を聞く夜かな」(芭蕉)

烏瓜11(141005)
「秋雨のひねもすふりて夕されば 朝顔の花しぼまざりけり」(長塚節 鍼の如く 大正3年)
「朝顔の垣はむなしき 秋雨をわびつつけふもまたいねてあらむ」(長塚節 鍼の如く 大正3年)
「やすらへる人に知られて烏瓜」(平畑静塔)
「蔦切れてはね上りたる烏瓜」(虚子)
烏瓜10(131119)
「あかつきの露おきみてる谷あひの をちこち白し烏瓜の実」(古泉千樫 清澄山 大正14年)「からす瓜は ひのぼりゆきて 痩杉の梢に赤き実を垂らしけり」(若山牧水)「ぶらさがってゐる烏瓜は二つ」(山頭火 鉢の子)
烏瓜9(121015)
「烏瓜(たまづさ)の夕さく花は明け来れば 秋をすくなみ萎(しぼ)みけるかも」(長塚節 初秋の歌 明治40年)「草深き垣根にけぶる烏瓜(たまづさ)に いささか眠き夜は明けにけり」(長塚節 鍼の如く 大正3年)「烏瓜(からすうり)墓を守るげに赤みたる」(虚子 明治35年11月6日 子規77忌追悼)
烏瓜8(111012)
「竪縞のしやれてゐし青烏瓜」(後藤比奈夫)
烏瓜7(101116)
「烏瓜もてばモジリアニイの女」(有馬朗人)
烏瓜6(091026)
「竹藪に人音しけり烏瓜」(惟然)
烏瓜5(090921)
「つる引けば遥かに遠し烏瓜」(抱一)
烏瓜4(081012)
「烏瓜(たまづさ)の夕さく花は明け暮れば 秋をすくなみ萎(しぼ)みけるかも」(長塚節 明治40年 初秋の歌)
「溝川や水に引かるる烏瓜」(一茶)
烏瓜3(071005)
「くれないもかくてはさびし烏瓜」(蓼太)
烏瓜2(061113)
「食卓にあり食べられぬ烏瓜」(山口誓子)烏瓜1(061106)
「余念なくぶらさがるなり烏瓜」(漱石)

秋深し7(141003)
「秋ふかき山より山に分けいれば なほ色そへる紅葉をぞみる」(新院御製 玉葉集秋)
「秋ふかみよわるは虫の声のみか きく我とても頼みやはある」(西行法師 玉葉集秋)
「秋ふかき野べの草葉にくらべばや もの思ふ頃の袖の白露」(西行法師 山家集秋)
「秋深し生きし古人は古書に在り」(阿波野青畝)
秋深し6(131004)
「秋もやや衣手(ころもで)さむくなりにけり 山の木の葉は色づきぬらむ」(良寛)「秋風よいたくな吹きそ あしひきの深山(みやま)もいまだもみぢせなくに」(良寛)「彼一語我一語の秋深みかも」(虚子 昭和25年10月25日)
秋深し5(121028)
「をちこちの山のもみぢ葉散り過ぎて 空(そら)さみしくもなりにけらしも」(良寛)「山里はうら淋(さび)しくぞなりにける 木々の梢の散り行く見れば」(良寛)「疲れては睡(ねむ)り覚めては秋深し」(岡本眸)
秋深し4(101019)
「大井川ゐせぎによどむ水の色に 秋深くなるほどぞ知らるる」(西行法師 山家集秋)「わがものと秋の梢を思ふかな 小倉の里に家ゐせしより」(西行法師 山家集秋)「秋深し老衰といふしづかな死」(山口青邨)
秋深し3(091119)
「寝覚めする長月の夜の床さむみ 今朝吹く風に霜や置くらむ」(春宮権太夫公継 新古今集秋下)「秋ふかき淡路の島のありあけに かたぶく月をおくる浦かぜ」(前大僧正慈円 新古今集秋下)「おもしろき秋の朝寝や亭主ぶり」(芭蕉)
秋深し2(091007)
「城外に更け行く秋や寒山寺」(蕪村)
秋深し1(071016)
「秋ふかきなりにけらしな きりぎりす床の辺りに声聞ゆなり」(花山院 千載集)「秋ふかみたそがれ時のふぢばかま にほふは名のる心地こそすれ」(崇徳院 千載集)「秋ふかき淡路の島の有明に かたぶく月をおくる秋風」(前大僧正慈円 新古今集秋下)「秋ふけぬ鳴けや霜夜のきりぎりす やや影さむしよもぎふの月」(後鳥羽院 新古今集秋下)「秋深き隣は何をする人ぞ」(芭蕉)

蔦紅葉8(141003)
「思ひ出づる過ぎにしかたをはづかしみ あるにものうきこの世なりけり」(西行法師 雑歌)
「捨てたれど かくれてすまぬ人になれば 猶よにあるに似たるなりけり」(西行法師 雑歌)
「世の中を捨てて捨てえぬ心地して 都はなれぬ我が身なりけり」(西行法師 雑歌)
「捨てし折の心をさらにあらためてみる よの人にわかれ果てなむ」(西行法師 雑歌)
「蔦の葉の二枚の紅葉客を待つ」(虚子)
「犬ほえて家に人なし蔦もみぢ」(言水)
「なま壁や秋を忘るる蔦紅葉」(言水)
蔦紅葉7(131031)
「思はずよよしある賤のすみかかな 蔦のもみぢを軒にははせて」(西行法師 山家集秋)「山ふかみ入りて見と見るものは 皆あはれ催すけしきなるかな」(西行法師 山家集 覉旅歌)「さまざまのあはれありつる山里を 人につたへて秋の暮れける」(西行法師 山家集 雑歌)「蔦の葉はむかしめきたる紅葉かな」(芭蕉)
蔦紅葉6(121104)
「染めてけりもみぢの色のくれなゐを しぐると見えしみ山べの里」(西行法師 山家集秋)「松にはふまさきのもみぢちりぬなり 外山の秋は風すさぶらむ」(西行法師 山家集秋)「秋風や桐(きり)に動いてつたの霜」(芭蕉)
蔦紅葉5(111104)
「薄霧のたちまふ山のもみぢ葉は さやかならねどそれと見えける」(紅葉透霧といふことを 高倉院御製 新古今集秋下)「もみぢ葉の色にまかせて 常磐木も風にうつろふ秋の山かな」(春宮権太夫公継 新古今集秋下)「尼がゐる方の石垣蔦紅葉」(虚子)
蔦紅葉4(101021)
「思はずよよしある賎のすみかかな 蔦のもみぢを軒にははせて」(西行法師 山家集秋)「わがものと秋の梢を思ふかな 小倉の里に家ゐせしより」(西行法師 山家集秋)「仁王にもよりそふ蔦の茂りかな」(園女)「苔埋(こけうづ)む蔦のうつつの念仏(ねぶつ)哉」(芭蕉)
蔦紅葉3(091104)
「秋にあへずさこそは葛(くず)の色づかめ あなうらめしの風のけしきや」(藤原基俊 千載集秋下)「山姫に千重(ちへ)のにしきを手向けても 散るもみぢ葉をいかでとどめむ」(左京太夫顕輔 千載集秋下)「蔦植ゑて竹四五本のあらしかな」(芭蕉)
蔦紅葉2(081014)
「蔦の葉は昔めきたる紅葉かな」(芭蕉)
蔦紅葉1(071106)
「秋こそあれ人はたづねぬ松の戸を 幾重もとぢよ蔦のもみぢ葉」(式子内親王 新勅撰集)「夕時雨ふるさと寒き秋風に 軒端にもろき蔦のもみぢ葉」(伏見院御集)「時雨るれどよそにのみ聞く秋の色を 松にかけたる蔦の紅葉ば」(俊成卿女集)「棧(かけはし)や命をからむ蔦かづら」(芭蕉)

間引菜9(141012)
「舟上(あが)る湖水の岸の いささかの畑の野菜(やさい)をなつかしむかな」(木下利玄 銀 落葉樹)
「瞳(ひとみ)吸(す)ふ青き野菜に目をまかせ 夕べつめたき湖ぎはに立つ」(木下利玄 銀 落葉樹)
「何事もたやすからずよ菜間引くも」(虚子 六百五十句 昭和23年)
貝割菜8(141002)
「空の藍山の黄色のくっきりと かたみにせめぎ秋晴に立つ」(木下利玄 銀 落葉樹)
「葉も花もすがれ果てたる秋草の なほ立てるあり山の道ばた」(木下利玄 銀 落葉樹)
「人いつも何かをいのる貝割菜」(倉田紘文)
貝割菜7(131011)
「すすき葉の垂葉するどに 真西日をはじきかへしてきらめけるかも」(木下利玄 草しげり山 紅玉)「すすき葉のさ青長葉のしげり葉の するどに垂れて風あらずけり」(木下利玄 草しげり山 紅玉)「一と雨のありたる緑貝割菜」(倉田紘文)
貝割菜6(121007)
「瞳(ひとみ)吸ふ青き野菜に目をまかせ 夕べつめたき湖ぎはに立つ」(木下利玄 銀 落葉樹)「舟上(あが)る湖水の岸の いささかの畑の野菜をなつかしむかな」(木下利玄 銀 落葉樹)「ひらひらと月光降りぬ貝割菜」(川端茅舎)
貝割菜5(111014)
「ひらひらと月光降りぬ貝割菜」(川端茅舎)
間引菜4(101029)
「間引菜やそそぎ上げたる鴨の水」(嘯山)
貝割菜3(100930)
「雨そそぎつつ鵙(もず)来たり貝割菜」(石田波郷)
間引菜2(090929)
「畑耕すにはあらねども菜を間引く」(飯田蛇笏)
貝割菜1(081031)
「日はのぼる果てしなき地の貝割菜」(山口青邨)

紫蘇の実8(141001)
「秋の野はをるべき花もなかるべき こぼれてきえん露のをしさに」(源親範 土御門右大臣家歌合によめる 後拾遺集秋)
「草の上におきてぞあかす 秋の夜の露ことならぬ我身と思へば」(大中臣能宣朝臣 秋前栽のなかにをりゐて酒たうべて世の中の常なきことなどいひてよめる 後拾遺集秋)
「なにしかは人もきてみん いとどしく物思ひまさる秋の山ざと」(和泉式部 後拾遺集秋)
「紫蘇の実をぽつんと噛みてほろ酔える」(磯直道)
紫蘇の実7(131002)
「柿紅葉枝(えだ)はなるるあり おし黙(だま)り一人(ひとり)歩める峡(かひ)の畑(はたけ)に」(木下利玄 峡のみち 一路)「ふり出(い)でて笹にあたる雨の幽(かそ)けきに 耳すまし歩みわが行く山路(やまぢ)」(木下利玄 峡のみち 一路)「紫蘇濃ゆき一途に母を恋ふ日かな」(石田波郷 風切)
紫蘇の実6(121017)
「こころよき刺身の皿の紫蘇(しそ)の実に 秋は俄かに冷えいでにけり」(長塚節 大正3年)「青紫蘇を嗅いで力に峠越」(森澄雄 鯉素)
紫蘇の実5(100926)
「紫蘇の実を鋏の鈴の鳴りて摘む」(虚子)
紫蘇の実4(081015)
「紫蘇の実を鋏の鈴の鳴りて摘む」(虚子)

金木犀9(140930)
「ひややかに木犀かをる朝庭の 木陰は闇(くら)き椰(なぎ)の落葉や」(長塚節 明治38年)
「白妙のいさごもきよきみささぎは 花木犀のかをる瑞垣」(長塚節 明治38年)
「木犀を枝より嗅いで遊びけり」(山口誓子 激浪)
「木犀の香を距たれる木に求む」(山口誓子 激浪)
金木犀8(131010)
「命ありて今年また仰ぐ秋の空 げに美しく高く晴れたり」(古泉千樫 秋風吟 大正14年)「空高み白雲さやにうごくなり 土をふみつつ仰ぎ見るかも」(古泉千樫 秋風吟 大正14年)「木犀の落花鋸屑紛らはし」(山口誓子)「金木犀散るや日ごとに場をひろげ」(中西舗土)
金木犀7(121007)
「潮入(しほいり)の池にみちくる水動き 金木犀の花の香(か)ぞする」(佐藤佐太郎 黄月 昭和58年)「黄の花のかたまりて散る木犀(もくせい)の香も 年老いてやうやくうとし」(佐藤佐太郎 黄月 昭和59年)「葉をもるる夕日の光近づきて 金木犀の散る花となる」(佐藤佐太郎 黄月 昭和60年)「木犀の香(か)は秋の蚊を近づけず」(虚子 昭和18年10月2日 句謡会。)
金木犀6(121020)
「空の藍山の黄色のくっきりと かたみにせめぎ秋晴れに立つ」(木下利玄 落葉樹 銀)「落葉ふむ足をとどめてたたずめば 沈黙(しじま)ひろがるまた歩み行く」(木下利玄 落葉樹 銀)「木犀に薪積みけり二尊院」(碧梧桐 続春夏秋冬)
金木犀5(111020)
「しろたへの衣手(ころもで)さむき秋さめに 庭の木犀(もくせい)香にきこえかも」(長塚節 明治36年)「ひややかに木犀(もくせい)かをる朝庭の 木蔭は暗き椰(なぎ)の落葉や」(長塚節 明治38年)「家小(ち)さく木犀の香の大いなる」(高野素十)
金木犀4(101007)
「朝の日に黄金細蕊(ほそしべ)香をはきて 秋に傲(おごり)の木犀の花」(尾上紫舟)「木犀のあまきかをりに詩は成りて 昼あたたけし草堂の秋」(尾上紫舟)「木犀の香にあけたての障子かな」(虚子)
金木犀3(091024)
「木犀の昼は醒めたる香炉かな」(嵐雪)
金木犀2(081010)
「木犀の昼は醒めたる香炉かな」(嵐雪)
金木犀1(071013)
「木犀の香に昇天の鷹ひとつ」(飯田龍太)

芒13(140929)
「をしむ夜の月にならひて 有明のいらぬをまねく花薄かな」(西行法師 月前薄 山家集秋)
「花すすき月の光にまがはまし 深きますほの色にそめずば」(西行法師 月前薄 山家集秋)
「垣根潜る薄ひともとますほなる」(蕪村)
「花すすき刈のこすとはあらなくに」(蕪村)
芒12(131019)
「秋の野の草花(をばな)が末(うれ)をおしなべて 来(こ)しくもしるくあへる君かも」(安倍朝臣虫麻呂 万葉集巻八1577)「めづらしき君が家なる花すすき 穂に出づる秋の過ぐらく惜しも」(内舎人石川朝臣廣成 万葉集巻八1601)「秋来ぬと風もつげてし山里に なほほのめかす花すすきかな」(法印静賢 草花告秋といへる心をよめる 千載集秋)「花すすきまねくはさがと知りながら とどまるものは心なりけり」(道命法師 法輪寺にまうで侍りけるに、嵯峨野の花を見てよめる 千載集秋)「茫々と取乱したる芒かな」(鬼貫)「見る人の眼も細うなる芒かな」(浪化)
芒11(120928)
「秋風に露はこぼれて花すすき みだるる方に月ぞいざよふ」(良寛)「またも来よ柴のいほりをいとはずは すすき尾花の露を分け分け」(良寛)
「山は暮(くれ)て野は黄昏(たそがれ)の薄かな」(蕪村)
芒10(110927)
「をしむ夜の月にならひて有明の いらぬをまねく花薄かな」(西行法師 山家集秋)「花すすき月の光にまがはまし 深きますほの色にそめずば」(西行法師 山家集秋)「しほらしき名や小松吹く萩すすき」(芭蕉)
芒9(101021)
「灰に濡れて立つや薄と萩の中」(漱石)
芒8(101001)
「君が植ゑしひとむらすすき 虫の声(ね)のしげき野べともなりにけるかな」(古今集 哀傷歌)「秋の野の尾花にまじり咲く花の 色にや恋ひん逢ふよしをなみ」(古今集 恋)「面白き急には見えぬすすきかな」(鬼貫)
芒7(090924)
「穂に出づるみ山が裾のむら薄(すすき) まがきにこめてかこふ秋霧」(霧中草花 西行法師 山家集秋)「しげり行く芝の下草をばな出て 招くや誰をしたふなるらむ」(西行法師 山家集秋)「籬(まがき)あれて薄(すすき)ならねどかるかやも 繁き野辺とはなりけるものを」(古籬刈萱 西行法師 山家集秋)「茨老いすすき痩せ萩おぼつかな」(蕪村)

芒3(070924)
「人皆は萩を秋と言ふよし 我は尾花が末を秋とは言はむ」(万葉集巻十2110)「夕立の雨降るごとに 春日野の尾花が上の白露思ほゆ」(万葉集巻十2169)「秋萩の花野のすすき穂には出でず 我が恋ひわたる隠(こも)り妻はも」(万葉集巻十2285)「秋の野の草の袂(たもと)か 花すすき 穂に出でて招く袖と見ゆらん」(古今集秋上)「前山に雲みてかげる庭芒」(松本たかし)
芒1(060902)
「この道の富士になり行く芒(すすき)かな」(河東碧梧桐)

大相撲5(140927)
「足たたば北インヂヤのヒマラヤの エヴェレストなる雪くはましを」(子規 足たたば 明治31年)
「足たたば蝦夷の栗原くぬ木原 アイノが友と熊殺さましを」(子規 足たたば 明治31年)
「夜角力(すまふ)の草にすだくや裸(はだか)むし」(蕪村 落日庵)
「角力(すまふ)取り秋季なればぞ裸虫(はだかむし)」(蕪村 落日庵)
「飛入(とびいり)の力者あやしき角力(すまふ)哉」(蕪村 落日庵)
「天窓(あたま)うつ家に帰るや角力(すまふ)取」(蕪村 落日庵)
大相撲4(130926)
「足たたば箱根の七湯(ななゆ)七夜(ななよ)寐て 水海(みづうみ)の月に舟うけましを」(子規 徒然坊(つれづればう)箱根より写真数葉を送りこしける返事に 明治31年)「足たたば不尽(ふじ)の高嶺のいただきを いかづちなして踏み鳴らさましを」(子規 足たたば 明治31年)「よき角力(すまふ)いでこぬ老のうらみ哉」(蕪村)
大相撲3(120722)
「日ごろ中よくて恥ある角力(すまひ)かな」(蕪村)
大相撲2(070919)
「相撲取(すまふとり)ならぶや秋の唐錦(からにしき)」(嵐雪)
大相撲1(070723)
「負くまじき角力(すまひ)を寝ものがたりかな」(蕪村)
稍寒3(140925)
「鞍馬石雨に濡るるを見てありぬ 昔をおもふうつつ心に」(吉井勇 洛北閑居 天彦)
「雨降れば大鞍馬嶺(おほくらまね)の山ふかき 嵐気(らんき)をおもふ石をながめて」(吉井勇 洛北閑居 天彦)
「庭を見る思ひはるけくなるほどに 目にこそうかべ土佐の鬼羊歯(おにしだ)」(吉井勇 洛北閑居 天彦)
「庭草のなかにまじれる山羊歯は はるばる遠き土佐を思(も)はしむ」(吉井勇 洛北閑居 天彦)
「余所心(よそごころ)三味聞きゐればそぞろ寒(さむ)」(漱石 明治43年)
「肌寒をかこつも君の情かな」(漱石 明治43年)
稍寒2(130924)
「来しかたはみな面影にうかびきぬ 行末てらせ秋の夜の月」(前中納言定家 玉葉集秋)「世をうしとなに思ひけん秋ごとに 月は心にまかせてぞ見る」(皇太后宮太夫俊成 家に十首の歌よみ侍りけるに、月を 玉葉集秋)「鯛切れば鱗眼を射る稍寒み」(漱石 明治43年)
稍寒1(120923)
「われはもやここに老いむと 夕庭の叡山苔をなつかしみ居り」(吉井勇 洛北閑居 天彦)「なつかしき愚庵の歌を床に懸け しみじみと聴く秋雨の音(と)を」(吉井勇 洛北閑居 天彦)「稍寒(ややさむ)の鏡もなくに櫛(くしけず)る」(漱石)

邯鄲10(1409126)
「あき風のふけ行く野辺の虫の音の はしたなきまでぬるる袖かな」(西行法師 山家集秋)
「あきの夜に声も惜しまず鳴く虫を 露まどろまず聞きあかすかな」(西行法師 山家集秋)
「邯鄲や夢路追ひ来て鳴きつづく」(水原秋櫻子 余生)
「邯鄲や風の葉音は葛ばかり」(水原秋櫻子 殉教)
邯鄲9(130914)
「穂に出づるみ山が裾のむら薄 まがきにこめてかこふ秋霧」(西行法師 山家集秋)「花をこそ野辺のものとは見に来つれ 暮るれば虫の音をも聞きけり」(西行法師 山家集秋)「夕霧に邯鄲のやむ山の里」(飯田蛇笏)
邯鄲8(120903)
「玉にぬく露はこぼれて むさし野の草の葉むすぶ秋の初風」(人々秋の歌を十首よみけるに 西行法師 山家集秋)「山里の外面の岡の高き木に そぞろがましき秋の蝉かな」(山里に人々まかりて秋の歌よみけるに 西行法師 山家集秋)「邯鄲や雲みな沈む夜半の月」(水原秋櫻子)
邯鄲7(110829)
「邯鄲の冷たき脚を思ふべし」(長谷川櫂)
邯鄲6(100910)
「邯鄲にくもれるまなこ拭きにけり」(赤尾兜子)
邯鄲5(090828)
「こときれてなほ邯鄲のうすみどり」(富安風生)
邯鄲4(070918)
「こときれてなほ邯鄲のうすみどり」(富安風生)
邯鄲3(070816)
「月消ぬる邯鄲それのごとく鳴く」(山口青邨)
邯鄲2(060913)
「邯鄲の冷たき脚を思ふべし」(長谷川櫂)
邯鄲1(060904)
「目つむりて邯鄲の声引きよせし」(上村占魚)

秋の蝶4(140924)
「立ちこむる朝けの霧のそのままに 曇りて暮るる秋の空かな」(前中納言俊光 嘉元の百首の歌奉りけるに、霧を 玉葉集秋)
「霧ふかみそこと見えねど 影うすき月ののぼるや秋の山ぎは」(入道前太政大臣 遠山霧玉葉集秋)
「秋の蝶連れて莫高窟(ばっこうくつ)に入る」(有馬朗人)
「かのことは夢まぼろしか秋の蝶」(鈴木真砂女)
「秋の蝶黄色が白にさめけらし」(虚子)
「秋蝶のこの黄の濃さよ小ささよ」(星野立子)
秋の蝶3(130930)
「みねの雲ふもとの霧も色くれて 空も心もあきの松風」(前中納言定家 題しらず 玉葉集秋)「そともなる楢の葉しをれ露おちて 霧晴れのぼる秋の山もと」(前参議雅有 玉葉集秋)「秋をへて蝶もなめるや草の露」(芭蕉)
秋の蝶2(120920)
「物の葉やあそぶ蜆蝶(しじみ)はすずしくて みなあはれなり風に逸(そ)れゆく」(北原白秋 橡 秋夕賦)「秋いまだ暑おとろへず 狂ひ搏つ豹紋蝶は針に刺し留む」(北原白秋 橡 秋夕賦)「物好きや匂はぬ草にとまる蝶」(芭蕉)
秋の蝶1(110930)
「病む日又簾(すだれ)の隙(すき)より秋の蝶」(漱石)

曼珠沙華9(140924)
「けたたましく百舌鳥(もづ)が鳴くなり 路ばたには曼珠沙華もえてこの里よき里」(木下利玄 曼珠沙華の歌 みかんの木)
「曼珠沙華毒々しき赤の萬燈を 草葉の陰よりささげてゐるも」(木下利玄 曼珠沙華の歌 みかんの木)
「死なばこの重き大地よ曼珠沙華」(石寒太)
「つきぬけて天上の紺曼珠沙華」(山口誓子)
曼珠沙華8(130921)
「曼珠沙華あやしき赤の薬玉(くすだま)の 目もあやに炎(も)ゆ草生のまどはし」(木下利玄 曼珠沙華の歌)「曼珠沙華咲く野の日暮れは 何がなしに狐が出るとおもふ大人の今も」(木下利玄 曼珠沙華の歌)「お彼岸のお彼岸花をみほとけに」(山頭火 山行水行)「曼珠沙華あっけらかんと道の端」(漱石 明治28年)
曼珠沙華7(120927)
「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の花の群(むらが)りに午後 秋陽(あきび)照りきはまりてむつつりしづか」(木下利玄 みかんの木 曼珠沙華の歌)「曼珠沙華真赤(まっか)に咲き立つ ほそ径(みち)を通りふりむけばそのまま又見ゆ」(木下利玄 みかんの木 曼珠沙華の歌)「法窟(ほふくつ)の大破に泣くや曼珠沙華」(碧梧桐 続春夏秋冬)
曼珠沙華6(110925)
「おのづから頭(こうべ)を歩みくれば 壕(ほり)の土手に曼珠沙華(まんじゅしゃげ)赤し」(古泉千樫 大正5年)「大木(たいぼく)の根こぎたふれし道のべに すがれて赤き曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の花」(古泉千樫 大正6年)「彼岸花さくふるさとはお墓のあるばかり」(山頭火)
曼珠沙華5(100928)
「曼珠沙華か黒き土に頭(かしら)あぐ 雨やみ空のすめる夕べに」(木下利玄 銀)「曼珠沙華真赤に咲き立つほそ経(みち)を 通りふりむけばそのまま又見ゆ」(木下利玄 みかんの木)「曼珠沙華に鞭(むちうた)れたり夢覚むる」(松本たかし)
曼珠沙華4(090922)
「曼珠沙華落暉も蘂をひろげけり」(中村草田男)
曼珠沙華3(080921)
「曼珠沙華一むら燃えて秋陽(あきび)つよし そこ過ぎてゐるしずかなる径(みち)」(木下利玄 曼珠沙華の歌)「うすづける彼岸(ひがん)秋陽(あきび)に狐(きつね)ばな 赤々そまれりここはどこのみち」(わが故郷にては曼珠沙華を狐ばなと呼ぶ、われ幼きころは曼珠沙華の名は知らざりき。 木下利玄 曼珠沙華の歌)「曼珠沙華咲く野の日暮れは何かなしに 狐が出るとおもふ大人の今も」(木下利玄 曼珠沙華の歌)「まんじゅさげ蘭に類ひて狐啼く」(蕪村)
曼珠沙華2(070926)
「曼珠沙華の花咲く見れば 落魄(らくはく)の歌をつくりし頃しおもほゆ」(吉井勇)
「仏より痩せて哀れや曼珠沙華」(漱石)
曼珠沙華1(060927)
「日の落ちる野中の丘や曼珠沙華」(子規)

秋彼岸5(140923)
「身に積るわがよの秋のふけぬれば 月見てしもぞ物は悲しき」(道因法師 皇太后宮太夫俊成の家に十首の歌よませ侍りける時 玉葉集秋)
「秋の夜も我がよもいたくふけぬれば 傾く月をよそにやは見る」(従三位頼政 源師光の家にて月の歌よみ侍りけるに 玉葉集秋)
「秋彼岸墓は影もて時を告ぐ」(平畑静塔)
「秋彼岸にも忌日にも遅れしが」(虚子)
秋彼岸4(130923)
「七十にあまり悲しきながめかな 入るかた近き山のはの月」(西園寺入道前太政大臣 寛元元年九月十三夜、月の十首の歌の中に 玉葉集秋)「昔みし月にも袖はぬれしかど 老はさながら涙なりけり」(僧正公朝 月の歌とて 玉葉集秋)「秋彼岸袂(たもと)ひろげて飛ぶ雀」(鷹羽狩行)
秋彼岸3(120922)
「山寺の夕べはわけて心澄め 谷川の音を聖人(ひじり)きかしき」(中村憲吉 栂(とが)の尾寺 大正13年)「山河(やまかは)に庵(いほ)りし人の起臥(おきふし)の あるべきやうの幽(かそ)けさを思ふ」(中村憲吉 栂の尾寺 大正13年)「秋草を仕立てつ墓を守(も)る身かな」(漱石 明治43年)
秋彼岸2(110923)
「風もなき秋の彼岸の綿帽子」(老母をいざなひて 鬼貫)
秋彼岸1(100923)
「さびしさは秋の彼岸のみづすまし」(飯田龍太)

夕焼け6(140921)
「夕焼けの二三歩秋の谷」(飯田龍太)
「おしなべて思ひしことのかずかずに なほ色まさる秋の夕暮」(新古今集秋)
「み山路やいつより秋の色ならむ 見ざりし雲のゆふぐれの空」(前大僧正慈円 をのこども、詩を作りて歌に合せ侍りしに、山路秋行といふことを 新古今集秋)
「夕焼の山風湖にたはむれて」(飯田龍太)
「夕焼けて護国神社の裏静か」(飯田龍太)
「つぎつぎに雑魚釣れてゐる夕焼け空」(飯田龍太 涼夜 昭和51年)
夕焼け5(130929)
「ひんがしの朝焼け雲は わが庭の黍(きび)の葉ずゑの露にうつれり」(若山牧水 雑詠 くろ土)「のびのびと背伸をしつつ仰ぎたれ 秋の夕べの空の欅(けやき)を」(若山牧水 雑詠 くろ土)「幽かにも活仏の座の夕焼けぬ」(加藤楸邨 トフミン廟六句 砂漠の鶴)「ゴビの鶴夕焼けの脚垂れて翔(か)く」(加藤楸邨 砂漠の鶴)「夕焼けしゆゑにかなしき馬駱駝」(加藤楸邨 砂漠の鶴)
夕焼け4(120926)
「秋づけどまだもろ草の青かるを ぬき出て咲けるみそはぎの花」(若山牧水 雑詠 山桜の歌)「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)いろふかきかも 入江ゆくこれの小舟の上よりみれば」(若山牧水 雑詠 山桜の歌)「子を連れて野の夕焼に片手浮く」(飯田龍太)
夕焼け3(111021)
「おしなべて思ひしことのかずかずに なほ色まさる秋の夕暮れ」(新古今集秋)「暮れかかるむなしき空の秋を見て おぼえずたまる袖の露かな」(新古今集秋)「遠き日のことのごとしや夕焼けて」(加藤楸邨)
夕焼け2(060807)
「夕焼けて遠山雲の意にそへり」(飯田龍太)

秋彼岸5(140923)
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秋彼岸4(130923)
「七十にあまり悲しきながめかな 入るかた近き山のはの月」(西園寺入道前太政大臣 寛元元年九月十三夜、月の十首の歌の中に 玉葉集秋)「昔みし月にも袖はぬれしかど 老はさながら涙なりけり」(僧正公朝 月の歌とて 玉葉集秋)「秋彼岸袂(たもと)ひろげて飛ぶ雀」(鷹羽狩行)
秋彼岸3(120922)
「山寺の夕べはわけて心澄め 谷川の音を聖人(ひじり)きかしき」(中村憲吉 栂(とが)の尾寺 大正13年)「山河(やまかは)に庵(いほ)りし人の起臥(おきふし)の あるべきやうの幽(かそ)けさを思ふ」(中村憲吉 栂の尾寺 大正13年)「秋草を仕立てつ墓を守(も)る身かな」(漱石 明治43年)
秋彼岸2(110923)
「風もなき秋の彼岸の綿帽子」(老母をいざなひて 鬼貫)
秋彼岸1(100923)
「さびしさは秋の彼岸のみづすまし」(飯田龍太)

秋晴れ8(140921)
「薄霧のはるる朝けの庭みれば 草にあまれる秋の白露」(永福門院 秋の御歌の中に 玉葉集秋)
「吹きしをる四方の草木のうら葉見えて 風にしらめる秋の曙」(永福門院内侍 秋の歌とて 玉葉集秋)
「秋晴のあまりに晴れて何もせず」(森澄雄 四遠)
秋晴れ7(130912)
「たが世よりいかなる色の夕とて 秋しも物を思ひそめけん」(恵慶法師 玉葉集秋)「たそがれに物思ひをれば 我が宿の荻の葉そよぎ秋風ぞふく」(鎌倉右大臣 玉葉集秋)「秋晴(あきばれ)や人がいいとは馬鹿(ばか)のこと」(久保田万太郎 昭和21年)
秋晴れ6(121008)
「しら露の色はひとつを いかにして秋のこのはをちぢにそむらん」(としゆきの朝臣 古今集秋下)「秋の露いろいろことにおけばこそ 山のこのはのちぐさなるらめ」(よみ人しらず 古今集秋下)「秋日和負ふて越ゆるや箱根山」(一茶)
秋晴れ5(120929)
「秋晴やむらさきしたる唐辛子」(後藤夜半)
秋晴れ4(111102)
「みじろぎにきしむ木椅子や秋日和」(芝不器男)
秋晴れ3(100917)
「秋晴れや負ふて越ゆるや箱根山」(一茶)
秋晴れ2(091009)
「秋晴の麺麭食みこぼす膝あはれ」(石田波郷)
秋晴れ1(090921)
「秋晴に倦(う)み一片の雲を産(う)む」(鷹羽狩行)

水引の花9(140919)
「四十雀(しじゅうから)頬のおしろいのきはやかに 時たま来り庭に遊べる」(木下利玄 地面 銀)
「鶏頭の黄いろと赤のびろうどの 玉のかはゆき秋の太陽」(木下利玄 地面 銀)
「水引をわれも細目に見てをりぬ」(森澄雄 天日)
「水引やひねもすそこに眠り猫」(石田波郷 酒中花以後)
水引の花8(130922)
「秋の日は水引草の穂に立ちて すでに長けど暑き此頃」(長塚節 諏訪の短歌会 明治38年)「水引の根をあらひ行く 野の水の淀みにうつる秋の夕映(ばえ)」(木下利玄 紐 銀)「生涯にひとたび会ひき水引草」(石田波郷 中島みさをさん逝く 酒中花)「裾なでて妻の水引はびこりぬ」(石田波郷 酒中花)
水引の花7(120909)
「秋の日は水引草の穂に立ちて すでに長けど暑きこのごろ」(長塚節 明治38年9月5日 諏訪の短歌会)「かひなしや水引草の花ざかり」(子規)
水引の花6(110907)
「水引草目が合ひて猫立停る」(石田波郷)
水引の花5(100929)
「水引の紅にふれても露けしや」(山口青邨)
水引の花4(090906)
「木もれ日は移りやすけれ水引草」(渡辺水巴)
水引の花3(080903)
「水引の紅は見えねど壷に挿す」(高浜年尾)
水引の花2(070924)
「あるかなきか茂みの中にかくれつつ 水引草は紅の花もつ」(九条武子)「なにに直ぐゆるる水引 くれないの花ひとつづつ秋の風ふく」(福田栄一)「みずひきのたたみのつやにうつりけり」(室生犀星)
水引の花1(060916)
「水引の紅(べに)ひとすじのつゆげしき」(松村蒼石)

秋の日3(140919)
「行商のゆく手秋日の岩襖」(飯田龍太)
「秋日向白壁雲の意のままに」(飯田龍太)
「鶏頭に秋の日のいろきまりけり」(久保田万太郎)
「秋の日をとづる碧玉数しらず」(芝不器男)
秋の日2(131101)
「いかにせむ菊の初しもむすぼほれ 空にうつろふ秋の日かずを」(定家 拾遺愚草下)「やきに焼く秋のいり日のこずゑかな 夕くれなゐを分くる山風」(定家 拾遺愚草員外)「秋の日を幹重りて遮りぬ」(虚子)

秋の朝3(140919)
「おぼつかな秋はいかなる故のあれば すずろに物の悲しかるらむ」(西行法師 秋の歌よみける中に 山家集秋)
「雲かかる遠山ばたの秋されば 思ひやるだにかなしきものを」(西行法師 秋の歌よみける中に 山家集秋)
「秋暁や胸に明けゆくものの影」(加藤楸邨)
「裸体画の鏡に映る朝の秋」(子規 仰臥漫録 明治34年)
秋の朝2(131101)
「けさみれば露のすがるに折れふして 起きもあがらぬ女郎花かな」(西行法師 山家集秋)「玉にぬく露はこぼれて むさし野の草の葉むすぶ秋の初風」(西行法師 山家集秋)「砂の如き雲流れ行く朝の秋」(子規)
秋の朝1(090914)
「この寝ぬる夜の間に秋は来にけらし 朝けの風の昨日にも似ぬ」(藤原季通朝臣 新古今集秋上)「みづぐきの岡の葛葉も色づきて 今朝うらがなし秋の初風」(顯昭法師 新古今集秋上)「砂の如き雲流れ行く朝の秋」(子規)

柿の実12(131005)
「世の人はさかしらをすと酒飲みぬ あれは柿くひて猿に似るかも」(子規 柿の歌 明治30年)「おろかちふ庵(いほ)のあるじのあれにたびし 柿のうまさの忘れえなくに」(子規 愚庵和尚よりその庭になりたる柿なりとて十五ばかりおくられけるに 明治30年)「柿の実や口ばし赤き鳥が来る」(子規 明治28年)
柿の実11(121010)
「ふるさとの秋ふかみかも 柿赤き山べ川のべわが眼には見ゆ」(古泉千樫 雑詠 明治41年)「秋深きこのふるさとに帰り来り すなはち立てり柿の木の下に」(古泉千樫 郷土 大正15年)「初(はつ)なりの柿を仏にそなへけり」(子規 明治32年)
柿の実10(111014)
「吊鐘のなかの月日も柿の秋」(飯田龍太)
柿の実9(111008)
「三千の俳句を閲(けみ)し柿二つ」(子規)
柿の実7(090912)
「帯おちの柿のおときく深山かな」(素堂)
柿の実6(081022)
「柿もぐや殊にもろ手の山落暉」(芝不器男)
柿の実5(081005)
「鄙(ひな)にてはぎをんぼといふ 都にては蜂屋ともいふ柿の王はこれ」(子規)「あぢはひを何にたとへん 形さへ濃き紅の玉の如き柿」(子規)「存念のいろ定まれる山の柿」(飯田龍太)
柿の実1(061016)
「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」(子規)

紫蘇の花11(140918)
「夕まぐれ縁にのぼれるこほろぎは いとけなければ未だ鳴かざらむ」(赤彦 家に帰りて 大正6年)
「おのづから秋づきぬらむ 庭の上の雑草の穂の動くを見れば」(赤彦 家に帰りて 大正6年)
「走り出て紫蘇一二枚欠きにけり」(富安風生)
紫蘇の花10(130917)
「はやて風枝ながら揺る柿の実の つぶらつぶらにいまだ青けれ」(赤彦 八月二十四日野分 大正11年)「野分(のわき)すぎてとみにすずしくなれりとぞ思ふ 夜半(よなか)に起きゐたりける」(赤彦 またの日に 大正11年)
「鳥とも違う言葉かわして紫蘇畑」(諸角せつ子)
紫蘇の花9(120925)
「畠なかに手もてわが扱(こ)く紫蘇の実の にほひ清しきころとなりにし」(赤彦 庭前の畑 大正11年)「鋏にてはさむに青し唐辛子 虫の鳴く音のしまらく止みし」(赤彦 庭前の畑 大正11年)「酔は言に悲しみは目に紫蘇匂ふ」(加藤楸邨 山脈)
紫蘇の花8(110920)
「紫蘇は実に佐渡の乙女の腫れ瞼」(千田一路)
紫蘇の花7(110716)
「ひとうねの青紫蘇雨を楽しめり」(木下夕爾)
紫蘇の葉6(100926)
「紫蘇の実を鋏の鈴の鳴りて摘む」(虚子)
紫蘇の葉6(100708)
「紫蘇の葉や裏ふく風の朝夕べ」(飯田蛇笏)
紫蘇の実5(090708)
「酔は言に 悲しみは目に 紫蘇匂ふ」(加藤楸邨)
紫蘇の実5(081020)
「紫蘇の実を鋏の鈴の鳴りて摘む」(虚子)
紫蘇の実4(080716)
「紫蘇の香や朝の泪のあともなし」(藤田湘子)
紫蘇の実3(070722)
「夕影や色落す紫蘇の露重み」(杉風)
紫蘇の葉1(060610)
「海を見る青紫蘇の香は歯に残り」(有働亨)

夏の月

夏の月14(140804)
「夕づく日よそに暮れぬる木の間よりさしくる月の影ぞ涼しき」(法皇御製 玉葉集夏)
「出でて後まだ程もへぬ 中空に影しらみぬるみじか夜の月」(入道前太政大臣 玉葉集夏)
「更けて来て宿を叩くや夏の月」(井月)
「いふ事の隣へもれて夏の月」(井月)
「船で出てくる魚(うを)の命や夏の月」(井月)
夏の月13(130525)
「むすびあぐる泉に澄める月かげは 手にもとられぬ鏡なりけり」(西行法師 泉にむかひて月をみるといふことを 山家集夏)「むすぶ手に涼しきかげをそふるかな 清水に夏の夜の月」(西行法師 山家集夏)
「遠浅に兵舟(つはものぶね)や夏の月」(蕪村)
夏の月12(130507)
「夕立のはるれば月ぞやどりける 玉ゆりすうる蓮のうき葉に」(西行法師 雨後夏月 山家集夏)「かげさえて月しも殊にすみぬれば 夏の池にもつららゐにけり」(西行法師 池上夏月といふことを 山家集夏)「夏の月御油(ごゆ)より出(いで)て赤坂や」(芭蕉)
夏の月11(120714)
「大井川浪に塵なし夏の月」(芭蕉)
夏の月10(110518)
「夏の夜も小笹が原に霜ぞおく 月の光のさえしわたれば」(西行法師 山家集夏)「山川の岩にせかれてちる波を あられとぞみる夏の夜の月」(西行法師 山家集夏)「夜水(よみづ)とる里人(さとびと)の声や夏の月」(蕪村)
夏の月9(100725)
「手をうてば木魂(こだま)に明くる夏の月」(芭蕉)
夏の月8(090804)
「戸の外に筵(むしろ)織るなり夏の月」(子規)
夏の月7(080718)
「夏の月皿の林檎の紅を失す」(虚子)
夏の月5(080519)
「河童(かはたろ)の恋する宿や夏の月」(蕪村)
夏の月4(070601)
「市中は物のにほひや夏の月」(凡兆)「あつしあつしと門々(かどかど)の声」(芭蕉)「二番草(くさ)取りも果たさず穂に出(いで)て」(去来)「灰うちたたくうるめ一枚」(凡兆)夏の月3(060804)
「夏の月提灯(ちょうちん)多きちまたかな」(子規)
夏の月2(060801)
「蛸壺(たこつぼ)やはかなき夢を夏の月」(芭蕉)
夏の月1(060714)
「堂守(どうもり)の小草(こぐさ)ながめつ夏の月」(蕪村)

鬼灯4(140913)
「ほおづきなどいふめるやうに、ふくらかにて、髪のかかれるひまひま、美しうおぼゆ。」(源氏物語 野分)
「少年に鬼灯くれる少女かな」(高野素十)
「鬼灯や野山をわかつかくれざと」(久保田万太郎)
鬼灯3(090810)
「鬼灯や清原の女が生き写し」(蕪村)
鬼灯2(070726)
「少年に鬼灯(ほうづき)くるる少女かな」(高野素十)
鬼灯1(060716)
「鬼灯(ほうづき)は実も葉もからも紅葉(もみじ)哉」(芭蕉)

秋刀魚7(140914)
「ものなべて乏しといひて 粘(なば)りある山草くへばよろこびまさる」(斎藤茂吉 霜)
「小つぶなる金平糖を見いできて をしみつつ居(ゐ)る女中等の声」(斎藤茂吉 霜)
「納豆を食はずなりしより日数経て その味ひをおもひいださず」(斎藤茂吉 霜)
「秋刀魚焼き妻はたのしきやわが前に」(加藤楸邨 都塵抄十八 寒雷)
「秋刀魚焼いて泣きごとなどは吐くまじよ」(鈴木真砂女)
秋刀魚6(130909)
「おほよそに過ぎ来つるごと年老いて われの見てゐる蔵王(ざうわう)の山」(斎藤茂吉 疎開漫吟 昭和20年)「この村の小さき園に 莧(ひゆ)といふ草は茂りて秋は来むかふ」(斎藤茂吉 疎開漫吟 昭和20年)「秋たちてうすくれなゐの穂のいでし 薄(すすき)のかげに悲しむわれは」(斎藤茂吉 疎開漫吟 昭和20年)「秋刀魚焼く匂の底へ日は落ちぬ」(加藤楸邨 都塵拾遺 颱風眼)
秋刀魚5(120904)
「青空へさんまの焼ける煙濃く」(久保田万太郎 昭和15年)
秋刀魚4(110904)
「遠方の雲に暑を置き青さんま」(飯田龍太)
秋刀魚3(100909)
「火だるまの秋刀魚を妻が食はせけり」(秋元不死男)
秋刀魚2(090905)
「秋刀魚焼く煙の中の妻を見に」(山口誓子)
秋刀魚1(061004)
「秋刀魚(さんま)食(く)ふ月夜の柚子(ゆず)を署・iも)いできて」(加藤楸邨)

コスモス8(140915)
「日光にちかき停車場 杉の木の暗きが前にコスモスの花」(木下利玄 落葉樹 銀)
「文挟(ふばさみ)の停車場の前に あかるき黄色の秋の木立てり」(木下利玄 落葉樹 銀)
「コスモスやふるき碓氷(うすい)の峠口」(水原秋櫻子 蘆雁)
「コスモスもすがれる蝶も露しとど」(水原秋櫻子 蘆雁)
コスモス7(130721)
「端居(はしゐ)よりとほくし見ゆる倉間(くらあひ)の コスモスのゆれ秋づきにけり」(中村憲吉 冷寒 大正6年)「こすもすの蕾(ツボミ)かたきに、その手触りたり。 旅をやめなむ 心を持ちて」(釈迢空 海やまのあひだ)「コスモスとしか言ひやうのなき色も」(後藤比奈夫)
コスモス6(120907)
「疲れたる光の中にコスモスのあらはに咲ける 午後頭痛する」(木下利玄 銀 地面)「コスモスの花群がりて はっきりと光をはじくつめたき日ぐれ」(木下利玄 銀 地面)
「秋は夕暮。夕日のさして山のはいと近うなりたるに、からすのねどころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなどとびいそぐさへあはれなり。まいて雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるはいとをかし。日入りはてて、風の音、虫の音など、はたいふべきにあらず。」「コスモス何ぼでも高うなる小さい家で」(尾崎放哉)
コスモス5(110810)
「コスモスを離れし蝶に谿(たに)深し」(水原秋櫻子)
コスモス4(100713)
「コスモスや夜目にもしるき白ばかり」(日野草城)
コスモス3(090917)
「コスモスや雲忘れたる空の碧」(松根東洋城)
コスモス2(071007)
「コスモスの白き空にてうちそよぎ」(山口青邨)
コスモス1(060912)
「コスモスの花あそびをる虚空かな」(虚子)

縷紅草12(140913)
「萱山に這ひはびこる葛の葉の そよろともせず西日のさかり」(木下利玄 草しげり山 紅玉)
「道あらぬ草しげり山の急斜面 てりさかる西日にきらめけるかも」(木下利玄 草しげり山 紅玉)
「萱山の大きな斜面に西日てれり まったくわれはささやけきかも」(木下利玄 草しげり山 紅玉)
「軽身とは哀しみのこと縷紅草」(瀧春一)
縷紅草11(130826)
「縷紅草和田芳恵(わだよしえ)亡き坂の家」(石原八束)
縷紅草10(120825)
「すすき葉の垂葉するどに 真西日をはじきかへしてきらめけるかも」(木下利玄 草しげり山 紅玉)「すすき葉のさ青長葉のしげり葉の するどに垂れて風あらずけり」(木下利玄 草しげり山 紅玉)「子規(しき)墓に蒔(ま)かばやと思ふ縷紅草」(虚子)
縷紅草9(110823)
「明日咲くいのち コップに張りて縷紅草」(山本つぼみ)
縷紅草8(090825)
「相語る風雨のあとや縷紅草」(久保ゐの吉)
縷紅草7(090730)
「少女来て子犬を放つ縷紅草」(古賀まり子)
縷紅草6(081123)
「子規(しき)墓に蒔(ま)かばやと思ふ縷紅草」(虚子)
縷紅草5(080819)
「縷紅草垣にはづれて吹かれ居り」(津田清子)
縷紅草4(071024)
「相語る風雨の跡や縷紅草」(久保ゐの吉)
縷紅草3(070902)
「看護婦と茶飲み咄や縷紅草」(石田波郷)
縷紅草2(070807)
「縷紅草(るこうそう)垣にはずれて吹かれ居り」(津田清子)
縷紅草1(060828)
「子規(しき)墓に蒔(ま)かばやと思ふ縷紅草」(虚子)

栗飯8(140911)
「うらやましほだききりくべいかばかり み湯(ゆ)わかすらむ秋の山里」(建礼門院右京大夫集)参考「山深みほたきるなりと聞えつつ ところにぎはふ斧の音かな」(山家集)
「椎ひろふ賎(しづ)も道にやまよふらん 霧たちこむる秋の山里」(建礼門院右京大夫集)参考「山深み岩にしだるる水ためん かつがつ落つるとちひろふほど」(山家集)
「心ざしなしはさりともわがために あるらむ物を秋の山里」(建礼門院右京大夫集)
「栗飯や不動参りの大工連」(子規 明治29年秋)
「栗飯や目黒の茶屋の発句会」(子規 明治29年秋)
栗飯7(130911)
「いとどしく露やおきそふかきくらし 雨ふるころの秋の山里」(建礼門院右京大夫集)「栗もゑみおかしかるらんと思ふにも いでやゆかしや秋の山里」(建礼門院右京大夫集)「このごろはかうじたちばななりまじり 木の葉もみづや秋の山里」(建礼門院右京大夫集)「いがながら栗くれる人の誠かな」(子規 碧梧桐、深大寺の栗を携え来る 明治29年)
栗飯6(121116)
「小山田を刈るひと見れば 時じく栗をぞひろふ稲のなかより」(中村憲吉 秋の山田 昭和6年)「みちに踏む草かげの毛鞠(いが)や ひといろの黄葉ばやしに栗まじるらし」(中村憲吉 秋の山田 昭和6年)「茹栗(ゆでぐり)や胡坐(あぐら)巧者(こうしゃ)なちいさい子」(一茶 七番日記)
栗飯5(111003)
「栗飯のほくりほくりと食(は)まれけり」(太田鴻村)
栗飯4(101019)
「栗飯にする栗剥いてをりしかな」(安住敦)
栗飯3(091018)
「栗飯や不動参りの大工連」(子規)
栗飯2(081001)
「栗めしや根来法師の五器折敷」(蕪村)
栗飯1(071028)
「栗もゑみをかしかるらんと思ふにも いでやゆかしや秋の山里」(建礼門院右京大夫集)「このごろは柑子(かうじ)橘(たちばな)なりまじる 木の葉もみじや秋の山里」(建礼門院右京大夫集)「椎(しひ)ひろふ賎(しづ)も道にやまよふらん 霧たちこむる秋の山里」(建礼門院右京大夫集)「栗飯や栗の琥珀(こはく)の赫奕(かくえき)と」(松根東洋城)

干若布5(140910)
「磯かげに乾せる若布(わかめ)のにほひにも 旅の情(こころ)は思ひ染(し)むもの」(中村憲吉 奔潮余録 大正14年)
「鳴門の狭隘(くびれ)を出でし 海ばらの潮のせめぎや波ぞ飛ぶなる」(中村憲吉 奔潮余録 大正14年)
「うしほ今和布(め)を東(ひんがし)に流しをり」(虚子 五百五十句 昭和13年)
「潮の中和布を刈る鎌の行くが見ゆ」(虚子 五百五十句 昭和13年)
干若布3(131001)
「磯かげに乾せる若布(わかめ)のにほいにも 旅の情(こころ)は思ひ染(し)むもの」(中村憲吉 奔潮余録 大正14年)「砂浜が岩磯(いはいそ)となれば波あらし 潮が揉(も)むなる磯海苔(いそのり)の香や」(中村憲吉 奔潮余録 大正14年)「岩の和布(め)に今とどきたる竿(さお)ゆれて」(虚子 昭和24年)
干若布2(110917)
「古桶にほとびて青き若布かな」(村上鬼城)
干昆布2(100920)
「昆布から出たる光をなつかしむ」(中里麦外)
干昆布1(090919)
「朝日が呼ぶ海の青さと昆布馬車」(大野林火)

十六夜6(140910)
「」()
十六夜5(130920)
「ももしきの大宮人のまかり出て あそぶ今夜(こよひ)の月のさやけさ」(読人しらず 万葉集巻七1076)「ぬばたまの夜(よ)わたる月をとどめむに 西の山辺に関もあらなくに」(万葉集巻七1077)「山の端を出でやらぬより影見えて 松の下てるいさよひの月」(従一位良教 月の歌の中に 玉葉集秋歌下)「十六夜はわづかに闇の初(はじめ)哉」(芭蕉 続猿蓑)
十六夜4(121001)
「山の端(は)にいさよふ月の出でむかと わが待つ君が夜はくたちつ」(忌部首黒麻呂、友のおそく来るを恨むる歌一首 万葉集巻六1008)「秋風や天つ雲井をはらふらむ 更け行くままに月のさやけき」(西行法師 山家集秋)「十六夜(いざよひ)は海老(えび)煎(い)る程の宵(よひ)の闇」(芭蕉)
十六夜3(110913)
「かぞへねど今宵の月のけしきにて 秋の半を空に知るかな」(西行法師 山家集秋)「誰きなむ月の光に誘はれてと思ふに夜半の明けにけるかな」(終夜月をみる 西行法師 山家集秋)「十六夜や海老(えび)煎(い)る程の宵(よひ)の闇」(芭蕉)
十六夜2(070927)
「山の端にいさよふ月を出でむかと 待ちつつ居るに夜も更けにける」(万葉集巻七1071)「常はさね思はぬものを この月の過ぎ隠らまく惜しき宵かも」(万葉集巻七1069)「山の端にいさよふ月をいつとかも 我は待ち居らむ夜は更けにつつ」(万葉集巻七1084)「八月十五夜、隈(くま)なき月かげ、ひま多かる板屋、残りなく漏り来て、見ならひ給はぬ、すまひのさまも珍しきに、あかつき近くなりにけるなりぬべし。」(源氏物語 夕顔)「さきの世の契り知らるる身のうさに 行く末かねて頼みがたさよ」(夕顔)「かやうの筋なども、さるは心もとなかめり。いさよふ月に、ゆくりなくあくがれんことを、女は思ひやすらひ、とかくのたまふほど、(月が)にわかに雲隠れにて、明け行く空、いとをかし。」(源氏物語 夕顔)「もろともに大内山は出でつれど 入るかた見せぬ十六夜の月」(源氏物語 末摘花)「やすやすと出でていざよふ月の雲」(芭蕉)
十六夜1(061008)
「やすやすと出でていざよふ月の雲」(芭蕉)

虫の声16(140910)
「虫の音を弱り行くかと聞くからに 心に秋の日数をぞふる」(西行法師 山家集秋)
「秋深みよわるは虫の声のみか 聞く我とてもたのみやはある」(西行法師 山家集秋)
「三味線にすがりて盲(めし)ひ虫の宿」(虚子 六百五十句 昭和21年)
「虫すだく中に寝て我寝釈迦(ねじゃか)かな」(虚子 六百五十句 昭和25年)
「虫の音に浮き沈みする庵かな」(虚子 七百五十句 昭和26年)
「草に生(あ)れ土に生(あ)れたる虫の声」(虚子 七百五十句 昭和33年)
虫の声15(130910)
「虫の音にさのみぬるべき袂かは あやしや心物思ふらし」(西行法師 山家集秋)「こ萩咲く山田のくろの虫の音に 庵もる人や袖ぬらすらむ」(西行法師 田家に虫を聞く 山家集秋)「虫売のかごとがましき朝寝(あさね)哉」(蕪村)虫の声14(120908)
「秋の夜に声も惜しまず鳴く虫を 露まどろまず聞きあかすかな」(西行法師 山家集秋)「よもすがら袂に虫の音をかけて はらひわづらふ袖の白露」(西行法師 山家集秋)「虫の音や闇(やみ)を裁行(たちゆく)手負猿(ておひざる)」(蕪村)
虫の声13(110823)
「よすがらや壁に鳴き入るむしの声」(蝶夢)
虫の声12(101005)
「分けて入る袖にあはれをかけよとて 露けき庭に虫さへぞ鳴く」(西行法師 山家集秋)「限あればかれ行く野辺はいかがせむ 虫の音のこせ秋の山ざと」(西行法師 山家集秋)「茨野(いばらの)や夜はうつくしき虫の声」(蕪村)
虫の声11(100913)
「秋風のふけゆく野辺の虫の声の はしたなきまでぬるる袖かな」(西行法師 山家集秋)「野辺になく虫もや物は悲しきと こたへましかば問ひて聞かまし」(西行法師 山家集秋)「わが庵は古本紙屑虫の声」(永井荷風)
虫の声10(090826)
「昼の虫砂丘の底に鳴きゐたる」(有働亨)
虫の声9(090818)
「虫の声いま何欲しと言はるれば」(石川桂郎)
虫の声9(080915)
「雨音のかむさりにけり虫の宿」(松本たかし)
虫の声8(080902)
「ゆふ風や草の根に鳴く虫の声」(野梅)
虫の声7(080830)
「露しげき葎(むぐら)の宿に いにしへの秋にかはらぬ虫の声かな(源氏物語 横笛)「なく声のきこへぬ虫の思ひだに 人の消つにはきゆるものかは」(源氏物語 蛍)「虫の声いま何欲しと言はるれば」(石田桂郎)
虫の声6(080820)
「夜は夜の天の恵みに虫鳴くも」(上村占魚)
虫の声5(070923)
「きりぎりすいたくな鳴きそ 秋の夜のながき思ひは我ぞまされる」(古今集秋上)「秋萩も色づきぬれば きりぎりす わがねぬごとや夜は悲しき」(古今集秋上)「秋の夜は露こそことに寒からし 草むらごとに虫のわぶれば」(古今集秋上)「虫の音もながき夜飽かぬふるさとに なほ思ひそふ松風ぞ吹く」(新古今集秋下)「跡もなき庭の朝茅にむすぼほれ 露のそこなる松虫の声」(新古今集秋下)「秋風にしをるる野辺の花よりも 虫の音いたくかれにけるかな」(新古今集秋下)「秋風のふけ行く野辺の虫の音の はしたなきまで濡るる袖かな」(西行 山家集)「虫の音をよそに思ひてあかさねば 袂(たもと)も露は野辺にかはらじ」(西行 山家集)「野辺に鳴く虫もや物は悲しきと こたへましかば問ひて聞かまし」(西行 山家集)「秋の夜に声も惜しまず鳴く虫を 露まどろまず聞きあかすかな」(西行 山家集)「秋の夜を独や鳴きてあかさまし ともなふ虫の声なかりせば」(西行 山家集)「よもすがら袂に虫の音をかけて はらひわずらふ袖の白露」(西行 山家集)「其中に金鈴をふる虫ひとつ」(虚子)
虫の声4(070910)
「庭草に村雨ふりて蟋蟀の鳴く声聞けば秋づきにけり」(万葉集巻十2160)「秋風の寒く吹くなへ我が宿の浅茅が本(もと)に蟋蟀鳴くも」(万葉集巻十2158)「夕月夜心もしのに白露の置くこの庭に蟋蟀鳴くも 湯原王」(万葉集巻八1552)「むし啼くや河内通ひの小でうちん」(蕪村)
虫の声3(070829)
「虫の声草の懐はなれけり」(几董)
虫の声2(061013)
「昼の虫われに永仕(ながつか)えせし妻よ」(石田波郷)
虫の声1(060813)
「行水のすて所なき虫の声」(鬼貫)

柿落葉7(140909)
「わが庭の柿の葉硬(かた)くなりにけり 土用の風の吹く音きけば」(赤彦 山居 大正8年)
「柿の葉に青き果(み)多くこもり居り はやて風吹くはたけの中に」(赤彦 初秋一日 大正8年)
「柿の木の上より物を言ひにけり 道を通るは皆村の人」(赤彦 山村小情 大正14年)
「わが門(かど)の道行く人は音たてて 柿の落葉を踏みにけるかも」(赤彦 山村小情 大正14年)
「何おもふこともなく柿の葉のおちることしきり」(山頭火 柿の葉)
「月からひらり柿の葉」(山頭火 柿の葉)
「澄太おもへば柿の葉のおちるおちる」(山頭火 柿の葉)
柿落葉6(131003)
「柿の葉は色づかずして落ちにけり 俄(にはか)に深き霜や至りし」(赤彦 山村小情 大正14年)「この朝(あした)降りける霜の深くして 一時(ひととき)に柿の葉は落ちにけり」(赤彦 山村小情 大正14年)「ひるがえりくる柿の葉は唐錦」(阿波野青畝)
柿落葉4(121005)
「柿紅葉枝はなるるあり おし黙(だま)り一人歩めり峡(かひ)の畑に」(木下利玄 峡の道 一路)「この峡にわれ一人なり 近くにてほそぼそ澄めるせせらぎの音」(木下利玄 峡の道 一路)
「苔寺へ道の曲りの柿の家」(虚子)
柿落葉4(121005)
「柿紅葉山ふところを染めなせり」(虚子)
柿落葉3(110905)
「あと先に人声遠し柿紅葉」(暁台)
柿落葉2(100924)
「あと先に人声通し柿紅葉」(暁台)
柿落葉1(071029)
「秋来れば山の木の葉のいかならん 園生の柿は紅葉しにけり」(藤原為家 夫木和歌抄)「柿も栗も成るしるしあり 心からうれしき声の児らが叫びに」(左千夫 明治42年)
「渋柿も紅葉しにけり朝寝坊」(一茶)

蜘蛛15(140903)
「稗(ひえ)の穂の淋しき谷をすぎくれば おり居る雲の峰離れゆく」(長塚節 御嶽より松島村に下る、途上 明治38年9月3日)
「ひよどりの朝鳴く山の 栗の木の梢しづかに雲のさわたる」(長塚節 明治38年9月3日)
「ゆふべなごやかな親蜘蛛子蜘蛛」(山頭火 孤寒)
「蜘蛛の糸の顔にかからぬ日とてなし」(虚子 七百五十句 昭和29年)
「蜘蛛垂れて日の出を浴びぬ胸の前」(楸邨 山脈 昭和24年)
蜘蛛14(130827)
「夏されば茨(いばら)花散り 秋されば芙蓉(ふよう)花散る 家に書(ふみ)あり」(子規 道灌山紀行中の歌 明治32年)「昔我が善く見てしれる 金杉(かなすぎ)のいも屋の庭の 秋海棠(しゅうかいどう)の花」(子規 道灌山紀行中の歌 明治32年)「大蜘蛛しづかに網張れり朝焼の中」(山頭火 出家以前 大正4年)「蜘蛛は網張る私は私を肯定する」(山頭火 山行水行)
蜘蛛13(121008)
「此(この)夕べ合歓木(ねむ)され葉に 蜘蛛の子のすがくもあはれ 秋さびにける」(左千夫 合歓木 明治39年)「雨はれて空青き日の朝川に 花きらきらし秋海棠(しうかいだう)のはな」(左千夫 秋海棠 明治37年)「蜘(くも)何と音をなにと鳴く秋の風」(芭蕉)
蜘蛛12(120730)
「いく久につづく旱(ひで)りに 蝉さへも生まれざるらむ 声の乏しさ」(赤彦 柿蔭山房 大正11年)「暑き日の昼まにしてもの書かむ 心のそこのしまし澄みつる」(赤彦 柿蔭山房 大正11年)「蜘蛛の子の湧くがごとくに親を棄つ」(加藤楸邨 起伏)
蜘蛛11(110909)
「蜘蛛に生れ網をかけねばならぬかな」(虚子)
蜘蛛10(100803)
「夕雲をつかみ歩きて蜘蛛定まる」(西東三鬼)
蜘蛛9(100623)
「蜘蛛掃けば太鼓落として悲しけれ」(虚子)
蜘蛛8(090817)
「巣を張って日の暈に入る女郎蜘蛛」(廣瀬直人)
蜘蛛7(091003)
「大蜘蛛の虚空を渡る木の間かな」(村上鬼城)

白露3(140908)
「折らで行く袖にも露ぞこぼれける 荻の葉しげき野辺の細道」(西行法師 行路草花 山家集秋)
「あはれいかに草葉の露のこぼるらむ 秋風立ちぬ宮城野の原」(西行法師 秋風 山家集秋)
「かべに生ふる小草にわぶる蛬(きりぎりす) しぐるる庭の露いとふらし」(西行法師 雨中虫 山家集秋)
「分けて入る袖にあはれをかけよとて 露けき庭に虫さへぞ鳴く」(西行法師 年ごろ申されたる人の、伏見に住むと聞きて尋ねまかりたりけるに、庭の道も見えず繁りて虫なきければ 山家集秋)
「神木をのぼる白露のかたつむり」(大島民郎)
白露2(130908)
「分けている袖に哀れをかけよとて 露けき庭に虫さへぞ鳴く」(西行法師 あひ知りて侍りける人の伏見に住むと聞きて尋ねまかりけるに、庭の草道も見えず茂りて虫の鳴きければ 玉葉集秋)「夕づく夜心もしのに 白露のおくこの庭にきりぎりす鳴く」(湯原王 題しらず 玉葉集秋)「姿見に一樹(いちじゅ)映りて白露かな」(古賀まり子)白露1(110908)
「道元の歩きし道も白露かな」(赤尾兜子)

秋の風14(140905)
「噛みしめる飯のうまさよ秋の風」(山頭火 出家以前)
秋の風13(130906)
「思ふにも過ぎてあはれにきこゆるは 荻の葉みだる秋の夕風」(西行法師 荻 山家集秋)「あたりまであはれ知れともいひがほに 荻の音する秋の夕風」(西行法師 隣の夕べの荻の風 山家集秋)「あかあかと日はつれなくも秋の風」(芭蕉 おくのほそ道)秋の風12(120905)
「夏衣まだひとへなるうたたねに こころして吹け秋の初風」(秋のはじめに詠み侍りける 安法法師 拾遺集巻三)「荻の葉のそよぐ音こそ 秋風の人にしらるるはじめなりけれ」(延喜の御時御屏風に 貫之 拾遺集巻三)「桃の木のその葉ちらすな秋の風」(芭蕉)

秋の雨17(140907)
「はなだもふらぬ雨ゆゑにはたづみ いたくな行きそ人の知るべく」(万葉集巻七1370)
「ひさかたの雨には著ぬをあやしくも わが衣手は干る時なきか」(万葉集巻七1371)
「大木の中を人行く秋の雨」(子規 明治27年)
「秋の雨しづかに午前をはりけり」(日野草城)
秋の雨16(130925)
「時雨(しぐれ)の間(ま)無くしふれば三笠山 木末(こぬれ)あまねく色づきにけり」(衛門大尉大伴宿禰稲公の歌一首 万葉集巻八1553)「皇(おほきみ)の三笠の山のもみち葉は 今日の時雨に散りか過ぎなむ」(大伴家持の和ふる歌一首 万葉集巻八1554)「秋雨や色のさめたる緋の袴」(子規 明治29年)
秋の雨15(130915)
「明日香河(あすかがわ)行き廻(み)る岳(をか)の秋萩は 今日ふる雨に散りか過ぎなむ」(丹比(たぢひの)真人(まひと)国人(くにひと) 万葉集巻八1557)「秋の雨にぬれつつをれば 賤(いや)しけど吾妹(わぎも)が屋戸(やど)し思ほゆるかも」(大伴利上 万葉集巻八1573)「秋の雨香炉の烟つひに絶えぬ」(子規 明治29年)
秋の雨14(120919)
「うなだれし秋海棠にふる雨は いたくはふらずただ白くあれな」(長塚節 大正3年)「秋雨のひねもすふりて  夕されば朝顔の花しぼまざりけり」(長塚節 大正3年)「秋雨や我が菅蓑(すがみの)はまだ濡らじ」(蕪村)
秋の雨13(110825)
「秋雨や夕餉(ゆうげ)の箸(はし)の手くらがり」(永井荷風)
秋の雨12(100916)
「なき人の発句ききけり秋の雨」(闌更)
秋の雨11(100908)
「秋の雨小さき角力(すもう)通りけり」(一茶)
秋の雨10(090930)
「時待ちて降りし時雨の雨やみぬ 明けむ朝(あした)か山のもみちむ」(市原王の歌 万葉集巻八1551)「時雨の雨間(ま)無くしふれば 三笠山木末(こぬれ)あまねく色づきにけり」(大伴宿禰稲公の歌 万葉集巻八1553)「皇(おほきみ)の三笠の山のもみち葉は 今日の時雨に散りか過ぎなむ」(大伴家持の和ふる歌 万葉集巻八1554)「秋雨や旅に行きあふ芝居もの」(召波)
秋の雨9(090831)
「寝つづけて夕べとなりぬ秋の雨」(吉野左衛門)
秋の雨8(081006)
「ひさかたの雨間もおかず雲隠(くもがく)り 鳴きそ行くなり早稲田(わさだ)雁(かり)がね」(大伴家持 万葉集八1566)「雨隠(こも)り情(こころ)いぶせみ出で見れば 春日の山は色づきにけり」(大伴家持 万葉集八1568)「十月(かむなづき)時雨(しぐれ)にあへる黄葉(もみちば)の吹かば散りなむ風のまにまに」(大伴池主 万葉集八1590)
「丈梶iふいごう)の火壁を伝へり秋の雨」(虚子)
秋の雨7(080916)
「訪ふときは病むとき秋の雨降れり」(大野林火)
秋の雨6(080825)
「秋の雨に濡れつつをれば賤(いや)しけど 吾妹(わぎも)が屋戸(やど)し思ほゆるかも」(大伴利上 万葉集巻八1573)「秋の雨胡弓の糸に泣く夜かな」(暁台)
秋の雨4(061023)
「屋根裏の窓の女や秋の雨」(虚子)
秋の雨3(061006)
「十一面諸相にひびく秋の雨」(水原秋櫻子)
秋の雨2(060918)
「秋雨や田上のすすき二穂三穂」(飯田蛇勿)
秋の雨1(060913)
「馬の子の故郷はなるる秋の雨」(一茶)

山椒の実2(121022)
「晴れわたる天の足日(たるひ)や 秋の野の花さへ色に照り満ちにつつ」(赤彦 大正10年)「限りなく晴れたる空や 秋草の花野にとほき蓼科(たでしな)の山」(赤彦 大正10年)「為事(しごと)の日実山椒朱を脱ぎ漆出で」(中村草田男)
山椒の実(120829)
「独り居て見まほしきものは 山かげの巌が根の細渓(ほそたに)の水」(若山牧水 さびしき樹木 渓を思ふは畢竟孤独を思ふ心か)「幼き日ふるさとの山に 睦(むつ)みたる細渓(ほそたに)川の忘られぬかも」(若山牧水 さびしき樹木 いろいろと考ふるに心に浮ぶは故郷の渓間なり)「山椒をつかみ込んだる小なべかな」(一茶)

秋の雲10(140904)
「雲かかる遠山ばたの秋されば 思ひやるだにかなしきものを」(西行法師 山家集秋)
「よこ雲の風にわかるる東明に 山とびこゆる初雁のこゑ」(西行法師 朝に初雁を聞く 山家集秋)
「山里の外面の岡の高き木に そぞろがましく秋の蝉かな」(西行法師 山家集秋)
「どこからともなく雲が出てきて秋の雲」(山頭火 旅心)
秋の雲9(130920)
「むらむらの雲の空には雁なきて 草葉露なる秋の朝あけ」(従三位親子 玉葉集秋)「はだ寒く風も秋なる夕暮の 雲のはたてを渡るかりがね」(永陽門院少将 秋の歌とて 玉葉集秋)「最上川につつこみ青葉振り洗ふ」(加藤楸邨 峠を下りて尾花沢へ(二句) まぼろしの鹿)「秋の雲父の墓なき父の国へ」(加藤楸邨 峠を下りて尾花沢へ まぼろしの鹿)
秋の雲8(100908)
「山につき山にはなれつ秋の雲」(麦水)
秋の雲7(091010)
「秋風に山飛び越ゆるかりがねの いや遠ざかり雲がくれつつ」(新古今集秋下)「横雲の風に分かるるしののめに 山飛び越ゆる初雁のこゑ」(西行法師 新古今集秋下)「秋雲の下そこはかとなく人住めり」(角川源義)
秋の雲6(090916)
「秋の雲十日会はねば顔強し」(飯田龍太)
秋の雲5(081106)
「夕暮れや鬼の出そうな秋の雲」(一茶)秋の雲4(080926)
「ねばりなき空にはしるや秋の雲」(丈草)
秋の雲3(080908)
「この秋は何で年寄る雲に鳥」(芭蕉)
秋の雲2(060925)
「二色の絵具に足るや秋の雲」(召波)
秋の雲1(060919)
「秋の雲みづひきぐさにとほきかな」(久保田万太郎)

梨6(140926)
「しづかなる昼餉(ヒルゲ)を したり。いやはてに、そばのしるこを 啜(スス)ろひにけり」(釈迢空 夏のわかれ 春のことぶれ)
「昼早く そばをうたせて 待ちごころ ひそかなれども、たのしみにけり」(釈迢空 夏のわかれ 春のことぶれ)
「昼淋し梨をかぢって句を案ず」(子規 明治29年)
「がしがしとしかも小梨の堅き哉」(子規 明治29年)
「日毎日毎十顆の梨を喰ひけり」(子規 明治29年)
「川崎や小店小店の梨の山」(子規 明治29年)
梨5(130913)
「野も 山も 秋さび果てて 草高しー。人の出で入る声も 聞えず」(釈迢空 野山の秋 倭をぐな)「今の世の幼きどちの生ひ出でて 問ふことあらば、すべなかるべし」(釈迢空 野山の秋 倭をぐな)「如何にして命生きむか。這ひ出でて 炊かむ厨(クリヤ)に、木も炭もなし」(釈迢空 家常茶飯 倭をぐな)「梨喰ふは大師戻りの人ならし」(子規 明治29年)「梨むくや甘き雫の刃を垂るる」(子規 明治29年)「仏へと梨十ばかりもらひけり」(子規 明治29年)
梨4(120913)
「さびしくてひそまりて居る家のうち―。音にひびきて、喰ふ物もなし」(釈迢空 家常茶飯 倭をぐな)「日本(ニッポン)のよき民の 皆死に絶えむ日までも続け。米喰はぬ日々」(釈迢空 家常茶飯 倭をぐな)「をかしげに 米なき日々の生活を馴れて語るは、さびしかりけり」(釈迢空 家常茶飯 倭をぐな)「草鞋(わらじ)に垂るる梨の皮長くむくなり」(荻原井泉水)
梨3(080809)
「孔子一行衣服で赭(あか)い梨を拭き」(飯島晴子)
梨2(070820)
「水なしやさくさくとして秋の風」(惟中)
梨1(061021)
「もみぢ葉のにほひは繁し、然れども妻梨の木を手折(たお)り挿頭(かざ)さむ」(万葉集巻十)「露霜(つゆしも)の寒き夕べにたへかねて、移ろひにけり妻梨の木は」(古今六帖)
「仏へと梨十ばかりもらひけり」(子規)

石榴の実10(140825)
「夜のふけをぬるきこの湯にひたりつつ 出でかねてをればこほろぎ聞ゆ」(若山牧水 畑毛温泉にて 山桜の歌)
「沢につづく此処の小庭(こには)に うつくしき翡翠(かはせみ)が来て柘榴(ざくろ)にぞをる」(若山牧水 畑毛温泉にて 山桜の歌)
「石榴の実ぶらぶら墓の刻字消え」(飯田龍太 山の木)
石榴の実9(130814)
「籬木槿(かきむくげ)むらさきに咲く裾野村 石ころ路を日暮下れり」(若山牧水 裾野村 山桜の歌)「みそ萩の花咲く溝の草むらに 寄せて迎火たく子等のをり」(若山牧水 裾野村 山桜の歌)「石榴揺れゐてさ迷える国ありき」(飯田龍太 山の木 昭和49年)
石榴の実8(120808)
「八重葎(むぐら)しげれる宿のさびしきに 人こそみえね秋は来にけり」(恵慶法師 拾遺集秋)「あさぢ原玉まく葛のうら風の うらがなしかる秋は来にけり」(恵慶法師 後拾遺集秋)「小時(ことき)来て柘榴(ざくろ)を供へ拝みけり」(虚子)
石榴の実7(110801)
「喰(くわ)ずともざくろ興有(きょうある)形かな」(太祗)
石榴の実6(100916)
「柘榴みて髪にするどきピンをさす」(野澤節子)
石榴の実5(100822)
「身辺に割けざる石榴置きて愛づ」(山口誓子)
石榴の実4(090925)
「ひやびやと日のさしている柘榴かな」(安住敦)
石榴の実3(080919)
「若長(じゃくちゃう)の机の上の石榴(ざくろ)かな」(蕪村)
石榴の実2(070912)
「石榴火のごとく割れゆく過ぎし日も」(加藤楸邨)
石榴の実(070901)
「刻々と緋を溜めてゐる石榴の実」(飯田龍太)

こおろぎ3(140826)
「蛬なくなる野辺はよそなるを 思はぬ袖に露ぞこぼるる」(西行法師 山家集秋)
「夕されば玉うごく露にこざさ生に苅萱の下葉に蛬かな」(西行法師 山家集秋)
「こほろぎよあすの米だけはある」(山頭火 鉢の子)
「こほろぎに鳴かれてばかり」(山頭火 鉢の子)
「酔うてこほろぎと寝ていたよ」(山頭火 鉢の子)
こおろぎ2(130821)
「夕月夜(ゆふづくよ)心もしのに白露のおく この庭にこほろぎ鳴くも」(湯原王の蟋蟀の歌一首 万葉集巻八1552)「こほろぎの待ち歓(よろこ)ぶる秋の夜を 寝るしるしなし枕と吾は」(蟋蟀に寄する 万葉集巻十2264)「蛼(こほろぎ)のふと鳴き出しぬ鳴きやみぬ」(漱石)
こおろぎ1(120828)
「影草(かげくさ)の生ひたる屋外(やど)の暮陰(ゆふかげ)に 鳴くこほろぎは聞けど飽かぬかも」(蟋蟀を詠める 万葉集巻十2159)「庭草に村雨(むらさめ)ふりて こほろぎの鳴く声きけば秋づきにけり」(蟋蟀を詠める 万葉集巻十2160)「傷增iこほろぎ)や相如(しやうじょ)が絃(げん)のきるる時」(蕪村)

きりぎりす8(140825)
「よもすがら袂に虫の音をかけて はらひわづらふ袖の白露」(西行法師 山家集秋)
「ひとりねの寝ざめの床のさむしろに 涙催すきりぎりすかな」(西行法師 山家集秋)
「物思ふねざめとぶらふきりぎりす 人よりもけに露けかるらむ」(西行法師 山家集秋)
「下駄箱の奥になきけりきりぎりす」(子規 明治25年)
「暁や厨子を飛び出るきりぎりす」(子規 明治26年)
「夜をこめて麦つく音やきりぎりす」(子規 明治26年)
「こほろぎや物音絶えし台所」(子規 明治35年)
「夕汐や塵にすがりてきりぎりす」(一茶 七番日記)
「がりがりと竹かじりけりきりぎりす」(一茶 七番日記)
きりぎりす7(130825)
「あき風のふけゆく野辺の虫の音の はしたなきまで濡るる袖かな」(西行法師 山家集秋)「あきの夜に声も惜しまず鳴く虫を 露まどろまず聞きあかすかな」(西行法師 山家集秋)「逃げしなに足ばし折るなきりぎりす」(一茶)
きりぎりす6(110925)
「虫の音を弱り行くかと聞くからに 心に秋の日数をぞふる」(西行法師 山家集秋)「野辺に鳴く虫もや物は悲しきと こたへましかば問ひて聞かまし」(西行法師 山家集秋)「白髪(しらが)ぬく枕の下やきりぎりす」(芭蕉)
きりぎりす5(091025)
「ついん地の何処にかくれてきりぎりす」(蕪村)
きりぎりす4(090913)
「君しのぶ草にやつるるふるさとは 松虫の音ぞかなしかりける」(古今集秋上)「秋の野に道もまどひぬ まつむしのこゑする方にやどやからまし」(古今集秋上)「秋の野に人まつ虫のこゑすなり 我かとゆきていざとぶらはん」(古今集秋上)「きりぎりすいたくな鳴きそ 秋の夜のながき思ひは我ぞまされる」(人のもとにまかれりける夜、きりぎりすの鳴きけるを聞きてよめる 藤原ただふさ 古今集秋上)「秋萩も色づきぬればきりぎりす われねぬごとや夜はかなしき」(題しらず よみ人しらず 古今集秋上)「秋の夜は露こそことに寒からし くさむらごとに虫のわぶれば」(古今集秋上)「朝な朝な手習すすむきりぎりす」(芭蕉)
きりぎりす3(080924)
「ひとりねの寝覚めの床のさむしろに 涙催すきりぎりすかな」(西行 山家集秋)「きりぎりす夜寒になるを告げがほに 枕のもとに来つつ鳴くなり」(西行 山家集秋)「きりぎりす夜寒に秋のなるままに よわるか声の遠ざかり行く」(西行 山家集秋)
「むざんやな甲(かぶと)の下のきりぎりす」
きりぎりす2(070928)
「秋風の寒く吹くなへ我が宿の 浅茅が本にこほろぎ鳴くも」(万葉集巻十2158)「蔭草の生ひたる宿の夕影に 鳴くこほろぎは聞けど飽かぬかも」(万葉集巻十2159)「庭草に村雨降りて こほろぎの鳴く声聞けば秋づきにけり」(万葉集巻十2160)「きりぎりすいたくな鳴きそ 秋の夜の長き思ひは我ぞまされる」(古今集秋上)「秋萩も色づきぬればきりぎす わがねぬごとや夜はかなしき」(古今集秋上)「秋の夜は露こそことに寒からし 草むらごとに虫のわぶれば」(古今集秋上)「きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに 衣かた敷き独りかも寝む」(新古今集秋下)「秋ふけぬ鳴けや霜夜のきりぎりす やや影さむしよもぎふの月」(新古今集秋下)「月の澄む浅茅にすだくきりぎりす 露の置くにや秋を知るらむ」(西行 山家集)「きりぎりす鳴くや夜寒の芋俵」(許六)
きりぎりす1(060906)
「明けかかる高窓引くやきりぎりす」(室生犀星)

秋海棠12(140826)
「山の木に霧ながれつつ 渓(たに)のべにうすくれなゐの秋海棠(しうかいだう)の花」(古泉千樫 秋海棠の自生地は世に稀なれども、安房清澄山の渓谷には所々に之を見ることを得べし 秋海棠 大正15年)
「天(あま)の原(はら)清澄の山のおきつ谷 世にこもりたる秋海棠の花」(古泉千樫 秋海棠 大正15年)
「秋海棠日陰の庭の三坪程」(子規 明治32年)
「噛んでみる秋海棠の茎赤き」(子規 明治32年)
「蕾多き秋海棠の写生哉」(子規 明治32年)
秋海棠11(130801)
「杉村のあはひ洩る日のほがらかに 秋海棠の花露にぬれたり」(古泉千樫 秋海棠 明治41年)「河鹿(かじか)なく声はいづらや おもむろに秋海棠の花川ににうつり見ゆ」(古泉千樫 秋海棠 明治41年)「秋海棠に鋏をあてること勿れ」(子規 家人の秋海棠を剪らんといふを制して 明治35年)
秋海棠10(120726)
「秋海棠のさはに咲きたる背戸川に 米とぐ女の児 手白足白」(左千夫 秋海棠 明治37年)「朝顔は都の少女 秋海棠はひなの少女か 秋海棠吾は」(左千夫 秋海棠 明治37年)「病床に秋海棠を描(えが)きけり」(子規 自ら秋海棠を画いて 明治32年)「紙ににじむ秋海棠の絵の具かな」(子規 明治32年)
秋海棠9(110728)
「昔我がよく見て知れる金杉(かなすぎ)のいも屋の庭の秋海棠の花」(子規 明治32年)「蓬生(よもぎふ)の秋風強み倒れたる笆(まがき)起こさず朝顔の咲く」(子規 明治33年)「病床に秋海棠を描きけり」(子規)
秋海棠8(100823)
「花伏して柄に朝日さす秋海棠」(渡辺水巴)
秋海棠7(090812)
「出で入りの背戸川橋の両側(ふたがわ)に秋海棠は花多く持てり」(左千夫 明治37年)「朝川の秋海棠における露おびただしきを見るこころよさ」(左千夫 明治37年)
「如意輪には秋海棠をたてまつれ」(越人)
秋海棠6(080826)
「花のなき秋海棠は唯青し」(虚子)
秋海棠5(080720)
「臥して見る秋海棠(しゅうかいどう)の木末かな」(子規)
秋海棠4(070918)
「をみなども朝夕いでて米あらふ 背戸川(せどがわ)岸の秋海棠の花」(左千夫 明治37年)「雨はれて青き日の朝川に 花きらきらし秋海棠のはな」(左千夫 明治37年)「米あらふ白きにごりは 咲き垂れし秋海棠の下ながれ過ぐ」(左千夫 明治37年)「うなだれし秋海棠にふる雨は いたくはふらず只(ただ)白くあれな」(長塚節 大正3年)「いささかは肌はひゆとも単衣(ひとへ)きて 秋海棠はみるべかるらし」(長塚節 大正3年)「わびしくも痩せたる草の刈萱(かるかや)は 秋海棠の雨ながらみむ」(長塚節 大正3年)「書を愛し秋海棠を愛しかな」(山口青邨)
秋海棠3(070718)
「節々に秋海棠(しゅうかいどう)の虹にじみ」(虚子)
秋海棠2(061028)
「手拭(てぬぐい)に紅のつきてや秋海棠」(支考)
秋海棠1(060818)
「秋海棠(しゅうかいどう)西瓜(すいか)の色に咲きにけり」(芭蕉)

法師蝉8(140824)
「紙屑のごとくに死んで法師蝉」(加藤楸邨 起伏)
「秋蝉も泣き蓑虫も泣くのみぞ」(虚子 六百句 昭和20年)
「自転車に跨(また)がり蝉の樹を見上げ」(虚子 六百句 昭和16年)
法師蝉7(130830)
「つくつくぼうしあまりにちかしつくつくぼうし」(山頭火 山行水行)「つくつくぼうし鳴いてつくつくぼうし」(山頭火 柿の葉)
法師蝉6(120826)
「あな無残(むさん)草に埋もれ土にまみれ 倒れ羅漢の苔ごろもかも」(吉井勇 天彦 五百羅漢)「風もなく夕日しづけきたまゆらや 羅漢の背(せな)に蜻蛉(とんぼ)とまりぬ」(吉井勇 天彦 五百羅漢)「享保よりねむる羅漢に法師蝉」(加藤楸邨 吹越 樹下石上)
法師蝉5(110831)
「鳴き立ててつくつく法師死ぬる日ぞ」(漱石)
法師蝉4(100817)
「つくつくぼうし鳴いてつくつくぼうし」(山頭火)
法師蝉3(090901)
「つくつくぼうしあまりにちかくつくつくぼうし」(山頭火)「蝉しぐれの、飲むな飲むなと熊蝉さけぶ」(山頭火)
法師蝉2(090824)
「鳴き立ててつくつく法師死ぬる日ぞ」(漱石)
法師蝉1(060820)
「鳴き渡り次第に遠し法師蝉」(寒川鼠骨)

処暑3(140823)
「暑き日のま昼まにして もの書かむ 心のそこのしまし澄みつる」(赤彦 柿蔭山房 大正11年)
「暑き日を坐りつづけつつ 山の草の煎じ薬をわが飲まんとす」(赤彦 柿蔭山房 大正11年)
「薬草を煮つめて処暑の指ほどく」(河口俊江)
「処暑けふの吊橋の揺れ身にのこり」(喜田将子)
処暑2(130823)
「おのづから汗や沁みけむ 坐りつつ時を経にける畳の上に」(赤彦 柿蔭山房 大正11年)「いく久につづく旱(ひでり)に 蝉さへも生れざるらむ声の欠しき」(赤彦 柿蔭山房 大正11年)「暑き日を坐りつづけつつ 山の草の煎じ薬をわが飲まんとす」(赤彦 柿蔭山房 大正11年)「座布団の四隅の処暑のかざり糸」(長谷川久々子)「藤蔓の絶たれたるまま垂れて処暑」(三森鉄治)
処暑1(120823)
「夕ごとに遠べに見ゆる雲の峰の このごろ低し秋づきぬらし」(赤彦 代々木野 大正12年)「この日ごろ澄みまさりゆく空のはてに 雲の峰低く夕照りにけり」(赤彦 代々木野 大正12年)「処暑なりと熱き番茶を貰ひけり」(草間時彦)

百日紅6(140821)
「百日紅が紅う咲いたと知らしてあげな お母様でもお見えなさろで」(北原白秋 風隠集 月と孟宗)
「百日紅の花のさかりも過ぎまする どれよ離れの障子でも張ろ」(北原白秋 風隠集 月と孟宗)
「百日紅いろやや淡し中山路」(楸邨 孫文の墓へ 砂漠の鶴)
「さるすべり懈(ものう)く亀の争へり」(角川春樹)
百日紅5(130717)
「百日紅(ひゃくじつこう)に日ははや照れり 朝戸(あさと)出で汗ばむ顔を拭きつつゆくも」(古泉千樫 百日紅 大正6年)「いそぎつつ朝は出でゆく 街角に咲きて久しき百日紅の花」(古泉千樫 百日紅 大正6年)「百日紅けふは葭戸(よしど)の雨すずし」(水原秋櫻子 重陽 昭和21年)
百日紅4(120720)
「百日紅が咲いたさうなよ ほうら見ろ 隣の寺の藁屋根のつま」(北原白秋 風隠集 月と孟宗)「百日紅が紅う咲いてる 寺のむすめが手まりついてる その花かげで」(北原白秋 風隠集 月と孟宗)「咲き満ちて天の簪(かんざし)百日紅」(阿部みどり女)
百日紅3(110715)
「炎天の地上花あり百日紅(さるすべり)」(虚子)
百日紅2(100830)
「朝雲の故なくかなし百日紅」(水原秋櫻子)
百日紅1(060901)
「散れば咲き散れば咲きして百日紅(さるすべり)」(千代女)

轡虫6(140822)
「城内に踏まぬ庭あり轡虫」(太祇)
「がちゃがちゃや父の死顔来る頃や」(森澄雄 花眼)
「分けている袖に哀れをかけよとて 露けき庭に虫さへぞ鳴く」(西行法師 庭の草道も見えず茂りて虫の鳴きければ 玉葉集秋)
「秋の夜をひとりや鳴きて明かさまし ともなふ虫の声なかりせば」(西行法師 虫をよめる 玉葉集秋)
轡虫5(130816)
「秋ちかししづが垣根の草むらに なにともしらぬ虫の声声」(後鳥羽院御製 玉葉集夏)「鈴虫の声ふりたつる秋の夜は 哀れにもののなりまさるかな」(和泉式部 玉葉集秋)「死神の使者の轣轆轡虫」(森澄雄 花眼)轡虫4(120816)
「とかくして朝七時すぎ八時九時過ぎゆくなべに世はひかりなり」(若山牧水 昼を恐る さびしき樹木)「竹煮草(たけにぐさ)あをじろき葉の広き葉のつゆをさけつつ小蟻あそべり」(若山牧水 あかつき さびしき樹木)「森を出て会ふ灯はまぶし轡虫」(石田波郷 酒中花)
轡虫3(110827)
「がちゃがちゃや月光掬(すく)ふ轡虫」(渡辺水巴)
轡虫2(100819)
「轡虫(くつわむし)夜討(ようち)も来(く)べき夜(よ)なるかな」(子規)
轡虫1(090814)
「松の月暗し暗しと轡虫」(虚子)

夜蝉4(140820)
「今しがたこの世に出でし蝉の鳴く」(一茶 文化句帖)
「小坊主や袂の中の蝉の声」(一茶 七番日記)
「松のセミいつまで鳴いて昼になる」(一茶 八番日記)
「いそいでもどるかなかなかなかな」(山頭火 行乞途上)
夜蝉3(130813)
「夏山のみどりの木木を吹きかへし 夕立つ風の袖にすずしき」(権中納言兼季 玉葉集夏)「山風の吹くとしもなき夕暮も このした陰はなほぞ涼しき」(昭慶門院一条 玉葉集夏)
「ほんによかった夕立の水音そこここ」(山頭火 山行水行)「蝉しぐれの、飲むな飲むなと熊蝉さけぶ」(山頭火 一草庵)
夜蝉2(120813)
「夕かたの蝉鳴きつづく暑き木の 門柳(かどやなぎ)より青葉こぼるる」(中村憲吉 蝉 大正10年)「柳にて鳴く蝉ひさし 下かげの櫨(はぜ)の矮木(ひくぎ)は暗くなりつつ」(中村憲吉 蝉 大正10年)「しのび音の咽ぶ音となり夜の蝉」(三橋鷹女)

残暑6(130820)
「門柳(かどやなぎ)蝉(せみ)鳴きやめず くらき葉は日のほとぼりのなほこもりたり」(中村憲吉 蝉 大正10年)「夕かたの蝉鳴きつづく 暑き木の門柳より青葉こぼれる」(中村憲吉 蝉 大正10年)「草の戸の残暑といふもきのうけふ」(虚子)
残暑5(120817)
「蝉の鳴く池べ樹(こ)したに出て立ちぬ 夕餉(ゆふげ)のあとの帯をゆるめて」(中村憲吉 蝉 大正10年)「門柳(かどやなぎ)蝉(せみ)鳴きやめず くらき葉は日のほとぼりのなほこもりたり」(中村憲吉 蝉 大正10年)「暑き日の刀にかゆる扇かな」(蕪村 )
残暑4(110809)
「市中は物の匂ひや夏の月」(凡兆 猿蓑) 「あつしあつしと門々(かどかど)の声」(芭蕉)「二番草取りも果(はた)さず穂(ほ)に出(いで)て」(去来) 「灰うちたたくうるめ一枚」(兆)
「此の筋は銀(かね)も見しらず不自由さよ」(蕉) 「ただとひゃうしに長き脇指(わきざし)」(来)「草村に蛙こはがる夕まぐれ」(兆) 「蕗の芽とりに行燈ゆりけす」(蕉)
「かまきりの虚空をにらむ残暑かな」(北枝)
残暑3(100906)
「朝も秋ゆふべも秋の暑さかな」(鬼貫)
残暑2(100808)
「伶人のやどりにのこる暑さかな」(蕪村)

魂祭り6(140815)
「送り火や今に我等(われら)もあの通り」(一茶)
魂祭り5(130815)
「おしなべて煙る野山かー。照る日すら 夢と思ほゆ。国やぶれつつ」(釈迢空 野山の秋 倭をぐな)「しづかなる山野(ヤマノ)に入りて 思ふべく あまりにくるしー。国はやぶれぬ」(釈迢空 野山の秋 倭をぐな)「戦ひに果てにし者よー。そが家の孤独のものよー。あはれと仰(オフ)す」(釈迢空 野山の秋 倭をぐな)「勝ちがたきいくさにはてし人々の心をぞ 思ふ。たたかひを終ふ」(釈迢空 野山の秋 倭をぐな)「戦ひにはてし我が子を 悔い泣けど、人とがめねば なほぞ悲しき」(釈迢空 ある日かくて 倭をぐな)「くるしみてこの世をはりし人びとの物語りせむー。さびしと思ふな」(釈迢空 古き扉 倭をぐな)「御仏(みほとけ)はさびしき盆とおぼすらん」(一茶)
魂祭り4(120815)
「帰るべき家のあらじと 数知れぬ御霊(みたま)をしのぶ 盆の来たれば」(窪田空穂 無縁仏 昭和21年)「家の外(と)に棚供養せむ 迎ふべき家族(やから)のあらぬ 無縁の仏に」(窪田空穂 無縁仏 昭和21年)「熊坂をとふ人もなし玉祭り」(芭蕉 加賀の国にて)
魂祭り3(110815)
「魂祭(たままつり)吾れは親より老いにけり」(内藤鳴雪)
魂祭り2(100815)
「無為(あぢきな)や蚊帳(かや)の裾(すそ)ふむ玉まつり」(蕪村)
魂祭り1(090815)
「魂棚(たまだな)をほどけばもとの座敷かな」(蕪村)

茗荷10(140814)
「ときものぞ七十代はといひし師の こころ諾(うべ)なふ今にいたりて」(窪田空穂 老境 丘陵地)
「命ひとつ身にとどまりて 天地(あめつち)のひろくさびしき中にし息す」(窪田空穂 老境 丘陵地)
「現在のこころの為(ため)のものなりと 久しかりける過去を思はむ」(窪田空穂 老境 丘陵地)
「わが身にし最も近くありしもの 最も遠きものとなり来ぬ」(窪田空穂 老境 丘陵地)
「人なりに人は老いけり花めうが」(八田木枯)
茗荷9(120816)
「飽食の果ての一菜茗荷汁」(野見山ひふみ)
茗荷8(100812)
「いつのびし茗荷の花や夕月夜」(中村苑子)
茗荷7(090727)
「明るさも馴れぬ怯えの花茗荷」(能村登四郎)
茗荷6(090712)
「茗荷汁にうつりて淋し己が顔」(村上鬼城)
茗荷5(080729)
「隠(かく)るる如(ごと)茗荷の花を土に掘る」(橋本多佳子)
茗荷4(080516)
「愚にかへれと庵主の食ふや茗荷の子」(村上鬼城)
茗荷3(070725)
「人知れぬ花いとなめる花茗荷」(日野草城)
茗荷3(060519)
「すさまじや庫裡のうしろの茗荷竹」(子規)

蝉時雨11(140812)
「暑き日はこちたき草をいとはしみ 蚊帳釣草(かやつりぐさ)を活けてみにけり」(長塚節 蚊帳釣り草を折りて 鍼の如く其の四)
「こころよく汗の肌(はだへ)にすず吹けば 蚊帳釣草(かやつりぐさ)の髭(ひげ)そよぎけり」(長塚節 蚊帳釣り草を折りて 鍼の如く其の四)
「蝉鳴くや物喰ふ馬の頬べたに」(一茶 七番日記)
「蝉鳴くや天にひっつく筑摩川」(一茶 志多良)
「蝉鳴くや赤い木の葉のはらはらと」(一茶)
蝉時雨10(130802)
「あぶら蝉しきなく 庭の青芝に 散りこぼれたる白萩のはな」(長塚節 西遊歌 七月二十七日)「油蝉(あぶらぜみ)乏しく 松に鳴く声も 暑きが故(ゆゑ)に嗄(か)れにけらしも」(長塚節 鍼の如く其の四 七月十七日)
「蝉なくや我家(わがや)も石になるように」(一茶 七番日記)
蝉時雨9(120811)
「石走(いわばし)る滝(たき)もとどろに 蝉の声をし聞けば 京都(みやこ)し思ほゆ」(大石蓑麻呂 万葉集巻十五3617)「今よりは秋づきぬらし あしひきの山松かげに ひぐらし鳴きぬ」(万葉集巻十五3655)「蝉なくや行者の過ぐる午(ひる)の刻」(蕪村)
蝉時雨8(110807)
「撞鐘(つくかね)もひびくやうなり蝉の声」(芭蕉)
蝉時雨7(100805)
「死を遠き祭りのごとく蝉しぐれ」(正木ゆう子)
蝉時雨6(090809)
「鳥稀に水また遠し蝉の声」(蕪村)
蝉時雨5(090729)
「石枕してわれ蝉か泣き時雨」(川端茅舎)
蝉時雨4(080907)
「幾万の蝉死に絶えて風の音」(長谷川櫂)
蝉時雨3(080817)
「蝉時雨冷たい水の湧く程に」(湖中)
蝉時雨2(080811)
「天寿おほむね遠蝉の音に似たり」(飯田龍太)
蝉時雨1(070806)
「蝉時雨(せみしぐれ)冷たい水の湧くごとく」(湖中)

台風4(140810)
「近づきてつくづくあふぐ千年(ちとせ)経て 今日の時雨にぬれゐる塔を」(木下利玄 大和国法起寺 一路)
「堂塔(だふたふ)に時雨の雨の降りふり 夕ちかみくる今日のわびしさ」(木下利玄 大和国法起寺 一路)
「台風の名残の驟雨あまたたび」(虚子 五百五十句 昭和12年)
「颱風の松の根こもる土うごく」(加藤楸邨 起伏)
台風3(130916)
「時雨空(しぐれぞら)見上ぐる塔の層々(そうそう)の 甍(いらか)のぬれの色のさむけさ」(木下利玄 大和国法起寺 一路)「時雨降る音耳にあり しみじみとおもひを致(いた)す遠(とほ)いにしへに」(木下利玄 大和国法起寺 一路)「颱風の北進し来る恵那山(ゑな)の月」(松本たかし)「颱風のこころ支ふべき灯を点す」(加藤楸邨 都塵抄 寒雷)
台風2(110720)
「台風が毛虫を家に投げ込みぬ」(相生垣瓜人)
台風1(070715)
「台風の波まのあたり室戸岬」(高浜年尾)

秋出水2(110903)
「秋出水、牛、馬、死んでながれけり」(久保田万太郎)
秋出水1(090611)
「流れよる枕わびしや秋出水」(武原はん)

葡萄の実10(140830)
「おほつぶの葡萄(ぶだう)惜しみてありしかど けふの夕(ゆふべ)はすでに惜しまず」(斎藤茂吉 寒雲 昭和12年)
「ただ見てもわれはよろこぶ 青ぶだうむらさき葡萄ならびてあれば」(斎藤茂吉 寒雲 昭和12年)
「をとめ等(ら)がくちびるをもてつつましく 押しつつ食はむ葡萄ぞこれは」(斎藤茂吉 寒雲 昭和12年)
「葉は虫に喰はれながらも葡萄かな」(子規 明治26年)
「虫飛ぶや葡萄畠の薄月夜」(子規 明治26年)
「朱硯に葡萄のからの散乱す」(子規 明治29年)
葡萄の実9(130618)
「真日中の日蔭とぼしき道ばたに 流れ澄みたる井出のせせらぎ」(若山牧水 大野原の初夏 山桜の歌)「寄り来りうすれて消ゆる 水無月(みなつき)の雲たえまなし富士の山辺に」(若山牧水 大野原の初夏 山桜の歌)「嘆く日のみな一杖の葡萄の木」(秋元不死男)
葡萄の実8(120906)
「夕かげの小藤(こふぢ)がもとの屋敷川(やしきがわ) せせらぎ澄(す)みて秋づきにけり」(中村憲吉 冷寒 大正6年)「端居(はしゐ)より遠(とほ)くし見ゆる倉間(くらあひ)の コスモスの揺(ゆ)れ秋づきにけり」(中村憲吉 冷寒 大正6年)「葡萄の種吐き出して事を決しけり」(虚子)
葡萄の実7(120613)
「髪しろき翁と翁顔見あひ さぐらむとする幼おもかげ」(窪田空穂 旧友 冬木原)「幼なじみ逢ふにたのしく そのかみのこころのほかの何ものもなし」(窪田空穂 旧友 冬木原)「葡萄あまししづかに友の死をいかる」(西東三鬼)
葡萄の実6(110808)
「葡萄食ふ一語一語の如くにて」(中村草田男)
葡萄の実5(090903)
「枯れなんとせしをぶだうの盛りかな」(蕪村)
葡萄の実4(080808)
「黒葡萄天の甘露をうらやまず」(一茶)
葡萄の実3(070821)
「雫(しずく)かと鳥(とり)もあやぶむ葡萄かな」(千代女)
葡萄の実2(060817)
「黒きまで紫深き葡萄かな」(子規)

青蜜柑9(140905)
「山かげに深山雀(みやますずめ)といふ鳥の 蜩(ひぐらし)に似て鳴くあはれなり」(赤彦 峡谷の湯 大正14年)
「山の上に残る夕日の光 消えて忽ち暗し谷川の音」(赤彦 峡谷の湯 大正14年)
「蜜柑山遠雲垂れて天城見ゆ」(水原秋櫻子)
青蜜柑8(120911)
「夕まぐれ縁にのぼれるこほろぎは いとけなければ未だ鳴かざらむ」(赤彦 家に帰りて 大正6年)「おのづから秋づきぬらむ 庭のうへの雑草の穂の動くを見れば」(赤彦 家に帰りて 大正6年)「青蜜柑横目の牛が通りけり」(桂信子)
青蜜柑7(100827)
「たとへむに物なき青き蜜柑売る」(相垣内瓜人)
青蜜柑6(080913)
「老の眼に僅かにたのし青蜜柑」(百合山羽公)
青蜜柑5(070914)
「伊吹より風吹いてくる青蜜柑」(飯田龍太)
青蜜柑2(061014)
「行く秋のなほ頼もしや青蜜柑」(芭蕉)
青蜜柑1(060908)
「海を見て青き蜜柑の手に匂う」(水原秋櫻子)

いちじく3(140905)
「おほらかに風無き空に散りてゐる木の葉ながめて窓とざすかな」(若山牧水 秋風の歌)
「骨と肉(み)のすきをぬすみて浸みもゐる この秋の風しじに吹くかな」(若山牧水 秋風の歌)
「無花果の落ちてもくれぬ家主かな」(子規 明治33年)
いちじく2(130823)
「秋づけどまだもろ草の青かるを にき出でて咲けるみそはぎの花」(若山牧水 雑詠 山桜の歌)「女郎花(をみなへし)咲きみだれたる野辺のはしに 一むら白きとこへしの花」(若山牧水 雑詠 山桜の歌)「無花果の割るといふにはやはらかき」(川崎展宏)
いちじく1(120921)
「大ひさご小ひさご地(つち)にまろびあひて ねむりころがる秋のひなたに」(若山牧水 郊外の秋 くろ土)「つづきあふ畑(はた)にとりどり日のさして いまぞ静けき秋みのりどき」(若山牧水 郊外の秋 くろ土)「無花果は哺乳植物乳垂らす」(森田久枝)

鉦叩4(140901)
「露はおき風は身にしむ夕暮を おのが時とや虫の鳴くらん」(権大納言冬教 虫をよみ侍りける 玉葉集秋)
「なく虫の声もみだれて聞ゆなり 夕風わたる岡のかや原」(平通時 題しらず 玉葉集秋)
「鉦叩元関取も老後にて」(飯田龍太 山の木 昭和49年)
「鉦たたきよ鉦をたたいてどこにゐる」(山頭火 鴉)
鉦叩3(130831)
「ふけ行けば虫の声のみ草にみちて 分くる人なき秋の夜の野べ」(院御製 玉葉集秋)「鈴虫の声ふりたつる秋の夜は 哀れにもののなりまさるかな」(和泉式部 玉葉集秋)「誰がために生くる月日ぞ鉦叩」(桂信子)
鉦叩2(120825)
「月の虫鉦を叩いて穴に居り」(渡辺水巴)
鉦叩1(110830)
「晩年の遠くて近き鉦叩」(鷹羽狩行)

鰯雲9(140901)
「秋風の寒くしなれば 朝霧のやへ山こえて雁も来にけり」(院御製 玉葉集秋)
「かりがねの寒くなるより 水茎の岡のくず葉は色づきにけり」(人麿 題しらず 玉葉集秋)
「鰯雲淵いくたびか驟雨過ぎ」(飯田龍太 山の木 昭和46年)
「山栗の棘のみどりに鰯雲」(飯田龍太 山の木 昭和49年)
「鰯雲脛に荒草触れゐたり」(飯田龍太 山の影 昭和58年)
鰯雲8(131106)
「むらむらの雲の空には雁なきて 草葉露なる秋の朝あけ」(従三位親子 玉葉集秋)「はだ寒く風も秋なる夕暮の 雲のはたてを渡るかりがね」(永陽門院少将 秋の歌とて 玉葉集秋)「炭二三俵納屋にあり鰯雲」(飯田龍太 今昔 昭和52年)「鰯雲巣箱に暗き穴ひとつ」(飯田龍太 山の影 昭和58年)
鰯雲7(140831)
「秋づけどまだもろ草の青かるを ぬけ出でて咲けるみそはぎの花」(若山牧水 山桜の歌 雑詠)「女郎花(をみなへし)咲きみだれたる野辺のはしに 一むら白きをとこへしの花」(若山牧水 山桜の歌 雑詠)「鰯雲鞴(ふいご)の息に鉄めざめ」(加藤楸邨 山脈)
鰯雲6(120824)
「鰯雲こころの波の末消えて」(水原秋櫻子)
鰯雲5(111020)
「鰯雲しづかにほろぶ刻(とき)の影」(石原八束)
鰯雲4(100821)
「鰯雲(いわしぐも)個々一切事地上にあり」(中村草田男)
鰯雲3(091007)
「鰯雲故郷の竈火いま燃ゆらん」(金子兜太)
鰯雲2(071017)
「鰯雲(いわしぐも)甕(かめ)担がれてうごき出す」(石田波郷)
鰯雲(061017)
「いわし雲大いなる瀬をさかのぼる」(飯田蛇笏)

秋の蚊7(140831)
「ひとときもためらはざらむ馬虻(うまあぶ)が 畳のうへをひくく飛ぶ見ゆ」(斎藤茂吉 石泉 昭和6年)
「ときのまにあまたむらがり寄る蟆子(ぶと)を ただわずらはしとわれはおもへる」(斎藤茂吉 石泉 昭和6年)
「秋の蚊や墓場に近き寺の庫裏」(子規 明治31年)
「秋の蚊のよろよろと来て人を刺す」(子規 明治34年)
「秋の蚊は芙蓉の花のかげよりも」(虚子 七百五十句 昭和33年)
「踏石に置く蚊やり香(こう)縁に腰」(虚子 七百五十句 昭和33年)
秋の蚊6(130829)
「朝あけて露ある萱(かや)に 大きなる明緑色の蛾が生れけり」(斎藤茂吉 山中雑歌 霜昭和17年)「あしひきの山の峡(かひ)なる夜の道の 月のきよきに蛾は飛びわたる」(斎藤茂吉 十四夜月 霜昭和17年)「秋の蚊と夢油断ばしし給ふな」(漱石 明治30年)
秋の蚊5(120818)
「秋の夜のあはれはたれも知るものを 我のみと鳴くきりぎりすかな」(藤原兼宗朝臣 千載集秋下)「さまざまの浅茅が原の虫の音を あはれひとつに聞きぞなしつる」(左近中将良経 千載集秋下)「秋の蚊の人を尋ぬる心かな」(蕪村)

秋の空9(130902)
「立ちこむる朝けの霧のそのままに 曇りて暮るる秋の空かな」(前中納言俊光 玉葉集秋)
「霧ふかみそこと見えねど 影うすき月ののぼるや秋の山ぎは」(入道前太政大臣 遠山霧 玉葉集秋)
「雲少し榛名を出でぬ秋の空」(漱石 明治40年)
「秋の空鳥海山を仰ぎけり」(漱石 明治40年)
「朝顔の今や咲くらん空の色」(漱石 明治40年)
秋の空8(130918)
「きりぎりす鳴くよりほかの音もなし 月影ふくる浅ぢふの宿」(従一位教良女 深夜月を 玉葉集秋)「今宵こそ秋とおぼゆれ月影に きりぎりす鳴きて風ぞ身にしむ」(前参議雅有 秋の歌の中に 玉葉集秋)「押し分くる芒(すすき)の上や秋の空」(漱石 明治40年)
秋の空7(120927)
「ねがはくはひらたき板にふるごとく われのこころにふるな夜の雨」(若山牧水 秋日小情)「おほらかに風無き空に散りてゐる 木の葉ながめて窓とざすかな」(若山牧水 秋風の歌)「鱸(すずき)釣って舟を蘆間(あしま)や秋の空」(漱石)
秋の空6(110918)
「雲を透く秋空見れば笛欲しや」(藤田湘子)
秋の空5(100903)
「秋の空昨日や鶴を放ちたる」(蕪村)
秋の空4(090827)
「遠山やしづかに見ゆる秋の空」(闌更)
秋の空3(08092027)
「去るものは去りまた充ちて秋の空」(飯田龍太)
秋の空2(071105)
「草山に馬放ちけり秋の空」(漱石)
秋の空1(060920)
「秋空や高きは深き水の色」(松根東洋城)

秋の雨15(130915)
「明日香河(あすかがわ)行き廻(み)る岳(をか)の秋萩は 今日ふる雨に散りか過ぎなむ」(丹比(たぢひの)真人(まひと)国人(くにひと) 万葉集巻八1557)「秋の雨にぬれつつをれば 賤(いや)しけど吾妹(わぎも)が屋戸(やど)し思ほゆるかも」(大伴利上 万葉集巻八1573)
「秋の雨香炉の烟つひに絶えぬ」(子規 明治29年)

秋の雨11(100908)
「秋の雨小さき角力(すもう)通りけり」(一茶)
秋の雨10(090813)
「寝つづけて夕べとなりぬ秋の雨」(吉野左衛門)

秋の雨7(080918)
「訪ふときは病むとき秋の雨降れり」(大野林火)

秋の雨5(070905)
「鼬(いたち)啼いて離宮に暮るる秋の雨」(蕪村)

小灰蝶10(140811)
「桃を離れて荒尾川越す夏の蝶」(森澄雄 花眼)
「樹齢四百杉の並木に秋の蝶」(森澄雄 虚心)
小灰蝶9(130818)
「さびしらに蝉鳴く山の小坂(をざか)には 松葉ぞ散れるその青松葉」(長塚節 西遊歌 明治36年)「鞍馬嶺(くらまね)ゆ夕だつ雨の過ぎしかば いまか降るらし滋賀の唐崎」(長塚節 西遊歌 明治36年)「霽(は)れててふてふ二つとなり三つとなり」(山頭火)
小灰蝶8(120806)
「夏真昼わが故郷(ふるさと)は外(と)に干して 巻線香のにほいかなしも」(北原白秋 夢殿)「葉のとぢてほのくれなゐの合歓(ねむ)の花 にほへる見れば幼な夕合歓」(北原白秋 夢殿)「ひらひら蝶はうたへない」(山頭火 柿の葉)
小灰蝶7(110730)
「蝶とんで我が身も塵(ちり)のたぐひ哉」(一茶)
小灰蝶6(100801)
「葭簀(よしず)あむ槌(つち)にもなれや小てふかな」(一茶)
小灰蝶5(090805)
「愁あり歩き慰む蝶の昼」(松本たかし)
小灰蝶4(090706)
「蝶の飛ぶばかり野中の日影かな」(芭蕉)
小灰蝶3(090510)
「くりかへし麦の畝ぬふ小蝶かな」(曾良)
小灰蝶2(070813)
「しじみ蝶ふたつ先ゆく子の霊か」(能村登四郎)
小灰蝶1(060524)
「しじみ蝶とまりてげんのしょうこかな」(森澄雄)

蜘蛛14(130827)
「夏されば茨(いばら)花散り 秋されば芙蓉(ふよう)花散る 家に書(ふみ)あり」(子規 道灌山紀行中の歌 明治32年)「昔我が善く見てしれる 金杉(かなすぎ)のいも屋の庭の 秋海棠(しゅうかいどう)の花」(子規 道灌山紀行中の歌 明治32年)「大蜘蛛しづかに網張れり朝焼の中」(山頭火 出家以前 大正4年)「蜘蛛は網張る私は私を肯定する」(山頭火 山行水行)
蜘蛛13(121006)
「此(この)夕べ合歓木(ねむ)され葉に 蜘蛛の子のすがくもあはれ 秋さびにける」(左千夫 合歓木 明治39年)「雨はれて空青き日の朝川に 花きらきらし秋海棠(しうかいだう)のはな」(左千夫 秋海棠 明治37年)「蜘(くも)何と音をなにと鳴く秋の風」(芭蕉)

秋茄子5(140818)
「武家町の畠になりぬ秋茄子」(子規 寒山落木四 明治28年)
「秋茄子小きはもののなつかしき」(子規 明治28年)
秋茄子4(130903)
「晴れわたる天の足日(たるび)や 秋の野の花さへ色に照り満ちにつつ」(赤彦 大正10年)「限りなく晴れたる空や 秋草の花野にとほき蓼科(たでしな)の山」(赤彦 大正10年)「秋茄子の日に籠(こ)にあふれみつるかな」(虚子 六百五十句 昭和21年)
秋茄子3(121013)
「谷寒(さむ)み紅葉すがれし岩が根に 色深みたる竜胆(りんだう)の花」(赤彦 木曾の秋 大正13年)「りんだうの花の紫深くなりて 朝な朝なに霜おく岩むら」(赤彦 木曾の秋 大正13年)「鮎(あゆ)はあれど鰻(うなぎ)はあれど秋茄子(あきなすび)」(子規)
秋茄子2(120910)
「おほらかに風無き空に散りてゐる 木の葉ながめて窓とざすかな」(若山牧水 秋風の歌)「寝さむれば折しも風の過ぎゆきつ むなしきひびき残るなりけり」(若山牧水 秋風の歌)「その尻をきゆつと曲げたる秋茄子(なすび)」(清崎敏郎)
秋茄子1(111103)
「月さすや娵(よめ)にくはすな大茄子」(一茶)

青蜜柑7(120912)
「夕まぐれ縁にのぼれるこほろぎは いとけなければ未だ鳴かざらむ」(赤彦 家に帰りて 大正6年)「おのづから秋づきぬらむ 庭のうへの雑草の穂の動くを見れば」(赤彦 家に帰りて 大正6年)「青蜜柑横目の牛が通りけり」(桂信子)
青蜜柑6(100827)
「たとへむに物なき青き蜜柑売る」(相垣内瓜人)
青蜜柑5(080913)
「老の眼に僅かにたのし青蜜柑」(百合山羽公)

青蜜柑3(070914)
「伊吹より風吹いてくる青蜜柑」(飯田龍太)
青蜜柑1(060908)
「海を見て青き蜜柑の手に匂う」(水原秋櫻子)

青柚15(130907)
「短編のはじめは怖し青柚削(そ)ぐ」(石寒太)「柚子存在す爪たてられて匂ふとき」(加藤楸邨 まぼろしの鹿)
柚子14(131212)
「橘は実さへ花さへその葉さへ 枝(え)に霜降れどいや常葉(とこは)の樹」(万葉集巻六1009)「古家や累々として柚は黄なり」(子規 明治29年)
青柚13(120827)
「短編のはじめは怖し青柚削(そ)ぐ」(石寒太)
柚子13(121126)
「柚子の玉ここだもこもる柚子の葉の 群葉(むらは)真白く霜おきて見ゆ」(赤彦 柚子 大正5年)「しんとして柚子のむら葉の霜どけに 光きらめく柚(ゆ)の実(み)の多さ」(赤彦 柚子 大正5年)「地に落す音の目出度き柚の実かな」(飯田龍太 遅速 平成3年)
青柚10(110821)
「盛りこぼれつつことごとく柚の実かな」(飯田龍太)

青柚9(090909)
「少数に深く教へて柚子の軒」(中村草田男)
青柚8(080913)
「柚子青き視野に顔あり何か言ふ」(加藤楸邨)
青柚7(080912)
「すぐ眠くなる父の夢柚子ふたつ」(石寒太)

青柚4(070908)
「少数に深く教へて柚子の軒」(中村草田男)

青柚1(061001)
「地に落す音の目出たき柚の実かな」(飯田龍太)
青檸檬7(140816)
「はるばると金柑の木にたどりつき 巡礼草鞋(わらぢ)をはきかへにけり」(白秋 金柑の木 雲母集)
「かうかうといマゾこの世のものならぬ 金柑の木に秋風ぞ吹く」(白秋 金柑の木 雲母集)
「檸檬青し海光秋の風に澄み」(西島麦南)
檸檬6(131025)
「橘は実さへ花さへその葉さへ 枝(え)に霜降れどいや常葉(とこは)の樹」(万葉集巻六1009)「わが屋前(には)の花橘は散り過ぎて 玉に貫(ぬ)くべき実になりけり」(大伴家持 万葉集巻八1489)「嵐めく夜なり檸檬の黄が累々」(楠本憲吉)
青檸檬5(130806)
「日をさふるならの広葉になく蝉の 声よりはるる夕立の空」(入道二品親王道助 玉葉集夏)「入日さす峯のこずゑに鳴く蝉の 声をのこして暮るる山もと」(民部卿為世 玉葉集夏)「レモン切るより香ばしりて病よし」(柴田白葉女)
檸檬4(121112)
「うつうつと一個のれもん妊(みごも)れり」(三橋鷹女)
青檸檬3(110813)
「レモン切るより香ばしりて病よし」(柴田白葉女)
檸檬2(071127)
「嵐めく夜なり檸檬の黄が累々」(楠本憲吉)
青檸檬1(070906)
「いつまでも眺めてゐたりレモンの尻」(山口青邨)

木槿6(140812)
「ひぐらしの声きく杜の下草に 秋まつ露のむすびそめぬる」(高階成朝朝臣 玉葉集夏)
「松風もすずしき程に吹きかへて 小夜ふけにけり谷川の音」(法印覚守 玉葉集夏)
「木槿(むくげ)さくや親代々の細けぶり」(一茶)
「寝るほかに分別はなし花木槿」(一茶)
「今日生きて余命を減らす花むくげ」(鈴木舜子)
木槿5(130804)
「夏山の岩がねきよく水落ちて あたりの草の色も涼しき」(前大僧正仁澄 玉葉集夏)「茂りあふ木のしたつづくみ山路は わけゆく袖も涼しかりけり」(平維貞 夏の歌とて 玉葉集夏)「朝顔にうすくゆかりの木槿哉」(蕪村)

涼しさ4(140809)
「新涼や眼鏡をとりてあたり見る」(虚子 七百五十句 昭和33年)
「新涼や道行く人の声二つ」(虚子 七百五十句 昭和33年)
涼しさ3(130819)
「風の音にすずしき声をあはすなり 夕山かげの谷の下水」(従三位為子 玉葉集秋)「影うつづ庭のま清水むすぶ手の しづくも月も袖にすずしき」(法印円伊 玉葉集秋)「涼しさや鐘を離るる鐘の声」(蕪村)
涼しさ2(120822)
「涼しさを我が宿にしてねまるなり」(芭蕉)
秋涼し2(100809)
「秋涼し手毎にむけや瓜茄子」(芭蕉)
涼しさ1(070813)
「道の辺の清水ながるる柳陰 しばしとてこそ立ちとまりつれ」(西行)「水の音にあつさ忘るるまとゐかな 梢の蝉の声もまぎれて」(西行)「柳はら河風ふかぬかげならば あつくや蝉の声にはならまし」(西行)「楽しさや青田に涼む水の音」(芭蕉)

揚羽蝶8(140817)
「真紅(まあか)なるしやうじやう蜻蛉(とんぼ)いづるまで 夏は深みぬ病みゐたりしに」(斎藤茂吉 虹 白き山 昭和21年)
「最上川にそそぐ支流の石原に こほろぎが鳴くころとなりつも」(斎藤茂吉 虹 白き山 昭和21年)
「昆虫の世界ことごとくあはれにて 夜な夜なわれの灯火(ともしび)に来る」(斎藤茂吉 虹 白き山 昭和21年)
「わが来つる最上(もがみ)の川の川原(かはら)にて 鴉(からす)はばたくおとぞきこゆる」(斎藤茂吉 秋来る 白き山 昭和21年)
「かなしくも遠山脈(とほやまなみ)の晴れわたる 秋の光にいでて来にけり」(斎藤茂吉 秋来る 白き山 昭和21年)
「遠く来て夢二生家の黒揚羽」(坪内稔典)
「揚羽より速し吉野の女学生」(藤田湘子)
揚羽蝶7(130718)
「青田のなかをたぎちながるる最上川(もがみがは) 斎藤茂吉この国に生(あ)れし」(古泉千樫 最上川 大正12年)「梅雨ばれの光りのなかを最上川 濁りうづまき海にいづるかも」(古泉千樫 最上川 大正12年)「黒揚羽月山(がっさん)よりの風にそひ」(加藤敦子)
揚羽蝶6(120910)
「碧(あお)揚羽(あげは)通るを時の驕(おご)りとす」(山口誓子)
揚羽蝶5(110903)
「黒揚羽軋(きし)める音をこぼしけり」(宮坂静生)
揚羽蝶4(110623)
「黒揚羽花魁(おいらん)草にかけり来る」(虚子)
揚羽蝶3(100622)
「弱弱しみかど揚羽といふ蝶は」(高野素十)
揚羽蝶2(090906)
「若夏過ぎるや青すじ揚羽群れなして」(金子兜太)
揚羽蝶1(070706)
「渓下る大揚羽蝶どこまでも」(飯田蛇笏)

秋の蝶4(140930)
「秋の蝶色を見せつつとびにけり」(虚子 七百五十句 昭和33年)
「秋の蝶茶室の軒を渡りけり」(虚子 七百五十句 昭和33年)
秋の蝶3(130930)
「みねの雲ふもとの霧も色くれて 空も心もあきの松風」(前中納言定家 題しらず 玉葉集秋)「そともなる楢の葉しをれ露おちて 霧晴れのぼる秋の山もと」(前参議雅有 玉葉集秋)「秋をへて蝶もなめるや草の露」(芭蕉)
秋の蝶2(120920)
「物の葉やあそぶ蜆蝶(しじみ)はすずしくて みなあはれなり風に逸(そ)れゆく」(北原白秋 橡 秋夕賦)「秋いまだ暑おとろへず 狂ひ搏つ豹紋蝶は針に刺し留む」(北原白秋 橡 秋夕賦)「物好きや匂はぬ草にとまる蝶」(芭蕉)
秋の蝶1(110920)
「病む日又簾(すだれ)の隙(すき)より秋の蝶」(漱石)

芙蓉13(140808)
「八ッ時の太鼓打ち出す芙蓉哉」(子規 明治28年)
「芙蓉咲く橋の袂の小家かな」(子規 明治28年)
「芙蓉見えてさすがに人の声ゆかし」(子規 明治28年)
「爪紅の手をのべて芙蓉折らんとす」(子規 明治28年)
「露なくて色のさめたる芙蓉かな」(子規 明治28年)
芙蓉12(130930)
「お前に長い手紙がかけて けふ芙蓉の下草を刈った」(碧梧桐 大正7(1918)年)「玉砕を芙蓉に思ひ三省す」(碧梧桐 明治43(1910)年)
芙蓉11(120812)
「秋かぜに御粧殿(みけはひどの)の小簾(みす)ゆれぬ 芙蓉ぞ白き透き影にして」(山川登美子 白百合)「一輪の芙蓉に秋をとどめたり」(虚子)
芙蓉10(110919)
「ゆめにみし人のおとろへ芙蓉咲く」(久保田万太郎)
芙蓉9(100821)
「武蔵野を見下ろす寺の芙蓉哉」(子規)
芙蓉8(090825)
「松が根になまめきたてる芙蓉かな」(子規)
芙蓉7(090830)
「残月やひらかむ芙蓉十ばかり」(水原秋櫻子)
芙蓉6(090802)
「反橋の小さく見ゆる芙蓉かな」(漱石)
芙蓉5(080908)
「ものの絵にあるげの庭の花芙蓉」(虚子)
芙蓉4(080824)
「残月やひらかむ芙蓉十あまり」(水原秋桜子)
芙蓉3(080805)
「日を帯びて芙蓉かたぶく恨みかな」(蕪村)
芙蓉2(070808)
「反橋の小さく見ゆる芙蓉かな」(漱石)
芙蓉1(060816)
「枝ぶりの日ごとにかはる芙蓉かな」(芭蕉)

立秋4(140807)
「秋立つと人は告げねど知られけり 山のすそ野の風のけしきに」(西行法師 山居のはじめの秋といふことを 山家集秋)
「つねよりも秋になるをの松風は わきて身にしむ心地こそすれ」(西行法師 初秋の頃、なるをと申す所にて、松風の音を聞きて 山家集秋)
「初秋は海やら田やらみどりかな」(はせを)「乗りゆく馬の口とむる月」(重辰)「藁庇霧ほのぐらく茶を酌みて」(知足)「やせたる藪の竹まばらなり」(如風)
立秋4(140807)
「吹きまさる風のままなるくずの葉のうらめづらしく秋は来にけり」(後一条入道前関白太政大臣 初秋の心を 玉葉集秋上)
「秋の来て けふ三日月の雲間より 心づくしの影ぞほのめく」(常磐井入道前太政大臣 早秋の心を 玉葉集秋上)
「目に見ゆる秋の姿や麻衣」(蕪村)
立秋3(130807)
「しののめの空きり渡りいつしかと 秋のけしきに世はなりにけり」(紫式部 七月一日あけぼのの空を見てよめる 玉葉集秋)「いづくにも秋は来ぬれど 山里の松ふく風はことにぞありける」(前大納言公任 山里にて初秋の心をよみ侍りける 玉葉集秋)「今朝よりは吹きくる風もおく露も 袖にはじめて秋ぞしらるる」(前参議為相 初秋朝といふ事を 玉葉集秋)「秋来にけり耳をたづねて枕の風」(芭蕉 江戸広小路)
立秋2(120807)
「おしなべてものを思はぬ人にさへ 心をつくる秋のはつ風」(西行法師 山家集秋)「秋立つと思ふに空もただならで われて光を分けむ三日月」(西行法師 山家集秋)
「秋立つや素湯(さゆ)香(かぐ)はしき施薬院(せやくいん)」(蕪村)
立秋1(110808)
「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」(秋立つ日よめる 藤原敏行 古今集秋)「秋立つと人は告げねど知られけり 山のすそ野の風のけしきに」(西行法師 山家集秋)「秋立つや何におどろく陰陽師(おんみやうじ)」(蕪村)

金ぶんぶん5(140804)
「わが家にわれは帰らむ 夜に向ふみやこの空の何ぞあかるき」(古泉千樫 ある夕 大正9年)
「人の家のすべての窓はひらかりて 明り匂へり吾はひだるく」(古泉千樫 ある夕 大正9年)
「黄金虫灯に酔ひ兜虫は攀づ」(加藤楸邨 太白抄 山脈)
金ぶんぶん4(120801)
「月光となりてゐたりし黄金虫」(加藤楸邨)
金ぶんぶん3(110726)
「裏富士の月夜の空を黄金虫」(飯田龍太)
金ぶんぶん2(100829)
「金亀子(こがねむし)擲(なげう)つ闇の深さかな」(虚子)
金ぶんぶん1(090822)
「かなぶんの昼は葡萄の葉にねむる」(金子兜太)